奥田英朗のレビュー一覧
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久々の伊良部シリーズ
精神科医の伊良部先生と看護師のマユミちゃんのコンビは相変わらずで、あぁそうそうこんなんだったなぁと思い出す。
調べてみると前作の町長選挙から15年近く経っての続編だったようで、もうそんなに経つのかと思う。
1作中の伊良部とマユミちゃんは変わらず魅力的で、この15年で自分自身に色々あって不安障害に近い状態にもなったりして、そんな作中の患者さんに共感を覚え、伊良部先生のデタラメな様で核心をついている「死にはしないんだから」とか「恥をかいてみれば良いんだよ、周りは明日には忘れてるよ」とかそんな言葉が心に刺さる。
内容自体は気軽に楽しく読める短編が5本あり、どれも面白く伊良部 -
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『小説現代』2023.7(一冊の雑誌に全編が掲載されたってこと? こんな鈍器本なのに?)
昭和元年生まれの4人がいよいよ絡みあう。
第一部よりも私には面白く読めたが、4人の中でも好きな人物と苦手な人物が出てくる。4人のパートが交互に出てくるのだが、苦手なパートが回ってくるとがっかりする。私の場合、ヤクザの子どもである四郎がいつも道を踏み外すと、あーあまたかと思ってしまう。頭もいいし、普通に生きればいいのにと。そうなったら物語にはならないけど。
それにしても、戦中戦後のなんと混乱していたことか。
この4人がどういう道を進むのかすぐにでも読みたいのだが、第三部は12月17日発売とか。 -
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奥田英朗『リバー 上』集英社文庫。
北関東連続幼女誘拐殺人事件をモデルにしたような陰惨な事件に翻弄される人びとを描いた犯罪小説である。もっとも本作では被害者は若い成人女性になっているようだ。
冒頭からストーリーに飲み込まれていく。そんな面白さの犯罪小説である。昭和38年に起きた『吉展ちゃん誘拐事件』をモデルにした犯罪小説の『罪の轍』に匹敵するか、それを凌駕する面白さである。
前半から描かれる10年ぶりに群馬の工場で期間工として働く刈谷文彦という32歳の男は如何にも怪しいのだが、これは読者のミスリードを誘う仕掛けだろうか。それとも……
群馬県桐生市と栃木県足利市を流れる渡良瀬川の河川敷 -
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学生の時、私は日本史が得意でした。特に幕末は大得意でした。でも、幕末については、ほぼ教科書を読んだことはなかったのです。
どこから知識を得たのかと言うと、司馬遼太郎先生の「竜馬がいく」でした。ま、史実通りかというと、たぶんそうでは無いのでしょう。竜馬の実像はいろいろ言われてますしね。
しかし、小説自体は時代考証、事件も時系列を追っているので、読んでいるだけで歴史書を1冊読んでいるのと同じです。事実、司馬遼太郎先生は幕末の歴史書をトラック1台分取り寄せて、幕末については勉強して、「竜馬がいく」を書きあげたらしいですから。
ともあれ、「普天を我が手に」の話。
今年は、昭和100年だそうです。
考 -
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ネタバレ20251015
初の奥田英朗さん、そして分厚さに圧倒されましたが読み始めたらあっという間でした。ミステリーとらいうよりヒューマンドラマな感じしますね。
昭和38年ということで自分の父が生まれた時代が舞台で、今とのギャップを感じられるのがおもしろかったです。まずお金の価値が違うし、携帯はおろか一家に一台電話のある時代じゃない。戦争から復興し、欧米の仲間入りをしようとがむしゃらだった日本、みたいなものを感じて、これが今に続いてるのかーと思ったりしました。
衝撃だったのは、身代金引渡しの時間変更を一斉に知らせられないということ。え、携帯あるじゃん?と思いましたが…ないんですよね。
昭和の警察 -
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ネタバレ凄い作品です。
第1部の登場人物たちも魅力的でしたが、
第2部はその子どもたちの話になり、
親たちの存在感はすっかり薄いものに。
一気に話が進んで急激に面白くなりました。
第2部は太平洋戦争の頃の話が主軸ですが、
戦場や空襲を受けた東京などの描写がとんでもなくリアルで生々しいです。
戦時、戦後の日本人の生活のリアルがそこにあります。
戦争のを学ぶ歴史的資料としても価値のある作品と思います。
今まで、太平洋戦争については教科書や映画、小説で目にしてきましたが、当時のあらゆる立場から見る状況が本当にリアルです。
巻末の参考資料の多さを見ても、
本当に起こった事なのだとわかります。
今回の第2章 -
Posted by ブクログ
北海道の過疎の町で理髪店を営む向田康彦が主人公。今はもう高齢者ばかりの町に、札幌で働く息子が「会社を辞めて店を継ぐ」と帰ってくる。
いくつかの章では狭い社会の中で数多くの難題が降りかかる。若者らと親世代での開発への意見相違、町に中国人の花嫁が嫁いでくる話。美人の若い女がスナックを開き、男たちが通い出す話。映画のロケが町で行われることになり、町民がエキストラで何人も出演することになる話。
最後の話は町出身の若者が東京で事件を起こし逃げ帰ってくる話。
実はこの小説は2022年に映画化され、主人公の向田康彦役は高橋克実が演じている。配信で観てびっくりしたのが、映画の舞台は北海道ではなく福岡県であ