奥田英朗のレビュー一覧
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失敗作のない奥田英朗の、現時点での最高傑作と断定して差し支えないのではないか、と思わせられる本だ。
昭和という時代を、昭和元年生まれの4人の主人公の群像で描き切る。
4人が4人とも個性と情熱にあふれ、理智も併せ持ち、何より私よりも公の方が大きい生き方を貫く。作者の言葉で言えば「国士」なのだ。
レイモン・アロンが石原慎太郎に語ったと言われる「今の若者は気の毒だ。青春を青春にする3つのものが欠けている。戦争と貧困と命を懸けられる思想と」という言葉を思い出した。
4人の主人公には、揃って「命懸け」の原体験があり、それゆえに大切なもののためには身体を張ることにためらいがない。この実に魅力的な人物たちを -
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ネタバレ注!
結末に触れています。
まだ読んでいない方は、以下は絶対読まない方がいいと思います。
下巻も淡々最後まで淡々で、お話としてはやっぱり面白くなかったかな?(^^ゞ
面白くなかったにも関わらず、★を5にした(上巻は★3つ)のは、最後の大捕物の中にさらっと著者による粋な計らい(救いと言った方がいいかな?)があったから。
警察署全体から邪険に扱われ、家族かも疎まれ、さらには失明するかもしれないと怯える芳邦だけど、ずっと娘を信じていたその思いが正しかったことが、よりによって札付きの犯罪者である池田の口からさらっと出てきた時は、思わず「わっ! すげっ!」と口から出てしまった(^^)/
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Posted by ブクログ
ネタバレ群馬と栃木の間で起きた連続殺人事件。10年前の未解決事件と同一犯なのか。両県警と10年前の遺族、メディアの群像劇。かつて捜査に関わった人物や遺族の捜査から、一人の有力な参考人が浮かび上がる。
両県に馴染みがないからか、捜査員たちがどの県警に所属し、だれと上司部下の関係なのか、最初はこんがらがるが、そんなことはどうでもよくなるほど、ぐいぐいと読ませる。元捜査員が動く、出版社に雇われた学者が警察に信頼されるほど重要な役割を担うという少しリアルさに欠けるのも、どうでもよいくらいにおもしろいし、リアルさを損なわない。
どうやって逮捕、起訴するのか。この先が非常に気になる。無駄なページがないほど、密度が -
Posted by ブクログ
犯罪小説であってミステリー小説では無いことがポイント。
じわじわと事件の真相に近づく形が、物語の一員になった感覚になりどんどん読み進められる。
上巻は、相次ぐ事件とあきらかに怪しい容疑者。
怪しい人物3人の中の誰が真犯人なのか…全員怪しい。
【あらすじ】
群馬県桐生市と栃木県足利市を流れる渡良瀬川の河川敷で相次いで女性の死体が発見された。
十年前の未解決連続殺人事件と酷似した手口に、街は騒然となる。
かつて容疑をかけられた男。取り調べを担当した元刑事。
娘を殺され、執念深く犯人捜しを続ける父親。
若手新聞記者。一風変わった犯罪心理学者。新たな容疑者たち。
事件を取り巻く人々の思惑が交錯するな -
Posted by ブクログ
3部まとめての感想。第2次世界大戦を含む激動の「昭和」という時代を、4人(8人)の主人公たちの生き様を通してダイナミックに、詳細に、鮮やかに描いた素晴らしい作品。多くの人にだいだい読み継いでいって欲しいと思う。
現代の日本は、政治にしろ文化にしろ経済にしろ、「敗戦」というとてつもなく大きな出来事抜きには語れない。そういう意味で、「昭和」という時代は、現代日本や日本人の大きな基礎を形作った時代なのだと思う。当時の各地方・各階級の人々の暮らしや思想を幅広く感じることができ、現代の日本人の国民性の基礎に触れることができる作品だと思う。
「普天を手に入れる」とは何か、読後の爽快感がたまらない。ページ数