横溝正史のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
うーん、さすがにネタ的に、最近の復刊ラインナップには入ってないか^^;
盲聾唖の美少年がガラスの棺に入れられて、瀬戸内海の波間を漂っているという、どんだけ耽美やねんという幕開け。
殺人事件があり、探偵も登場し、ミステリの体裁はとっているものの、ミステリ、冒険小説、耽美小説を、けして器用にではないけれど、作者らしい美意識で繋ぎ合わせた傑作だと思います。
なんと言っても終盤が素晴らしい。詳しく書くとネタバレになるので書けないのが悔しいけど、とにかく芝居のクライマックスさながらの描写、スピード感、視覚的な美しさ。そして、闇。
古くささや端々の整合性には目をつぶって、芝居を見るように楽しむのがいいんじゃないかと。 -
Posted by ブクログ
金田一耕助シリーズ三作目。
いわゆる「顔のない死体」をテーマとした本作は舞台が東京から岡山へと移動する二部構成となっている点から、金田一耕助シリーズの特徴である戦後社会の混沌を象徴する「都会のモダニズム」と「地方の因習」を併せ持つ興味深い作りとなっている。
語り手は初出の探偵小説家であり、その筆致は緊迫感に満ちていて、ある種の古典的な語り口につい惹き込まれてしまう。夢遊病という素材からも幻想小説のような趣も感じられる。また本作のトリックの都合を考慮すると当然だが、ここでの金田一は主要登場人物というより、ある種の舞台装置としての機能しか有していない事に気付く。しかし境界の越境者であるかのような金田一の軽やかさは戦後社会の暗部を暴く探偵としては正しい立ち位置だろう。
肝心のトリックは実に見事の一言に尽きる。端正な論理の組み立ては本格推理の名に相応しい出来栄え。また次作「八つ墓村」の萌芽となる要素も多々見受けられる点も興味深い。