横溝正史のレビュー一覧

  • 金田一耕助ファイル19 悪霊島(下)

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    晩年の作品と聞く。双生児と孤島、洞窟などシリーズの世界観に悉く魅了された。警部の身の上話に踏み込むなど、人間描写も氏の集大成だったのではないか...真犯人は誰であれ、残された者の純朴さと溌剌とした生命力が本シリーズの核心と次世代への望みではなかったか...

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    2020年11月07日
  • 金田一耕助ファイル9 女王蜂

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    ネタバレ

    こんなに長い話だとは思わなかった(息切れ)
    美人な女性に群がる男性陣が悉く殺されるこの惨劇の始まりとなった事件まで解き明かすのだから、それは当然か。
    でも、その長さを最後まで飽きさせずに読ませられるのは、流石の筆力だと強く感じた。
    息切れ起こしているのは、単にこちらの体力がなかっただけの話である。
    (何しろ面白いのに4日かかった)

    脅迫文に密室殺人(しかも2種類)時間差トリック、ミステリの要素盛りだくさんなところに、謎の男性陣の登場も多く、内容も濃い。
    その割に、視点はくだんの女性か、謎の男性寄りなので、金田一探偵の存在感がやや薄い。
    第三者から見た金田一探偵みたいな感じで、それはそれで面白

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    2020年10月25日
  • 不死蝶

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    ネタバレ

    読者が推理できるよう、いくつかわかりやすい提示をしている。
    マリとよく似た君江の姿 とか、
    金田一耕助がわざとらしくクシャクシャと手紙を慌ててしまう様子 とか
    真相を知る者が皆死んでしまったのは残念だったが…。
    23年前の君江の書き置きを実行した、その真相は、とても自分の中ですっと入ってきた感じ。

    人面瘡は、ホラー的な要素でも楽しませてくれる。
    昭和の時代のホラーが、周りの世界より不気味にしてくれる。

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    2020年10月23日
  • 殺人鬼

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    ネタバレ

    殺人鬼
    金田一耕助が、この話の主人公を助けたと思ったら…
    終わりに金田一の手記を添えていること、オチが文学的。
    黒蘭姫
    咄嗟とはいえ殺してしまったこと、「デスペレート」になり過ぎ!
    香水心中
    なぜ香水を使ったか?だけはわかった!
    百日紅の下にて
    長閑な中で語られる辛い過去…
    悲しい結末、と思ったけど、でも優しさと温もりのある終わり方だった。

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    2020年10月21日
  • 金田一耕助ファイル19 悪霊島(上)

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    金田一のシリーズで、なぜこれだけ入手困難なのだろう。ネットで買えて良かった!
    登場人物や、類似事件が重なり合うので一気読みがお勧めです。

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    2020年09月30日
  • 金田一耕助ファイル20 病院坂の首縊りの家(下)

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    ドロドロの愛憎劇。
    焼きもちって、ある一定のレベルを越えちゃうと単なる狂気。
    何気に口に出して伝えるって愛情に限らず、事実や気持ちを誤解なく伝える大切な手段だと思う。って、あたりまえだよ、って思うけど全然うまくできない。
    まぁ、そんなきれいに伝えちゃったら物語の根本を否定してしまうんだけど。ただ、考えるきっかけになった。

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    2020年09月22日
  • 金田一耕助ファイル18 白と黒

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    ネタバレ

    新しくできたマンモス団地に横行する怪文書、そのうちに殺人事件が起きてしまう。最初の被害者は顔がわからないように火傷していた。それはなぜ?被害者は誰なのか。
    時代的には、団地という住まい方が新しかった時。本書では、他人と接したくない人にはこの密集した住まい方は辛いともいうし、扉をしめてしまえば自分たちだけの世界であるとも相反することを登場人物たちが言っているが、人の秘密をあばく中傷や噂がどんどん広がっていったこと、その一方、真実は誰にもわからないということがこの物語から感じ取れる。今にも通ずることかもしれない。
    前回のもだけど、意外な、殺人容疑者から無意識にはずしてしまうような人が犯人だった。あ

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    2020年08月09日
  • 金田一耕助ファイル17 仮面舞踏会

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    ネタバレ

    500ページの読み応えのある長編作品。
    最初に江戸川乱歩に捧ぐとあるが、乱歩作品に影響を受けたものなのだろうか。
    冒頭に登場人物紹介があるので、名前を覚えられない私には助かった。
    土日に一気に読んだので、霧の降る軽井沢の世界にたっぷりひたれた。

    金田一耕助シリーズは、今の時代にはない上流階級の暮らしをする人の世界の中での作品が好きだ。
    御用聞きの小僧、婆や、暮らしが落ちぶれたなんて言いながらいちいち細々としたことを頼む、あの感じが私にとってはファンタジーに近い。

    霧が深く前もよく見えないゴルフ場の描写などはホラー的な雰囲気も楽しめる。
    冒頭の心中に向かうシーンはもの寂しく心に残った。

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    2020年07月30日
  • 金田一耕助ファイル20 病院坂の首縊りの家(下)

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    ネタバレ

    切なくて金田一シリーズの中で結構好きかもしれない。犯人の滋がすごくいい人なんだよなあ、そして小雪ちゃんも、ビンちゃんも結局みんな狂わされただけで、根からの極悪人じゃなかったところが辛い。
    女傑の弥生も、実の子や孫には冷たいとは言え、金田一シリーズによく出るような悪女ではなかった。

    謎解きがすごいというわけでもなく、生首風鈴に至る過程ももっと凄惨さを想像してたから物足りなかったけれど、それでも事件の背景が哀しくて好きだった。

    最後のシリーズとしての終わり方も好き。アメリカから帰ってきて本陣殺人事件を解決し、病院坂の事件を終えてアメリカに帰っていく。

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    2020年07月25日
  • 金田一耕助ファイル14 七つの仮面

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    ネタバレ

    本書で一番驚いたことは、金田一耕助がちゃんと歳をとっていること。このまえまで30半ばと表現されていたが、本書では40半ばとなっていた。そういえば、本陣殺人事件あたりでは探偵で身を立てていこうと思った描写があったから、ちゃんと時間を重ねているのだと認識した。居所も友人の旅館へ居候ではなく、渋谷区の緑ヶ丘荘という高級なアパートに住んでいた。
    短編集。
    七つの仮面は、りん子の執念の描写がとてもおぞましく頭から離れなかった。
    最後の薔薇の別荘は対して心が温かくなる。殺人起きたけど。これは私もトリックがわかったぞ。

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    2020年07月23日
  • 金田一耕助ファイル18 白と黒

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    ネタバレ

    それぞれの思惑が入り乱れ、怪文書と殺人と死体偽装と事件は偶然か運命か複雑になる。
    登場人物か結構多いのも混乱してくる。
    そういうわざと複雑に見せてるのはずるい手かもしれないが、個人的には十分に楽しめた。
    順子の夫はかわいそう…
    結局どの殺人も怪文書が原因なので、怪文書犯人の罪は重いぞ…怪文書の動機は陳腐なのに…。
    どん栗ころころお前かーい。

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    2020年07月23日
  • 金田一耕助ファイル15 悪魔の寵児

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    ネタバレ

    金田一耕助は抑えめの登場。
    トリックより人間構成とかあの時誰がいなかったとか、そういう状況証拠から解いていく感じなのかなぁ。
    死体の描写から、犯人は女性になのではという予感はあった。
    悪魔の寵児ってネーミングが関係者の中に浸透していふとこが時代を感じる。
    あと最後の方での欣吾が父となった描写。自分に子供が出来たのは2人目。そのどちらも妊娠には気がつかなかった。自分の愛人たちが辱められては殺された後でも、彼は過去のこととして人生を続ける。そんな感を受ける描写が印象に残った。

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    2020年07月15日
  • 金田一耕助ファイル13 三つ首塔

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    ネタバレ

    本書では、金田一耕助はほとんど登場しない。
    冒頭と最後に出てきて、最後は全てお見通しであったことは語られるが、どのように推理したのかは語られないので、シリーズの中では推理要素は少なめに感じた。

    ヒロインの音禰は、今の時代にも通じるモテ要素を持っていると思った(真似したいくらい)。女としてのプライドはあるが、好きになったら情に熱く、便りなげに見えるのに、しっかり自分を持っていていざとなれば大胆な行動もする。でも、好きな男性の前ではか弱い女である。
    音禰の彼も最初はチャラついた男だけど重要人物なんだろうな程度に思っていたが、最初のギャップが激しい!彼もまた情に熱く、ちょっとした折り目にキスを求め

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    2020年07月10日
  • 殺人鬼

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    短編集

    長編の方が個性と面白さがあって好きだが、
    なかなか良くまとまった短編4つが収録されている。

    「殺人鬼」
    犯人は予想通り、と思いきや、
    本当にそうかはわからない、と謎をはっきりさせない結末で気になる終わり方。


    「百日紅の下にて」
    対談で明かす過去の事件。
    紫の上設定は特に事件に関係ないので、
    性癖か?書きたかっただけか?
    殺人するほど愛の深さを示すため?(笑)
    警察に突き出すためではなく、
    戦友の思いと謎解きのために対談した
    金田一耕助の去り方がかっこいい

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    2020年07月10日
  • 金田一耕助ファイル20 病院坂の首縊りの家(上)

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    金田一耕助最後の事件らしいです。しかも解決に約二十年かかるらしいです。なんというスケールの大きな話! もったいつけた前置きも気分をかき立ててくれます。
    金田一耕助に持ち込まれた令嬢誘拐事件と、奇妙な結婚記念写真の謎。そこに関わってくる不穏な「病院坂の首縊りの家」とこれだけでも雰囲気抜群なのに、そこで起こる殺人事件の現場の凄絶さが! 絵的に凄まじすぎます。そりゃあそんなもの見たら正気失いそう……そんな中、冷静に写真撮ってたあの人たちがまた凄すぎる(笑)。
    事件に絡む人間関係や因縁の複雑さもあってこれは謎めいた面白い事件だと思いきや。……え? 犯人判明? 事件終わった? でもこれまだ上巻ですから。

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    2020年07月07日
  • 金田一耕助ファイル20 病院坂の首縊りの家(下)

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    恐るべき生首風鈴事件から約二十年の時を経て、再び起こる酸鼻な事件。複雑で隠微な人間関係の数々が絡み合い、おどろおどろした雰囲気を盛り立ててくれます。世代をまたいで受け継がれるかのような因縁がもうたまりません。そしてもちろん、ここで過去の事件の真相も明らかになりましたが。想像の斜め上を行くとんでもなさでした……。
    無残で悲愴でどうしようもない悲劇の物語ではあるのですが。不思議と読後感は悪くありません。まるで救いのないわけでもないのか。そして金田一耕助最後の事件なので、有終の美という雰囲気もありますかね。
    ところでトリック、最近読んだ「蝶々殺人事件」と一緒だなあ、って思っていたら。作中でしっかり言

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    2020年07月07日
  • 金田一耕助ファイル9 女王蜂

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    映画より、動機がシンプルでよかった。
    ただ主役は中井喜恵ではない。すごい美人ではない。
    女王蜂というタイトルも今一あっていない。

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    2020年07月03日
  • 金田一耕助ファイル20 病院坂の首縊りの家(下)

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    金田一耕助最後の事件。
    刊行順に、まだ読んでない金田一耕助シリーズを読んでいたので、短編集続きだったが、久々の長編。
    長編の方がやっぱり面白いなぁ。

    下巻の謎解きと新たな事件の重ね技で、続きが気になった!
    金田一シリーズ全般だが、時代のせいか動機とか男女の関わりが共感出来ないが…仕方ない。
    普通に由香利がかわいそうなんだが?!

    怒れる海賊たちの同窓会からの墜落は劇的でした。
    犯人は意外でしたね〜

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    2020年07月02日
  • 花髑髏

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    長編「白蠟変化」、短編「焙烙の刑」「花髑髏」の
    計3編収録。
    いずれも名探偵・由利麟太郎&新聞記者・三津木俊助のコンビが活躍するが、
    ドラマ化された「花髑髏」に辿り着くまでが長かった……(苦笑)。
    以下、各編についてネタバレなしで少々。

    「白蠟変化」
     タイトルの読みは「びゃくろうへんげ」。
     1936年『講談雑誌』連載。
     男女の愛憎入り乱れる中を飄々と飛び回る怪人・白蠟三郎。
     悪人だが意外にしおらしいところもある(笑)し、
     妙な哲学を持ってもいて、
     愛する人の冤罪を晴らそうと必死になっていた女性をいじらしく思ってか、
     妙な気の回し方をする、という……。
     一人二役や悪漢の跳梁ぶり

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    2020年06月26日
  • 花髑髏

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    横溝正史『花髑髏』角川文庫。

    4ヶ月連続復刊刊行の由利麟太郎シリーズ第4弾。名探偵・由利麟太郎と助手の三津木俊介の活躍を描いた『白蝋変化』『焙烙の刑』『花髑髏』の3編を収録。

    フジテレビ系列で吉川晃司を由利麟太郎役に5週連続でドラマ化。テレビドラマの第1話は奇しくも本作の表題作『花髑髏』だった。舞台は現代にアレンジされ、奇妙な風体の由利麟太郎がヒーローぽく冒頭から登場するのだ。作品を読む限り、由利麟太郎は枯れた人物のイメージだったが……何しろあの吉川晃司なのだから仕方がないか。

    『白蝋変化』。由利麟太郎シリーズとしては珍しく混み入ったプロットの短編。妻殺しで死刑囚として刑務所に収監された

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    2020年06月17日