横溝正史のレビュー一覧
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ネタバレ新しくできたマンモス団地に横行する怪文書、そのうちに殺人事件が起きてしまう。最初の被害者は顔がわからないように火傷していた。それはなぜ?被害者は誰なのか。
時代的には、団地という住まい方が新しかった時。本書では、他人と接したくない人にはこの密集した住まい方は辛いともいうし、扉をしめてしまえば自分たちだけの世界であるとも相反することを登場人物たちが言っているが、人の秘密をあばく中傷や噂がどんどん広がっていったこと、その一方、真実は誰にもわからないということがこの物語から感じ取れる。今にも通ずることかもしれない。
前回のもだけど、意外な、殺人容疑者から無意識にはずしてしまうような人が犯人だった。あと犯人ということをわかって改めて本人の言動を考えると…滅茶苦茶性格わりー!って思った。
それと、文庫の最後の方にはいつも、今日の人権擁護の観点から照らして不適切な表現が…とあるが、この時代は同性愛者は頭おかしい人扱いなのね。忌まわしい、とか、悪い癖が、という表現。これがそこまで遠くない昭和の話なんだけど、随分時代は変わったなぁと思った。
あと金田一が歳をとったせいか、女性に対してや性的なものに対して赤面したりオロオロとまどう描写がなくなったのところが、シリーズの時間経過を感じさせるな。 -
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ネタバレ500ページの読み応えのある長編作品。
最初に江戸川乱歩に捧ぐとあるが、乱歩作品に影響を受けたものなのだろうか。
冒頭に登場人物紹介があるので、名前を覚えられない私には助かった。
土日に一気に読んだので、霧の降る軽井沢の世界にたっぷりひたれた。
金田一耕助シリーズは、今の時代にはない上流階級の暮らしをする人の世界の中での作品が好きだ。
御用聞きの小僧、婆や、暮らしが落ちぶれたなんて言いながらいちいち細々としたことを頼む、あの感じが私にとってはファンタジーに近い。
霧が深く前もよく見えないゴルフ場の描写などはホラー的な雰囲気も楽しめる。
冒頭の心中に向かうシーンはもの寂しく心に残った。
美沙に毛糸を拾わせようとして色盲を指摘した時のシーンは思いもかけなかったのでドキっとしたし、ゾッとした。
個人的には千代子さんのその後や忠熙とどうなったかも知りたかったなぁと思った。 -
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ネタバレ切なくて金田一シリーズの中で結構好きかもしれない。犯人の滋がすごくいい人なんだよなあ、そして小雪ちゃんも、ビンちゃんも結局みんな狂わされただけで、根からの極悪人じゃなかったところが辛い。
女傑の弥生も、実の子や孫には冷たいとは言え、金田一シリーズによく出るような悪女ではなかった。
謎解きがすごいというわけでもなく、生首風鈴に至る過程ももっと凄惨さを想像してたから物足りなかったけれど、それでも事件の背景が哀しくて好きだった。
最後のシリーズとしての終わり方も好き。アメリカから帰ってきて本陣殺人事件を解決し、病院坂の事件を終えてアメリカに帰っていく。 -
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ネタバレ本書では、金田一耕助はほとんど登場しない。
冒頭と最後に出てきて、最後は全てお見通しであったことは語られるが、どのように推理したのかは語られないので、シリーズの中では推理要素は少なめに感じた。
ヒロインの音禰は、今の時代にも通じるモテ要素を持っていると思った(真似したいくらい)。女としてのプライドはあるが、好きになったら情に熱く、便りなげに見えるのに、しっかり自分を持っていていざとなれば大胆な行動もする。でも、好きな男性の前ではか弱い女である。
音禰の彼も最初はチャラついた男だけど重要人物なんだろうな程度に思っていたが、最初のギャップが激しい!彼もまた情に熱く、ちょっとした折り目にキスを求めるところや後半音禰を励ますところは感動的でさえあった。惚れてまうやろー!と思うくらい。
最後まで生きているかとっても不安になるくらい尊い愛情を見せてもらった。
金田一耕助というより、音禰の冒険譚として、世界に入り込んで一気に読むのがおすすめ。 -
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金田一耕助最後の事件らしいです。しかも解決に約二十年かかるらしいです。なんというスケールの大きな話! もったいつけた前置きも気分をかき立ててくれます。
金田一耕助に持ち込まれた令嬢誘拐事件と、奇妙な結婚記念写真の謎。そこに関わってくる不穏な「病院坂の首縊りの家」とこれだけでも雰囲気抜群なのに、そこで起こる殺人事件の現場の凄絶さが! 絵的に凄まじすぎます。そりゃあそんなもの見たら正気失いそう……そんな中、冷静に写真撮ってたあの人たちがまた凄すぎる(笑)。
事件に絡む人間関係や因縁の複雑さもあってこれは謎めいた面白い事件だと思いきや。……え? 犯人判明? 事件終わった? でもこれまだ上巻ですから。そんな簡単なはずはないですよね。当然。 -
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恐るべき生首風鈴事件から約二十年の時を経て、再び起こる酸鼻な事件。複雑で隠微な人間関係の数々が絡み合い、おどろおどろした雰囲気を盛り立ててくれます。世代をまたいで受け継がれるかのような因縁がもうたまりません。そしてもちろん、ここで過去の事件の真相も明らかになりましたが。想像の斜め上を行くとんでもなさでした……。
無残で悲愴でどうしようもない悲劇の物語ではあるのですが。不思議と読後感は悪くありません。まるで救いのないわけでもないのか。そして金田一耕助最後の事件なので、有終の美という雰囲気もありますかね。
ところでトリック、最近読んだ「蝶々殺人事件」と一緒だなあ、って思っていたら。作中でしっかり言及されていたのに笑いました。作中の世界でも読まれてたんですね。 -
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長編「白蠟変化」、短編「焙烙の刑」「花髑髏」の
計3編収録。
いずれも名探偵・由利麟太郎&新聞記者・三津木俊助のコンビが活躍するが、
ドラマ化された「花髑髏」に辿り着くまでが長かった……(苦笑)。
以下、各編についてネタバレなしで少々。
「白蠟変化」
タイトルの読みは「びゃくろうへんげ」。
1936年『講談雑誌』連載。
男女の愛憎入り乱れる中を飄々と飛び回る怪人・白蠟三郎。
悪人だが意外にしおらしいところもある(笑)し、
妙な哲学を持ってもいて、
愛する人の冤罪を晴らそうと必死になっていた女性をいじらしく思ってか、
妙な気の回し方をする、という……。
一人二役や悪漢の跳梁ぶりは非現実的だが、
エログロナンセンス活劇として愉快に読めてしまった。
が、最後の由利先生と俊助の溜め息がほろ苦い。
「焙烙の刑」
1937年『サンデー毎日』掲載。
タイトルは、中国古代・殷の紂王が行った火炙りの刑のこと。
俳優・桑野貝三は画家・瀬川直人と結婚した
又従妹の葭枝から相談を受け、
奇妙な事件に巻き込まれた――。
桑野が賢明にも、それを友人・三津木俊助に打ち明けたことで
由利麟太郎が担ぎ出され、事件は解決するが、
年の離れた妻の日記を読んで嫉妬に狂った夫が
手の込んだ策を弄するところが奇怪、気色悪い。
「花髑髏」
1937年『富士』掲載。
精神科医・日下瑛造が殺害され、養女・瑠璃子は負傷。
瑛造の息子・瑛一、日下家の書生・宮園魁太、
瑛造の友人・湯浅博士に疑いの目が向けられ……。
ドラマを先に観てしまったが、充分に楽しめた……
というか、やはり別物である。
バス停の名前に変更されていた「二本榎」が
本当に二本の木だったところで、ちょっと笑ってしまった。 -
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長編「蝶々殺人事件」と短編「蜘蛛と百合」「薔薇と鬱金香」の
計3編収録。
以下、ネタバレしない範囲でザックリと。
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「蝶々殺人事件」
戦後再会した探偵・由利麟太郎と新聞記者・三津木俊助。
二人は過去の難事件を回想し、残された資料を元に
三津木が小説を書いてはどうかという話になり、
昭和12年、原さくら歌劇団に降りかかった惨劇について、
当時のマネージャー土屋恭三が綴った日記が開陳される。
東京公演に引き続き、大阪へ向かった原さくら歌劇団だったが、
稽古の直前になっても肝心のさくらが到着せず、
一同が気を揉んでいると、
オーケストラのコントラバスのケースから、
萎れた花に包まれた彼女の遺体が発見された……。
本筋からは逸れる部分で用いられた
軽い叙述トリックが心憎い。
映像作品では表現しにくい、
活字ならではの小技というべきか
(マンガでも可能だろうけれども)――に、やられた!
と膝を叩いてしまった。
この部分はドラマに採用されるのだろうか……
されない気がするが……どうなのだ……。
ショッキングな幕開けだったが、
他の殺人はアッサリしたスタイルだし、
背後の事情などにドロドロした情念は感じられず、
同じ由利先生シリーズでも『真珠郎』の怪奇趣味とは
打って変わって洗練された推理小説。
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「蜘蛛と百合」
新聞記者・三津木俊助の友人でジゴロの美青年・瓜生朝二が、
俊助と別れた直後、何者かに殺された。
俊助は朝二が関係を持っていた美女・君島百合枝に接近し、
探偵・由利麟太郎に釘を刺されたにもかかわらず、
彼女の魔性に魅入られ……という、妖美な物語。
百合枝と“夫”の歪な関係の完成に手を貸す由利先生と俊助
――という、清廉な彼らには珍しく
非道徳的な雰囲気に包まれて終わる作品。
私はキッチリ、カッチリした本格推理小説より、
こういう耽美的な怪奇・探偵小説が好きなのだった。
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「薔薇と鬱金香」
鬱金香夫人=マダム・チューリップと綽名される
美人雑誌記者・弓子は、五年前、夫の畔柳博士を殺害され、
未亡人となったが、小説家・磯貝半三郎と再婚した。
畔柳博士を殺したのは当時の美青年人気歌手《薔薇郎》だったが、
彼は獄中で病死。
今は幸福に暮らす磯貝夫妻に、
死んだはずの《薔薇郎》の魔の手が――。
予想外のハッピーエンドだが、
気になるのは薬で眠らされた(?)きりの
堀見三郎くん、今いずこ……。 -
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明治の元老、種館種人が建てた迷路荘でかつて残虐な殺人事件が起きた。
種人の息子一人が妻の加奈子と当時下宿していた尾形静馬の不貞を疑って二人を殺害しようとした。
加奈子は殺されたが一人は静馬に反撃を受けて殺害された。片腕を切り落とされた静馬は裏山の洞窟に逃げてそれ以来消息が分からなくなった。彼が生きてるのか死んでいるのか誰にも分からなかったが、そんな静馬の影が現代になって現れた…
迷路荘の隠し扉などの仕方を上手く使っていたのと種館家に恨みを持った静馬を思わせる変装した片腕の男が現れたり読書の想像を膨らませてくれる様々な要素があって面白かったです。 -
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横溝正史の作品には、「長編はめちゃくちゃ面白いが短編はそこまででも…」というイメージを持っていたのだけれど、この本を読んでそれは大間違いだったと気付かされた。あの短いページ数でこれだけのドラマを見せてくれるなんて。それはものすごい技巧であるのに、それを必要以上に感じさせず、さらりと読ませてしまう。すごい。どの短編も楽しかった。めくるめくワンダーランドのような一冊だった。中でも特に面白いと思ったのは「妖説血屋敷」「青い外套を着た女」だった。恐ろしい昔話に彩られたものから、軽快な読み口のもの、不思議な後味のもの……本当に楽しい読書の時間だった。