奥田英朗のレビュー一覧
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余り詳しく無かった近代史を学べる本で続編へ続く読み応えが有る本。昭和初期の日清/日露/第一次世界大戦後の戦勝国の時代から米国との第二次世界大戦の真珠湾への開戦までの時代を綴る。内容は、其々の立場、場所、環境で生きる4人の主人公を混沌とする時代背景のもと時系列に同時進行で描かれており4人其々信念を持った生き方が面白く読めた。
竹田耕三: 岩崎財閥家出身の陸軍省のエリート軍人で力を付ける右極化軍閥の中で米国との戦争回避に向け奮闘する。広島への左遷人事で飛ばされた後、米国大使として長男志郎を連れて渡米し和平に向けロビー活動に奮闘するも講和締結に至らず開戦を迎える。
矢野辰一:北陸能登のやくざ一家の親分で左翼組合活動の阻止をして名を上げ、本望でない全国右翼組織の会長に担ぎ上げられる。知人社長の妾子四郎を我が子に加え見込みがあるので後継と考え会長職として東京にも連れて行く。念願の組織会長職辞して地元能登に戻るも戦争間近でシノギが厳しくなり、缶詰商いを立ち上げる中、昔イザコザで腕を落とした元敵対ヤクザ親分の報復を受け死す。
五十嵐譲二:慶應卒元商社マンで夢を追いバンドマンとして満洲国大連に渡りトランペット吹きのバンドマスターから子満を授け満州鉄道/関東軍との人脈繋がりで興行主→不動産を営み成り上がる。そんな中、数度の興行で信頼を得た米国ジャズバンドを満州に迎え入れる手前で日米開戦の報を受け興行は中止となる。
森村タキ:女性の社会向上を目指す左翼運動家で同じ運動家との間に子を授る。夫は能登の会社組合活動の応援で会社側に立つ矢野辰一に片腕を落とされ自暴自棄となるも後に復讐で辰一を襲撃するも辰一は死なず、逃げた満州の地で辰一の刺客に殺される。タキは、1人子ノラを育てるも左翼雑誌「群青」出版の仕事と両立は出来ず妹夫妻に一時ノラを預けるも、神父と再婚し編集長として3人で暮らす。警察、憲兵からの監視の中、信念に従い開戦後戦争反対のビラを撒きどうなるか?? -
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面白かったです。表題作のインザプール、声出して笑いました。わたしはミステリーとホラー以外ほとんど読みませんが、こんな面白いなら他も読みたいと思い、インザプールを読み終わってすぐ二作目の空中ブランコを買いに走りました。こんな医者おるわけないやん、と、でも絶対おってほしい、の反対の感情がごちゃ混ぜになって終盤は何か胸が苦しかったです。
人生ってこういうことだよねと思いました。解決はないんですよね。誤魔化しながら付き合っていくしかないわけで、病気も人間も。それを改めて思い知ることができました。まったく、緩やかな絶望ですよね、人生は。その中のいっときでもこうして笑わせてくれる先生に、心より感謝いたします。 -
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毒を持って毒を制す、という感じだろうか。
奇妙な悩みを抱えて来院する患者たちは、ヘンテコな精神科医・伊良部一郎に振り回されるうち、いつの間にか問題が軽くなっていく。
患者たちもどこか横柄で偏屈なのだが、目の前にいる伊良部はそれ以上にわがままで自己中心的。「こいつ本当に医者か?」と思わせるような言動ばかりだ。
もしかすると伊良部は、わざと非常識に振る舞うことで患者自身の滑稽さを映し出しているのでは…とも思ったが、たぶん本人は何も考えていないんだろうな。
深刻に思い悩んでいることも、「そんなに大した問題じゃないかも」と思えた瞬間、人は少し楽になれる。
伊良部は欲望の赴くままに行動しているだけなのかもしれないが、こういう人がそばにいると不思議とホッとする。周りなど気にせず、もっと自由に生きてもいいのだと思わせてくれる。
伊良部がやっていることは、もしかしたら究極の寄り添い療法なのかもしれない。
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Posted by ブクログ
こらはもう近代史、現代史も含む壮大な歴史群像劇だね。
この3巻からなるので最終章で終わりを迎えたわけだけど、
竹田志郎、矢野四郎、森村ノラ、五十嵐満それぞれの生き方で己を貫き、志郎は検察官から国会議員へ、
四郎も事業家から大物政治家から可愛がられ、頼られやがて議員に。
ノラもアメリカへの留学を果たし(人種差別も当然経験し)
通信社の特派員からテレビ局の記者へ。
五十嵐満もプロレス興行やビートルズ(小説ではビートボーイズ)公演を成功させるエンターテイメント界隈では欠かせない大物プロデューサーに。
それぞれの道を歩みつつ4人がそれぞれに交差する瞬間がいい。
そしてそれぞれ伴侶を得て子どもも産まれ、その子たちの代まではさすがに続かないか。
最後の最後で総理大臣の投票、私的には矢野四郎になってほしかったけど、1票の差でやはりサラブレッドの竹田四郎に。
ふたりが笑い合ってる幻のワンショット。
いいねぇ。出会いが違っていたら親友同士になっていたかもしれないふたりだものね。
これ大河ドラマでやってくれないかな。 -
Posted by ブクログ
2県をまたいで発生した渡良瀬川の連続殺人事件。下巻は3人の容疑者のうちの本命1名の別件逮捕から始まる。状況証拠は揃っている。でも確実な物的証拠がない。容疑者は黙秘を続けたまま勾留期限が迫ってくる。焦る警察官たち。ほうぼうでの地道な捜査が描かれる。
なるほど、下巻はその展開か。逮捕されてからがまだ紆余曲折あるのね。小説のなかの人たちと同様に、読者もジリジリとさせられる。そしてとうとう容疑者は釈放されてしまい、職場に戻る。悔しすぎる警察。そうこうしているうちに第3の殺人が…
犯人は違う人物なのか?それとも警察の読み通りなのか?最後まで容疑者側の内面は描かれないので、どんな心理なのかはわからない。警察官のほかに、10年前の被害者遺族や警察官OBも己の正義と信念のためにやや暴走してゆき、ひやりとする。
最後物語のたたみ方は上手!なるほど!3人の容疑者はそのように事件に絡んでくるのね…!予想を裏切られる展開に読むこちら側もアドレナリンが湧く。
捜査中に警察があれやこれや推理した犯人の動機部分は明らかにはならないが、警察や事件記者などの仕事を追体験したようで、面白い読書体験だった。たまにはこういうふうに、ただただ物語の筋を楽しみに追うような読書もいい。