あらすじ
「さっき会った元妻のことを考えた。(中略)自分は充分な養育費を払っているし、実家からの援助だってあることも知っている。要するに、元々売春をするような女だったのだ。(中略)自分の中に狂気めいたものを感じた。これまで理性を溜めていた器が割れ、ポロポロと感情がこぼれていく」。真面目に働くことの馬鹿馬鹿しさを知り、信じていたものには裏切られ……。5人の男女の人生が、猛スピードで崩壊していく。どん詰まり社会の現実を描いた群像劇。
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Posted by ブクログ
真冬のどんよりした地方都市で、生き生きとうごめいている人たち(僕にはこう見えました)が、交錯してこんがらがっていく様子をフランスのアクション映画風味でドドっと読ませる上下巻。「いいじゃんそれで」と明るい気分にさせてくれる読後感でした。
Posted by ブクログ
大好きな奥田さん。
読んだ気がするものの
結末を思い出せず、
とにかく最後まで読んだ。
珍しく、なかなか展開が起こらずに
日常が描かれていっていた。
中盤過ぎて、加速し始めると、
一気に乗っていくね。
特に、ことが起こったときの
スリリングな描写の仕方が、さすがですわ。
圧倒的な筆致って感じ。
ラストの玉突き事故のシーンも、圧巻。
まさかここで集結するとは。
「無理」ねえ。
無理やりなんとかかんとかやり過ごしてきて、
でも最後には無理がたたって、
ってところでしょうか。
引き返せるポイントなんかは
誰にもあったんだろうけどね。
無理に巻き込まれてしまったりね。
こういう出来事も
日常に潜んでいるのかもしれないなぁ。
Posted by ブクログ
小説家の凄みを感じた。冴えない地方都市を舞台にした閉塞感溢れる群像劇。これだけいろんな立場の人のいろんな生活ぶりや感覚、感情を、こんなにリアルに表現できるその視点はいったいどこからくるのか?登場人物があまりにリアルで、巻き起こる出来事も千差万別なのに、どれもがまるで自分が体験していることのように感じられてしまう。今更ながら、本物の小説家ってすごいんだな、と感じ入った。拐われた女子高生、拐った引きこもり、役所勤めの公務員、市会議員、詐欺紛いの訪問販売員、新興宗教にはまる保安係、彼らに訪れる終幕のカタストロフは、重力崩壊した天体がブラックホールに転移する時の様を見せつけられているようだった。
最初から最後までまったく隙のない大傑作。
自分で勝手に理想の女性に昇華させてしまったデートクラブの人妻に、そのキンキン声と内容のない会話と愛撫時の演技で、急速に冷めていくエピソードがなぜか印象深く残ったな。
Posted by ブクログ
ゆっくりと下落していく人生。速度が緩やかなので墜ちていっていることにも本人たちは多分気づいてなくて、最後にはいつのまにかカタストロフが訪れると言う(いつもの)パターン。巻き込まれてるのね。
あとこの作品の主役は、舞台ともなっている、日本のどこにでもある陰惨な地方都市。都市と打とうとして地方土地とタイプミスしちゃったけど、案外この造語の方がしっくりくる。そんな田舎都市。
Posted by ブクログ
ヨス!!!!!
最後の最後まで、救いなさすぎだな。
これはほんまに、「無理」だ。
唯一、無理な状況から解放されそうな女子高生でさえ、この大騒動を機にきっとあれやこれやと週刊誌に書き立てられ、街を追われることになるのだろう。
とすると、無理に無理が重なって、本当に救いがない。
この子には少しでも明るい未来が訪れることを願うばかり。
そして最後まで、空は曇天だった。
Posted by ブクログ
上巻の疾走感、さいこーでした。
いろんな事情を抱えた、いろんな人たち、人間臭くて好きだわー。
下巻の後半の収束部分で一気に失速したように思えてもったいないわ。
その収束の先を描いてほしかった。
Posted by ブクログ
東北のゆめの市に住んでいる5人。
公務員の相原順一、出向先のゆめの市での仕事に嫌気がさし早く県庁復帰したいとやる気もない。
普通のJK久保史恵は連れ去り監禁される。
訪問販売詐欺の加藤裕也は過去の暴力団OBだったことで大怪我、先輩の殺人にまで付きあわされる。
私服保安員の仕事を解雇された堀部妙子は新興宗教に。
市議の山本は自身の成功しか考えない。
えーっと思いながらも自分に当てはまるところもあったり身近な人を思い浮かべたり。多数の人が思いそうな黒いところを突いているので、胸がすく。どの人も置かれた場所で頑張ってるのに上手くいかない。そうだよね。
最後はもっと驚く結末かと思ったけど、特に絡むこともない。個性的な人揃いなので同じメンバーで続きがあれは面白いのにな。
何も考えず純粋に楽しめた。
Posted by ブクログ
途中までは最高に面白かった。同じ街に住むという共通点しかなかった彼らが、いつどう交わるのか、そしてそれぞれに抱えた難題をどう乗り越えるのか。
手に汗握りエンディングを読んでガッカリ、何とも中途半端で気持ち悪い終わり方か。
Posted by ブクログ
合併によって生まれた地方都市「ゆめの市」で繰り広げられる5人の男女の人間模様。
どこにでもありそうな地方の問題を浮き彫りにし、そこで生活する人々をリアルに描いた作品です。
生活保護の不正受給や詐欺まがいの仕事、政治家の癒着や若者の引きこもりやなど、現代が抱える問題を取り上げながら、5人の男女のそれぞれの目線で物語が進んでいきます。
毎日普通に生活しているようでも、いつの間にか巻き込まれている負のスパイラル。
そして一旦坂道を転がり始めた人生に歯止めをかける術もなく破滅の道へ進んでいく人たち。
現代の日本の縮図ともいえる「ゆめの市」で起こる出来事は、この先の日本の暗い未来の象徴なのかもしれませんね。
ラストは解釈の仕方を読者に丸投げされた感が否めないけど、私は奥田ファンなので星4つです。すみません。
Posted by ブクログ
最後もうちょっとそれぞれの行く末をはっきりさせて欲しかったな、、
まぁでもあぁいう曖昧な終わり方の方が読者側が色々解釈出来ていいんかな。
自分的には不完全燃焼、、
Posted by ブクログ
因果応報
という言葉がぴったりだと思った
やったことはやり返される
見て見ぬふりをすると
同じ問題が無視できない状況で
突きつけられる
無理という正しい正義を否定する言葉は
もっと大きくなって
自分では対処できない
更に無理な状況になるのか、
と思った
Posted by ブクログ
評価は4.
内容(BOOKデーターベース)
真面目に働くことの馬鹿馬鹿しさを知り、自分の地位が脅かされることにおののき、信じていたものには裏切られ…。5人の男女が心の軋みに耐え切れなくなった時、それぞれの人生は猛スピードで崩壊してゆく。矛盾だらけのこの国を象徴するかのような地方都市・ゆめのを舞台に、どん詰まり社会の現実を見事に描き切った群像劇。
最後偶然が重なって1つになる・・・ごちゃごちゃで助かるべき人が残ったのか?意味がわかなくなった。う~んモヤモヤ
Posted by ブクログ
際立った特徴もない地方都市ゆめのに暮らす男女5人。
市役所職員、女子高校生、暴走族あがりのサラリーマン、信仰宗教にハマる万引きGメン、そして市議会議員。
それぞれが、それぞれに絡み合いながら、ドンドン堕ちていく…。その様子は、まるでドキュメンタリーを見ているかの如く現実的で、さすが奥田英朗!面白い!
誰もが地方都市に責任転嫁するが、全員が自分のことしか考えていない。
Posted by ブクログ
救いがない物語。日本の地方都市のことを考えさせられるよね。でも実際地元で優秀だった子は都会に出て一流企業で働いていて、そうでない子は地元でそれほど給料も良くなさそうなところで働いている。救いないけど現実と近い話なんじゃないかなと思いました。
Posted by ブクログ
さびれた地方都市の冬。寒く、暗い、陰鬱とした雰囲気を出すのに効果的に雪が使われている。
まさか、その雪が原因でラストの集合につながるとは!
私は雪国暮らし経験者ですが…。
冬は確かに寒くて暗くて不便だけど、何気ない場所の雪景色の美しさもありますよ。
Posted by ブクログ
143ページあたりからやっと話が進んできた。
この5人はどうして悪い方の選択ばかり選ぶのだろう?あ〜ぁ… でも、居そうで怖いです。
新興宗教のおばちゃんとかね。
最後まで読んで思ったのは
「無理〜!」と叫ぶのは 警察官の方々ですね
Posted by ブクログ
下巻になり、ようやく話が進んできた。
どの登場人物も、人生で一番大変な経験をしているけど、最後はなるようになったというか、これで良かったのでは。と思う。
現実に、こういうことはあるんでしょうね…
田舎での暮らしって、どんな感じなんだろう。
この本みたいな暮らしばかりではないけど、脱出不可能感がすごかった。
タイトル通り、色々、無理だった!
Posted by ブクログ
地方都市の訳ありな人々の群像劇。少しずつ悪い方へ悪い方へと転がっていく。ラストはあくまでもきっかけで、その後に控えているであろう展開はきっと明るくない。後半は人が死にすぎてないか。。
Posted by ブクログ
奥田英朗の群像劇小説。
特色のない中途半端な地方都市にくらす、
残念な人間たちを描く。
離婚した公務員つとめの男。
生活保護のケースワーカーの仕事のストレスから買春に走る。
都会を夢見て真面目に勉強する女子高生。
途中で引きこもりの男に拉致換金される。
唯一の単なる被害者かな。
偽の電気保安器を、一人暮らしの高齢社宅に訪問販売で売り歩く元ヤン男。
金を掴むため仕事に精を出すも、
元ヤンならではのトラブルに巻き込まれる。
スーパーの万引き保安員の仕事にハマる中年おばさん。結婚はしておらず、万引き犯を捕まえた際の優越感に浸るのが唯一の楽しみだが、途中で新興宗教にハマりトラブルに巻き込まれる。
親から地盤を引き継いだ地方議員。
一応地方のための仕事もして、一応のビジョンもあるが、自らの利権の確保もずっぽり。先代からのヤクザとのつき合いもあるが、最近の利権追求の流れ、市民団体の突き上げへの対応を誤り、堕ちていく。
このメンバーを軸に物語は進むがこれ以外にも残念なメンバーがてんこ盛りで登場。だが今の日本の状況をみると、こんな人間たちが居ても何ら不思議ではないと思えてくる。
中央集権と個人主義、
チェーン店進出による地元産業の破壊。
地方の衰退から起こる格差や断絶がテーマ。
作中で買い物狂いの議員の妻が、
「地方には知識層も富裕層も存在しない」
と、自分を棚に上げてぼやくが、
これは事実そうなりつつあるのかもしれない。
物語にでてくる唯一の富裕層は汚職地方議員と公務員。それと詐欺商品を売り歩く会社の社長くらい。救いがない状況。
最後の終わらせ方はちょっとご都合主義が過ぎて好きじゃなかったけど、テーマ的には興味がもてて面白かった。
奥田英朗好きなら間違いない。
Posted by ブクログ
徐々に何もかもがうまくいかなくなっていく、ゆめの市の人々。
こういう人たちって、今の日本にはたくさんいるんだろう。
そして、その結末とは…
かなり気の重い話だったけど、目が話せないものがある。
2018.8.17
Posted by ブクログ
真面目に働くことの馬鹿馬鹿しさを知り、自分の地位が脅かされることにおののき、信じていたものには裏切られ…。5人の男女が心の軋みに耐え切れなくなった時、それぞれの人生は猛スピードで崩壊してゆく。矛盾だらけのこの国を象徴するかのような地方都市・ゆめのを舞台に、どん詰まり社会の現実を見事に描き切った群像劇。
Posted by ブクログ
「ゆめの」と同じような何もない地方都市に住んでいる私には、あの鬱屈した風景に哀しいくらいの親近感があったのですが、下巻に入ってから状況は一変。
さすがに誘拐や殺人とあれば、その親近感も吹っ飛びましたわな。
徐々に破滅に向かう5人の物語。この結末をどう締めくくるのか非常に気になりましたけども、はっきりとした結末は無く。その先のそれぞれの姿は読者のご想像にお任せします的な終わり。でも確かにその後の5人の姿を想像すれば、はっきりと目の前にエンディングは浮かんでくる。当然ハッピーエンドでは無いものの。
Posted by ブクログ
元々、幸福感が薄い人々が、ズルズルと不幸になってゆく。
映像的には青空がない、話の中では雪が降っているが、眩い白というよりは、灰色感がある。
見ていて楽しさを全く感じられないが、なぜか読み続けることができる。作者に嵌められた感がある。
Posted by ブクログ
地方都市の課題を風刺した社会的な作品。舞台の天候も、登場人物たちの心情も、全てが重たい曇り空で、読んでいる間の気分の悪さは必至。
人間の身勝手さやそれを生む地方都市のシステムが上下巻通してローテンションで描かれ続けるが、不思議と飽きず、ページを繰る手も止まることなく、一気読みできる。
この薄暗い内容でテンションの高低もないのに飽きさせないのは、さすが奥田さんの作品と感服しました。
ただ、ラストの事件は、わたしにとっては違和感。これからも彼らや都市自体は救われることなく生きる他ないと思わせることはいいのだけど、あの事件の偶然性がフィクションの感覚を必要以上に強めている気がする。