あらすじ
小兵衛は今も時折、二十六年前、門弟滝の仇討ちに立会った際の、相手方の助太刀山崎との死闘を思い出す。「生きていれば名ある剣客になっていたろうに」。そんなある日、蕎麦屋で見かけた崩れた風体の浪人は、敵討ちを成就し名をあげたはずの滝だった。そしてその直後、奇しくも小兵衛は、清廉に生きる山崎の遺児に出遇う。老境の小兵衛が人生の浮沈に深く思いを馳せる、シリーズ最終巻。
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▼「剣客商売」ラストの巻。感無量。池波正太郎さんが逝去したので終わったんです。ですが、「鬼平」「梅安」が、ほんとにぷっつり未完で終わっちゃったのに対して、「剣客」はそうぢゃないんですね。
▼連作短編(長編だったりも)なんですが、きちんと一つの話が終わったところで、絶筆になったそうで。しかもその<切れ目>が、どうやら池波さん自身が、<秋山小兵衛主人公のシリーズはここで終わり>という区切りだったそうで。なんとかくちゃんと完結した感じがあってありがたりです。それがつまり、この一冊「浮沈」です。
(どうやら、<小兵衛の孫を主人公にして、小兵衛は脇役として、シリーズを続けたい>という構想を持っておられたそうです)
▼この巻、再終幕ですが、特別長編。一冊でひとつの話です。
筋立てで言うと、
<小兵衛の元・弟子が身を持ち崩し悪人に。真面目な金貸しを陥れた。それを成敗する>
<小兵衛の元対戦相手(小兵衛が倒した)の息子がいて、これが素敵な若者。小兵衛との交流。この若者の苦境を、小兵衛が助ける。その過程で、強敵と小兵衛が対戦>
<それらと並行し、田沼意次が失脚する。田沼時代が終わる>
というような趣向です。
▼いずれ、小兵衛の心境の<老い>が強く描かれます。そして客観作者語りで、「でも90代まで生きちゃうんだけどね」と楽屋を明かすという一幕も。
▼小兵衛と大治郎、という〈ぎこちない父息子の交流×捕物帳〉というシリーズで始まり。大治郎と三冬の男女の物語、そして結婚、小兵衛にとっての孫誕生。そこからは三冬がぐっと背景になって、〈小兵衛の老いの味わい×捕物帳〉・・・・という変転だった気がします。連載ならではのエンタメ感。拍手です。
▼またしばらく長く
<関連スピンオフ的な小説>
<番外編>
<シリーズの読本>
なども楽しもうと思っています。
▼これで「梅安」と「剣客」を読み終えてしまった。とうとう、途中で止めている「鬼平」に戻る時期が来てしまいました・・・・。
読みたいけど読み終わりたくない。
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剣客商売シリーズ第16弾で最終話。
ついに読み終わっちゃいました。
秋山小兵衛の関わりのあった門弟や同門の剣客が絡み合い、小兵衛が道場を開くときにお金を借りた金貸しやその息子、様々な人たちが小兵衛の75歳を迎える時にこの剣客シリーズを締めくくる物語をパズルのように組みあがっていく。
小兵衛の周りの人たちがその後どうなったかもそれぞれが何歳まで生きたかなどが語られ、このシリーズが終わるんだと何か思わせる結末に向かう。
いや本当に楽しませていただきました。
そしてまた、このシリーズを読み返したいと思わせてくれる剣客シリーズでした。
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・・・終わってしまった。ここまで楽しんで読んでいましたが、最終巻ほど読みたくないものはありません。でも最終巻でも面白かったです。主役たちのその後や没年が記されてくるあたりは、ファントしては心苦しいものがありましたが、最後まで主役は主役の、脇役は脇役の光を失ってません。最後まで読めて幸福でした。これから番外編も読むつもりですが、これも最後を読むのは辛いな・・・。
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時代小説。「剣客商売」シリーズ第16弾。長編。
「浮沈」
シリーズ最終巻。小兵衛は66歳となった。事件が終わるのは67歳である。
四谷時代の門人、滝久蔵と蕎麦屋で出会う。久蔵は父の敵を討ち、その助太刀をしたのが小兵衛である。
しかし久蔵は小兵衛の姿を見てもそれと気づかない。
一方、そのとき小兵衛が討った山崎勘介の息子、勘之介とばったり出会う。
その勘之介が夜の闇討ちに遭い、小兵衛らに助けられるが重傷を負う。
久蔵は金貸しの平松多四郎からの借金をなかなか返さず、ついに死に陥れるのだ・・。
勘之介も多四郎の息子の伊太郎も、敵討ちはせぬという。
新しい時代の幕開けで、武士の時代の幕引きと言えるかもしれない。
とにかく、前作で気になっていた又六と杉原秀が思ったとおり結ばれたのですっきりした。
93歳まで生きる小兵衛の未来が少しだけ書かれていて、ああ、本当にこのシリーズは終わるんだなと思った。
またこのシリーズを再読したいと思います。
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14年前に読み進めていたシリーズの最終巻(16巻)をようやく読み終えた。田沼意次が活躍したころの江戸時代中期に、剣術ひとすじに生きた剣客父子の活躍を描いた池波正太郎の代表作の一つ。長いシリーズの中でいろいろな登場人物が出てくるが、この最終巻ではどのような晩年をおくったがわかる。
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この辺りになってくると、著者池波氏の体調が思わしくないせいか、
物語を取り巻く時代背景にも暗雲が忍びよってくる。
当然、登場する主人公たちにもあまり晴れ晴れとしない出来事が起きてくる。
このシリーズも最後まで完結せずここで終わっているんだよね。
でも絶筆して終わったわけじゃないから、池波氏はこれで終わりのつもりだったのだろうか。
まぁ、田沼意次の没落までは、見たくない気もするけれど。
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中学校時代から何度も読み続けている池波正太郎もの。
たぶん一番最初に読んだのがこのシリーズ。
食べ物に対する興味も、江戸時代の言葉、作法も全てこれで覚えた。
読まないと人生損だぜ。
同じ時期から池波正太郎が好きだった人を人だけ知っている。
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楽しみだった剣客商売もシリーズ16冊目の最終巻。四谷の弥七が小兵衛に語った「ともあれ、人間というものは、辻褄の合わねえ生きものでございますから・・・」というセリフが何とも言えず良い。
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2010年以降、読み進めてきた剣客商売シリーズも本書でラスト(番外編はあるけれど)。シリーズ全16巻は、どれも気軽に読み進められるとともに、一定以上のクオリティを常に保ち続けた素晴らしい作品群でした。
本書は最終巻を意図して刊行されたわけではないようですが、解説でも述べられていたように最終巻として相応しい印象を受けます。それは、小兵衛をはじめ一部の登場人物が歿する年齢が作中で明記されているだけではありません。ひとつは、小兵衛や大治郎のよき庇護者といえた田沼意次の没落がついに訪れたため、小兵衛を取り巻く環境の変容が予期されること。ふたつめは、仇討が当たり前の物語において、あえてその道を選択しない平松伊太郎の存在が一連の物語にひとつの区切りを設けたと感じられること。これまでのシリーズを支えてきた安心感(これは、小兵衛が悪を討つという不変のコンセプトに由来するものかと)が大きく変化せざるを得ないかもしれない、そんな前途に何か不安を覚える作品だからこそ、最終巻でよかったと思えるのかもしれません。
いずれにせよ、とても楽しませていただいたシリーズ。次は著者の違う作品も少しずつ読んでみよう。
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剣客商売シリーズの最終巻。
「何が正しいか」よりも「どう生きたいか」をこのシリーズを読みながら考えるようになりました。時には周りに流されながらも、自分にとって大事なものを忘れないようにしようと思いました。
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剣客商売(1)からずっと読んできましたが、作者急逝のため未完。池波さんの晩年が近くなるにつれ、作品にも読み終わった後、一抹の暗さが残るようになったと思います。総評で★4。
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剣客シリーズ・16 事実上の最終巻
池波さんが亡くなられたので これがラストになるわけですが・・
3大シリーズは全てその状態なわけですが その中でもこの剣客商売は
一番後引かないシリーズだったかなと 個人的に思います
まあ もともと内容的にはつらつというか前向きな雰囲気を纏った作品ですからね^^
そろそろ剣客商売 読み直ししてみようかな? と思ってます^^
Posted by ブクログ
田沼意次の時代が大きく変化していく。
小兵衛も66歳となり 振り絞る力が・・・せつない。
26年前 滝久蔵の助太刀をした。
そのことで 滝久蔵は評価されて出世するのであるが。
しかし、薄汚れた 滝久蔵を見つけるのだった。
借金を 踏み倒そうとする。
一方 助太刀をしてきった 山崎勘介の息子 勘之介にであう。
その 勘之介の 潔さ 礼儀正しさに 小兵衛は驚く。
借金を踏み倒された 平松多四郎は その顔ゆえに
処刑されてしまう。
女郎と遊ぶ息子 伊太郎は 滝久蔵は問題にせず
さらし首になっているのを 取り返そうとする。
小兵衛は それを手伝う。
小兵衛は 凛として 無外流の 霞の剣を 大治郎の前で見せる。
長編は 読みやすい。あぁ。これで 最後なんですね。
Posted by ブクログ
剣客商売シリーズ16作目
小兵衛66歳の秋から翌年にかけての物語。
26年前、門弟の滝久蔵の仇討ちの助太刀をした小兵衛。
久蔵は無事に敵討ちを成し遂げ、小兵衛も同じく助太刀をしていた山崎勘介と死闘を繰り広げた。
それから26年たち、蕎麦屋で久蔵を見かけることになる。
その直後、自分が斬った山崎の遺児、勘之介とも出会うことに…。
ついに、最終巻となってしまった剣客商売シリーズ。
顔のせいで人から誤解され、処刑された金貸し平松多四郎。その息子の伊太郎は仇討ちはしないと言う。そんなことは古めかしいと。
そして、田沼も失脚。
本当に時代はどんどん変わっていく。
これからあと数十年もすれば世の中はひっくり返るのだから。
最初の頃の明るい雰囲気と変わって、段々と生きることの哀しさを感じることが多くなったこのシリーズ。
この巻の最後には小兵衛は75歳。少し小さくなってしまった小兵衛が切ない。
でも、これからまだ彼は18年も生きることになる。
自分より随分と年下のおはるを見送り、弥七も見送り、宗哲先生も見送ることになるのだ。どれだけ辛いことを見てきただろう…と考えてしまう。
そんな中で、又六とお秀さんの結婚は一際うれしいニュースでした。
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剣客商売の最終回です(泣)
人気シリーズであったろうに、生前にちゃあんと始末
されて読者が先々まで安心できるようになってます
おはるが先生より先に逝くなんて・・・
Posted by ブクログ
小兵衛は今も時折、二十六年前、門弟・滝の仇討ちに立会った際の、相手方の助太刀・山崎との死闘を思い出す。「生きていれば名ある剣客になっていたろうに」。そんなある日、蕎麦屋で見かけた崩れた風体の浪人は、敵討ちを成就し名をあげたはずの滝だった。そしてその直後、奇しくも小兵衛は、清廉に生きる山崎の遺児に出遇う。
老境の小兵衛が人生の浮沈に深く思いを馳せる、シリーズ最終巻。
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剣客商売 十六
小兵衛さんが26年前に仇討ちの立会&助人をした、元門弟・滝久蔵、相手方の助太刀、山崎勘介の息子・勘之介、そしてその頃交流のあった金貸しの平松多四郎・・。
小兵衛さんが変わり果てた滝の姿を見かけたのをきっかけに、昔の因縁が動き出します。
命を狙われている勘之介を守りつつ、滝と平松の関係を探っていく小兵衛さん。
仇討ち時に父を殺された山崎勘之介と、理不尽に死罪になった平松多四郎の息子・伊太郎という二人の若者は、性格は全く違いますが、どちらも父を亡くしたものの、仇討ちへの興味が全くないという事で共通していて、ちょっと小兵衛さんが“え?仇討ちしないの?”てな感じで物足りなそうだったように見えました。
本書でシリーズ最終巻という事で(勿論最終巻と意図されてはいないですが)、何となく哀愁が漂う気がするのは、秋山ファミリーの良き理解者だった、田沼老中の失脚に伴い、一橋治済、松平定信の台頭という時代の流れもあるからでしょうか。
そんな中、又六と秀さんの件は微笑ましくて良かったです。
因みに本文によると、小兵衛さんは、おはるや弥七よりも長生きするとの事です。
Posted by ブクログ
剣客商売最終巻。
終わってしまったな。。。
一巻から一気に読んだわけだが、当初の小兵衛ファミリーと、この最終巻の小兵衛ファミリーは、雰囲気が違う。
そこには、小兵衛さんが老いていく姿があるせいだろうか。
池波正太郎さんの作品は、「剣客商売」と「鬼平犯科帳」しか読んでいないが、作品の中で登場人物が確かに生きているなと感じる。
だからこそ、こんなにもおもしろいと思うのかもしれない。
最終巻、小兵衛さんが亡くなってしまうのではないか。と、ドキドキしていたが、それは荒唐無稽な心配だった。
最後の最後、小兵衛さん、おはる夫婦の「老後」をしかと見た気分。
又六の件は、前作でひょっとして。。。と思ったら、やはりなーという感じ。
よかった、よかった。。
楽しいシリーズだった。
さて次は番外編を読もうかな。
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深川十万坪
暗夜襲撃
浪人・伊丹又十郎
霜夜の雨
首
霞の剣
長編。シリーズ最後。登場人物が何歳まで生きるか、ということがなぜか何度も出てくる。
敵討ちのようなものに巻き込まれたり、金貸しが理不尽にあったり。シリーズ最初の頃のすっきりばっさりはなく、どことなく暗くもやっとする。