あらすじ
神保町の裏通りにあるヌードモデル仲介業「共栄美術倶楽部」に初めて現れた異相の男、その名も佐川幽霊男。彼の依頼を受けたモデルが、ホテルの浴槽の湯の中で殺され、そしてさらに……。猟奇マニアたちの秘密の巣でもあったその倶楽部に金田一探偵が登場。右往左往しながらも、欲望に溺れて落ちたマニアたちの犯罪を鮮やかに解決! 妖気漂う原色怪奇曼陀羅。
カバーイラスト/杉本一文
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Posted by ブクログ
金田一耕助もの。作中の時間軸は有名な「犬神家」などよりはもう少し進んだ時代で、文明的な機械や施設もできてきており、いわゆる経済発展のさなかでこういった作品が書かれていたのだな、という感慨はある。
ヌード写真の女性モデルを専門に扱ういかがわしい写真館(こういうのが商売として成り立っていたということ自体、非常に昭和的)に、恐ろしい容貌の男がふらりと立ち寄ったのが物語の発端。幽霊男と名乗ったその男は、モデルを用立ててまたふらりとどこかへ。指名されたモデルは幽霊男に拉致されてしまい、行方が知れなくなってしまう。女性は後日、都内のホテルで殺害された状態で見つかるが、幽霊男の行方は杳として知れず。衝撃的なこの事件からしばらく経ち、幽霊男は次の悲劇の幕を開ける…といったストーリー。
場面が現代に近いからか、あるいは(相変わらず)金田一耕助がピリっとしないからか、あまりグイグイとのめり込んで読み進められる作品ではないのだが、使われているトリックは複雑であり、途中から第二、第三の謎の人物が出てくるなど、読者を惑わせる仕掛けにも事欠かない。多分にご都合主義的なところもなくはないが、これは金田一シリーズではある意味、当たり前というところでもあり、それほど気にはならない。
絶対に読むべき名作、とまでは言わないが、金田一が好きなら読んで損はない。