あらすじ
酒と女に溺れ家中の鼻つまみものである榎平八郎は二十一歳。七百石の旗本の三男に生れながら妾腹の子ゆえに家来にまで蔑まれている。ある夜女を抱いた帰途、何者かに襲われる。やがて、それは彼を疎む父親の命であることが判明する。徳川吉宗が将軍位について二十余年、いきいきとした時代を背景に、青年ざむらいが意地と度胸で、己れの道を切りひらいていく姿を描く長編時代小説。
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池波正太郎がこれでもか!というくらい書きなぐったのではなかろうか?と思うような本だなと途中まで思っていたけど
最後の最後でえ、この人がまさか?!というサスペンス的な要素もあって
主人公の平八郎の勝手狼藉にはうんざりしたけど、これは成長を記してあるのだなと読み終わってやっと分かった。
「人にとって、まこと大切なるは天下の大事ではのうて、我が家の小事なのじゃ」と
和尚が言っていることがよーく分かる気がする。
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池波正太郎作品を初めて読む と思っていたら以前に池波作品を読んでいた 前の作品はあまり好きじゃなかったけど 今回は鬼平犯科帳のような雰囲気が至る所に散見される 一寸の虫にも五分の魂 盗人にも三分の理 悪くない
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『上泉の殿、わたくしは間もなく國峰へと嫁ぎます。そして、来年の夏が来る頃、子を産みまする。そのお子は殿のお子にございます。』
(中略)我から愛する男の子供を身ごもってのちに、別の男へと嫁いで行く。
自分一人で結婚する相手を決められなかった戦国時代、こうした選択で自分に許される範囲で思いを遂げる女の覚悟のすざましさを感じる一節。
剣法の新陰流の始祖である上泉伊勢守秀綱という実在の武将が主人公の物語。
(有名な柳生新陰流は、新陰流の門下の柳生石舟斎宗厳(むねよし)の流派。)
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先日古本屋で見つけた池波正太郎の「さむらい劇場」(新潮文庫)を読みました。
読み始めて間もなく、これまで登場していない女性が突然現れました。
それも、前後の関係が全く無く、さもこれまで登場したふうなことが書かれているのです。
おかしいなと思い、前のページを繰り返し調べましたがやはり彼女の名前は出てきません。
で、よく調べると、何と33ページも飛んで製本されているではありませんか!
仕方なく翌日本屋に行って飛んでいる部分を読み、筋書きをのみこんだ上で再び読みはじました。
勧善懲悪的な筋立てで、主人公だけが家族や友人をさしおいて、するすると駆け上がってしまう。
その点少し気になりました。
でも、そこは池波正太郎、文章力で最後まで、読者を惹きつけて離しません。
でも今回はストーリーに起伏をもたせすぎたせいか、
いつもよりちと文章が素っ気ない気もしました。
やはり彼の作品では「剣客商売」シリーズが一番好きです。
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主人公の榎平八郎は妾腹に生まれた厄介者ということで、鼻つまみ者となっている。そして平八郎は実の父親の命令で命を狙われる。その危機を脱した平八郎は周りの数多くの先人に助けられ、又育てられ最後には妾腹ながら榎家を継承し我が意を得る。
「男というものは、それぞれの身分と暮らしに応じ、物を食べ、眠り、かぐわしくもやわらかな女体を抱き・・・・・こうしたことが、とどこおりなく享受できうれば、それでよい。いかにあがいてみても人は・・・・・つまるところ男の一生は、それ以上のものではない。人にとって、まことに大切なるは天下のだいじではのうて、我が家の小事なのじゃ。」
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池波正太郎らしい、じっくりした小説。
主人公榎平八郎の若き頃より、結婚、子供が生まれて後、お役目を仰せつかるまでの10数年間を描いている。
人間、いろいろあるわな、そら。っていう内容なんだけど、よくよく読んでいくと、味がある、素敵な話だと思う。
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妾腹の子としてさげすまれながら、想像出来ないような苦難を切り抜け、やがて榎家の家督を相続する平八郎。
日本左衛門や火付盗賊改方など出てくる痛快時代小説。
「人という生きものは、人それぞれに、おのれでおのれの舵が取れぬもの・・・」
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独特の文体と、次から次への展開で、飽きることなく読ませてもらえる。よく言えば波乱万丈の物語。しかしちょっと意地悪く見ると、なんだか小説を書きながら、思いつきでストーリーを作っていってるような。将軍を殴った平八郎が最後は幕臣に戻ったり。まあ、暇つぶしに読むのにはいい本です。