幼い頃に離別し、晩年に再会した父の話、様々な地域への旅日記、ポテトフライ、オムライスといった食にまつわる話、歴史上の人物に関する考察など幅広いジャンルのエッセイ集。
しきたりを重んじ、独特の美意識にこだわる池波氏の個性があちこちににじみ出た54編。
中でも、昭和20年、浅草の家が焼失し敗戦が明らかになっている時にみた桜の蕾に命の素晴らしさを感じたという「私の桜花」が印象に残った。
歌舞伎座でおしゃべりやものを食べる音に我慢ができなくなったり、機械化が人間の肉体的、精神的感覚を鈍化させると主張するくだりには共感できるものがあった。