あらすじ
裕福な避暑客の訪れで、閑静な中にも活気を見せ始めた夏の軽井沢を脅かす殺人事件が発生した。被害者は画家の槇恭吾、有名な映画女優・鳳千代子の三番目の夫である。華麗なスキャンダルに彩られた千代子は、過去二年の間、毎年一人ずつ夫を謎の死により失っていた。知人の招待で軽井沢に来ていた金田一耕助は早速事件解決に乗り出すが! 構想十余年、精魂を傾けて完成をみた、精緻にして巨大な本格推理。
カバーイラスト/杉本一文
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再読。
それでも面白かった。
長いけれど、後半は事件解決に向けて一気に展開していくので読む価値はあり!
金田一耕助行くところに、事件あり。
今回も大活躍。
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大もとを語れば全て戦争か起因していると言えるけれども、プライドを捨てられない人間が企んだ人生をつぎ込んだ大犯罪。
文中でも何度か使われているけれどもまさしくゾッとするような事象が多く起こる。
個人的にちょっと度肝を抜かれたのは、大きな事実の発見!と思われるような出来事が解決に向かうにつれてメインはそこでは何んだ!と、読者をミスリードする文脈の素晴らしさ。やっぱり横溝正史は面白い。
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誰が犯人か最後まで分からなかったので、最後まで面白く読めた。操の責めている時は長かったしそこまで面白く無かったので辛かったけど。あと、今までと違ってマッチを巡る着想が、最後の最後にそこに繋がるんだという伏線回収も驚きがあって面白かった。色盲の生まれが犯人を見つける、犯人がどういう人物か分かる一端となるのが勉強にもなってある意味感嘆した。トリックというよりは、探偵として、どう犯人を導き出すのかがよく分かって良かった。
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初めての横溝正史作品だったけど、テンポの良い昭和の日本語がとても心地よく、かなりの長編なのに楽しく一気に読めた。
ストーリーも非常に面白い。物語の背景にずーっと流れているそこはかとない狂気感に惹き込まれた。
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500ページの読み応えのある長編作品。
最初に江戸川乱歩に捧ぐとあるが、乱歩作品に影響を受けたものなのだろうか。
冒頭に登場人物紹介があるので、名前を覚えられない私には助かった。
土日に一気に読んだので、霧の降る軽井沢の世界にたっぷりひたれた。
金田一耕助シリーズは、今の時代にはない上流階級の暮らしをする人の世界の中での作品が好きだ。
御用聞きの小僧、婆や、暮らしが落ちぶれたなんて言いながらいちいち細々としたことを頼む、あの感じが私にとってはファンタジーに近い。
霧が深く前もよく見えないゴルフ場の描写などはホラー的な雰囲気も楽しめる。
冒頭の心中に向かうシーンはもの寂しく心に残った。
美沙に毛糸を拾わせようとして色盲を指摘した時のシーンは思いもかけなかったのでドキっとしたし、ゾッとした。
個人的には千代子さんのその後や忠熙とどうなったかも知りたかったなぁと思った。
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かなりのヴォリュームなのに、それを感じさせず、「いつの間にか話が長くなっていた」印象です。
舞台は軽井沢。そこで起こった殺人事件と、複雑な人間模様・・。
終盤の犯人の“豹変”ぶりにゾッとしましたが、個人的には、樋口操夫人も怖かったです(こんな人と、ご近所にはなりたくないですな・・)。
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戦前戦後を通じて映画界のスターである鳳千代子には四回の離婚経歴があり、そのうち最初と二番目の夫は不可解な死を遂げていた。
今また三番目と四番目の夫が軽井沢で変死を遂げ、金田一が捜査に乗り出す。
大女優の派手な男性遍歴を軸にマッチ棒のパズルや不可解な数式、そして奇妙な所で見つかるライター等魅力的な小道具満載の長編。
ただ長さの割にそれら小道具が活かされているとは言い切れず、事件の解決も金田一の捜査や推理ではなくある人物の独白によって終わってしまうのが味気無かった。
推理小説とは必ずしも探偵が解決するとは限らないと割り切ればそれなりに楽しめるのだが。
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このシリーズの醍醐味と言える
おどろおどろしい雰囲気もなく、
爽やかな軽井沢を舞台に
地味な事件が起こる。
600ページ近いボリュームもあって
なかなか読むのに苦労したが、
終盤ではその苦労が報われる程の
悍ましい真相が用意されていた。
横溝正史は流石に凄い作家だ。
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久しぶりに読みごたえのある500ページ超えの金田一耕助ミステリー作品でした!
ある女性のかつての夫だったことのある男性4人が相次いで亡くなった真相は何か?ということで、複雑な人間模様が絡んでいき、最後に事件の全貌が明らかになるのでした。
真犯人は中盤あたりで読めたのですが、さすがにその動機までは見抜けませんでした。
金田一耕助シリーズの終盤作は長編続きのようです。
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すごかった!
読み応えたっぷり!
大詰めである人物の身体的な秘密が明らかになったときにはかなり興奮した!
登場人物が多いので複雑だったけど、パズルを解くように真相が明かされたときがたまらない快感だった。
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四人もの男と結婚を繰り返してきた美貌の女優。その夫だった男が次々と死を遂げていく。そしてまた一年、再びすべての関係者が揃い、元夫が殺された。
登場人物が多く、その関連を描いていくのに、多少導入部のもたつきを感じる。が、その分読み進めていくと、ボリュームに読み応えがある。
多くの登場人物が「こんな人だったのか?」と思わせる裏の顔、秘密を抱えており、そのあたりがタイトルとなっているようだ。
「本陣殺人事件」などの田舎での事件とも、都会での事件とも違う、軽井沢という舞台。台風という設定も面白い。
ユーモアある描写が多く見られるのは、だいぶ後半の作品だからか。
Posted by ブクログ
久々に600ページ近い大作を読破。手が疲れますが、だんだん栞が進んでいくのが楽しい。
というわけで、ちょうど10冊目の金田一耕助ファイルですが……これまで読んだミステリーの中で最もといっても過言ではないくらい複雑な人間関係でした(^^;
そもそも、「映画女優・鳳千代子」には過去4人の夫がいる、というのに興味を惹かれたのですが、まあこれがややこしい!
変な話、全員亡くなっているなら話は簡単なのですが(ひどい)、作中で起こる事件によって一人二人と消えていくので、最後の最後まで慎さんと津村さんで混乱してしまいました。そこに輪をかけて、次の夫候補である飛鳥氏の身内にも側近や忘れがたみがいるわ、警察サイドも日比野警部補に狸刑事に等々力警部に県警の山下警部と多いわ、さらにさらに謎の田代君まで出てくるからもう大変。
映像化したらさぞキャスティングにやり甲斐があるでしょうが、さすがに枝葉が多すぎたのでは……?な感が否めません。
それでも、退屈することなく読み進められるのはやはり横溝先生の温かな文体によるものだよなぁなんて思っていたのですが、エピローグがなぁ、ううむ。ちょっとついていけず……。
というか、軽井沢で豪華絢爛な仮面舞踏会が見られると思ったのにな。。
やいやい言いましたが、既読の作品に比べると気の抜けた会話も多く、かつて軽井沢で見られたであろう上流階級の方々の様子を垣間見ることができる、新鮮な読書体験ができました。
ちなみに本書でいちばん好きなのは、登場人物紹介の「みなさん先刻お馴染みの、もじゃもじゃ頭の探偵さん」です(・∀・)暗闇の中でピアノを奏でるシーンもロマンチック。
Posted by ブクログ
正確に書くと星3.8。
王道の金田一耕助シリーズって感じ。
やっぱり設定とか、解決までの過程とかが細かく描かれていて良い。
最後は昔の小説あるあるな気がする。
Posted by ブクログ
1974(昭和49)年刊。横溝正史の生没年1902-1981を考えるとこのとき既に72歳。もう晩年と言ってよいかもしれない。
本作では4回も結婚し今新たに5人目と交際している大女優を中心に、避暑地の軽井沢で複雑な人間関係が殺人事件の背景として構築される。別荘を持っている人々が大半だから、富裕な層である。
本作の舞台は1960(昭和35)年。テレビが各家庭に爆発的に普及し始めた頃のようだ。
『白と黒』(1961)と同様、文体は軽く、江戸っ子の口上のように剽軽で滑らかだ。この軽さは、昭和20年代の『八つ墓村』等の傑作群で恐怖やおどろおどろしさを喚起し読者を巻き込んでいったあのエモーショナルさとはほとんど反対のものである。「そのとき、金田一耕助はこの後すぐにあの陰惨な事件に発展しようとは夢にも思わなかった」というような煽りの予告もかなり減った。あの怪奇趣味とエモーショナルな物語ストリームに惹き付けられた者としては、ちょっと物足りない。
老齢によって文体が淡泊になったのだろうか。時代の変遷により、かつてのあからさまな情動喚起の手法が古びてしまい、ドライで軽く、「シラケ」へと向かって世間の言表フィールドが変容してきたことも、この作家のフィールドに作用しているのではないだろうか。ドライさへの時代変容は、松本清張ミステリのクールで残酷な文体の展開とも一致しているようにも見える。昭和49年といえば昭和30年代に充実期を経験した清張作品よりも、さらにそのずっと先の時代に突入している。
そう思うと、失われたストレートさ、あのエモーショナルな文学ストリームへの郷愁は深い。ストレートな気分の表明がダサくなってしまった時代、全共闘以後のこの時代は何かを隠蔽することによって成立しているようにも見える。
しかし、本作はクライマックスから終結までの部分は緊張感があって良い。最後まで読むと、『白と黒』と同様に、どうも横溝正史はかつての怪奇趣味の代わりに、歪んだ性のグロテスクさに心を惹き付けられたようだという風に思える。中盤の弛緩を補うような終結部だ。
Posted by ブクログ
『ひとり横溝正史フェア』のつづいての作品は「仮面舞踏会」。
こちらも読んだことがなく今回入手した。映像化されたのかどうかもよくわからない。
ここまで『ひとり横溝正史フェア』をつづけてきて、ふと思った。横溝正史じゃなくて金田一耕助だったかな。金田一耕助の出てくる横溝正史作品をひとりで読んで盛り上がろうというフェアなので、ひとり金田一耕助フェアが正しいかもしれない。何という今更な気づき。
まあ、小さい問題なのでこのまま。
ここまで金田一耕助の出てくる作品を読んできて、あと何作あるだろうと思ったりする。全部読もうかどうしようか、ちょっと悩む。
何故悩むかというと、ここのところの横溝正史作品がいまひとつだから。これは大きな問題。
そして今回の「仮面舞踏会」も実はいまひとつな感じだったのだ。どうするかなあ。
夏の避暑地である軽井沢で殺人事件が起きた。
被害者は画家の槇。映画女優である鳳千代子の別れた夫である。
実は千代子の別れた夫が殺害されたのは今回がはじめてではなく、二年前からひとりづつ殺害され、槇は三人目の被害者であった。
知人に招かれ軽井沢にやってきた金田一耕助は事件の解決に奔走することになる。
面白そうだなと興味を惹かれ購入したのだが、本作はいつも以上に登場人物の整理がしにくい。横溝正史作品は登場人物が多く関係も複雑なことはよくあり慣れていたはずなのに、とっちらかる脳内。
えっと、これ誰だっけ、と目次の次にある登場人物一覧を何回も見て確認した。
登場人物に混乱するのはわたしの問題なので構わないが、構う問題として、犯人がすぐにわかってしまうこと。
登場人物が混乱しているにも関わらず、結構早々に犯人はこのひとだろうなと目星がつく。
なんなんだろう。横溝正史の犯人設定の癖というか、犯人の描写の癖というか、自分でもわからないけれど読んでいると犯人に印がついているようにわかってしまう。
こういうのは、もしかしたら『ひとり横溝正史フェア』の弊害かもしれない。
横溝正史作品では気が触れる、横溝正史の言い方だと発狂したひとというのは時々登場するけれど、ひとってそんなに簡単に発狂なんてするだろうか。
というか、発狂って何。
どういう状態。
横溝正史作品によると、意思疎通が出来ないような状態ではなく、会話は出来たりするけれど、平気でひとは殺してしまったりする感じだが、それは発狂というのだろうか。昨今推理小説に登場するサイコパスとも違い気がするし、一体何なのだろう。謎だ。
鳳千代子の元夫のひとりが亡くなったときに、パンツ(洋服のじゃなくて下着の)一枚という姿でプールに浮かんでいたというものがある。何故そういう姿だったかというと、泥酔しているところを風呂に入るよう誘導されて衣類を脱いでプールに入ってしまったということになっているのだが、入浴するときならパンツも脱ぐのでは、と細かいところが気になったりした。
この作品が少々満足いかないものであったこと、犯人がすぐにわかってしまうということから、次の横溝正史作品まで少し日を置いたほうがいいのかもしれないと思っている。
せっかくひとりで盛り上がっていたのに残念だ。
Posted by ブクログ
確か映像を先に見た作品。
大作ではあるんだけだ、金田一耕助がほとんどでてこない作品。
軽井沢の夜は現代になってからしか経験はないけれど、暗く自然の音がかえって静かさを強調する感じでした。薄暗闇の中をただ歩いて行くのは不思議な感覚を受けたなぁと。
そんな事を思いながら読んでいると、ミステリーというよりもホラーを読んでいるようでした。
ただ中盤の金田一耕助が広間でアリバイを聞くシーンはうまいなと思いました。緊張と弛緩、自分の他者に与えるイメージの載せ方とか。ちょっと勉強になりました。