池波正太郎のレビュー一覧
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鬼平シリーズ第四作。
ついに女密偵・おまさ登場。
初登場がいきなり見張り相手の盗賊団に囚われるというハードな話。
その盗賊たちが地も涙もない残酷な野郎どもだけにおまさの状況が心配でたまらない。
ついに監禁場所を突き止めた鬼平が、なかなかやって来ない部下たちにしびれを切らして単身飛び込み、おまさを救う。
格好いい~。しかし多勢に無勢、鬼平絶体絶命…と思いきや、待ちわびた部下たちが現れる。格好いい~。
こんな酷い目に遭ったというのに、おまさは連続夜鷹殺しで、再び危険な役目を買って出る。夜鷹の振りをして囮となるのだ。
そこまでするのは勿論、鬼平への気持ちがあるからなのだが、そんなおまさの気持ちを知りながらお役目で応える鬼平はやはりそれだけ魅力的ということか。
命がけのお役目で鬼平へ尽くすおまさと、ハードな仕事を影で支える妻・久栄と、二人の対象的な女性がいるのもこのシリーズの魅力。
またこのシリーズでは良い盗賊と悪い盗賊が出てくるのがお決まり。
同じ盗賊なのだから本来なら良いも悪いもないのだが、有り余る財産の一部だけ頂くとか、盗む相手を傷つけないとか、盗賊なりの矜持を持っている良い盗賊がいて、押し込む相手を皆殺しにした上に全財産を奪っていく残虐な犯行を行う悪い盗賊がいる。
この手の悪い盗賊は鬼平に徹底的に痛めつけられ捕縛され罰を受け、良い盗賊は厚生の道、あるいはそれなりの前向きな道が用意されているというのが読者の期待するところだが、実際にはそう簡単には行かない。
悪い盗賊に良い盗賊がやられてしまう場合もあるし、鬼平の上を行って悪い盗賊たちが逃げてしまう場合もある。
だが収録の「敵」ではスッとする結末が用意されていて爽快だった。
今回は「あばたの新助」で生真面目だった同心が女の色香に惑わされて盗賊の協力を強制させられてしまうという話もあった。
確か第一作でも似たような話があったが、真面目で素朴な人間ほどハマり易いのか。
そう言えば、前作まであれほど女に惑わされっぱなしだった木村忠吾のダメっぷりはすっかり影を潜め、お役目に真面目に取り組んでいるようだ。描かれていないだけで本当のところはどうか分からないが。
第一話に登場する鬼平の長男・辰蔵はなんとも危うい匂いがするのだが、ギリギリのところで危機を躱していたり、これまた悪運が強いのか、父親譲りの感覚で危機を読み取っているのか。
今後辰蔵がどう成長するのか、それともこのままフラフラするのか、その辺も注目したい。 -
Posted by ブクログ
鬼平犯科帳 (12)
鬼平さんの活躍に欠かせない密偵達。彼らも“元・盗賊”という事で、〈昔とった杵柄〉で盛り上がってしまう、「密偵たちの宴」。密偵達の台詞のみのやり取りが、読んでいて自分もその宴を覗いているような気分になりました。それにしても、すべてお見通しの鬼平さん。恐るべし。
そして、鬼平さんの息子・辰蔵さんも登場する「白蝮」。
“女好き”なお気楽同心・忠吾さんでさえ、辰蔵さんの女性趣味には若干引き気味になっているのが笑えます。この話では、凄腕同心・沢田さんが過去敵わなかった女性が出てきますが、なんとなく、沢田さんには幸せになってほしいと思ってしまう私です(あ、小柳さんも)。 -
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鬼平シリーズ第二作。
(各話の結末にも触れているので読みたくない方は飛ばしてください)
木村忠吾登場。ドラマとは少し違って惚れっぽいというか、すぐにのめり込むのだが飽きやすい。う~ん、これじゃいつまでも結婚は出来ないな。
知らずに盗賊の娘と恋仲になってしまった「お雪の乳房」など、ドラマと違って『お雪さんそのものが好きだったんじゃなくて、そっち?』とガッカリしたし。これでは女性層には受けないだろうとドラマでは結末を変えたのだろう。
しかし「谷中・いろは茶屋」ではそののめり込み癖が思わぬ活躍に繋がる。本来デスクワーク専門で捕物、ましてや剣術などからっきしの忠吾だが、こうして見るとやはり火盗改メ同心なんだなと納得する。
そしてそんな忠吾を厳しくも甘やかす鬼平。彼もまた若き頃は数々のヤンチャをしていたらしいから彼の気持ちも分かるのだろう。
鬼平といえば数々の密偵(いぬ)が登場するのだが、その密偵たちの活躍だけでなく、それぞれのドラマや人生模様が描かれるのもシリーズの魅力。
「密偵」に登場する弥市。彼もまたかつては大泥棒の元で数々の悪行を繰り返してきたものの、同心・佐嶋に見いだされ密偵としてかつての同業者たちを捕縛するための情報を伝える役目をしている。
だがそのお役目は妻のおふくにすら言ってはいけない危険なこと。ましてやかつての仲間の生き残りが自分を狙っていると聞いて緊張感も最高潮。密偵としての役目と自分の命を狙うかつての仲間との間で揺れ動く弥市の結末は、過去の業を切れない密偵の厳しさを感じた。
だがそれでも『悪を知らぬものが悪を取り締まれるか』という鬼平の意志はブレない。
悪を知り悪に染まること悪に毒されることの恐ろしさを知っている者、そこから這い出そうとする者だからこそ出来ることがある。
純粋培養の者、正義感の塊だけの者では出来ない解決法がある。
「妖盗葵小僧」などはその最たるものだろう。本来なら事細かにその悪行を書類に残した上で裁くのだろうが、現代で言うセカンドレイプを危惧した鬼平は何も残さずその場で犯人の首を刎ねてしまう。
それが何よりも被害者の心の傷を最小限に抑える術であり、犯人の歪んだ悦びを叩き潰す何よりの罰だと判断したからだ。
現代ならこんな乱暴な裁判はないのだが、それが良いかどうかは別としてこれが鬼平流ということだろう。
また「女掏摸お富」では、過去と決別するために再び掏摸を繰り返すお富を見逃してやろうとする鬼平だったが、お富がそのうちに再び掏摸の快感に絡め取られようとしているのを見るや厳しい態度に出る(これもドラマでは少し結末が違う)。
いたたまれず悪行を繰り返しているのなら止められるが、悪行の快感に掴まってしまえば人はどこまでも堕ちてしまう。その瞬間を見逃さず、今なら厚生出来るという絶妙なタイミングで声を掛ける鬼平、さすが。