池波正太郎のレビュー一覧
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読書子の手にあるのは、1980年に刊行された紙魚も黄変もある文庫。何年ぶりの再読になるのか。
歴史小説ファンなら最も注目する戦国と幕末。その時代に活躍した歴史上の人物などに焦点を当てた歴史エッセイ。
「関ヶ原と大坂城」は、重複した記述があり少し興醒め。
「忠臣蔵と堀部安兵衛」は、脚色された安兵衛とは一味違った実像を解き明かす。
「新選組異聞」では、新選組隊士のほか、小栗上野介や伊庭八郎、真田幸貫、佐久間象山、陸奥宗光などについての記述がある。
池波氏は、伊庭八郎に生粋の江戸さむらいとの思い入れがあり、彼を主人公にした小説(幕末遊撃隊がすでにあるが)を書いてみるつもりだと記している。
真田幸貫は -
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剣客商売最終巻。
終わってしまったな。。。
一巻から一気に読んだわけだが、当初の小兵衛ファミリーと、この最終巻の小兵衛ファミリーは、雰囲気が違う。
そこには、小兵衛さんが老いていく姿があるせいだろうか。
池波正太郎さんの作品は、「剣客商売」と「鬼平犯科帳」しか読んでいないが、作品の中で登場人物が確かに生きているなと感じる。
だからこそ、こんなにもおもしろいと思うのかもしれない。
最終巻、小兵衛さんが亡くなってしまうのではないか。と、ドキドキしていたが、それは荒唐無稽な心配だった。
最後の最後、小兵衛さん、おはる夫婦の「老後」をしかと見た気分。
又六の件は、前作でひょっとして。。。と思っ -
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剣客商売 十
今回は特別長編「春の嵐」です。
“秋山大治郎”を名乗る連続辻斬りが現われ、全く身に覚えのない大治郎が窮地に陥ります。
小兵衛さんと、弥七、徳次郎が懸命の追跡を行うのですが、特に徳次郎の執念には胸が熱くなりました。
さらに八巻「狐雨」に登場した杉本又太郎や、女武芸者・お秀さんも加勢します。
この事件の裏に、田沼老中と松平定信の対立を深めることで漁夫の利を得ようとする巨悪の存在が浮かび上がりますが、結局闇に葬られる事になり、仕方ないとはいえ、とんだ目にあった大治郎のことを思うとモヤモヤします。
せめて辻斬りの男を大治郎に退治させてあげたかったと思います。
そんな中、今回登場して杉 -
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三巻立てで、一巻毎の色合いがこんなに違う小説を他に知らない。一巻目は若き剣豪誕生の物語、二巻目は維新に向う時代に愛と死と復讐の物語、三巻目は桐野利秋をサブに据えて維新の有様から西南戦争にいたる物語。また、一巻ごとに杉虎之助の語り部的な立ち位置が強くなる。このような語り部的書き方は、「天切り松闇がたり」や「壬生義士伝」など浅田次郎の専売特許かと思っていたら、凄い先立がいました。個人的な好みを言えば、一巻、二巻、三巻の順です。池波流の切り口と簡潔で小気味のいい文章はとても好きだが、維新や西南の役なら、やはり司馬遼太郎の「翔ぶが如く」ではないだろうか。
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剣客商売 四
表題作「天魔」で登場した笹目千代太郎は、無茶苦茶強くて、第二巻に登場した“小雨坊”に匹敵する“ヤバイ奴”でした。
秋山父子の強さは重々承知なのですが、彼のようなサイコな強敵が出てくると、ちょいとヒヤヒヤします。
そんな千代太郎に対峙するのは、息子・大治郎。
もう、大治郎の成長ぶりが頼もしくてなりません。剣術だけでなく、小兵衛さんの後妻で自分より若い義理の母・おはるに、箱根細工の裁縫箱をお土産に買ってきてあげたり(「箱根細工」)、優しくて気が利くところも見せてくれます。
大治郎と三冬が仲良くなってきているのも、微笑ましいですね。