無料マンガ・ラノベなど、豊富なラインナップで201万冊以上配信中!
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。
※期間限定無料版、予約作品はカートに入りません
Posted by ブクログ
1964年10月10日東京オリンピック開会式、これより体育の日として祝日となる。
全ての日本人が誇らしく語るオリンピック開催に、ひとり立ち向かう島崎の様子はまるで風車に挑むドン・キホーテのよう。
現代世界で起こっている“テロ”と違って、島崎の起こした「テロリズム」は大きな時代のうねりに逆らう覚悟を持ったささやかな抵抗。
「人の上に立つということは、一等謙虚であらねばならないのだが、今の浮かれた日本でそれを自覚する者はいない。資本主義を盲信し、陽炎のような足場のない繁栄に、集団で酔っている」……60年たった今も変わらない。
ともかく、東京オリンピック開会式は無事に終わる。だから、ミステリーではない。
1964年当時の空気を見事に描き、さまざまな立場の者たちの群像劇が、澄み渡った青空の下で、華やかなオリンピックの舞台の陰で、繰り広げられる。
読み終わったあとも少し名残惜しいほど、感慨深い物語だった。
Posted by ブクログ
〈「小生 東京オリンピックのカイサイをボウガイします 近日中にそれが可能なことをショウメイします ヨウキュウは後日追って連絡します 草加次郎」〉
警視総監宛に届いた脅迫状が本物だと示すように起こったダイナマイトを爆破事件が警察幹部の私邸で発生する。時は東京オリンピックを目前に控えた昭和39年。オリンピックの妨害と引き換えに、多大な身代金を得ようとした男は、何故、そんな大それたことを起こそうとしたのか。
ということで本書は昭和の半ばを舞台に、ひとりの犯罪者の肖像を描いた犯罪小説の大作です。分量的には上下巻合わせて800ページくらいありますが、そんな長さは感じない一気読みできるタイプの作品ではないかな、と思います。
東大の大学院でマルクスの研究はやっているが、学生運動とはすこし離れたところにいる〈犯人〉の島崎国男がどういう経緯で爆破テロを起こそうと考えはじめたのか、が現在と過去の時系列を行ったり来たりさせることで明らかになっていく構成が印象的でした。兄の死に対して感じているそこはかとない負い目や、後半にあたる部分なのでぼかしますが、初めて大きな罪に手を染めるシーンや相棒的な存在が啖呵を切って友情を感じさせるシーンなどがとても好きで、気軽に共感できる動機でも人物造形でもないのに、魅力的に感じて、心を寄り添わせてしまいたくなる、そんな作品です。
Posted by ブクログ
吉川英治文学賞
さすが吉川英治文学賞受賞作。奥田英朗作品は伊良部シリーズなど軽いものしか読んでいなかったが、こちらの方が好みだった。
2度目の東京オリンピックとは違い、1964年の東京オリンピックは、敗戦から復興した日本を全世界に見せるということが全国民の悲願となっていた。誰もが東京オリンピックのために、努力して、どんなことをも納得してしまうという、今では考えられない時代だった。外国人に恥ずかしいところを見られたくないと、東京中で工事が繰り広げられ、新幹線、モノレールなどオリンピックに合わせて開業した。その犠牲になったのが、工事に従事する東北出身の貧農たちだった。そこには人権などなく、それが主人公の犯罪へと繋がっていくのだった。
たまに、こんな言葉遣い、この頃したかなと思うところもあったが、概ね当時の空気感が色濃く漂っていた。
Posted by ブクログ
1964年のオリンピックは聖火リレーの見物客として、父の肩車で眺めている写真の記憶
開会式や競技の鮮やかな光景が本当に見たのか、記憶が上塗りされたのかもはっきりしない
その鮮やかさや晴れがましさの裏にさまざまな人間の事情、思惑、犠牲があったんだろうと思わせる作品だった。
その時代、時代の自分の立ち位置からしか、思いを馳せることができないけど、本当は人間の数だけ、嬉しいこと、楽しいこと、辛いこと、悲しいことがあると改めて思った。つい忘れて瑣末な身辺に囚われる自分が情けない。
以下は後日の追加です。
先日、クイズ番組の中で昔の「お宝映像」なるものがあった。 東京タワー建設時の鳶の人たちがまったく命綱なしで移動したり降りて来たりしていて、それを見て出演者たちが、凄いとか怖いとか騒いでいた。 ああ、こういうことか、私も前ならそういう感想で終わってしまってた。だけど、今なら、「この時代この人たちの命がいかに軽んじられていたか。たまたま、誰かが犠牲になっても、(なったかもしれないが、)人知れずうやむやにされていたんだろう」と想像した。
その映像と出演者のはしゃいだコメントが、今だに心にわだかまっている。
Posted by ブクログ
面白かった!
昭和の東京オリンピックに湧く、高度経済成長の頃の日本。先日読んだ『罪の轍』と同じ頃の話でした。
オリンピックを成功させるために、安い賃金で奴隷のように働かされていた人夫。ほとんどが田舎から出稼ぎに来ている人たち。東京は著しく発展していくのに、田舎はその恩恵を受けることなくとても貧しい生活のまま。それに疑念を抱いた主人公が犯行を企てる。
真面目さや家族への優しさが、方向を間違えるとこんな事になってしまうのかと切なくなったけれど、主人公の思いには共感できるところも。
警察の捜査も興味深く、電話さえ稀な時代にどんどん犯人を追い込んでいく捜査は読んでいて息を呑みました。
大きなことを成し遂げるには、それを底辺で支えてる人たちがいることを忘れてはいけないと思った作品でした。
※アプリの閲覧環境は最新バージョンのものです。