横溝正史のレビュー一覧
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横溝正史『夜の黒豹』角川文庫。
横溝正史の没後40年&生誕120年記念企画の第一弾。金田一耕助シリーズの怪作が復刊。金田一耕助シリーズはかなり読んでいるのだが、この作品を読むのは始めて。
横溝正史の作品にしては珍しくエロチックな描写もあり、終盤に江戸川乱歩の作品のような活劇もあり、怪作と呼ばれる理由も理解出来る。凶悪犯罪はいつの時代にも起きるのだが、まだネットやPCも無く、科学的捜査方法も確立されていないこの時代には探偵と警察は足を使って情報収集するようだ。そして、集めた情報の断片から名探偵・金田一耕助が下した推理は……
昭和35年11月。連れ込み宿のベッドで女性が縛り付けられ、 -
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表題作は1936(昭和11)年から1937(昭和12)年に発表。
横溝正史を読むのは、実は初めてだ。横溝正史といえば金田一耕助探偵の『八つ墓村』などが続々と角川から映画化されたのが私の小中学生の頃で、「八つ墓村のたたりじゃ〜」などと言うのが友人たちの間で流行った。そのくらいの世代の日本人の多くは、だから横溝正史の作品世界を知ってはいるのだが、実際に原作を読んだことのある人はそう多くはないのではないか。しかし、現在も書店には角川文庫の横溝正史が幾らか並んでいるから、今でも読んでいる人はいるのか。
本作は金田一耕助探偵の出てこない単発作品と思って買ったのだが、実は由利麟太郎という、横溝正史の -
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1930年代発表の、
金田一耕助登場前の妖美な短編を集めた作品集、
全6編。
古い版で既読だが、
訳あって改版を購入したので改めて。
■鬼火
1935年『新青年』分載。
湖畔を散策していた「私」は
廃屋となったアトリエを発見し、
そこにおぞましくも美しい描きかけの絵を見出す。
顔馴染みになった俳諧師・竹雨宗匠の庵を訪ねた
「私」は、問題の絵にまつわる愛憎劇を聞いた――。
宗匠の告白が切ない。
■蔵の中
1935年『新青年』掲載。
妻の死後、過去の交際相手と縒りを戻した
文芸誌編集長・磯貝三四郎が、
持ち込まれた原稿を読んでいると、
自分と愛人のやり取りを盗み見たかの -
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雑誌編集長の磯貝氏のもとに届けられた原稿は、蔵の中で聾唖の姉と育った病気の少年の「蔵の中」という題名の話だった。聾唖だが絶世の美少女だった姉との思い出。姉の死後、大人になった少年は遠眼鏡で蔵の外を覗いていると…。かつては病人や外に出せない訳ありの子供を閉じ込めた蔵の中、中にいる人と外にいる人は違う世界に住みそれは交わることがない。そこから見えた情景は真実だったのか妄想だったのか。蔵の中の住人は常に弱者でありマイノリティなのである。
「鬼火」は万造と代助というお互い仇敵同士の従兄弟とお銀という女の物語。代助を陥れてお銀を奪った万造は列車事故で全身大火傷をして気味の悪いゴム製の仮面を被る。横溝正史 -
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ネタバレ金田一耕助もの。作中の時間軸は有名な「犬神家」などよりはもう少し進んだ時代で、文明的な機械や施設もできてきており、いわゆる経済発展のさなかでこういった作品が書かれていたのだな、という感慨はある。
ヌード写真の女性モデルを専門に扱ういかがわしい写真館(こういうのが商売として成り立っていたということ自体、非常に昭和的)に、恐ろしい容貌の男がふらりと立ち寄ったのが物語の発端。幽霊男と名乗ったその男は、モデルを用立ててまたふらりとどこかへ。指名されたモデルは幽霊男に拉致されてしまい、行方が知れなくなってしまう。女性は後日、都内のホテルで殺害された状態で見つかるが、幽霊男の行方は杳として知れず。衝撃的 -
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ネタバレこんなに長い話だとは思わなかった(息切れ)
美人な女性に群がる男性陣が悉く殺されるこの惨劇の始まりとなった事件まで解き明かすのだから、それは当然か。
でも、その長さを最後まで飽きさせずに読ませられるのは、流石の筆力だと強く感じた。
息切れ起こしているのは、単にこちらの体力がなかっただけの話である。
(何しろ面白いのに4日かかった)
脅迫文に密室殺人(しかも2種類)時間差トリック、ミステリの要素盛りだくさんなところに、謎の男性陣の登場も多く、内容も濃い。
その割に、視点はくだんの女性か、謎の男性寄りなので、金田一探偵の存在感がやや薄い。
第三者から見た金田一探偵みたいな感じで、それはそれで面白 -
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ネタバレ新しくできたマンモス団地に横行する怪文書、そのうちに殺人事件が起きてしまう。最初の被害者は顔がわからないように火傷していた。それはなぜ?被害者は誰なのか。
時代的には、団地という住まい方が新しかった時。本書では、他人と接したくない人にはこの密集した住まい方は辛いともいうし、扉をしめてしまえば自分たちだけの世界であるとも相反することを登場人物たちが言っているが、人の秘密をあばく中傷や噂がどんどん広がっていったこと、その一方、真実は誰にもわからないということがこの物語から感じ取れる。今にも通ずることかもしれない。
前回のもだけど、意外な、殺人容疑者から無意識にはずしてしまうような人が犯人だった。あ -
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ネタバレ500ページの読み応えのある長編作品。
最初に江戸川乱歩に捧ぐとあるが、乱歩作品に影響を受けたものなのだろうか。
冒頭に登場人物紹介があるので、名前を覚えられない私には助かった。
土日に一気に読んだので、霧の降る軽井沢の世界にたっぷりひたれた。
金田一耕助シリーズは、今の時代にはない上流階級の暮らしをする人の世界の中での作品が好きだ。
御用聞きの小僧、婆や、暮らしが落ちぶれたなんて言いながらいちいち細々としたことを頼む、あの感じが私にとってはファンタジーに近い。
霧が深く前もよく見えないゴルフ場の描写などはホラー的な雰囲気も楽しめる。
冒頭の心中に向かうシーンはもの寂しく心に残った。
美 -
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ネタバレ切なくて金田一シリーズの中で結構好きかもしれない。犯人の滋がすごくいい人なんだよなあ、そして小雪ちゃんも、ビンちゃんも結局みんな狂わされただけで、根からの極悪人じゃなかったところが辛い。
女傑の弥生も、実の子や孫には冷たいとは言え、金田一シリーズによく出るような悪女ではなかった。
謎解きがすごいというわけでもなく、生首風鈴に至る過程ももっと凄惨さを想像してたから物足りなかったけれど、それでも事件の背景が哀しくて好きだった。
最後のシリーズとしての終わり方も好き。アメリカから帰ってきて本陣殺人事件を解決し、病院坂の事件を終えてアメリカに帰っていく。