奥田英朗のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
文庫化された2004年に買って読んで以来、本棚に大事にしまっておいたのだが、久々に再読。読み始めると止まらなくなる。やはり素晴らしい。
青春小説としての甘酸っぱさと、昭和最後から平成の最初にかけての10年ちょっとの時代の記憶が、二重のノスタルジーに浸らせてくれる。
1978/4/4キャンディーズ解散コンサート
1979/6/2 江川卓初登板
1980/12/9 ジョン・レノン暗殺
1981/9/30 オリンピック開催都市名古屋落選
1985/1/15 新日鉄釜石7連覇&北の湖引退
1989/11/10 ベルリンの壁崩壊
自分は、著者や主人公より一回り下の世代で、ほぼ小学生から高校生くらいまでの時期に当たるけど、これ以外にもたくさん出てくるあの時代の出来事や事物、そして携帯やネットはなかったけど、どこか豊かで安心感のあった時代の空気を思い出す。
ベルリンの壁が崩される様子をテレビで観ながら、「東西冷戦も終わったんだな」「世界はこれからが本番ってことよ」と語り合う。当時はホントそんな高揚感に溢れてたんだよな。
上京して都会に翻弄される様子や、ちょっと変わった長身美女との思いがけないデートでのやり取り、可笑しくって愛おしい。大学サークルでの異性との微かな恋愛や仕事を覚えて後輩にきつく当たって諌められる件りなど、誰しもが思い当たる経験の語り方がうまいなあと思う。
昭和のあの時代にも、先の知れぬ未来を抱きながら奮闘していた若き日々にも、もう二度と戻ることはできない。だからこそ眩しい。 -
購入済み
家族の機微を捉えた話
些細なことからことから変化する家族の態度、心境を捉えていて、本当に日本の家族で起きてることをテーマにした小説だった。話の終え方もこの先は読者のご想像にお任せしますと言った感じで面白かった。
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Posted by ブクログ
ネタバレ反政府主義の過激な思想を持つ父親に振り回される主人公二郎(小6男子)の話。
前半は中野で暮らす二郎が、ヤンキーに絡まれたり父親が教師に迷惑かけてたり、父親の居候のアキラおじさんに面倒なこと頼まれたりするので、ひたすら二郎が気の毒。
一郎(父)が聞くと激怒しそうだけど、こんなお父さんの元に生まれたのが心底可哀想。
一郎は作家?らしいけど、どう見ても稼ぎが悪そうだし、思想が傾きすぎてて普通の家庭訪問すらままならない(教師にめんどくさい議論を持ちかける)。
自分だったら本当に嫌だ…
なんやかんやあって一家は西表島まで跳ぶことになる。これがサウスバウンドかと、なるほどねーってなるのが前半。
後半は西表島での文明から逆行する暮らしぶりから始まり、ほとんど貰い物で飯を食い、電気もテレビもなくて、トイレは汲み取り式という、現代の小学生はカルチャーショック通り越して発狂しそうな展開。近所には本屋もゲーセンもなんもない、遊ぶ場所は海くらい。
しかも親は転校手続きを進めてくれない(そーゆー思想なので。)もうこれは虐待なのでは?ってくらいハラハラする。
でも途中から登場する、島の伝説の英雄アカハチが、父の姿とリンクし始めて、暴れる父がだんだんヒーローに見えてくるからすごい。
なんやかんやあって、最後はアカハチの物語を二郎が音読して終わるのだけど、そうかー、アカハチは大昔は英雄だけど、現代ではただの非常識人なのね。
理不尽な支配に立ち向かうアカハチと、政府の支配に慣れ切ってる世間に歯向かう一郎の姿はそっくりリンクする。主人公は二郎じゃなくて一郎だったのか。なるほどなるほど。
となると、前半の「もうやめて…」ってくらい現代社会と相容れない過激思想の父一郎の見え方が変わってくる。
一郎は現代に生まれてしまったアカハチだったのかな。そりゃ今の社会と合うわけないわな。生まれた時代が間違ってたなぁ。
私は一郎みたいな父親は本気で御免被るって感じだけど、今の社会や暮らしに何の疑問も持たないこともまた危険だなって思う。
支配されると居心地が良いし、ある程度の安心と安全を得られるので、疑問をもったり歯向かう考えはあんまりないけど、そうやって飼い慣らされていると、いつか痛い目みるかもね、という教訓になった。 -
購入済み
内容を諺に凝縮するならば、「人の振り見て我が振り直せ」。
患者は、伊良部一郎という自由人に接することで、自ら大きな気づきを得る。
読者も笑いながら呆れながら、気づきを得ることだろう、何かしら大事なことについて。 -
購入済み
読みやすく面白い
ドクター伊良部シリーズ第1巻です。
精神科の医師伊良部が、様々な症状の患者さんと関わっていくお話ですが…
精神科ときくと、深刻な思いは無しに思われがちですが、内容はめちゃくちゃ明るい愉快な話です。
名医?迷医?であり、めちゃくちゃ変人でどこか愛嬌のある伊良部が、様々な方法で患者さんを癒していく短編集です。
考えてした治療なのか、結果的によかったのか、謎な部分もありますが…読後感は爽やかでスッキリします。
私にとって初奥田英朗さんでしたが、とても好きな作家さんになりました。
おすすめします! -
Posted by ブクログ
ネタバレ『オリンピックの身代金』上・下巻
先日読んだ『罪の轍』にも登場していた
警視庁捜査一課5係の面々
数年前に読んだ
『オリンピックの身代金』にも登場してたということなんだけど
もの凄く面白かったという以外
殆ど記憶に無かったので、意を決して再読
本書も、文庫で上下巻
新刊に至っては、2段組みの分厚いハードカバーだったなぁーと
長い道のりに、少し腰が引けたけど…
結果、再読して正解!
えぇー!こんな結末だったっけー⁈
私の記憶とは、こんなモンです…笑
昭和39年10月10日に
アジア初のオリンピック開催を控えた日本
敗戦から約20年が経ち
先進国の仲間入りが果たせると
日本中が湧き上がる
主人公である、島崎国雄は
東京大学で、マルクス経済学を学ぶ大学院生
ある日、秋田の貧村から
東京に出稼ぎに来ていた兄の死の知らせを受け、両親に代わって身柄を引き取に行く
別人のように変わり果てた姿の兄と対面し
ただ勉強ができると言うだけで
違う生き方をさせてもらっていたという現実に絶望を感じる
地方から、出稼ぎをせざるを得ない
プロレタリア層の実態を、体験すべく
工事現場での過酷な肉体労働を始める
全国から集められた、出稼ぎ労働者の中でも
ヒエラルキーがあり
賭博やヒロポンの売買が横行している
最下層の労働者内ですら
搾取が行われている現実を目の当たりにした国雄は
「東京だけが、富を享受するなんて、断じて許せない」と
オリンピック開催を阻むべく、一人テロ活動へと突き進む
当時、鳴りを潜めていた爆弾魔「草加次郎」の名前を使い
都内各所で、爆弾を仕掛けるも
全く記事にも話題にもならず
諸外国や、オリンピックムードに沸き立つ国内に対して
報道規制が掛かってるコトに、更なる苛立ちを覚える
公安、警視庁、全学連、やくざなど、全てを敵に回し
運を味方につけて、緻密な計画を
着々と実行していく国雄
そんな中
とても印象的だった、国雄の独白
「いったいオリンピックの開催が決まってから、東京でどれだけの人夫が死んだのか
ビルの建設現場で、橋や道路の工事で、次々と犠牲者を出していった
新幹線の工事を入れれば、数百人に上回るだろう
それは、東京を近代都市として取り繕うための、地方が差し出した生贄だ」
なんともやり切れない気持ちにさせる
オリンピック開会式当日
2回目の身代金受け渡しから
最後の爆弾を仕掛ける場面では
手に汗握る、刑事との攻防戦
勧善懲悪を嫌い、作品内では
決して人を裁かないコトをポリシーとしてる著者らしい展開で
登場人物全ての事情を、余すコトなく丁寧に描いている
本書は、もちろん犯罪小説ではあるものの、細かい時代描写も秀逸
刑事と公安の確執
とか
当時のBG(ビジネスガール)の生態
とか
地方と東京の激しい格差社会
とか
若い夫婦の文化的生活
とか
当時のカルチャーも、ふんだんに散りばめられているので
どのシーンをとっても、充分に楽しめる
2020年
56年振りに、日本で開催される東京オリンピック
個人的には、全く思い入れはありませんが
開催直前に、本書を再読できたコトに関しては
なかなか感慨深いモノがあるなーと
#オリンピックの身代金
#奥田英朗
#読書好き