あらすじ
神保町の裏通りにあるヌードモデル仲介業「共栄美術倶楽部」に初めて現れた異相の男、その名も佐川幽霊男。彼の依頼を受けたモデルが、ホテルの浴槽の湯の中で殺され、そしてさらに……。猟奇マニアたちの秘密の巣でもあったその倶楽部に金田一探偵が登場。右往左往しながらも、欲望に溺れて落ちたマニアたちの犯罪を鮮やかに解決! 妖気漂う原色怪奇曼陀羅。
カバーイラスト/杉本一文
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事件順に追う金田一シリーズ再開。表紙は杉本画伯のチープなおどろおどろしさを漂わす昭和52年版。
昭和29年の時代設定。いかがわしいヌードクラブに発生した猟奇的殺人事件。朝鮮戦争の好景気に湧く中でも、不穏な雰囲気を残した時代なのか快楽殺人をテーマにした現代的な事件。なかなかに凝ったトリックだけれどもスピード間もあって一気読み。珍しく金田一も事件を食い止める。やっぱり紙の本は雰囲気があっていいなぁ。
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江戸川乱歩の怪奇シリーズや怪人二十面相などを彷彿とさせられる作品。一風変わった舞台設定、連続殺人事件と活動的な金田一耕助の行動展開が、他の作品と少し趣を異にする印象。
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金田一シリーズ10作品目。
ヌードモデルが次々と猟奇的に殺害されていく事件。多くのトリックや思惑が絡んでおり、最後まで犯人がさっぱりわからなかった。
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数か月ぶりに読む金田一はやっぱり面白かった。今回は東京と伊豆。金田一の登場が今までにないパターンで新鮮に感じた。
猟奇マニアたちが出てくる気持ち悪い話だけど自分の日常と余りにもかけ離れている分、気分転換の読書にはうってつけだと思う。自己投影とか全くしないから、嫌な内容も引きずることもないし。
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いろんな人物の思惑が錯綜するため、出来事がかなり複雑になっているけど、最後には綺麗に繋がるのは流石。
ヌードモデルが次々ショッキングな遺体で発見されるという展開も横溝先生らしくて良い。
それにしても、今回は金田一史上、最低最悪の犯人ではなかろうか…
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金田一耕助もの。作中の時間軸は有名な「犬神家」などよりはもう少し進んだ時代で、文明的な機械や施設もできてきており、いわゆる経済発展のさなかでこういった作品が書かれていたのだな、という感慨はある。
ヌード写真の女性モデルを専門に扱ういかがわしい写真館(こういうのが商売として成り立っていたということ自体、非常に昭和的)に、恐ろしい容貌の男がふらりと立ち寄ったのが物語の発端。幽霊男と名乗ったその男は、モデルを用立ててまたふらりとどこかへ。指名されたモデルは幽霊男に拉致されてしまい、行方が知れなくなってしまう。女性は後日、都内のホテルで殺害された状態で見つかるが、幽霊男の行方は杳として知れず。衝撃的なこの事件からしばらく経ち、幽霊男は次の悲劇の幕を開ける…といったストーリー。
場面が現代に近いからか、あるいは(相変わらず)金田一耕助がピリっとしないからか、あまりグイグイとのめり込んで読み進められる作品ではないのだが、使われているトリックは複雑であり、途中から第二、第三の謎の人物が出てくるなど、読者を惑わせる仕掛けにも事欠かない。多分にご都合主義的なところもなくはないが、これは金田一シリーズではある意味、当たり前というところでもあり、それほど気にはならない。
絶対に読むべき名作、とまでは言わないが、金田一が好きなら読んで損はない。
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年末ギリギリに読み終えました。さすがに金田一耕助シリーズの長編だけに、二転三転の展開で、最後まで犯人が誰なのか?分からず、トリックや事件の背景もよく練られていましたね。特に、この作品は少しの読み飛ばしも大事な場面を見逃すことになるので、些細な部分まで気を配って読む必要がある作品でした!
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打って変わって、コチラは文句なし。横溝先生絶好調。
トリックの整合性なぞ、この人に突っ込んでも意味ナシ。
珍しく都会を舞台に書いておられますが、「恐怖」は一切目減りしておりません。
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こんなタイトルで子供向けかと思いきや、なかなかすごい内容。
映画にしたらめっちゃ映えそうだと思わせられた。
死体を飾り立ててるところとか、羊たちの沈黙みたいに。
犯人が結構わかりやすいというか、なんとなく「コイツやな」と勘でわかってしまったけれど、あの手この手で趣向を凝らしてあるので面白かった。
最後の方で、すごく好きな文章があって
以下引用~
~警部はまるで毒虫にでもさされたようにとびのいて、
「そのけだものをはやくむこうへつれていけ……」
と、嫌悪にみちた声でどなった。
警部も今まで、これほど卑劣で、きたならしい犯人にお眼にかかったことはない。~
このくだりが、たまらない爽快感を味わえました。
この遠慮会釈のない書き方!
たまりませんなあ、もっと言ってやって!!
等々力警部の露骨な嫌悪が最高にイイ!
自分は安全なところから、しかもくだらない嫉妬から殺人に目覚める優越感にみちた犯人が自滅するところが見所のひとつだと思います。
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ヌード・モデルのクラブに訪れた「幽霊男」と名乗る怪人物の起こす連続殺人。ボーイに変装して警戒にあった金田一耕助の目の前で起きる殺人。
暗躍する「マダムX」と名乗る女と容疑者。
旧カバー版
2009年1月19日購入
2009年1月30日初読
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今のところ読んだ横溝作品の中でこれが一番好きです。何故でしょう(笑)
割と猟奇的でアングラな感じなんですね。人間そっくりの人形が出てきたり、吸血癖のある画家が出てきたり・・・。何より、包帯ぐるぐる巻きの男が!
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昭和29年に『講談倶楽部』誌に連載された猟奇的な通俗スリラーである。同年に映画化もされている。ヌードモデルの派遣業・共栄美術倶楽部の事務所に不気味な異相の人物「佐川幽霊男(ゆれお)」がモデル派遣の依頼に訪れる。彼は所属モデル・恵子を指名するが、翌日に指定された場所を訪問したモデルは刺殺死体となって発見される。その後も幽霊男は次々とモデルを殺害していき、東京は恐怖のどん底に落ちていく。
横溝作品には戦後の都会の退廃や倒錯的な性を描いたもの、そして田舎の因習や血縁の因縁を軸とした本格推理の二つの系統がある。本作は典型的な前者にあたる。横溝はこの二系統を掲載誌によって使い分けていたようだ。一般小説雑誌では論理構成を重んじる本格推理は受けないとして、本作のような猟奇性、怪奇性、エログロ、荒唐無稽さに富んだ作品を書いていた。ただ正統的横溝ファンからは受けは良くない。
本作はヌードモデルにストリッパー、猟奇クラブを主催する三人の蕩児、実物同様の作品を制作できる人形師らが登場し、謎の怪人が残虐非道な殺人を繰り返すという、乱歩風味にエロ要素を加えたような作品。漫画的ではあるが、それなりにおもしろく読める。金田一は場面場面で登場するが、幽霊男に出し抜かれすぎではなかろうか。
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読者に謎解きのように話しかける様子がところどころにあり、少年少女向けにも感じたが、最後の方にいくにつれて、そんな雰囲気はなくなった。今回は、いろんな見方で容疑者がいて誰が犯人なのか分からなかった。この人かなと思うと違ったりして。少し子ども向けっぽい不気味さだけど、犯人がなかなか分からず、さらに金田一耕助が全然犯人捕まえられないもどかしさがあり、気になる展開で面白かった。
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1954(昭和29)年発表の金田一耕助もの。『獄門島』(1948)と『白と黒』(1961)の中間辺りの時期だ。
この付近の東京界隈の世相がどんな感じだったのかよく知らないが、本作に出てくる様相はかなりいかがわしい。写真や絵画のためのヌードモデルを派遣する神田の「共栄美術倶楽部」なる事務所が最初の舞台となっており、どうやら当時はカメラを持ちヌード写真を撮ることが流行っていたようだ。だが、これはいかがわしい会社なので契約した客とモデルの間で性交渉もありがちだという設定。この会社に所属するモデルの一人は、のちにストリッパーに転身する。横溝正史は当時のこのような「いかがわしい界隈」をとても愛好していたのかもしれない。
本作は怪奇趣味を前面に出していて、以前の『真珠郎』(1937)などを彷彿とさせるが、何故かエモーショナルになりきれず、どこかB級映画的な安っぽさを漂わせる。
ストーリー展開は、まるで江戸川乱歩の『怪人二十面相』を思わせるような荒々しい活劇調を呈して進み、かなり現実離れした世界が繰り広げられる。後の『白と黒』『仮面舞踏会』(1974)に見られたような、昭和がなだれ込んでいった「シラケ化」の波動が、ここにすでに始まっているのだろうか。
しかも、ここでも作者は「ヘンタイ的な性」の主題に突入していく。
全体的にB級映画ふうであるが、ロバート・ロドリゲス監督の確信犯的なそれよりも面白くはない。だが、何となく昭和の東京のウェットないかがわしさをさらけ出している点に興味を覚える。
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昔読んだはずが殆ど記憶になかった。少年探偵団シリーズ横溝版みたいなライトな内容で笑っちゃうような展開も多い。しかし人はバタバタ死ぬし死体の美術集とか猟奇なのは流石。
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後半の真犯人パートの前からちょっとわくわく。
金田一耕助ぜんぜん活躍してないんじゃないか?
いつも通りか…
自分の前で犯行されたことに憤慨していたが、
もはやいつも通りすぎて、
耕助が怒ってることが逆に面白く感じる。
犯人側は殺人アートなので、見立て殺人的な面白さはない。
犯人側目線も少し出てくるので、
犯罪小説ぽい。
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まさに“猟奇曼荼羅”といわんばかりの、眉を顰めたくなるような猟奇連続殺人が展開。
幽霊男は誰なのか、彼が殺人犯なのか・・混乱しつつラストへ・・。
奇妙な痴情の縺れの果てに、犯人はクズ変態だったあの方でした。
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金田一ジッチャンの方の事件簿。
孫の金田一少年の事件簿ともども、酌むべき事情のある犯人が多い中で『迷路荘の惨劇』と並んで、完全に犯人が悪人のパターン。
この作品では、金田一が犯人その他に出し抜かれる機会が多く、その度に「畜生、畜生!」と髪を掻き毟って地団駄を踏むので、映画版の石坂浩二のイメージで読むと非常に滑稽で面白い。
推理小説というよりは、幽霊男 vs 女怪「マダムX」vs 金田一という、三つ巴の冒険小説といった趣の作品。
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金田一シリーズには珍しく、舞台が都会、伝説や迷信など出てこない、動機がけっこう浅い、人間関係のドロドロが薄め
探偵推理小説というよりはホラーチック!
幽霊男の発案者と実行犯が異なるとか、マダムXの正体とかは面白かった
マリ殺害の理由や、鮎子の蝋人形の搬入方法など金田一がしてやられて悔しがってばかりいる作品…
死体が芸術的に飾り立てられているので映像化に最適
2012/10/31-11/2
Posted by ブクログ
好きな作家なのですが、この作品はちょっといまいちな感じ。誰がどうなっても別に驚かないし、犯人はもう別に誰でもいいと思ってしまうくらい登場人物たちに魅力が感じられなかった。
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推理小説、ミステリーというよりスリラー。
乱歩の黒蜥蜴や蜘蛛男を彷彿とさせる作品。
金田一シリーズの中では異色。
推理を期待すると少し拍子抜けするかも。