奥田英朗のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
面白かった!
昭和の東京オリンピックに湧く、高度経済成長の頃の日本。先日読んだ『罪の轍』と同じ頃の話でした。
オリンピックを成功させるために、安い賃金で奴隷のように働かされていた人夫。ほとんどが田舎から出稼ぎに来ている人たち。東京は著しく発展していくのに、田舎はその恩恵を受けることなくとても貧しい生活のまま。それに疑念を抱いた主人公が犯行を企てる。
真面目さや家族への優しさが、方向を間違えるとこんな事になってしまうのかと切なくなったけれど、主人公の思いには共感できるところも。
警察の捜査も興味深く、電話さえ稀な時代にどんどん犯人を追い込んでいく捜査は読んでいて息を呑みました。
大きなこ -
Posted by ブクログ
面白かった!やはり奥田英朗はいい。
この家族シリーズは基本的に良い人ばかり出てくるので、心が疲れない。疲れないどころか暖かくなって癒される。
「手紙に乗せて」は突然死で母を失った主人公が憔悴しきっている父に戸惑う場面から始まる。主人公の周りには、父に同情し気にかけてくれるおじさんたちと、自分の世界で忙しく他人の不幸はすぐに忘れてしまう若者達の2種類がいる。この本のいいところは、そういう若者達を決して悪者にはしないところだ。年を重ねるとは、いろんな悲しみを知ることであり、悲しみを知っているおじさん達は他人の悲しみにも敏感だが、まだ経験が少ない若者達は自分のことでいっぱいいっぱいになる。それはしょ -
Posted by ブクログ
大好きな奥田さん。
読んだ気がするものの
結末を思い出せず、
とにかく最後まで読んだ。
珍しく、なかなか展開が起こらずに
日常が描かれていっていた。
中盤過ぎて、加速し始めると、
一気に乗っていくね。
特に、ことが起こったときの
スリリングな描写の仕方が、さすがですわ。
圧倒的な筆致って感じ。
ラストの玉突き事故のシーンも、圧巻。
まさかここで集結するとは。
「無理」ねえ。
無理やりなんとかかんとかやり過ごしてきて、
でも最後には無理がたたって、
ってところでしょうか。
引き返せるポイントなんかは
誰にもあったんだろうけどね。
無理に巻き込まれてしまったりね。
こういう出来事も
-
Posted by ブクログ
小説家の凄みを感じた。冴えない地方都市を舞台にした閉塞感溢れる群像劇。これだけいろんな立場の人のいろんな生活ぶりや感覚、感情を、こんなにリアルに表現できるその視点はいったいどこからくるのか?登場人物があまりにリアルで、巻き起こる出来事も千差万別なのに、どれもがまるで自分が体験していることのように感じられてしまう。今更ながら、本物の小説家ってすごいんだな、と感じ入った。拐われた女子高生、拐った引きこもり、役所勤めの公務員、市会議員、詐欺紛いの訪問販売員、新興宗教にはまる保安係、彼らに訪れる終幕のカタストロフは、重力崩壊した天体がブラックホールに転移する時の様を見せつけられているようだった。
最初 -
匿名
ネタバレ 購入済み大学生がオリンピックを人質にし警察を相手に脅迫事件を起こす物語。
主人公の島崎は異常な犯罪を重なるが、変わり者でどこか憎めない。
ヤクザの組事務所に乗り込んでいく場面はヤクザもたじたじになっていて笑えた。
上下からなる長編だが、続きが気になりあっという間に読み終わった。