池波正太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
俗に池波正太郎のファンには三種あるという。言わずもがな時代小説ファン、映画のファン、そして食べ物のファン。私はどれにも属さないが、それは池波正太郎の全ファンが好きでないからである、という全方位に嫌味たらしい理由からくるものでもある。
それでもこの表紙カバーはあまりに魅力的だし、タイトルの軽妙さはどうか。この中におさめられている「行ってみたいなあ」と心ならずも思った店は食べログで検索すると今でもちゃんと残って☆4つ近くをとどめている。
私がなぜ池波ファンを好かないか。それはこのエッセイの中にちゃんと作者自身の言葉で記されている。
「新しいものは何かというと、それは、だれもが知りつくしている味気ないものなのである」
御大にも小学校を出、初めて知る、初めて足を運ぶ店はわくわくしたろう。それは「誰もが知りつくしている」ものではない。
30年、40年通いつめる店であっても必ず最初の一日はあったはずだ。
時代が変わるのではない。自分が変わったのだ。歳を取ったのだ。
若い者に同じ立ち位置を押し付けてはいけない。
だから自分の足で、自分の年月でそれを筆にのせてきた文豪の尻馬に乗り、
ただ読んだだけで我もこそは池波の目でその店を見るのだというファンを私はどうしても好きになれない。
2020年の今でも残る、愛する作家の愛した店を訪れるのならばファンなどと名乗るのはおこがましいぜ。
すみっこに座って燗酒一本やって、恥ずかしそうにお愛想を頂戴するのが立場ってもんだ。
とかたくなに思うのはやっぱり私は池波文学に向いていないのだな。本当に楽しく読ませて頂きました。浅草の金寿司に行くときはすみっこでいたたまれない一見になりたい。