横溝正史のレビュー一覧
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1951(昭和26)年から1953(昭和28)年にかけて雑誌連載された作品。『本陣殺人事件』(1946)『獄門島』(1948)『八つ墓村』(1951)『犬神家の一族』(1951)に続く、戦後すぐの初期の金田一耕助ものの名作群に連なるもの。
こないだ比較的後年の『白と黒』(1961)を読んだばかりなので、作風・書法の違いを比較しながら読んだ。『白と黒』では文体がユーモアも含んだちょっと軽い感じのものであった。これは戦後間もない頃の作風とかなり趣が異なっている。
比較的初期の横溝正史の作品世界は怪奇趣味、陰惨さへの好みに彩られているのが魅力的なのだが、60年代以降は薄まったのだろうか?
こ -
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ネタバレこうなったらいいな、もしかしてこの2人は、と、読みながら沸き起こる疑問が、見事に予想通りの展開になるから、読んでいてストレスが少なかったです。もちろん、やきもきするような仕掛けもたくさんあって、久しぶりに読書の醍醐味を感じました。
登場人物みんなが魅力的。特に仁吾さんの描写はまるで金田一さんそのものなのに、全く違う人物で思わずニヤニヤしてしまった。
木の実さんと山崎先生の仲がどうなるかも楽しみ。
楓香先生の秘密はきっと……
仁吾の魅力が途中で少し霞んだように感じるのは、思い入れ過剰だったかな?ういこちゃんに感情移入しすぎてしまったかも。
横溝先生の鬼気迫る、書くことへのエネルギーたるや。そし -
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横溝正史『夜の黒豹』角川文庫。
横溝正史の没後40年&生誕120年記念企画の第一弾。金田一耕助シリーズの怪作が復刊。金田一耕助シリーズはかなり読んでいるのだが、この作品を読むのは始めて。
横溝正史の作品にしては珍しくエロチックな描写もあり、終盤に江戸川乱歩の作品のような活劇もあり、怪作と呼ばれる理由も理解出来る。凶悪犯罪はいつの時代にも起きるのだが、まだネットやPCも無く、科学的捜査方法も確立されていないこの時代には探偵と警察は足を使って情報収集するようだ。そして、集めた情報の断片から名探偵・金田一耕助が下した推理は……
昭和35年11月。連れ込み宿のベッドで女性が縛り付けられ、 -
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表題作は1936(昭和11)年から1937(昭和12)年に発表。
横溝正史を読むのは、実は初めてだ。横溝正史といえば金田一耕助探偵の『八つ墓村』などが続々と角川から映画化されたのが私の小中学生の頃で、「八つ墓村のたたりじゃ〜」などと言うのが友人たちの間で流行った。そのくらいの世代の日本人の多くは、だから横溝正史の作品世界を知ってはいるのだが、実際に原作を読んだことのある人はそう多くはないのではないか。しかし、現在も書店には角川文庫の横溝正史が幾らか並んでいるから、今でも読んでいる人はいるのか。
本作は金田一耕助探偵の出てこない単発作品と思って買ったのだが、実は由利麟太郎という、横溝正史の -
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1930年代発表の、
金田一耕助登場前の妖美な短編を集めた作品集、
全6編。
古い版で既読だが、
訳あって改版を購入したので改めて。
■鬼火
1935年『新青年』分載。
湖畔を散策していた「私」は
廃屋となったアトリエを発見し、
そこにおぞましくも美しい描きかけの絵を見出す。
顔馴染みになった俳諧師・竹雨宗匠の庵を訪ねた
「私」は、問題の絵にまつわる愛憎劇を聞いた――。
宗匠の告白が切ない。
■蔵の中
1935年『新青年』掲載。
妻の死後、過去の交際相手と縒りを戻した
文芸誌編集長・磯貝三四郎が、
持ち込まれた原稿を読んでいると、
自分と愛人のやり取りを盗み見たかの -
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ネタバレまず、雰囲気がとても良い。
文章も、『本陣殺人事件』を読んだ時は読みにくいと感じだが、今ではとても読みやすく感じる。
密室トリックはあまり驚きはしないが、仏像の入れ替え、秋子が見た悪魔の正体、「a=x,b=xならばa=b」を用いた入れ替わり、などの小さなトリックは面白かった。
そして最終章で今度は別の方向から驚かされた。
あの曲に込められたメッセージ、そしてタイトルの意味...切なさをも感じさせるラストもとても良かった。
一点だけ文句を言うのならば、痣はおそらく遺伝はしないので、偶然だとしてもなぜ"偽"東太郎に父の利彦と同じ痣があったのかは一言説明が欲しいところではあ -
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雑誌編集長の磯貝氏のもとに届けられた原稿は、蔵の中で聾唖の姉と育った病気の少年の「蔵の中」という題名の話だった。聾唖だが絶世の美少女だった姉との思い出。姉の死後、大人になった少年は遠眼鏡で蔵の外を覗いていると…。かつては病人や外に出せない訳ありの子供を閉じ込めた蔵の中、中にいる人と外にいる人は違う世界に住みそれは交わることがない。そこから見えた情景は真実だったのか妄想だったのか。蔵の中の住人は常に弱者でありマイノリティなのである。
「鬼火」は万造と代助というお互い仇敵同士の従兄弟とお銀という女の物語。代助を陥れてお銀を奪った万造は列車事故で全身大火傷をして気味の悪いゴム製の仮面を被る。横溝正史 -
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ネタバレ金田一耕助もの。作中の時間軸は有名な「犬神家」などよりはもう少し進んだ時代で、文明的な機械や施設もできてきており、いわゆる経済発展のさなかでこういった作品が書かれていたのだな、という感慨はある。
ヌード写真の女性モデルを専門に扱ういかがわしい写真館(こういうのが商売として成り立っていたということ自体、非常に昭和的)に、恐ろしい容貌の男がふらりと立ち寄ったのが物語の発端。幽霊男と名乗ったその男は、モデルを用立ててまたふらりとどこかへ。指名されたモデルは幽霊男に拉致されてしまい、行方が知れなくなってしまう。女性は後日、都内のホテルで殺害された状態で見つかるが、幽霊男の行方は杳として知れず。衝撃的