横溝正史のレビュー一覧
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ネタバレ日本ミステリの古典ともいえる本作。映像化された作品も有名で、私も何回か観た記憶がありますが、小説版は読んでいなかったので、今更ながら手に取ってみました。
映像作品の印象からホラー色の強い作品を想像していましたが、実際に読んでみると、思っていたほど恐ろしさを前面に出した作品ではないように思いました。主人公・辰弥の一人称による語り口が、映像で感じた重苦しさを少し和らげているようにも感じます。
とはいえ、昭和二十年代の地方の村という舞台には、独特の閉塞感と不気味さがあります。村に根付いた人間関係や因習も相まって、物語の底には常に、どこか薄ら寒い空気が漂っている気がしました。
個人的に強く印象に残ったのは、ミステリのトリックや複雑な人間関係よりも、辰弥が村人たちに追われる場面の緊迫感でした。それは、かつて要蔵が村人たちを次々と襲った事件と重なっているように感じたところに起因するのかもしれません。
興味を持って読み進められた一方、かなりのボリュームなので、読み終えるころには少々疲れました。 -
Posted by ブクログ
横溝正史のジュブナイルミステリ作品『まぼろしの怪人 改版』を読みました。
『怪獣男爵』、『黄金の指紋』に続き、横溝正史の作品です。
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横溝正史生誕120年記念復刊! 横溝正史の異色傑作!
厳重な警戒態勢を潜り抜け、高価な宝石類を略奪して日本中を荒らしまわる、まぼろしの怪人。
次々と姿を変えては行方をくらまし、正体も隠れ家も謎のままだった。
そしてとうとう、警視庁の敏腕警部、等々力宛の犯行予告が届く。
クリスマスの夜、警察の威信を賭けた闘いに、現場にあらわれたのは……? 神出鬼没、大胆不敵な大泥棒に、探偵小僧・御子柴進が等々力警部や敏腕記者の三津木俊助らとともに挑む、傑作ジュブナイル。
解説 山村正夫
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1958年(昭和33年)から1959年(昭和34年)にGakken(学研)が発行していた月刊学習雑誌(学年誌)『中学一年コース』、『中学二年コース』に連載され、1979年(昭和54年)に刊行された作品です。
ここ数年間、どんな厳重な警戒体制も潜り抜け、高価な宝石類を略奪して日本中を荒らしまわる、まぼろしの怪人……警察が必死の捜査を繰り広げるが、この男の正体も隠れ家も、いまだにつきとめられてはいない、、、
その怪人から警視庁の等々力警部あてに不敵な犯行予告状が届いた……彼の目当ては、探偵小僧御子柴進が寄宿している、新日報社社長の姪可奈子の宝石であった。
等々力警部と5人の刑事、さらに新日報社の敏腕記者三津木俊助と御子柴少年が警戒に当たった……そして遂に、怪人が予告したクリスマスの夜がやってきたのである、、、
強烈なサスペンスで描く傑作推理。
昭和ジュブナイル作品の愉しさがぎゅっと詰まった一冊……まぼろしの怪人は、変装の名人で神出鬼没、怪盗アルセーヌ・ルパンや怪人二十面相を思わせる痛快な怪盗ぶりが物語の前半をぐいぐい引っ張ります、、、
後半では、怪盗譚だけでなく殺人事件を絡めた2つのエピソードが入り、物語にしっかりミステリの緊張感が加わります……構成のメリハリが効いていて、最後まで飽きません。
探偵小僧こと御子柴進少年の活躍も魅力的で、少年探偵ものの王道らしい爽快さがあります……童心をくすぐる、軽快で楽しいジュブナイルミステリでした。 -
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横溝正史のジュブナイルミステリ作品『黄金の指紋』を読みました。
『怪獣男爵』に続き、横溝正史の作品です。
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横溝正史生誕120年記念復刊! 横溝正史の異色傑作!
「君に預けておく。これを金田一耕助という人に渡してくれ……」そう言って難破船の遭難者が死ぬ前に言付けた黒い箱。
邦雄少年が中を開けて見ると、それは燦然と輝く黄金の燭台だった。
思わず息をのみ慌ててしまおうとした時、彼は妙なことに気がついた。
燭台の火皿に指紋が一つ焼きつけられていたのだ。邦雄は知らなかったが、これこそ一人の少女の運命を握る大切な証拠の品だったのである……。
巧みな変装術と鮮やかな推理で事件の核心に迫る金田一耕助の活躍!
解説 山村正夫
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1951年(昭和26年)から1952年(昭和27年)に『少年少女譚海』という雑誌に連載され、1976年(昭和51年)に刊行された作品……ゴリラのような体と天才科学者・古柳冬彦の頭脳を併せ持つ、稀代の大犯罪者(異形の怪人)・怪獣男爵を主人公とした作品の第3作です。
「これを金田一耕助という人に渡してくれ」……難波船の遭難者が死ぬ前に邦雄少年にことづけた黒い箱、、、
薄幸の少女の運命を握る燭台の謎とは……事件の核心に迫る金田一の活躍いかに!
古き良き冒険ミステリの愉しさがぎゅっと詰まった一冊……難破船と消えた遭難者、怪しげな洋館の地下室、オリオン・サーカスの大曲馬団、人形のすり替えを使った変装術、軽気球での脱出 等々、少年読者を喜ばせるための仕掛けが次々と登場し、サービス精神に満ちています、、、
そして本作では、金田一耕助の“動く名探偵”ぶりが新鮮! いつもの飄々とした観察者ではなく、邦雄少年たちとともに積極的に動き回ります……洋館の探索やサーカス団との接触、危機での判断など、アクティブに事件へ踏み込む姿が描かれ、ジュブナイルならではの軽やかな金田一耕助像が愉しめました。
荒唐無稽さも含めて「少年冒険もの」の王道を踏まえた構成で、横溝正史の筆がそれらを自然にまとめ上げている印象……ただ、邦雄少年が岡山から東京へ「新幹線ひかり号」で移動する描写は、明らかに時代背景と合わず、文庫化の際の修正によるものと思われ、この齟齬は少し気になりました、、、
総じて、冒険とミステリの魅力をたっぷり味わえる快作で、アクティブな金田一耕助の姿も含めて、童心が刺激される愉しい作品でした。 -
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数ヶ月前に世間を震撼させた宝石店強盗事件「天銀堂事件」。この事件の容疑者の1人として挙げられていた旧華族の椿子爵が失踪し、その後山中で遺体で発見された。事件の真相を解明するべく金田一耕助が調査を行なってる最中に、椿家の屋敷で連続殺人事件が発生する…
冒頭で、読後の後味が悪くドス黒い気分になると書かれていたが、全くもってその通りだった。大抵のミステリー小説は犯人が判明し事件が解決するとスッキリするが、本作に関しては例外であると感じた。事件の真相そのものが暗く救われないというのもあるが、エピローグ的なものが書かれていないことが大きな要因だと感じた。事件を解決してすぐに話が終わる為、嫌〜な気分を引きずってしまう。その上、残された登場人物たちの反応や感情を読者が想像する必要があり、それがとてもしんどかった。好き嫌いはあるかもしれないが、個人的にはこういう構成は面白いと思うし好きな作品。
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ネタバレ人面瘡
横溝正史の短編集。
睡れる花嫁
ミステリー内の事件について、「不潔」という表現が目新しく、事件の汚らしさを適切に表している。
作品として腐乱死体を題材に据えており、その腐乱死体にたいしての犯人による異常な行動が今作品のテーマになっている。とてもまとまっております読みやすい短編ミステリーであり、読み応えは充分だ。犯人のトリックについては、面白いが作中所々疑問点があり、特に養娘であるしげるの人物像については疑問点がある。
警察官の死から始まり、死体への凌辱、更には不気味な過去のある犯人と耕助シリーズの嫌らしさが存分に含まれた作品だ。
湖泥
とある農村で娘の失踪事件が発生。むらでは権力争いで北神家と西神家が諍いあっており、失踪した娘はそれぞれ家の息子との因縁がある。金田一は偶然、磯川警部に誘われて今回の事件に関わる事となる。
今作の面白い点はフーダニットの部分ですなわち「誰が犯人なのか」のトリックがとても秀逸である事だと思う。殺人事件の後、疑わしい人物は数名登場するが、二つの事件の内片方では動機があるが片方には無い、一体二つの事件を起こす理由があった人物は誰か。という部分が終盤まで変に匂わされる事がなく、真相が判明すると素直に感心する事ができる。
義眼についての言及が幾つかある訳だが、こんな風に捉えられているのかと現代とのギャップを感じてしまった。
蜃気楼島の情熱
時代的なギャップなのであろうが、最後まで理解が難しい作品だった。結末として、殺人の刑期を教えたとはいえ、あの様な事件の直接的な被害者、加害者の関係で信頼の様な関係がある事について理解に苦しむ。事件は陰惨で、志賀という人物はあまりにも試練のある人生を送っている。事件については村松医師の家族の役割が肝になっており、なる程こういう結末かと腹落ちする。
銀蔵さんと磯川警部が登場、オールスター的な作品であった。
蝙蝠と蛞蝓
とても面白い物語。何かとうだつのあがらない男性が、同じアパートに住む蝙蝠男(耕助)や蛞蝓女に苛立ちながら、彼らを馬鹿にする様な小説を書こうと思い立ち書き始めるが、途中で飽きてしまい放っぽってしまったが、それを悪用する人物が現れて窮地に立っていた所、警察署にやってきた蝙蝠(耕助)に救われ、蝙蝠を好きになったという話(笑)
トリックが上手く、何故行ったこともない殺害された蛞蝓女の部屋に男性の指紋が付着していたのかが一番の見どころ。話自体は短いがまとまっており読み易く、短編としての魅力が詰まっている作品。
人面瘡
夢遊病、人面瘡という捉え難いテーマを主軸においているが、松代と由紀子という全く性格の違った姉妹を中心に物語が進む。実際に事件がおき、犯人は誰かと推理が難しく、犯人がわかった時は見事と感心した。当然、現代では使えないトリックだが(殺人場所、死体の状態から気づかれてしまう)犯人の特徴を踏まえつつ、見事に読者を欺いていると感じた。
戦争時代、一家離散や人と人との繋がりはドラマがあり、その部分を上手に組み込んだ作品だと思う。 -
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金田一耕助シリーズ8冊目。こちらもタイトルは知っているが初見(・・・というか、ここから先は全部コレ)。
明治の権臣・古館種人(たねんど)伯爵が富士の裾野に建てた豪邸・名琅荘(めいろうそう)。明治維新という時代の変動期において建てられたこの豪邸は、粛清や暗殺に対して極度に警戒された作りとなっており、いたるところにどんでん返しや抜け穴等が設計されていた。この複雑怪奇な豪邸は別名、"迷路荘"と呼ばれていた。
名琅荘を古館伯爵の子孫である辰人(たつんど)から譲り受けた実業家・篠崎慎吾は、この豪邸をホテルとして経営に乗り出す。慎吾は、ホテル開業を前にこの豪邸を名残惜しんでもらおうと縁のある人々を集めが、名琅荘と特に縁のない金田一耕助も呼び出されることに。そこには、二十年前に起きた凄惨な事件の因縁を匂わせる人影があり―――。
どんでん返しや抜け穴が張り巡らされた豪邸を舞台に起こる連続殺人事件。設定からしてトリックを重視した内容になるものと思われるが、複雑怪奇な"迷路"のような豪邸を探索するという冒険色を楽しむための舞台装置として描いている印象。むしろ登場したトリックを作中で、"それを実演してみせておのれの知恵をほこり、混乱する捜査陣をひそかに嘲笑してやろうという、いわば小ざかしきエリート意識の現れ"と一刀両断しており、「舞台が複雑怪奇であっても、あくまで事件を起こしているのはただの人。真相は存外単純な話」と語りかけられているようにも感じられた(それは考え過ぎか)。
個人的に、他のシリーズ作品と比べるとインパクトが弱く感じられ、「★3」の気持ちだったが、やはり終わり良ければ総て良し、エピローグを読み終えたら自然と「★4」になっていた。読後の余韻が良い作品は名作と言えよう。 -
Posted by ブクログ
ものすごいスピード感で一気に読ませられました。いやぁ、面白かったです。何とも言えないおどろおどろしさと、田舎村特有の陰険な感じが、全体に緊張感をもたらせていました。
犯人はなんとなく怪しさを感じていましたが、その動機については完全に予想外。これは良かったです。ただ、ここはもう少し深堀してほしかった思いもあります。主人公(?)がバタバタしているうちに、解決してしまいましたが、直接対峙してなんやかんやあってもよかったのでは?
多少の文句はありますが、ページをめくる手が止まらないとはこのことか、というくらい引き込まれました。横溝正史恐るべしです。 -
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ネタバレ■面白い
なるほど、シンプルで割と直球、まさに古典、という感じの面白さ。
手がかりをまき散らして、ほとんどはミスリードだが一本だけ正しい線があります、という作品ではなく、ミスリードは太く鋭く少なめに、意味がありそうなところにはちゃんと意味があり、納得もできる、という作品だった。
ヒントから「あーこれはこういうことでしょう」とわかる箇所があり、それが楽しい一方、全体像としては把握できず、解決編を読むのもまた楽しい。
重要な手がかりは最後の方になるにつれて出てくる一方、最序盤も決して無駄な描写ではなく、道中にも「あ、あれってそういうことだったのか!」という描写が織り込まれている、無駄のない面白さを感じた作品だった。
■読みづらさあり
海外作品ばかり読んでいる自分にとってほぼ初となる日本の古典本格だが、不慣れも相まってまあ読みづらい。
海外作品の場合邦訳されているため古い作品であっても「当時の感覚がわからない」ということはあっても「根本的に文章が読みづらい」ということがあまりない。
しかし日本の古典はほぼ当時そのまんまの文体のため、どうしても読みづらく感じてしまう。
地文も台詞も表現が古いのでスラスラと読みづらく、物の名前や表現も「どういう意味?」となる箇所が多い。
しかし全くついていけないというレベルではなく、重要ポイントはしっかり押さえられるし、漢字や文脈からだいたいこういうことだろと推測できるので、全文の意味を端から端まで完璧に理解できるか、といえば怪しいが、プロット的には問題なく読めた。
日本古典は日本古典で読むのに慣れが必要だな、と感じた。
■見立て殺人
見立て殺人は、「作者にとって作るのが大変というかむしろパターンが狭まって損なんじゃね?」という思いがあった。
というのも、見立てという縛りがあるが故に「なぜ見立てる必要があったのか」をきっちり説明できなければならず、よくあるパターンとして、「連続殺人に見せることで1件でもアリバイがあれば犯人にならないから」的なやつがあり、本作もそれ系かな?と思いつつ読んだ。
しかし本作はまた違う系統の見立て殺人であり、なるほど、これはこれで納得できた。
感情による繋がりと遺言。そもそも、見立てだと探偵役が気づくまでに時間がかかるパターン。
なるほどそういうパターンもあるのか、と新たなパターンを知ることができて勉強になったし、十分に面白いと感じられた本作でした。 -
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ネタバレ■面白い
なるほど、シンプルで割と直球、まさに古典、という感じの面白さ。
手がかりをまき散らして、ほとんどはミスリードだが一本だけ正しい線があります、という作品ではなく、ミスリードは太く鋭く少なめに、意味がありそうなところにはちゃんと意味があり、納得もできる、という作品だった。
ヒントから「あーこれはこういうことでしょう」とわかる箇所があり、それが楽しい一方、全体像としては把握できず、解決編を読むのもまた楽しい。
重要な手がかりは最後の方になるにつれて出てくる一方、最序盤も決して無駄な描写ではなく、道中にも「あ、あれってそういうことだったのか!」という描写が織り込まれている、無駄のない面白さを感じた作品だった。
■読みづらさあり
海外作品ばかり読んでいる自分にとってほぼ初となる日本の古典本格だが、不慣れも相まってまあ読みづらい。
海外作品の場合邦訳されているため古い作品であっても「当時の感覚がわからない」ということはあっても「根本的に文章が読みづらい」ということがあまりない。
しかし日本の古典はほぼ当時そのまんまの文体のため、どうしても読みづらく感じてしまう。
地文も台詞も表現が古いのでスラスラと読みづらく、物の名前や表現も「どういう意味?」となる箇所が多い。
しかし全くついていけないというレベルではなく、重要ポイントはしっかり押さえられるし、漢字や文脈からだいたいこういうことだろと推測できるので、全文の意味を端から端まで完璧に理解できるか、といえば怪しいが、プロット的には問題なく読めた。
日本古典は日本古典で読むのに慣れが必要だな、と感じた。
■見立て殺人
見立て殺人は、「作者にとって作るのが大変というかむしろパターンが狭まって損なんじゃね?」という思いがあった。
というのも、見立てという縛りがあるが故に「なぜ見立てる必要があったのか」をきっちり説明できなければならず、よくあるパターンとして、「連続殺人に見せることで1件でもアリバイがあれば犯人にならないから」的なやつがあり、本作もそれ系かな?と思いつつ読んだ。
しかし本作はまた違う系統の見立て殺人であり、なるほど、これはこれで納得できた。
感情による繋がりと遺言。そもそも、見立てだと探偵役が気づくまでに時間がかかるパターン。
なるほどそういうパターンもあるのか、と新たなパターンを知ることができて勉強になったし、十分に面白いと感じられた本作でした。 -
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ネタバレ悪魔の手毬唄
金田一耕助シリーズの長編ミステリー。鬼首村に伝わっていた古い手毬唄の見立て殺人。20年前に発生し、解決に至らなかった殺人事件を土台に、当時事件を担当していた磯川警部に紹介され、耕助が休養の為、鬼首村の旅館を訪れるところから物語は始まる。
今作は「獄門島」の話題が始終でてくるので、「獄門島」もおすすめする。どちらも見立て殺人でありながら、見立ての意味合いや完成度は「獄門島」の方が優れている様に思うが、人間的な面白さ、物語の奥に沈む醜さの様なものは今作の方が面白いと思う。
とある不幸な人生を歩む人の物語だが、大切な人に裏切られ、自分以外が幸せになっていくという絶望感は本当に不憫で、また残された人を思えばとても悲しくい物語である。最後、とある人物の言葉、励ましは現代作品ではおそらくほとんど描かれないだろうし、考え方として賛同出来ない部分もあるがそれが新鮮に見えた。
また、戦前、戦後の田舎の風習の変遷や、そうはいっても差別的な土壌は当時の田舎社会をありありと描いていれる。
今回、手毬唄の見立てであるが、この手毬唄を見立てとして活用した意図がいまいちわからない。放庵さんがたとえば一つの殺人に関わっていて・・・。という事であれば納得ができるが、半身が不自由な放庵さんがそもそもできることに限界があってしまうし、殺人をするなら余計な事は必要ない様に思う。
磯川警部がとても人間的な役回りをしていて、今まで読んだ作品では深掘りが少なかった分、彼の人柄等を充分に知る事が出来た。警部は20年前の未解決事件について心残りだったし、当時の被害者の妻であるリカにもとても同情している。ストーリーが進むにつれて、動機の一部分が垣間見られながらも、とある被害者が殺害された理由や、20年前の事件と照らし合わせても中々犯人の目星が付かなかった。
作品としては金田一耕助シリーズに相応しい(似合っている)作品だが、耕助が最初の事件で犯人に目星をつけていたとする部分については、打ち明けなくてよかった様に思う。結果、犯人の目星がついているのにいくつか事件を起こされたというのは、いつもの事ではあるがとても残念な部分だ。