横溝正史のレビュー一覧
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ネタバレ星二つをつけたくないので3にしたがおそらく読み返すことはないダウナー系短編集。面白くない、というわけではない。
殺人鬼:探偵小説家が主人公なので作家本人想定のほのぼの作かと思ったら意外な展開に。接点のない遺族の名誉を守る自己犠牲、としたらいい人すぎないか。
黒蘭姫:タイトルが結構好き!短期間に終わった京橋裏の三角ビル五階事務所時代の話というのが希少性。犯人は事件が起こると同時にピンとくるレベル。でも切ないし多少気持ちもわかるような。
香水心中:軽井沢行きながら先方落石で渋滞のじりじり感にふさわしい展開。見た目と実の性格が対照的な兄弟等面白い要素なのに対し、犯人や真相はこれじゃないほうがよかったのでは。
百日紅の下にて:復員直後、亡き戦友からの伝言を伝える(この後獄門島に向かう)のでおそらく作品時系列では一番若い金田一耕助。あまり好きになれない設定の話ではあるが、非常時の大困難に埋もれてこういう悲劇も多かったのかもしれない。終戦直後の百日紅、それだけで、まだ暑いのに日が短くなる季節感、物語にふさわしい空虚な抒情を伝える。 -
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ネタバレ悪魔の降誕祭 :渡米して成功した女性歌手の話、由利麟太郎先生でもあって途中まで展開似ていたような。こういう犯人設定は有名作がそこそこあるなかで本作はさほど印象に残らない(+背負ってきた人生の重さ等に味がある横溝正史の良さが出しにくい)けれど、自作の劇の内容まで騙しに使うのは渋い。犯人のクリエイティビティというか、なぜかクリスティ「葬儀を終えて」の自虐的狂言を思い出した。
女怪:最初だけながら伊豆も舞台としていいですよね。変装見抜けないものなのかなあ。。。出会い方の印象の違いがそこまで心理的に影響するのか?とはいえ哀切感が好きな作品。真相判明した時点でぷつっと幕切れにしたほうが余韻がありそうだけど、金田一耕助の恋愛が絡んだために書簡スタイルでこういう終わりになったのかも。タイトルがあまり内容にあっていない、他にいいのないかなと勝手に考えてみたりして。八つ墓村事件で高収入があったらしいけれど、依頼者(全く応えられていなかった)ではなく主人公からのお礼でしょう。
霧の山荘:メイントリックとしてエラリー・クイーンの『神の灯』(1935)風をやってみたかったのかもしれない。電車移動を絡めた小技なども少しクイーン的。同じ東京軽井沢間でも香水心中は車移動+渋滞でしたが。 -
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ネタバレタイトルにする謎のキーワードは、解明後みんながスッキリ腑に落ちるような常識的なものにしてほしかった。経年で陳腐化してしまったのか…社会派のテーマで新聞連載をするにあたり、その方面の先達である松本清張が話をどうとでも自由に展開できるために敢えて内容と直接関係ない抽象的なタイトルをつけていたのにならったけれど、慣れないので中途半端に重なってしまったとか?
最初に出てきた気のいい元夜の女性など、他の横溝正史作品と同じく感じの良い登場人物が多く、特に 「犬神家の一族」の苦い後日談のような、ちょうど事後共犯役だった管理人さんはぜひ立ち直って元妻と一家で幸せになってほしい(娘さんは当然無事だったよね?)と思えた。 -
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昔の角川文庫の杉本一文氏のイラスト入り表紙は非常に評価が高いけれど個人的には怖いので苦手、この表紙は雰囲気を踏襲しつつ薄味になって、いかにもモギャーッと叫び出しそうな怖キモ可愛さです。
読み慣れない文体で多少時間がかかったけれど嫌いではない。著者はいかにもこんな感じの人ですね。各章のタイトルが当時の映画名にかけたりしてせっかく凝っているので目次を作ってくれたらよかったのではないかと思う。また登場人物の名前も同様に凝っていて、結構人数が多いので覚えるのが厳しく、海外ミステリのように人物一覧表が欲しかった。
角川文庫はあとがきがないものが多いけれどこちらには解説がついていて「混沌とした状勢のなかで、再建の機運が至るところに漲っていた東京の、荒っぽさに包まれた 逞しい 生の悲喜劇」と言われると途端に感動的になってすごい。レビューの楽屋は年代的にもちょうど黒澤明の「野良犬」の感じでは。 -
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幽霊男
探偵VS怪人は古典ミステリーの醍醐味の一つであり、探偵が怪人に誘拐された美女を助けてというのは一種のジャンルの様なお約束である。
今回、ヌードモデルの事務所に歯が三本しか無い奇妙な見た目の「幽霊男」が現れ、彼が次々とヌードモデルを攫い連れ去り、見るも無惨な殺人を重ねていく。「幽霊男」はあらゆるトリックを駆使しながら警察達を嘲笑い、世間を恐怖に落とす。
一方、金田一耕助は前半の終わり頃から登場し、「幽霊男」と相見える。一連の争いがありながら終盤、耕助は驚きの真相に辿り着く。
物語の構成自体が奇妙奇天烈な様相で、中盤後半から終盤にかけてまるで全く違った話の様に転換してしまう。中盤までは未知なる怪人「幽霊男」の正体が掴めずにドキドキしながら読み進めたが、終盤近くから急に「マダムX」などの新しい怪人物が登場し、一気に異様さが消えて「怪人対探偵」の面白さが薄れてしまった。
怪人の動機は正しくサイコパスてきなもので猟奇的、それに対して変に対抗組織みたいなものを作らなくても良いと思うし、この動機であればもっとグロテスクに、目を覆いたくなる様な惨劇を最後までテーマにして書き切った方が面白かった様に思う。(二階堂黎人の二階堂蘭子シリーズはこのあたりがとても上手い。)
今回は等々力警部が登場するが、磯川警部程耕助とのやりとりが深くはない。(まだなんとなくぎこちない様な印象を受ける。)
また、今作の結末は捉え方が全くわからないのだが、終盤の彼、彼女の運命は読者の捉え方、リドルストーリー的な展開になっているが現代で読んでいるせいか感動的な抒情的な捉え方が全くできず、反対に淡々とでも良いので後日談的に物語を締めた方が読み易かった。
読んだ感想としては、後半までの展開、異様さはかなり面白かったのだが、残念ながら終盤一気にしらけてしまった。好みとしてだが、最終盤まで怪人一辺倒で通した方が浪漫があったのになぁ(笑)。 -
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ネタバレ迷路荘の惨劇
犯人の最後は自業自得だと言えるが、あまりにも衝撃的であり、陰鬱な結末である。最後、畳みかけと言うよりは、無理に話を進めたような印象があり、もう少し結末の部分は丁寧に描かれても良かったように思う。登場人物のミスリードについては様々なミステリーで用いられる手法であるが、今回も怪しい人が実は被害者であり、被害者だと思われていた人が実は加害者であると言う、形がとられている。最後犯人の名前さえ使わずに謎解きをされる様子はとても新鮮であったが、筆者までもがまるで犯人を憎んでいるような描写なっており今まで経験したことのないような良印象を受けた。このような書き方は壮絶な事件を起こした。犯人の結末としてとても良い描写のように思えた。近代ミステリーのように、この後実は…といったような何か真相がありそうな気もしたが、事件自体はそのまま終着する。
一方で、第一の殺人については、驚きの結末が最後語られることになり、ただし、幸助のこの判断は、僕は実はあまり好きではなく、以前エルキュールポワロがオリエント急行で下した名ジャッジとは少し趣きが異なり、ある意味で真犯人は罪を償う場面があってもよかったように思う。しかし糸さんはキャラクターが立っているのである意味で、こういった結末にはうってつけの人物である。彼らの金田一への感謝は一入だと思うが、後々どちらかが再登場したらとても面白いと感じた。
物語全体として登場人物は癖のある人達ばかり。また、迷路荘の所以についても、古館一族の人としての嫌らしさ、よく深さが背景にこびりついていて嫌な雰囲気を醸し出しているが、たの作品に比べるとホラーチックな部分もなく少し物足りない。
警察達と金田一が少しづつ打ち解けチームになっていく様子がとても面白い。金田一耕助の最大の長所はコミュニケーション能力であり、今回もこの能力が遺憾無くされている。推理についてはとても理路整然としているが、真相を彼がどこで、どのきっかけできづきはじめているのかがわかればもっとおもしろい。 -
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ネタバレう~~ん、超有名作ですが自分としてはあんまり、でした。
■要素
①ランダム性
1)丑松は、毒入りではないカプセルも持っていたが、毒入りのカプセルを辰弥の目の前で飲み死んだ
2)久弥は、他人に自分が飲む薬を選ばせたが、どうやって毒入りの薬を飲ませたのか
3)港禅は、本膳のうち1/2の確率で毒入りの方の酢のものを食べたが、どうやって1/2を引かせたのか
について、「どうやったんだろう」というのがワクワク面白ポイントなところ、「たまたまでした」という結論は、「えっ」となるというか、もっと何かほしかった。
②背景
「落ち武者が八つ墓村に来て云々のくだり」「要蔵の32人殺し」についても、もっと何か関係してほしかった。
「辰弥が実は亀井陽一の子」も、「まあ、でしょうねえ」という感じで、特に驚きはなかった。
③その他
他にも、「小梅と小竹は誰が見ても区別が付かない」というギミックとか、「なぜ毒殺と絞殺をわけなければならなかったのか」とか、「実は要蔵はまだ生きているんじゃないか」とか、「地図が本当に示す物は何か」とか色々と使えたように思うが、どれも特に何も無くそのまんまだったので、物足りなく感じてしまった。
■本格+冒険+スリラー
そもそも本作の作りが「殺人事件(本格)」+「鍾乳洞(冒険)」+「逃走(スリラー)」となっており、特に後半は冒険・スリラー要素が多くなる。
これによって本格推理小説的な部分が相対的に薄まってしまったのではないかな、という気がした。
自分は『本陣殺人事件』のようなガチガチの一分の隙も無い美しい本格作品が好きなので、その点について冒険要素が強く、事件の解決パートの説明が薄めの本作はあんまり・・・と感じてしまった。 -
購入済み
意外性は高いものの
しっくりこない感じがある。
そのへんは好みの問題かもしれないが。
まぁ、この本にたどり着くのは
金田一シリーズを一通り読んだ人だろうから
これもこれとして、楽しめると思います。 -
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ネタバレ[霧の中の女]
霧の中に消えた女の正体とは? 現場から消えた服や靴の謎とは? 大都会・東京で起きた奇怪な事件に金田一耕助が挑む。
偶然と「世間は狭い」に頼りすぎな謎解きだったように感じたが、戦後間も無い東京の裏風俗を見たようでワクワクもした。
[洞の中の女]
欅の木の洞が、何故かセメントで固められていて、その割れ目から長い毛髪が一筋垂れていた。掘り返すと、女の死体が!
不気味且つ猟奇的な導入で惹きつける。複数の男女の愛憎関係が絡み合っていて、ドロドロ⋯。愛情のもつれは恐ろしい。
[鏡の中の女]
かつての事件で知り合った読唇術の得意な増本女史が、鏡越しに見た女の唇の動きを読んで、恐ろしい犯罪計画を察知した。
半信半疑の金田一耕助だったが、実際に事件が発生してしまう。だが奇妙なことに、計画者の女が被害者となってトランクに詰められていたから、事態は混迷を極め⋯
増本女史が、準レギュラーなのかなと勘違いするくらいの存在感なのが面白い。読唇術の盲点を突く金田一の推理に唸った。
[傘の中の女]
海水浴を楽しむ金田一耕助の目の前で、その凶行は行われた⋯。ビーチパラソル越しに起きた殺人事件に探偵魂が燃える。
同じ柄のビーチパラソル、錯綜する目撃証言⋯短い頁数にこめられた本格趣味満載のシチュが最高。大納得の真相だった。
[鞄の中の女]
車のトランクからはみ出していたのは⋯死んだ女の脚!? それを発端として巻き起こった連続殺人事件に金田一耕助が挑む。
なんと大胆な犯行だろう。堂々としているほど疑われにくいのは納得。些細な違和感から真相を看破する金田一の頭脳がすごい。
[夢の中の女]
未解決殺人の被害者の妹の死体が、姉が殺されたのと同じ場所で発見される。同一犯の犯行なのか。犯人に利用された金田一耕助が真相に迫る。金田一の冷静さの中に、後悔と怒りが入り交じっていたのが悲痛だった。
[泥の中の女]
死体消失、そして、時間差で川に浮いたふたつの死体の謎に金田一耕助が挑む。謎めいた導入に引き込まれた。結構複雑な経緯を短編に落とし込む作者の練達の筆に唸る。
[柩の中の女]
石膏像の中に女の死体が。金田一耕助が猟奇的な犯罪の背後の爛れた人間関係に肉薄していく。胸のすくような名推理、というわけでは無かったけど、納得の真相だった。
[瞳の中の女]
1年前、頭を殴られ記憶喪失となった男が唯一覚えていた顔だけの女の謎とは⋯。金田一耕助と等々力警部が、仲良く男を尾行する様子が微笑ましい。意外すぎる結末に呆然唖然。こんなのアリかよ、という感じ⋯
[檻の中の女]
霧の隅田川。鈴の音と共に流れてきた小舟に襦袢だけ纏った女が乗っていた。犬の檻に押し込まれて⋯。衝撃の導入だ。猟奇的な血みどろシチュエーションも登場し、横溝ワールド全開且つ、清張ばりの社会派要素も⋯
[赤の中の女]
海水浴場を舞台にした連続殺人。意外な真相を看破する金田一耕助の名探偵ぶりが鮮やかな一編だった。等々力警部が海水浴場にいつもヘルメットを被ってくるのは何故?