あらすじ
九野薫。36歳。本庁勤務を経て、現在警部補として所轄勤務。7年前に最愛の妻を事故で亡くして以来、義母を心の支えとしている。不眠。同僚の素行調査を担当して逆恨みされる。わずかな契機で変貌していく日常を絶妙の筆致で描く犯罪小説の白眉。
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Posted by ブクログ
内容(ブックデータベースより)
静かに見える毎日の暮らしに、
隠されている極限状況。
奥田英朗は、新人の頃から凄い!
夜の冷気が空から降りかかってくる。
地面も九野の体温を奪おうとしていた。
死なないでくれよ。恭子のことを思った。死ぬことはない。
自分で死ななければならないことなど、人生にはないのだ。(本文より)
どうして自分が、こんな目に。
夫への疑念が深まり、いたたまれない恭子は、仲間に誘われた会社との「団体交渉」にのめりこんでゆく。放火の容疑者を追う九野は、容疑を確信しつつ逮捕にこぎつけられない。心がぎりぎりまで追い詰められた二人の中で、何かがついに決壊する――。日常に潜む極限状況を鮮明に描く傑作。
令和7年11月25日~27日
Posted by ブクログ
登場人物みんなどこかおかしい…!?
子どもを思うあまりの恭子の暴走も、現実を受け入れられない九野も、坂道を転がるような祐輔も、共感はできないけど怒涛の展開で思わず一気読みしてしまいました
子どもたちが1番気の毒だけど、決して悲観的な終わり方ではなく、読者が未来を想像できるだけの余韻があるのが良かった
Posted by ブクログ
むっちゃ面白かった。
ちんけな2つの事件が最後の最後でいきなりシンクロして……
えっなんでそんなことになるの、とわけわからないでいるうちに終わってしまった。
結果みんな生き残ったのはいいけれど、あまりにも煮え切らない終わり方が残念。
Posted by ブクログ
最後の坂を勢い良く転げ落ちるような展開に唖然としながら、人は誰しも不安定な細い板の上を必死にバランスを取りながら生きているのだろうな、と考えた。思っていたほどバッドエンドでもなく、救いがほの見えるラストで一安心。及川家の子どもたちにとっては最悪な結果かもしれないが。あれだけ家庭を守ろうと奮闘していた恭子が、あっさり吹っ切れたように行動するラストだけは解せない。恭子にばかり触れているが、九野のパートももちろん面白かった。
Posted by ブクログ
奥田英朗『邪魔 下』。
夫・茂則への疑惑が高まる恭子。パート先の待遇改善の団体交渉にのめり込んでいく…
放火の容疑者を追う九野。確信しているものの、逮捕にまでは至らない…
一方で、花村の逆恨みから、窮地に陥る九野。
恭子がそこまで…
そこまでしなくても…
幸せな普通の家族が、夫のちょっとした出来心から、地獄に…
子供たちが不憫でならない。
夫に自首させるべきだったのでは。
恭子の豹変、そしてまだ行方知れずとは。
九野にとってはこれでよかったのか。
九野は妻と義母の事故死以来、精神的に不安定だったんだな。途中から義母⁇だったが…
結局、邪魔なやつを排除するって、ことだったのか、自分が生きていくために。
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恭子の転落っぷりが凄まじく、あれよあれよという間にすごいことに…。
しかし応援するような気持ちで読んだ。
九野さんよ、どうか恭子を追い詰めないでくれ…!
しかしやはり九野さんは有能だった。
恭子、これから新しい人生を生き直すんだろうか。
旦那さんを庇わずに悲劇の奥様で同情を買えば良かったのにね…と思ったけどきっとプライドが許さなかったんだろうな。針のむしろで生きていくのは。
何としても逃げて生き延びてやる!というエネルギーに圧倒された。
義母さんのことは途中からうっすら、もしや?と思っていたがやはりだった。
心のオアシスだったのに哀しい。
人生ってままならない。
Posted by ブクログ
恭子の行動、心理が手に取るように感じられた。ヅルをする夫を非難するだけでなく、自分自身が敢えて目にしたくないものを避け、安穏と生きることに甘えてきた半生に気づくなど苦しい現実が迫ってきた。
甘えて生きるか、自分の人生を生きるか、選択肢があるから女は生きるのが難しい。
Posted by ブクログ
〈上〉の中盤くらいから予想外の展開が次々起こり、読み進む手が止まらなかった!平凡な主婦がどんどん強くなっていく姿が、痛々しかったり、カッコよかったりした。あと子供は本当に可哀想。
Posted by ブクログ
及川恭子の市民運動に傾倒していく姿や、ラストに向かって狂っていく様が興味深い。平穏な日常から堕ちていく話なのにもかかわらず、上巻序盤から一定のリズムを保ちながら中弛みすることなく、逆に変な心地よさで最後まで一気に読ませるのは流石。終わり方は少し呆気ない感じはするが、それでもとても面白い作品だった。
もしも人生が続けられるのであれば、しあわせに背を向けるのはやめようと思った。
しあわせを怖がるのはよそうと思った。
人はしあわせになりたくて生きている。そんな当たり前のことに、九野はやっと気づいた。
どうゆうわけか、この1小節にグッと惹かれた。
Posted by ブクログ
恭子の変貌ぶりと狂気にページを捲る手がとまりません。
いやー、面白い。普通の主婦がここまで堕ちてしまうとは。
小説って面白いな、と思わせてくれる作品。
Posted by ブクログ
郊外の、ほどほどの規模の住宅街。
高校生の裕輔、高校を既に中退している洋平と弘樹はオヤジ狩りのターゲットとして張り込み中の刑事・久野に接触、手を出してしまい、逆に怪我を負う。
久野は上司の命令で同じ署の刑事・花村の素行を調べている最中。
7年前に妻を事故で亡くし、以来、妻の母親を慕い、心の支えにしている。不眠がちで安定剤を常用している。
そんな住宅街にある自動車部品メーカーの支社に勤める及川は、自身の当直中に発生した火事の第一発見者。鎮火しようとして、火傷を負う。
深夜、救急隊員から及川の非常事態を告げる電話を受けた妻・恭子は命に別状がないことを病院で知り、安堵するが-。
火事は放火の可能性が高く、警察は捜査を開始。
当初は地元のヤクザによるメーカーへの報復と思われたが、久野は及川の態度に疑問を抱く。
妻を亡くして心の均衡を失った刑事と、夫が放火犯として疑われる平凡な主婦。
救いようがない方向に進んでいく二人の様子は、読んでいて楽しいものではないのに、目を反らすことが出来ず、引き込まれるように読み進めてしまいます。
それはきっと、
「人間の、ふとした事で垣間見える小さな真実(解説より)」
を見事に描きあげているからだと思います。
思い通りにならない理由を、人は他人の存在とし、邪魔だと思う。
けれど、邪魔だと思うか、大事だと思うかは、ほんの紙一重じゃないかとも思います。
悪意の対象だと、邪魔。好意を持つ相手だと、自分を責める。
人は勝手だなぁと感じます。著者の狙いとは違うのかもしれませんが。
読後感は、よろしくないです。ずっしり、重く残る作品。