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Posted by ブクログ
地元の書店で、何の気なしに文庫のホラーコーナーに立ち寄ったら、ふと本書が目に止まった。言わずと知れた超有名ミステリ、手に取ってみると杉本一文氏のイラストによる限定復刻版カバーで(田舎の書店だからかたまたま置いてあった)、おどろおどしくも昭和レトロな味わいが何とも言えず、レジにソッコー持っていった。
ページをめくると冒頭から引きが強い。村の名前の由来となった惨劇の落武者伝説、隠された黄金の行方、相次ぐ凄惨な事件など、祟りと因習に彩られた世界観への没入感がハンパない。物語は、名家の後継として村に呼び寄せられた主人公・辰弥の視点で進むが、そこで彼を待ち受けていたのは、更なる不可解な連続殺人事件だった。
本作は、いわゆる金田一耕助シリーズだが、金田一の活躍はどちらかと言えば控えめ。それよりも、辰弥が何の因果でこの異界のような村に迷い込んでしまったのか、事件を通じて秘められた事実が明かされる描写にウエイトが傾いているな、と感じた。そして、中盤から広大な鍾乳洞を舞台にした冒険活劇へと進む展開が圧巻で、財宝伝説や殺人事件の謎が複雑に絡み合い、ワクワクして読み進められた。
終盤は息もつかせぬスピード感で伏線が回収され、驚きの連続!
帯にあった、辻村深月先生の『皆様、心してください。これが“本家”の凄さです。』のコメント。いやはや、なるほど。深く納得です。
圧巻のストーリー展開を堪能したので、今度はがっつり金田一が推理で魅せる作品を読んでみたいな、と思った。
Posted by ブクログ
映画、ドラマであらすじも犯人も分かった状態で読みましたが結構印象が違いました。
だって映画は山崎努のあの風貌、宣伝での「祟りじゃーー」の雄叫び、鍾乳洞のミイラ、小川真由美の怖ろしい美しさ、連続殺人を高笑いで見下ろす夏八木勲の怨霊、などなどおどろおどろしい印象だったのですが、原作は多くの殺人事件もあるけれども、鍾乳洞冒険だとか、いくつもの愛の姿だとかを経て、ラストは驚きの爽やかさ。やっぱりいいな横溝正史。
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神戸の勤め人28歳の寺田辰弥は、弁護士を通して岡山県の八つ墓村分限者(資産家)の田治見家から「お前は我が家の血を引いている。跡取りとして戻ってきてほしい」と申し入れられる。だが同時に「八つ墓村に帰ってはならぬ。血!血!血!血の大惨劇が再び繰り返されるだろう!」という脅迫状も受け取った。
八つ墓村は、戦国時代に尼子氏再興を志す八人の武者たちが隠し財産とともに身を隠した村だった。最初は穏やかな関係を築いていたが、毛利家による厳しい探索と、武者たちの財産に目がくらみ、村人たちは武者たちを襲撃して皆殺しにした。武者の大将は「七生までこの村に祟る」と呪詛の言葉を残して死んだ。武者たちの祟りを恐れた村人たちは武者たちを「八つ墓明神」として祀った。この時、武者たちを襲ったときの中心が田治見家だったのだ。
そして時は流れて大正時代。田治見家の当主は残虐な要蔵だ。彼は妻子とは別に井川鶴子という女性を暴力で犯し、屋敷の離れに監禁した。鶴子には亀井陽一という言い交わした相手がおり、要蔵の隙を見て逃げ出すが、要蔵が暴れて村全体に被害が及ぶことから、泣く泣く要蔵の妾になる。彼の愛撫や嫉妬や虐待は異常性を極め、鶴子の心の慰めは亀井陽一と密かに密かに文を交わすことだった。
そしてこの物語の語り手、辰弥が生まれたのだった。
だが要蔵は「辰弥の父親は亀井陽一」という噂を知り、鶴子と辰弥に激しい暴力を振るう。ついに鶴子は辰弥を連れて神戸へ逃げ、寺田という男と結婚したのだった。
そして鶴子に逃げられた要蔵の狂気は頂点に達し、詰め襟の洋装に脚絆を履き、鉢巻と胸には懐中電灯を灯して、兵児帯には日本刀、手には猟銃を持ち村人たちを次々次々に襲い殺し回った(画像を見たい方は「八つ墓村 山崎努」で検索!怖ろしいんだけど桜をバックにして妙な美しささえ(^_^;)。32人の被害者を出し、山へ消えて今日に至るまで見つかってはいない。
32人というのが8の倍数だったことから「8人の武者が一人4人ずつの犠牲者を求めた」と、呪いとして伝えられている。
辰弥は初めて自分の母の置かれた酷い環境、自分の身体の痣や火傷の理由、そして父が狂人の殺人者ということを知ったのだった。
さらに脅迫状の「血の大惨劇が繰り返される」の言葉通り、辰弥の眼の前で人々が次々毒殺されていく。
そんな辰弥を訪ねてきたのは金田一耕助という素人探偵だった。探偵って言う割には小柄でモジャモジャ頭でヨレヨレの着物の風采の上がらない吃りのある人物だったんだ。彼は「今後怪しいなって思うことがあったら素直に言いなさいね」って忠告していった。
怪しいことならたくさんある。
まず田治見家は、要蔵の叔母にあたる双子の老婦人お梅様とお竹様が差配している。要蔵の正妻は26年前の事件で殺され、久弥と春代がいるが二人共病弱。そこで異母弟の辰弥が呼び戻されたのだ。
親戚筋には里村慎太郎という復員してからはすっかり尾羽打ち枯らした男と、無邪気すぎっていうか色々危なかっしい妹の典子がいる。
八つ墓村の田治見家と並び立つ分限者には野村家があり、金田一耕助は現当主壮吉の客人だ。野村家には死んだ弟の未亡人の美也子という都会的で美しい未亡人が滞在している。どうやら里村慎太郎とは再婚寸前の関係だったらしい。
他にも村には対になる者たち、二人の尼僧、二人の僧侶、二人の医者がいる。
この対の片方が次々殺されていき、辰弥はそのほぼすべての現場に居合わせる。
さらに辰弥の部屋となった離れ屋敷はかつて母が監禁されていた場所なので母と密かな恋人との心の絆を思わせるし、隣の納戸には秘密の地下道への抜け道があることも見つけた。辰弥が抜け道を探ってみるとそこは広い広い鍾乳洞だった。どうやら戦国時代の尼子の武者たちの隠し財産はここにあるのか!?
この物語は、全てを乗り切った辰弥が、金田一耕助に進められて心の整理として八つ墓村での恐ろしい経験を文章にしたもの。辰弥が完全に巻き込まれた中心人物で本人も相当酷い目に合うんだけど、何しろ素人なので金田一の耕ちゃんから「あなたは村から怪しまれてるんだから、何かあったらすぐに言いなさいね」って言わてるにも関わらず、鍾乳洞では秘密の冒険するし、殺人現場で人を見ても誰にも言わなかったりする。大丈夫か!
さらに自分が容疑者の一人になっている連続殺人よりも「母はどうやって過ごしていたのか」「尼子家臣の隠し財産はどこだ?」「行方不明の父・要蔵はどこに消えた?」ってことや、それよりも自分に好意を示してくれる3人の女性、姉春代、未亡人美也子、遠縁典子との関係にも気を取られてしまう。「朝は春代とご飯食べて、昼は美也子と散歩して、夜は典子と鍾乳洞で会って…」って、あなた村中から狙われてるよ!?
その意味では探偵小説なのに冒険小説!という面白さもあり、青春恋愛小説でもあり、様々な「愛」も出てます。要蔵の狂気執着の愛、鶴子と陽一の引き裂かれない愛、慎太郎と美也子の複雑な愛、閉鎖的な村にいる典子や春代が外から来た「まとも」な辰弥に示す愛、愛によって人に現れる変化もあります。
犯人の動機も結局は「愛」でした。
しかし殺人が解決してみれば…、…、…私は探偵小説において「探偵の眼の前で連続殺人が起こるのは物語の形式上仕方ない」という考えなのですが、今回ばかりは耕ちゃん防げたんじゃないの!?と思わざるを得ない!
そんなこんなを乗り越えた辰弥はこの手記を書き…、ラストはびっくりの爽やかさ。
ええ!?『八つ墓村』といったら山崎努のあまりにインパクトのあるあの容貌、映画予告の「祟りじゃーーー」(本編にこのセリフはない)の叫び、小川真由美の怖ろしい美しさ、惨劇を高笑いする落ち武者亡霊の夏八木勲、鍾乳洞のミイラなどなどおどろおどろしさでは金田一耕助映画トップクラスかと思っていたのに、この原作のこのラストの爽やかさは何なんだ。
今回の事件でも関係のない人たちがたくさん殺される酷い事件だった。しかし戦国時代からの因縁や呪いに明治時代、昭和になっても覆われていた八つ墓村が、今回の陰惨な連続殺人で「祓われた」といえる清々しさ。辰弥だけでなく、八つ墓村も因縁を超えて新しい村を作っていこう!という希望を向いた物語になっていた。
やっぱりすごいな横溝正史。耕ちゃんも今回の連続殺人は防げたんじゃないのとは思うけど、やっぱり清々しい風のような人だ。
Posted by ブクログ
ものすごいスピード感で一気に読ませられました。いやぁ、面白かったです。何とも言えないおどろおどろしさと、田舎村特有の陰険な感じが、全体に緊張感をもたらせていました。
犯人はなんとなく怪しさを感じていましたが、その動機については完全に予想外。これは良かったです。ただ、ここはもう少し深堀してほしかった思いもあります。主人公(?)がバタバタしているうちに、解決してしまいましたが、直接対峙してなんやかんやあってもよかったのでは?
多少の文句はありますが、ページをめくる手が止まらないとはこのことか、というくらい引き込まれました。横溝正史恐るべしです。
Posted by ブクログ
日本ミステリーの古典的名作であり、おそらく犬神家の人々と並びもっとも有名な金田一耕助シリーズの一つだ。過去に読んだ記憶があるが、恐らく十数年前であり、改めて横溝正史への熱が高まってきた今に再読する次第だ。
タイトルがとてもシンプルだが、おどろおどろしい、恐怖感を煽られるもので、これほどタイトルから存在感のある作品は他にないだろうし、読む前から不穏な空気感が漂う作品である。
古典ミステリーに代表される、冒険の部分やラブロマンスも盛り込みそこに一族の相続問題も絡めたかなり盛りだくさんな内容で、単純な推理小説に収まらず、主人公である辰弥の冒険活劇恋愛推理小説ていう方が相応しいかも知れない。
また、探偵金田一耕助側に主人公がいない為、探偵側に立つことの多い現代ミステリーと比べて金田一の活躍は物足りなく映るし、ある意味目新しい作風に思う。金田一の探偵小説の探偵らしがらぬ行動規範は超人的な探偵たちと比べればヤキモキするが、とても人間らしい。
舞台は八つ墓村であり、過去にとても恐ろしい事件が起きた場所で、過去の因縁が冷めやらぬ中主人公である辰弥は、自分の出生の起源を求めこの村を訪れることになる。村はとても閉鎖的な場所であり、辰弥の父が犯した事件が引き金となっており村人たちは辰弥に猜疑の目を向けている。彼の家族である田治見家の作品人達は病弱な人が多く、更には二癖三癖と裏がありそうな人達。
辰弥にとってとても心細い環境下にあり、読書は彼に感情移入しやすく、スリリングな体感をえる。
現代作品ではかなり衝撃的な描写が続くが古典作品としての魅力、スパイスとなっており、とても楽しめた。金田一の活躍が見えない部分が多く、少し物足りなさをかんじるが、小説としてはとても面白かっ
Posted by ブクログ
1938年に起きた「津山三十人殺し」事件をモチーフにして、始まりから実話のようなリアルな恐ろしさがある。
古い作品だが文章は読みやすく、テンポも良いため、先が気になってどんどん読み進めてしまう。昭和の時代に書かれているため、田舎の人や女性、老婆に対する率直すぎる失礼な表現も多々あり、今読むと驚くが、思わず笑ってしまった。
特に印象に残ったのは洞窟のシーン。提灯やろうそく一つで暗い洞窟に入っていく場面はとてもスリルがあり怖くなった。この時代の女性は怖いもの知らずなのか?
犯人探しよりも、村の閉鎖的な雰囲気や集団心理の恐ろしさ、宝探しの面白さが印象に残った。
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