奥田英朗のレビュー一覧
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不思議な存在、あるいは能力者に助けられる5つの短編集。表題作は、パンデミックが始まった頃のある家族に焦点を当て、当時の混乱と焦燥感がユーモラスに描かれています。コロナ禍のことは、まだ記憶に生々しくて、笑っちゃうけど不謹慎と言われそうで大声で笑えない、だけどやはりくすりと笑えてしまう…そんな絶妙な匙加減が秀逸でした。
幽霊とか、予知能力とか、占いとか、日頃から好きな人はもちろん楽しめるし、そうでない人も違和感なくリアリティを損なうことなく楽しめるファンタジーです。怖いという感じはなくて、なんとなく微笑ましかったり暖かかったりな物語ばかりでした。世の中がこんな優しい世界だったらいいなぁ…。最後の『パンダに乗って』が一番しんみりじんわりきました。読むまで動物のパンダのことか?と思ったのは私だけではないですよね?(イタリア製のフィアット・パンダというコンパクトカーのことでした。) -
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北海道のとある町、苫沢町。かつては炭鉱で栄えていたが、廃れていき、
今では、財政破綻をしてしまっている。そんな過疎地で暮らす人々を
描いた物語。
芦沢町で理髪店を営む、2代目の向田康彦を中心に、
息子や親友に過疎地ならではの子供の時からの友人・知人たちとの
交流が描かれていた感動作。
札幌で会社勤めをしていた息子が、理髪店を継ぐと言い出す話。
40代になり結婚できなかった男が中国人の嫁を貰う話。
友人の息子が事件を起こし逃亡している話。
など、計6作品。
過疎地ならではの問題があって、そんな中でも、
人のつながりが深くハートフルな関係とともに、
財政破綻した過疎地ならではの問題を、
助け合いによってどうにかしようと奮闘する人々の逞しさが垣間見えた。
読む前の印象は、雪深い北海道の田舎町の理髪店、
それって面白いのかな?ってな感じで読み始めたら、
これがどうして、結構な感動があって、田舎の日常と言ってしまえば、
それまでなんですが、読めて良かったと思う作品でした。 -
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1964年のオリンピックは聖火リレーの見物客として、父の肩車で眺めている写真の記憶
開会式や競技の鮮やかな光景が本当に見たのか、記憶が上塗りされたのかもはっきりしない
その鮮やかさや晴れがましさの裏にさまざまな人間の事情、思惑、犠牲があったんだろうと思わせる作品だった。
その時代、時代の自分の立ち位置からしか、思いを馳せることができないけど、本当は人間の数だけ、嬉しいこと、楽しいこと、辛いこと、悲しいことがあると改めて思った。つい忘れて瑣末な身辺に囚われる自分が情けない。
以下は後日の追加です。
先日、クイズ番組の中で昔の「お宝映像」なるものがあった。 東京タワー建設時の鳶の人たちがまったく命綱なしで移動したり降りて来たりしていて、それを見て出演者たちが、凄いとか怖いとか騒いでいた。 ああ、こういうことか、私も前ならそういう感想で終わってしまってた。だけど、今なら、「この時代この人たちの命がいかに軽んじられていたか。たまたま、誰かが犠牲になっても、(なったかもしれないが、)人知れずうやむやにされていたんだろう」と想像した。
その映像と出演者のはしゃいだコメントが、今だに心にわだかまっている。 -
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面白かった!
昭和の東京オリンピックに湧く、高度経済成長の頃の日本。先日読んだ『罪の轍』と同じ頃の話でした。
オリンピックを成功させるために、安い賃金で奴隷のように働かされていた人夫。ほとんどが田舎から出稼ぎに来ている人たち。東京は著しく発展していくのに、田舎はその恩恵を受けることなくとても貧しい生活のまま。それに疑念を抱いた主人公が犯行を企てる。
真面目さや家族への優しさが、方向を間違えるとこんな事になってしまうのかと切なくなったけれど、主人公の思いには共感できるところも。
警察の捜査も興味深く、電話さえ稀な時代にどんどん犯人を追い込んでいく捜査は読んでいて息を呑みました。
大きなことを成し遂げるには、それを底辺で支えてる人たちがいることを忘れてはいけないと思った作品でした。 -
Posted by ブクログ
面白かった!やはり奥田英朗はいい。
この家族シリーズは基本的に良い人ばかり出てくるので、心が疲れない。疲れないどころか暖かくなって癒される。
「手紙に乗せて」は突然死で母を失った主人公が憔悴しきっている父に戸惑う場面から始まる。主人公の周りには、父に同情し気にかけてくれるおじさんたちと、自分の世界で忙しく他人の不幸はすぐに忘れてしまう若者達の2種類がいる。この本のいいところは、そういう若者達を決して悪者にはしないところだ。年を重ねるとは、いろんな悲しみを知ることであり、悲しみを知っているおじさん達は他人の悲しみにも敏感だが、まだ経験が少ない若者達は自分のことでいっぱいいっぱいになる。それはしょうがないのだと認めてくれる。
人に対する視線がなんとも優しく爽やかな気持ちになれる本だった。 -
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大好きな奥田さん。
読んだ気がするものの
結末を思い出せず、
とにかく最後まで読んだ。
珍しく、なかなか展開が起こらずに
日常が描かれていっていた。
中盤過ぎて、加速し始めると、
一気に乗っていくね。
特に、ことが起こったときの
スリリングな描写の仕方が、さすがですわ。
圧倒的な筆致って感じ。
ラストの玉突き事故のシーンも、圧巻。
まさかここで集結するとは。
「無理」ねえ。
無理やりなんとかかんとかやり過ごしてきて、
でも最後には無理がたたって、
ってところでしょうか。
引き返せるポイントなんかは
誰にもあったんだろうけどね。
無理に巻き込まれてしまったりね。
こういう出来事も
日常に潜んでいるのかもしれないなぁ。