横溝正史のレビュー一覧
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ネタバレ冒頭の田代信吉が感じ悪い人だなと思い数日放置、心中事件とわかってから一気に引き込まれ2日で完読。
中盤過ぎまでまったりお上品に進み、細かいところは割とあの人がこれしてるな、と思い当たったけど、真相は全く予想外で、終盤は笛小路義母息の所業に自分の顔が蒼ざめるのを感じるほど怒涛の戦慄。著者の作品群ではあまり評価高くなさそうだが、これほど強烈な話は他にない気がする。お茶室の場面は位置関係がうまくつかめないけど、映画大菩薩峠のラスト風に脳内再生。
本筋に関係ない操夫人を含め怖い人が本当に怖い反面、ちょい役の考古学者や音大生まで愛すべき登場人物が数多く、特に最後ドタバタの中短い会話で語られた村上一彦君の母と秋山さんのいきさつが感動的で泣ける。嫁いた娘を見守り控えめに嗜める辺りの金持ち喧嘩せず感、結果ほのぼのした嵐の夜のピアノ演奏会の後、不慮の事故でなくなった善良でおっちょこちょいない音楽家さんお気の毒!
タイトル仮面舞踏会は、エピローグに由来を語る場面が出てくるけれど、華やかな宴での暗殺事件みたいなのが絡まないと片手落ちで違和感になってしまうのかも。では何なら良かったのかは思いつかず、あの白と黒よりはこちらが赤と緑という方がまだしっくりくるけど物足りない。唐突な日本画の大家の作品談義…朱と藍のぼかしがこの先どうつながるのか全く読めなかったが、裏があると知りながら乗りましょうと愉快がる大物+先生凄いんですねと言いながらきっちり段取りを揃えてくる若者。血液型との二段構えで不貞疑惑から赤の他人、じゃあ誰がなぜ?という流れが実に鮮やか。
某クリスマスの短編で、若年の犯人だとそれまでに背負った人生の重みが味わいの横溝正史の良さが出にくいと思ったけど、この名もなき子は逆ブレで壮絶すぎる。ゴルフ場でのハイド氏のような豹変は不自然ながらむべなるかなと。
信州代表は犬神家の一族に譲るけれど、短編香水心中、中編霧の山荘と合わせて軽井沢三部作。複数世代で主に若い世代の二面性、複数別荘、東京間の移動がデフォルト設定。等々力警部は軽井沢トラウマにならないかな?
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[再読] 2026.10.14.
今年9月公開。
清水崇監督による新作映画版が封切りになった記念に、再読を。
いやね、ほんとは映画、楽しみにしてたのよ。
観に行くつもりでいたのよ。
でもね~。あんまりにも改変が激しいらしく。
ミステリーというよりもホラー映画になってるだとか。
舞台は現代に移されてるだとか。
春代姉さん出てこないだとか。
原作好きだからこそちょっとなぁ…と。
で、久々に再読を終えて今。
いや、結構ホラー要素あるやん(笑)
それはさて置き、
やっぱり凄かった本作。
何年越しに何度読み直しても、ちゃんとハラハラドキドキ。
で、単純にミステリーっていう枠に収まってもおらず。
思ったより主人公のハーレムものだったり、
村ホラーだったり、
冒険活劇だったり。
語り手の辰弥が
“書いてるうちに探偵小説っぽくなってきちゃったな”
的なこと言ってるメタ要素とか、
サラッとほか作品の宣伝挟み込んでるあたりとか、
思わず笑ってしまったわ。
横溝正史って、
こんなにエンタメ上手な人でしたっけか。
いや~、にしても。
現代版化、春代姉さんカット改変はダメです。
映画、観に行きません、はい。
♪本日の読書中BGM
『Core』/ Stone Temple Pilots -
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映画「八つ墓村」が上映されると知り、本棚の横溝正史覧を確認し、本書を読み直した。消費税3%の時代に購入していた作品である。1977年に渥美清が金田一耕助に分した八墓村では、野村芳太郎監督や橋本忍の脚本で、濃茶の尼や村人が「八つ墓明神のたたり」として、オカルト映画的脚色で、世間を震撼させた。さて、原作はどうか?毛利に負われた尼子一族の言い伝えを縦軸に、実際に起きた岡山県津山の30人殺し(映画「丑三つ村」)をモチーフにした横軸で紡がれる連続殺人事件である。が、しかし、八つ墓村の地下を縦横に走る鍾乳洞や洞窟の探検と主人公を中心とした恋慕と家族愛が織りなす、夢のある冒険・恋愛活劇が私には強く印象に残っている。鬼首村(おにこべむら)で起きた「よる歩く」や「悪魔の手まり歌」の事件を解決して、保養のために寄った八つ墓村の西屋に滞在中の金田一耕助が、東屋を巡る連続殺人事件で、事件を解決へと導くが本書での出番は極めて少ない。村人に追われながらも、自然洞窟に眠る尼子一族の残した財宝を探検して発見する主人公辰也と典子の純愛。著者の横溝正史は、戦時中に岡山に疎開して、意にそぐわない作品を書かされることに嫌気がさし、戦後に疎開中に知った事件や怨恨をテーマに戦後の推理小説と金田一耕助を一躍有名にする。私見になるが、横溝正史の各作品に低通するのは、アジア・太平洋戦争に対する静かな怒りと内省、戦争による親族たちの血肉を争う憎悪と苛烈(かれつ)なトラウマと葛藤を現しているように思う。横溝作品を読み返したい意欲が増すが、一方で積読も増える葛藤に苛(さいな)まれる。
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ネタバレ(表紙が違うんですが多分中身は同じなのでこれで登録)
市川崑監督をはじめとする映画はいくつか見ていて粗筋も犯人も知っているんだけど、金田一耕助(以下、耕ちゃん)ものは原作だとやっぱり良いので読んでいっている。
今回はなんと言っても『本陣殺人事件』で探偵デビューした耕ちゃんが、その後戦争の真っ只中で「人生でいちばん大事な時期を空白で過ごし」たあとというのがなんかぐっと来ました。25、6歳だった耕ちゃんは30半ばのくしゃくしゃの頭に和装にソフト帽子の中年に。物語中盤で『本陣殺人事件』で親しくなった岡山県警磯川警部と再会してお互い感じ入る場面があるんですがこのあたりはやっぱり戦争中は考えることもなかった相手が無事で相変わらず活躍しているって知ったときの感慨は私たちが想像するより深いんだろうなあ。
※放送禁止用語が使われていますが重要な鍵のためそのまま記載しています。
その金田一の耕ちゃんは瀬戸内海の小島「獄門島」に向かっている。表向きは戦友鬼頭千万太(以下チマタ)の戦死を伝えること。しかし彼には裏の目的があった。なんとしても生きて帰ることを望んでいたチマタが無念の病死に際しての遺言「俺が死んだら三人の妹たちが殺される…俺の代わりに獄門島に行ってくれ…おれの従兄弟が…」という願いを叶えるためだった。
金田一耕助物語では親族関係がとても複雑に絡み合うのでまとめておく。
まずは「網元」について。物語で網元の地元での強さ、漁師たちをまとめる力などは読んでいたんだけど、ここで説明されていたのを読んで納得でした。そりゃー強い。
漁師には3階級ある。一番下は船も網も持っていない。農家で言えば小作人。
次の階級は船も網も持っているけれども小規模なので、「自作農」みたいな感じ。
それらに君臨するのが、船も網も漁業権も持っている網元。「大地主」にあたるんだけどそれより権力がある。網元は漁穫の全てを総取りして、漁師たちに日当を渡すという関係。漁師は網元からそれぞれの網、鯛網、壺網、鰯網…などなどの網をその場その場で借りなければいけない。そして「板子一枚下は地獄」の世界に生きる漁師たちを束ねるだけの肝っ玉が必要となる。改めてナルホド。
●鬼頭家(島随一の網元の本家。「本鬼頭」と呼ばれる)
嘉右衛門(故人):「太閤」と呼ばれる程の権力を持っていた。死んだことにより獄門島の権力のバランスが崩れる。
与三松:嘉右衛門の長男で本鬼頭の当主のはずなんだけど、「気ちがいさん」で座敷牢に入れられている。
チマタ(故人):鬼頭家の跡取りだったが、戻れなかったことでどうなるか…。
月代、雪枝、花子:チマタの三人の異母妹。知的障害者だろう。派手な振り袖に帯に髪飾りでいつでもキャラキャラ大騒ぎで、異様な雰囲気を醸し出す「徒花」。
お小夜(故人):月・雪・花の母。女役者だったのが与三松の後妻になった。
一(以下ハジメ):嘉右衛門の次男(与三松の弟)の息子。
早苗:ハジメの妹。ふんわりカールの美女だがなかなか度胸があるらしい。
●分鬼頭(わけきとう。嘉右衛門の従兄弟?の家)
儀兵衛:当主の老人。本鬼頭から権力奪取を狙っている。
志保:儀兵衛の妻。あだっぽい中年女性。ものすごく権力奪取を狙っている。
鵜飼章三:分鬼頭夫妻が、本鬼頭から権力奪取のために住まわせている復員軍人。美少年。
●島人
了然(りょうねん)和尚:獄門島の千光寺住職。故嘉右衛門老人と親しく、島での権力者。
了沢(りょうたく):千光寺典座で、了然の跡継ぎ。
荒木真喜平:獄門島村長だが、故嘉右衛門老人の派閥なので、もし分鬼頭が権力を握ったら追い出される。
村瀬幸庵:獄門島の医者。故嘉右衛門老人の派閥なので、もし分鬼頭が権力を握ったら追い出される。
竹蔵:漁で潮つくりという大切な役目。
清公(せいこう):流れ者の床屋。俳諧もかじっていたので嘉右衛門のお太鼓持ちだった。耕ちゃんの重要な情報源。なお、よそ者耕ちゃんが島人から犯人じゃないかと疑われた時に「馬鹿言っちゃいけない、仮にも金田一の旦那は江戸っ子だ。本鬼頭を乗っ取る気なら回りくどいことしないでピストルパンパンぶっ放して解決すらあ。だいたい江戸っ子がこんな島の麦なんざ食ってられるか」とかばってくれた?ようで、耕ちゃんをなんか複雑な気持ちにさせるのです・笑
●警察関係
磯川常次郎:岡山県警察部の警部。耕ちゃんとは『本陣殺人事件』で知り合っている。戦争を経てお互い前の仕事を続けているとわかって感慨深くなっている。なお階級は当時と同じ警部。同僚では警視になった者もいるけれど、戦争のゴタゴタで昇格しそびれたけれど、そのために県警名物の古狸警部としてドドーンと一目置かれているらしい。
清水巡査:獄門島巡査。島では事件はそんなに起きないので(起きても島の人たちが島の掟で解決する?)、瀬戸内海の海賊対応の仕事なんかもやっているらしい。「向こうは7,8にんポンポンピストル売ってくるし、警察の船も弾丸打ち込むし、壇の浦以上の大合戦ですよ」ってのが警察のお仕事。なるほど。
●獄門島絶大な権力の鬼頭家の跡取り順番
チマタ→月→雪→花→ハジメ→早苗→儀兵衛。
儀兵衛と志保には子供がいないので、美少年鵜飼章三を雪月花の婿に入れて権力を取ろうとしている。
チマタの遺言のとおりに「俺が死んだら三人の妹が殺される」としたら、ハジメが跡取り。
そして現在では「私はハジメさんの戦友でした。ハジメさんは生きて、もうすぐで戻ってきますよ」という復員兵が獄門島を訪れた。
●帰ってきたもの、帰ってこなかったもの
死亡:チマタ
生きているという知らせがあった:ハジメ
戻る予定:戦争中に供出されていた千光寺の釣鐘が、戦争が終わったために鋳潰されずに返還されることになった。
ということで耕ちゃんは戦友の遺言で獄門島に渡ったのだ。
美しい早苗さんに驚かされる。徒花のような三姉妹に驚かされる。艶っぽいお志保さんに驚かされる。
そして獄門島の権力争いが蠢いていることを感じる。他所から来た巡査の清水さんは「この島の者はみんな気がくるってる」というくらいだ。
千光寺の釣鐘が戻って来た日に、チマタの葬儀が行われることになった。だがその夜から連続殺人が起きるのだった。
今回の連続殺人では、死体を俳句に見立てた装飾をされる。まだそれに気が付かない頃の耕ちゃんが「なんだ、有名な松尾芭蕉か!」などと食傷気味なんだけど、俳句を見てすぐに読人とか背景をかを思い浮かぶのが、戦争を挟んだとはいえこの時代の、耕ちゃんの教養だよなあ。(アメリカ放浪していたので、英語もペラペラのはず)
「無惨やな 冑の下のきりぎりす」(松尾芭蕉)
「一つ家に 遊女も寝たり 萩と月」(松尾芭蕉)
「鶯の 身を逆に初音かな」(宝井其角)
横溝正史物は死体が装飾されておどろおどろしいんだけど、それでも読めるのは「死」をだのエンターテイメントにしていないことだよなあと思います。P167に「死という事実は厳粛であるべき」って書いてあるのですが、これだけ死体を弄られていても読んでいて不愉快にならないのはちゃんと死を一人の人間の人生の終わりとして書いていることを感じるからじゃないかなあ。そして耕ちゃんも、死を前に不謹慎なことを口走る人には不快の目を向けるのであります。
そんなおどろおどろしい死を書きながらもちょっと笑ってしまう場面も。駐在の清水巡査が海賊対応する様子(の報告)だとか、岡山県警の磯貝警部と知り合いだって聞いて「あんたはいい人みたいだけど、磯貝警部に疑われるような悪党じゃないだろうね?」と勘違いされるところ、そしてその清水巡査に最初の殺人犯人と間違われて牢屋に入れられちゃったところで「バカ、バカ、清水さんのバカ!」と悔しがるところ。しかし結果的には耕ちゃんが牢屋に入ったお陰で第二の殺人が起きたので耕ちゃんの無実が証明されたのである、あんまり嬉しくないタイミングだけどね(^_^;)。
今回の殺人は、偶然と偶然が重なり、さらに合ってはならないタイミングでの「嘘」によって行われたことだった。まさに酷いことが重なっちゃったよなあ。
そして犯人には現実の罰よりも酷い「絶望」が与えられる。それでも後味が悪くないのは、残った人たちが戦後の新しい獄門島を立て直そうとする早苗さんの強い眼差し。また醜い権力争いしているかと思われた分鬼頭の儀兵衛老人がさすがは網元の大人物で、良くも悪くも封建社会の権化であった嘉右衛門老人のことを「とにかく稼いで使ってそのために島の人々の暮らしが豊かに明るくなったことは確かだ」とお互いを認め合っていたのも良かった。
そういえば横溝正史は「金田一耕助には、恋人も妻もいない」って書いていますが、全小説で耕ちゃんがほぼ唯一よろめいたのが、美しく案外肝が座った早苗さん。東京に出ませんか?って一応プロポーズ???耕ちゃんがんばったね。(振られたけど) -
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ネタバレ(表紙が違うんですが多分中身は同じなのでこれで登録)
市川崑監督をはじめとする映画はいくつか見ていて粗筋も犯人も知っているんだけど、金田一耕助(以下、耕ちゃん)ものは原作だとやっぱり良いので読んでいっている。
今回はなんと言っても『本陣殺人事件』で探偵デビューした耕ちゃんが、その後戦争の真っ只中で「人生でいちばん大事な時期を空白で過ごし」たあとというのがなんかぐっと来ました。25、6歳だった耕ちゃんは30半ばのくしゃくしゃの頭に和装にソフト帽子の中年に。物語中盤で『本陣殺人事件』で親しくなった岡山県警磯川警部と再会してお互い感じ入る場面があるんですがこのあたりはやっぱり戦争中は考えることもなかった相手が無事で相変わらず活躍しているって知ったときの感慨は私たちが想像するより深いんだろうなあ。
※放送禁止用語が使われていますが重要な鍵のためそのまま記載しています。
その金田一の耕ちゃんは瀬戸内海の小島「獄門島」に向かっている。表向きは戦友鬼頭千万太(以下チマタ)の戦死を伝えること。しかし彼には裏の目的があった。なんとしても生きて帰ることを望んでいたチマタが無念の病死に際しての遺言「俺が死んだら三人の妹たちが殺される…俺の代わりに獄門島に行ってくれ…おれの従兄弟が…」という願いを叶えるためだった。
金田一耕助物語では親族関係がとても複雑に絡み合うのでまとめておく。
まずは「網元」について。物語で網元の地元での強さ、漁師たちをまとめる力などは読んでいたんだけど、ここで説明されていたのを読んで納得でした。そりゃー強い。
漁師には3階級ある。一番下は船も網も持っていない。農家で言えば小作人。
次の階級は船も網も持っているけれども小規模なので、「自作農」みたいな感じ。
それらに君臨するのが、船も網も漁業権も持っている網元。「大地主」にあたるんだけどそれより権力がある。網元は漁穫の全てを総取りして、漁師たちに日当を渡すという関係。漁師は網元からそれぞれの網、鯛網、壺網、鰯網…などなどの網をその場その場で借りなければいけない。そして「板子一枚下は地獄」の世界に生きる漁師たちを束ねるだけの肝っ玉が必要となる。改めてナルホド。
●鬼頭家(島随一の網元の本家。「本鬼頭」と呼ばれる)
嘉右衛門(故人):「太閤」と呼ばれる程の権力を持っていた。死んだことにより獄門島の権力のバランスが崩れる。
与三松:嘉右衛門の長男で本鬼頭の当主のはずなんだけど、「気ちがいさん」で座敷牢に入れられている。
チマタ(故人):鬼頭家の跡取りだったが、戻れなかったことでどうなるか…。
月代、雪枝、花子:チマタの三人の異母妹。知的障害者だろう。派手な振り袖に帯に髪飾りでいつでもキャラキャラ大騒ぎで、異様な雰囲気を醸し出す「徒花」。
お小夜(故人):月・雪・花の母。女役者だったのが与三松の後妻になった。
一(以下ハジメ):嘉右衛門の次男(与三松の弟)の息子。
早苗:ハジメの妹。ふんわりカールの美女だがなかなか度胸があるらしい。
●分鬼頭(わけきとう。嘉右衛門の従兄弟?の家)
儀兵衛:当主の老人。本鬼頭から権力奪取を狙っている。
志保:儀兵衛の妻。あだっぽい中年女性。ものすごく権力奪取を狙っている。
鵜飼章三:分鬼頭夫妻が、本鬼頭から権力奪取のために住まわせている復員軍人。美少年。
●島人
了然(りょうねん)和尚:獄門島の千光寺住職。故嘉右衛門老人と親しく、島での権力者。
了沢(りょうたく):千光寺典座で、了然の跡継ぎ。
荒木真喜平:獄門島村長だが、故嘉右衛門老人の派閥なので、もし分鬼頭が権力を握ったら追い出される。
村瀬幸庵:獄門島の医者。故嘉右衛門老人の派閥なので、もし分鬼頭が権力を握ったら追い出される。
竹蔵:漁で潮つくりという大切な役目。
清公(せいこう):流れ者の床屋。俳諧もかじっていたので嘉右衛門のお太鼓持ちだった。耕ちゃんの重要な情報源。なお、よそ者耕ちゃんが島人から犯人じゃないかと疑われた時に「馬鹿言っちゃいけない、仮にも金田一の旦那は江戸っ子だ。本鬼頭を乗っ取る気なら回りくどいことしないでピストルパンパンぶっ放して解決すらあ。だいたい江戸っ子がこんな島の麦なんざ食ってられるか」とかばってくれた?ようで、耕ちゃんをなんか複雑な気持ちにさせるのです・笑
●警察関係
磯川常次郎:岡山県警察部の警部。耕ちゃんとは『本陣殺人事件』で知り合っている。戦争を経てお互い前の仕事を続けているとわかって感慨深くなっている。なお階級は当時と同じ警部。同僚では警視になった者もいるけれど、戦争のゴタゴタで昇格しそびれたけれど、そのために県警名物の古狸警部としてドドーンと一目置かれているらしい。
清水巡査:獄門島巡査。島では事件はそんなに起きないので(起きても島の人たちが島の掟で解決する?)、瀬戸内海の海賊対応の仕事なんかもやっているらしい。「向こうは7,8にんポンポンピストル売ってくるし、警察の船も弾丸打ち込むし、壇の浦以上の大合戦ですよ」ってのが警察のお仕事。なるほど。
●獄門島絶大な権力の鬼頭家の跡取り順番
チマタ→月→雪→花→ハジメ→早苗→儀兵衛。
儀兵衛と志保には子供がいないので、美少年鵜飼章三を雪月花の婿に入れて権力を取ろうとしている。
チマタの遺言のとおりに「俺が死んだら三人の妹が殺される」としたら、ハジメが跡取り。
そして現在では「私はハジメさんの戦友でした。ハジメさんは生きて、もうすぐで戻ってきますよ」という復員兵が獄門島を訪れた。
●帰ってきたもの、帰ってこなかったもの
死亡:チマタ
生きているという知らせがあった:ハジメ
戻る予定:戦争中に供出されていた千光寺の釣鐘が、戦争が終わったために鋳潰されずに返還されることになった。
ということで耕ちゃんは戦友の遺言で獄門島に渡ったのだ。
美しい早苗さんに驚かされる。徒花のような三姉妹に驚かされる。艶っぽいお志保さんに驚かされる。
そして獄門島の権力争いが蠢いていることを感じる。他所から来た巡査の清水さんは「この島の者はみんな気がくるってる」というくらいだ。
千光寺の釣鐘が戻って来た日に、チマタの葬儀が行われることになった。だがその夜から連続殺人が起きるのだった。
今回の連続殺人では、死体を俳句に見立てた装飾をされる。まだそれに気が付かない頃の耕ちゃんが「なんだ、有名な松尾芭蕉か!」などと食傷気味なんだけど、俳句を見てすぐに読人とか背景をかを思い浮かぶのが、戦争を挟んだとはいえこの時代の、耕ちゃんの教養だよなあ。(アメリカ放浪していたので、英語もペラペラのはず)
「無惨やな 冑の下のきりぎりす」(松尾芭蕉)
「一つ家に 遊女も寝たり 萩と月」(松尾芭蕉)
「鶯の 身を逆に初音かな」(宝井其角)
横溝正史物は死体が装飾されておどろおどろしいんだけど、それでも読めるのは「死」をだのエンターテイメントにしていないことだよなあと思います。P167に「死という事実は厳粛であるべき」って書いてあるのですが、これだけ死体を弄られていても読んでいて不愉快にならないのはちゃんと死を一人の人間の人生の終わりとして書いていることを感じるからじゃないかなあ。そして耕ちゃんも、死を前に不謹慎なことを口走る人には不快の目を向けるのであります。
そんなおどろおどろしい死を書きながらもちょっと笑ってしまう場面も。駐在の清水巡査が海賊対応する様子(の報告)だとか、岡山県警の磯貝警部と知り合いだって聞いて「あんたはいい人みたいだけど、磯貝警部に疑われるような悪党じゃないだろうね?」と勘違いされるところ、そしてその清水巡査に最初の殺人犯人と間違われて牢屋に入れられちゃったところで「バカ、バカ、清水さんのバカ!」と悔しがるところ。しかし結果的には耕ちゃんが牢屋に入ったお陰で第二の殺人が起きたので耕ちゃんの無実が証明されたのである、あんまり嬉しくないタイミングだけどね(^_^;)。
今回の殺人は、偶然と偶然が重なり、さらに合ってはならないタイミングでの「嘘」によって行われたことだった。まさに酷いことが重なっちゃったよなあ。
そして犯人には現実の罰よりも酷い「絶望」が与えられる。それでも後味が悪くないのは、残った人たちが戦後の新しい獄門島を立て直そうとする早苗さんの強い眼差し。また醜い権力争いしているかと思われた分鬼頭の儀兵衛老人がさすがは網元の大人物で、良くも悪くも封建社会の権化であった嘉右衛門老人のことを「とにかく稼いで使ってそのために島の人々の暮らしが豊かに明るくなったことは確かだ」とお互いを認め合っていたのも良かった。
そういえば横溝正史は「金田一耕助には、恋人も妻もいない」って書いていますが、全小説で耕ちゃんがほぼ唯一よろめいたのが、美しく案外肝が座った早苗さん。東京に出ませんか?って一応プロポーズ???耕ちゃんがんばったね。(振られたけど) -
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横溝正史の長篇ミステリ作品『夜歩く 金田一耕助ファイル 7』を読みました。
『悪魔が来りて笛を吹く 金田一耕助ファイル 4』に続き、横溝正史の作品です。
-----story-------------
「我、近く汝のもとに赴きて結婚せん」という奇妙な手紙と佝僂の写真が、古神家の令嬢八千代のもとにまいこんだ。
三日後に起きた、キャバレー『花』での佝僂画家狙撃事件。
それが首なし連続殺人の発端だった……。
因縁の呪いか? 憎悪、貪欲、不倫、迷信、嫉妬と、どす黒い要素が執念深くからみあって、古神家にまつわる、世にも凄惨な殺人事件の幕が切って落とされた!!
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1948年(昭和23年)から1949年(昭和24年)に中央文芸社から出版されていた大衆文芸・小説雑誌『男女』(後の『大衆小説界』)に連載され、1950年(昭和25年)に刊行された作品……金田一耕助シリーズの第3作です。
古神家の令嬢八千代に舞い込んだ「我、近く汝のもとに赴きて結婚せん」という奇妙な手紙と佝僂の写真は陰惨な殺人事件の発端であった……卓抜なトリックで推理小説の限界に挑んだ力作。
佝僂の画家や夢遊病、旧家の因縁、嫉妬などのモチーフをこれでもかと詰め込んだ、怪奇色の濃い本格長篇ミステリ……「汝夜歩くなかれ」という不気味な警告を発端に、狙撃事件、首なし死体、血塗られた村正、佝僂の人物の入れ替わりなど、複数の謎が互いに絡み合いながら進行します、、、
古神家と仙石家の複雑な関係、夢遊病の八千代の存在が、誰もが秘密を抱えているような不穏な空気を生み、読者を物語の奥へと引きずり込みます……物語は途中から岡山県の鬼首村へ舞台を移し、閉ざされた山村の陰鬱な雰囲気がさらに怪奇性を強めます。
村に伝わる因習や土地の空気が、古神家の謎と結びつき、物語のスケールが一段と広がるのも魅力です……そして本作最大の特徴は、金田一シリーズでは異例の叙述トリック、、、
語り手の一人称が読者の認識を巧みに誘導し、終盤でその「語りの罠」が明かされることで、真相の意外性が鮮烈に立ち上がります。
怪奇味と本格性、そして叙述の妙が見事に融合した、読み応えたっぷりの一作でした……面白かったです。 -
Posted by ブクログ
金田一耕助ものの有名作は概ね犯罪悲劇の傑作だ。本作はそのなかでも一、二を争う犯罪悲劇だろう。金田一耕助は「旧来の(旧弊的な)価値観」と「新時代の価値観」の両者を映し出す鏡のような存在であり、さらに「新時代の価値観」を作品から読者に媒介する役割を持っている、とわたしは考える。本作がこれほどの犯罪悲劇にもかかわらず、読後感がどこか開けているように感じられるのは、横溝自身が当時における若い世代に抱いていたほの明るい希望と期待からだということは、ほかの作品からも伺えることだ。
横溝の筆について触れると、横溝の書く文章の内容は頭のなかで映像として浮かばせやすく、映像喚起力が高い。花子の遺体のシーンは、それこそ暗く耽美なシーンとして浮かばせやすい。また、金田一がときおり「あっはっは」と笑うのも、作品の一服の清涼剤となっている。普通なら「耕助は笑い」などですませられる描写だが、実際に笑い声を描くことで作品内容の暗さを緩和している。
連城三紀彦はフォークナーの『八月の光』と本作を同等に読むと述べており、作品に書かれていることは「氷山の一角」でありその下部構造の大きさは計り知れない、といった旨のことを述べていたが、まさにその通りだと思う。わたし自身は本作とジェイムズ・エルロイの『ホワイト・ジャズ』を同等に読むが、これらの作品の破綻のない緻密な構成は読む者を圧倒する。 -
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金田一耕助ものの有名作は概ね犯罪悲劇の傑作だ。本作はそのなかでも一、二を争う犯罪悲劇だろう。金田一耕助は「旧来の(旧弊的な)価値観」と「新時代の価値観」の両者を映し出す鏡のような存在であり、さらに「新時代の価値観」を作品から読者に媒介する役割を持っている、とわたしは考える。本作がこれほどの犯罪悲劇にもかかわらず、読後感がどこか開けているように感じられるのは、横溝自身が当時における若い世代に抱いていたほの明るい希望と期待からだということは、ほかの作品からも伺えることだ。
横溝の筆について触れると、横溝の書く文章の内容は頭のなかで映像として浮かばせやすく、映像喚起力が高い。花子の遺体のシーンは、それこそ暗く耽美なシーンとして浮かばせやすい。また、金田一がときおり「あっはっは」と笑うのも、作品の一服の清涼剤となっている。普通なら「耕助は笑い」などですませられる描写だが、実際に笑い声を描くことで作品内容の暗さを緩和している。
連城三紀彦はフォークナーの『八月の光』と本作を同等に読むと述べており、作品に書かれていることは「氷山の一角」でありその下部構造の大きさは計り知れない、といった旨のことを述べていたが、まさにその通りだと思う。わたし自身は本作とジェイムズ・エルロイの『ホワイト・ジャズ』を同等に読むが、これらの作品の破綻のない緻密な構成は読む者を圧倒する。 -
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伊豆沖に月琴島と呼ばれる小島がある。月琴島。げっきんとう。いい名前。
江戸時代は密貿易の中心地として栄えたが、鎖国が終わり廃れていった。この家の分限者は、源頼朝の隠し子(娘)の血筋と自称する大道寺家。この家では19年前に悲劇がおきた。
大道寺家の16歳の跡取り一人娘の琴絵が、東京から来た二人の学生のうちの一人、日下部達哉と結ばれて妊娠した。知らせを受けた日下部は東京から月琴島に戻るが、崖から落ちて死んでいるところが見つかったのだ。
大道寺家は、日下部とともに月琴島を訪ねた彼の友人速水欣造を壻に入れて、生まれた娘智子の戸籍上の父親とした。大道寺を継いだ欣造は東京、琴絵と智子は月琴島で暮らす。琴絵はその後亡くなり、遺言で「智子が18歳になったら東京の欣造のもとに行く」ことを言い遺した。
そしてその智子は18歳になり、祖母の槇(マキ)、琴絵の代からの家庭教師の神尾秀子とともに、東京からの迎えを待っている。
金田一耕助は、大道寺家の弁護士である加納辰五郎氏から連絡を受けた。大道寺欣造と、そして「秘密の依頼人」の元に匿名の脅迫状が届いたという。
「彼女を東京に呼んではならない。19年前の惨劇が繰り返される。あの娘は女王蜂だ。彼女の前に多くの男の血が流されるだろう」
そこで加納弁護士は金田一耕助に脅迫者を確かめることと、智子の身に危険がないかの調査を依頼をしたのだ。
だが智子は予定通りに東京に向うと、予告通り次々に惨劇が起きる。
果たして19年前の、彼女の父親は本当に事故だったのか?その死と今回の殺人は繋がっているのか?
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映画では大道寺欣造が仲代達矢のギラギラした人物像だったのに、原作ではまだ若々しく貴族的な顔をした好人物ってことでギャップが・笑
映画では(こういっては差別的?なのですが)被害者たちがいけ好かない成人男性だったことと、未来に繋がる恋愛要素もあったので、他の金田一モノよりは割と気楽に見てました。
智子は原作のほうが気が強くて魅力的で生まれながらの女王然としていて絶世の美女というのが現れていたのですが、田舎から東京に出てすっかり垢抜けちゃったり男性たちに魅力を振りまいたりする様子には「男にそんな素振りをするんじゃない!危険だ!」と警告したくなった、ああ、危なっかしい。智子の気持ちが、自分の父が何者なのか、自分の父はなぜ死んだのか、そして今回は自分を中心に連続殺人が起きて引っ込みがつかない感じになるのもわかるし、どうせい未婚の今はチヤホヤされても家の決めた結婚して主人に従う人生だと思うと今は好きにしたいって気持ちもわかるんですけどね。しかし祖母世代に近い私からしたら「ああ、危なっかしい(^_^;)」
それでも恋愛部分もあったり、途切れていた縁が繋がったりして、未来に向けては大団円ではありました。
金田一耕助の事件は、過去からの因縁が絡み合い犯人にもどうしようもなく殺人へと駆り立てられるものが多いのですが、小説としては金田一耕助の存在や、生き残った人たちが「前を向いて生きましょう」と手を取り合うため、その酷い殺人によって淀んでいたものが祓われたような、風が通ったように感じます。 -
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『扉の影の女』
金田一耕助の報酬事情や懐事情、なぜ事件解決に打ち込むのかとか、助手の多門修との関係とかで、耕ちゃんの私生活が垣間見えます。
金田一耕助は銀座のバーに勤める加代子から依頼を受ける。加代子は夜道を逃げる殺人犯人とぶつかったのだ。もし顔を見られていたら犯人から狙われるかもしれない。しかし被害者は加代子の恋敵だったので警察に行けば今度は加代子自身が犯人と疑われるかもしれない。そこで金田一耕助に助けを求めに来たのだ。
耕ちゃんは警察で等々力警部を初めとする馴染の刑事たちと捜査に加わりつつも、依頼人の秘密は保ったままで独自にも動く。
等々力警部たちの金田一評が「本質は孤独。事件解決に掛かっている時は良いのだが、探偵の仕事が終わるとまた孤独に入り込んでしまう。だが一種の天才のため家族は持てないだろう」。そして読者が気になる収入は「事件5件に1件報酬もらえばいいところじゃないのか」ってことらしい。耕ちゃんは行く先々でたまたま殺人事件に巻き込まれました、というのが多いのでそんな場合は報酬なしですね。そんな時は、下宿先のご主人や、等々力警部がある程度のお金を貸してくれる。なんか放っておけないんでしょうね(後日高額報酬が入ったら上乗せで返ってくるという安心感もあるんだけど)。
本作ではそんな耕ちゃんの懐事情も語られます。依頼人が資産家だったりすると報酬はかなり多いのだが、入れば入っただけ使っちゃうので仕事がないと素寒貧。今回の事件は関係者に資産家が多くそれぞれが「自分の名前がでないようにしてくれれば高額報酬支払います」と申し出るので、最終的にかなり懐が暖かくなりました・笑
しかしこの依頼者達、それぞれがビミョ〜に隠し事や嘘をついているので案外ややこしい。耕ちゃんも警察に隠し事しているからお互い様ですけどね。
そして助手の多門修とのやりとり。彼は30歳ぐらいの元愚連隊で女たらしで刑務所に入っていたこともある。だがある事件で犯人に間違われたところを耕ちゃんが助けたところから彼に心頭して助手働きに。元々人と話すのは得意だし気の良いお兄ちゃんなので、危険やスリルを好む習性が探偵見習い担ったおかげで満足するようになったらしい。「先生の仕事からあぶれちまったら世の中が味気なくなっちまう」というくらいだから良いやつです。表の仕事として、耕ちゃんの幼馴染でパトロンの一人である風間俊六が経営する「クラブK・K・K」のマネージャーも務めている。
今まで耕ちゃんが話す相手は、依頼人や事件関係者や警察関係者など、耕ちゃんがある程度の礼儀を持って接していたけれど、多門修相手だと親分が子分を教育する感じで一人称も「おれ」になるのが面白い。
さて、今回の耕ちゃんが受けた依頼は「自分の名前を出さないようにして」なので、事件解決前に手を引きます。でも等々力警部たちにヒントやら物的証拠やらを渡したので事件は警察が無事解決。警察も「なんだかんだいって金田一先生は自分たちを手助けしてくれるさ」と信頼しています。
金田一モノってたまに耕ちゃんが事件を解決しないことがありますよね。
『鏡ヶ浦の殺人』
金田一耕助は、事件の合間に鏡ヶ浦のホテルで休暇を過ごしている。そこで知り合った大学教授の江川は読心術によりヨットに乗っている男女が殺人を計画していることを読み取った。だが翌日、毒殺されたのはその江川だった。
100ページ程度の短篇ですが、けっこう人間関係が入り組んでいるし殺人の真相もかなり悪どい。しかし最後には耕ちゃんが関係者にこれからは幸せにおなんなさい、と、明るく締めてました。 -
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地元の書店で、何の気なしに文庫のホラーコーナーに立ち寄ったら、ふと本書が目に止まった。言わずと知れた超有名ミステリ、手に取ってみると杉本一文氏のイラストによる限定復刻版カバーで(田舎の書店だからかたまたま置いてあった)、おどろおどしくも昭和レトロな味わいが何とも言えず、レジにソッコー持っていった。
ページをめくると冒頭から引きが強い。村の名前の由来となった惨劇の落武者伝説、隠された黄金の行方、相次ぐ凄惨な事件など、祟りと因習に彩られた世界観への没入感がハンパない。物語は、名家の後継として村に呼び寄せられた主人公・辰弥の視点で進むが、そこで彼を待ち受けていたのは、更なる不可解な連続殺人事件だった。
本作は、いわゆる金田一耕助シリーズだが、金田一の活躍はどちらかと言えば控えめ。それよりも、辰弥が何の因果でこの異界のような村に迷い込んでしまったのか、事件を通じて秘められた事実が明かされる描写にウエイトが傾いているな、と感じた。そして、中盤から広大な鍾乳洞を舞台にした冒険活劇へと進む展開が圧巻で、財宝伝説や殺人事件の謎が複雑に絡み合い、ワクワクして読み進められた。
終盤は息もつかせぬスピード感で伏線が回収され、驚きの連続!
帯にあった、辻村深月先生の『皆様、心してください。これが“本家”の凄さです。』のコメント。いやはや、なるほど。深く納得です。
圧巻のストーリー展開を堪能したので、今度はがっつり金田一が推理で魅せる作品を読んでみたいな、と思った。