横溝正史のレビュー一覧
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ネタバレ『死神の矢』と『蝙蝠と蛞蝓』を収録。
『死神の矢』は考古学者が自分の娘の婿を3人の男たちから選ぶために海に漂う的を狙わせるという遊びから始まる物語。婿が決まったその夜に元候補者の1人が密室で殺害され、そこから連続殺人事件に発展していくというもの。金田一耕助はどう推理するか?
被害者たちが揃いも揃ってクズだったので犯人に同情してしまう1作。最後の被害者も金田一耕助なら止められたはずの殺人なのになぁ……。
『蝙蝠と蛞蝓』は異色の短編。あるアパートに住む湯浅が書いた小説が現実世界で起き、湯浅に殺害の容疑がかけられて……というもの。
短いながらも読み応えたっぷりの1作。 -
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横溝正史の面白さがわかって6冊目が本作です。最初は展開がゆっくりで、なかなか読み進めなかったが、金田一耕助が西に行くあたりから、どんどん読み進めました。生きているはずがない人が、生きているかもしれないという不気味さがじわじわと感じられてきて、新しいことがわかると、○○と○○は、本当の親子なのだろうかとか、○○の素性がはっきりせず怪しいとか、いろいろ考えながら読めました。そして、クライマックスも、想像を上回る展開でした。また、ラストで、犯人の手記が出てくるところで、島田荘司の「死者が飲む水」を思い出しました。犯人がそうしなくてはならなかった事情が丁寧に描かれています。その一方で、事件の舞台が田舎の閉鎖的な村ではなく、都会の華族社会である分、怖さはあまり感じませんでした。それでも、至る所に事件の伏線が隠されていて、読みながら考えられる面白さがあると思います。
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ネタバレ表題作ほか、短編の『湖泥』と『堕ちたる天女』が収録された本作は、「これぞ横溝正史」と言える中短編集。
『湖泥』では岡山県の寒村が舞台の短編。短い中に対立する名家、消えた美人、戦争で心を病んだ男と横溝エッセンスがこれでもかとぶち込まれているために読み応えたっぷり。最後には飄々と事件を解決する金田一耕助の姿がとても頼もしい。
『貸しボート十三号』は不気味な死体が見つかることから始まる中編小説。途中まで首が切断された遺体の持つ意味や、被害者の名誉を守ろうと足掻く若者たちの青さがクローズアップされた本作だが、読み終えたあと少し切なくなる。
『堕ちたる天女』は石膏で固められた死体を巡る物語。幾重にも張り巡らされたミスリードの中から、金田一耕助が真相に迫るところや、岡山県警の磯川警部と警視庁の等々力警部が合間見えるシーンは、横溝ファン大歓喜な箇所になり、読み終えてから満足感を味わえる1作である。 -
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ネタバレ読み始めてすぐに「あれ、女王蜂と大体の構図一緒じゃね?」と思うけど読み進めてるうちにそれが大体一緒だ!の確信に変わります!
でも女王蜂よりも横溝先生の書きたかったこと全開!という感じで清々しくて好きです♡面白人間博覧会かな?っていうくらい濃い登場人物に翻弄されながらも全身タイツで頑張る音禰ちゃんが好きです♡
でもよくわからないけど何で音禰パパは音禰ちゃんを陥れようとしたの?他のやつ皆殺しにすればよくない?指紋はどうやって残したの?と様々な疑問が湧いてきますが横溝先生の圧倒的な「俺はこういうのが書きたかったんじゃい!」の前ではそのような瑣末なことを考えるだけ無駄ですね♡
本格的なミステリを所望してる人には向かないけどともかく横溝正史が好き!という人はこれを読まなければいけないと思います! -
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ネタバレ横溝正史とはこんなに時代の先を見ていた作家だったのか。
正直なところ横溝正史の作品をじっくりと読んだのは初めてだった。
映像化された作品は観てきたけれど、よくありがちな原作にはあたらないというムーブばかりしていたのである。
今回読むきっかけになったのは9月4日にNHKで『シリーズ深読み読書会/悪魔が来りて笛を吹く』が再放送されたからである。
横溝正史は『八つ墓村』『犬神家の一族』『本陣殺人事件』など田舎の因習ものという作品を立て続けに発表し、その後で都会の貴族ものである『悪魔が来りて笛を吹く』を書いたのだと番組内で言っていた。
そういうわけで私はこの番組を見て、いわゆるネタバレを受けた状態で読むことにした。それぐらい引力が強い作品だった。
これは結末を言ってしまえば愛した女性と自分が異母兄妹だったことが発覚し、女性が自殺したことがきっかけでその原因となった自分たちの父親を含む一族を殺害した青年が最終的に自殺をする。
近親相姦故によって生まれた子どもたちが、そのことを知らず惹かれ合った自分たちも近親相姦をしてしまったというやるせない悲劇の話だ
番組ではこの作品を深読みし、横溝正史はこの時代にこの作品によって何を言いたかったのか、隠されたメッセージは?という深読みをしていく内容だった。
近親相姦はめずらしいことではない。日本でも繰り返されてきた歴史もある。天皇家でも行われてきたことだ。じゃあ近親相姦が生まれる土壌とは何か?というと家父長制だと言う。家という形、共同体を何がなんでも守るため、そこに外部の血を入れないという排他的な思想が近親相姦の土壌だと有識者たちは語っていた。
それを考えると確かに横溝正史の作品はいわゆる『家』というものにフォーカスした話が多い。
『悪魔が来りて笛を吹く』は舞台は都会で貴族の話だけれど、『八つ墓村』『犬神家の一族』なんかは田舎ものだけど確かに一族や〇〇家の話だ。
そしていずれも悲劇の発端はその家の家長である人間の身勝手な振る舞いである。
そもそもこいつらが何もやらなければ、何も起こらなかった。
そういう話が本当に多いなと気づかされた。
有識者の島田雅彦氏は「日本の小説は家庭小説が多い。家庭とは、家とは暖かく優しい場所ではなく逃れようのない地獄であり、そこで苦しむ人達がいるからこそ家庭小説が多く生まれている」ということを言っていた。
そう考えるとずっと横溝正史は家(家族、家父長制)と戦う小説を書いてきたのかもしれないと思った。
令和の今でも残念ながら家父長制から解放されたとは言いづらい状況だと思う。少なくとも私はそう感じている。
家父長制を倒さねば、戦わねばという志を持った男性作家があの時代にすでにいたのだとすればこれほど心強いことはない。
今回の『悪魔が来りて笛を吹く』で一番好きな台詞を引用してみる。
金田一耕助に調査を依頼したストーリーの起点、この作品のヒロインである椿美禰子(みねこ)のこの台詞だ。
『この家はできるだけはやく処分しましょう。そして、あたしたち、どんなにせまい家でもよいから、明るい、よく陽の当たる場所に住んで、身にしみこんだこの暗いかげを洗いおとしましょうねえ』
戦後没落していく貴族。殺人事件なんてものが起こったあとに残されたその家の当主が若い女性で、その女性にこんな台詞を言わせるのは横溝正史が家と戦ってきたということを踏まえると非常に示唆に富むものだと思う。
まさか横溝正史を家父長制批判をした作家だという視点を得ることになるとは思わなかったけれど彼や彼の作品に対する見方がガラリと変わった。
もっと横溝正史に触れたいと思う。 -
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ネタバレ『びっくり箱殺人事件』は横溝正史の中でも異彩を放つ作品と言われていたが、読んで少し唖然とする書きっぷり。特に地の文が、「本当に横溝なのか?」と思うほどにはちゃめちゃなのである。そして、登場人物が個性的を通り越して際立つのも特徴。また、200ページの中で4人の連続殺人、ラブ・ロマンスと読んでいて「えっ?」となるが、最後はきちんと解決まで持っていくからこの書き方はさすがだなと思わずにはいられない。
もう一編の『蜃気楼島の情熱』はお馴染みの金田一耕助が登場。前に他作品に収録されていたのを読んだが、当時は中学生だったために内容は全く覚えておらず、読み返してとても新鮮な気分に。
犯人たちが人の皮を被った外道だったため、最後に自殺で逃げなくてよかったと一安心。(金田一耕助シリーズあるあるで犯人は最後に自殺するので)
令和の時代になっても面白さを感じるのが横溝正史。やはり横溝正史を読まずしてミステリは語れない。 -
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ネタバレ『扉の影の女』と『鏡が浦の殺人』の中編2篇が収録されている。
『扉の影の女』は金田一耕助と容疑者候補の人々、そして等々力警部が互いに騙し合いながら話が進んでいく。しかし、犯人は最後の方に出てきた奴だったのがビックリ!ただ、犯人が誰かということよりも犯人に至るまでの経緯は読み応えがあるので、全体的に満足いく出来となっている。ハウダニットを中心に据えたミステリと言っていいだろう。
『鏡が浦の殺人』は夏の終わりに起きた毒殺事件をめぐる物語。こちらは犯人は誰かに焦点が当てられたミステリであり、トリックは中盤で明らかになるように書かれている。夏の終わりを惜しむ儚さも感じられる一作である。
さて、本書は横溝正史生誕120周年&没後40周年を記念して俗に言う緑字(背表紙の文字が緑色だったもの)シリーズで復刊されたものの一作であり、末尾に必ず編集部から「現在の人権感覚と照らし合わすと不適切な言葉がある」と記されている。
無論、これらの言葉は人権差別を助長するものではない。大事なのは、それらの言葉が現在の人権感覚で使うことが許されていない言葉でいることを読者である我々が受け止めることだと思う。 -
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やっぱりいいね!
由香利(あえてね)の告白は、想像すると随分エゲツない画が浮かんでくるのだが、文章は下ネタチックに書いてないので、やっぱり上手いんだなぁと思う。
心情の変化も自然で、救いもある。
追記すいません…
孤高の金田一耕助。どんなに慕って慕われて、共に協力して事件を解決し、戦友の様な関係を築いたとしても、やっぱり最後はひとり。
周りに流される事なく事件と、その事件関係者と、自分と向き合い、自分で考え、人はひとりで歩いて行かなければならないんだ。これが“人間”なんだと毎回気付かされる。
そして周りの人達もそれを理解し、気に掛けつつ、そっと見守っている。
私もこうありたい!なんて思ってしまう横溝正史が創り出した金田一耕助とそれを取り巻く世界観が私は大好きだ。 -
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安定の金田一耕助シリーズ。
ミステリー小説の基本ですね^ ^
面白かったです。
鬼首村(おにこべむら)の『亀の湯』で休息する事になった金田一耕助。
磯川警部は、ここで起きた20年前の事件の解決をさりげなく促す。
そして、殺人事件に遭遇する。
死体には『手毬唄』の歌詞に沿った装飾が施されていた。
真相を探る金田一。
20年前の事件との関連は…。
この話の魅力は、なんと言っても「異様な死体」です。
手毬唄の歌詞に沿った意味ありげな証拠品の数々。
いかにも「犯人はこの人ですよ」と言わんばかりのヒントであり、金田一は裏をかく推理で真相を暴きます。
もうひとつあるのですが、ネタバレになってしまう可能性があるので…( -᷄ ᴗ -᷅ )
横溝正史作品はまだ2作しか読んでいませんが、感じたのはやはり、登場人物が多い。
前半はメモが手放せません。
私だけ…?(´・_・`)
鬼首村には昔から苗字ではなく、屋号で呼び合う風習があり、そこもまた引っかけの一部かなと。
桝屋、秤屋、庄屋など、手毬唄殺人に沿っていくには必要な設定ではあるものの、演出として重要な意味をもち、私の大好物でもあります。
人物メモをクリアすると、非常に読みやすいです。
文章が分かりやすい。
そしてこれまた、意外な犯人!
毎度の低次元推理力を装備する私には、犯人当たりませんでした笑
伏線はすべて回収され、納得の結末。
田舎の村独特の雰囲気も、閉鎖的な村あるあるの展開も、とても興味深い。
映画も観てみたいと思います。
あのシーンを、昔TVの予告でチラッと観たような…( ≖ᴗ≖)
皆さん、どのシーンだかお分かりかな。 -
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久しぶりの金田一シリーズ。狂気の表情を浮かべる猫の表紙。これは冒頭の惨劇のシーン。
ダ・ヴィンチ別冊のムック「金田一耕介the Complete」も合わせて読みながら横溝世界を堪能しました。時代設定としては戦後10年、出版も同じくらいの時期のせいか「戦災」跡の描写が生々しく、今読むと別世界のように感じられると共に非常にリアルな情景です。
今回は金田一はほとんど登場せず、複雑な仕掛けを解くというより、苦境に陥った人々を掬い上げる男の活躍を描くサスペンス比重が高い。共感してほしい、かまってほしいとか
、すぐに心折れたとかが多い今と違って、弱音を吐かないとかなんとしてもやり抜くとか昭和の理不尽なまでのメンタルの強さが魅力的に映ります。もはやこんなところも異世界
と感じてしまう今の自分のひ弱さがショック。優しさが滲み出るシーンも多く、金田一シリーズの中でも特に印象深い作品でした。 -
ネタバレ 購入済み
面白かった!
金田一シリーズでお馴染みの横溝正史の短編小説です。横溝先生の文章はとても読みやすくて、一気に読んでしまいました。最初のお話は、入れ替わりが最大の鍵になっています。いろんな人がそれぞれちょっとずつ悪事に手を染めている感じです。結局誰が一番の悪人だったんだろう?
私は、自分が何かをすることなく望みの物を手に入れた安道なんじゃないかと思っています。ぜひ一度読んで見てください。
最後のお話は新婚のカップルがとんでもない悲劇に巻き込まれて…というお話です。新婚の夫の上司の妻が、自分の思い通りに行かないのを恨んで、無関係の少女を殺して、その罪を新婚の夫に着せようとします。夫の無実を信じる妻が、自分の友人夫婦を頼って調査しようとしますが…。最後は、わりとあっけなくかたがついてしまいます。
両方の作品に言えるのですが、もっと描写が丁寧だったらなぁ、と思うところがありました。短編に納めようと無理やり押し込んだのかな。とはいえ、面白かったので、星5つです。興味はあるけどどうしようと思っている人、オススメです!