Posted by ブクログ
2016年03月18日
『ひとり横溝正史フェア』のこちらは、えっとえっと何作目でしょう。
忘れました。
豪邸名琅荘は、邸内至る所に仕掛けが施してあり複雑な造りから迷路荘と呼ばれている。
その迷路荘の創始者古館種人は、美しい後妻加奈子とその遠縁にあたる静馬との仲を疑っている。ある日種人は加奈子を斬り殺し、静馬の片腕を斬り落...続きを読むとした上で自死してしまう。
そんな迷路荘に知人の紹介で訪れた金田一耕助は、凄惨な殺人事件に巻き込まれる。
こういって始まる物語で、いつものように金田一耕助がまあまあ殺されてから事件を見事に解決するわけだが、全く内容の記憶がない。
我が家に「迷路荘の惨劇」は二冊あり、間違いなく最低二回は読んでいるはずなのに。
全く読んだ覚えがない。
内容どころか、これって買ったっけくらいに記憶がない。
どこかで頭でもぶつけたか、いや、もしかしたら殴られたのか。
事件発生。金田一さーん。
この本は読み始めるとじきに、子爵だとかフルートだとかが出てきて、なんだかとっても「悪魔が来りて笛を吹く」に似ている。
勿論、似ているところはそこだけだけれど。
フルートの音色というものは、どこかしら淋しげで暗い内容の横溝作品にはよく似合うかもしれない。
屋敷から繋がる洞窟だとか、美しいけれど健やかさはない女性、惨劇に相応しい殺されかたなど面白く読ませる。
それなのにどうして全く憶えていないのか、謎は深まるばかりだ。
横溝正史の作品は時代が時代なので仕方ないが、数え年や尺貫法が用いられている。
そういった表現に慣れていないため、読むたびに頭の中で考えなければならないところが少々手間ではある。かっこ書きで実年齢やメートル法キログラム表記をしてくれると読みやすいかもしれない、などと甘えたことを思ったりもする。
ラストは横溝作品にはしばしば見られる大団円だが、今回の終わり方は好きではない。
「女王蜂」のときにも似たような違和感があったが、わかっている犯罪者を金田一耕助の独断で見逃したり、なかったことにするようなことがおかしいと感じる。
何の権利があって一探偵に過ぎない金田一耕助がそういうことをするのかと疑問であるし不快でもある。金田一耕助の好みで対応を変えられては困る。
最後に至るまで遂に全く思い出すことなく、初読のように謎解きも楽しめた。
わたしの記憶がなくなった謎は未解決のままだけれど。