横溝正史のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
獄門島
金田一耕助シリーズの名作はいくつもあるが、今作は今まで読んだ事がなく、先入観の無い、全く新しい気持ちで読む事が出来た。タイトルの「獄門島」が醸し出すなんとも気味の悪いイメージが物語のアクセントになり、また戦後の陰鬱な雰囲気も相まってとても世界観が洗練された作品だと思われる。
横溝正史はタイトルの付け方が巧妙だと改めて思う。こんさに限らずタイトルからその作品が持つ嫌な空気感を1ページ目から擦り込まれている印象で、どんなミステリーもタイトルは拘っているのだろうが、横溝正史程作品とマッチした、インパクトのある名付けは多くない様に思う。
耕助が戦争から復員する船上にて、千万太という青年と出会い、彼は帰郷の前に死んでしまうが今際の際に耕助に妹達が殺されてしまう、助けて欲しいと言い残す。耕助は千万太の遺言を受け彼の生家である鬼頭家に向かう。
不穏な遺言、美しき三姉妹と女性達、気のふれてしまった座敷牢の男、俳句と見立て殺人。横溝作品を楽しむ為のピースがこれでもかと詰め込まれていて連続殺人が立て続けに起きる恐怖感も混じり合いながら「獄門島」に根付く業の様なものを終盤まで感じる事になる。
それぞれの見立てのトリックも面白く、現代から比べて夜の暗さは比べものにならないだろうから、トリック自体の大味な部分も納得できる。
自分は金田一耕助シリーズはまだそれ程手を付けていないため、恐らくあの人が犯人なのだろうと目星をつけていたのだが、まんまと欺かれてしまった。今作は犯人像も素晴らしいし、真相がわかった事で更に衝撃を受ける事が出来た。
女性や被害者に対する余りにもドライな感じや差別的な表現はこの時代特有のものだが、古典作品のこういった歴史背景はある意味でとても新鮮に映る。自体設定がこのくらいの時期になっている現代ミステリーもあるとは思うがやはりインパクトが違う。
金田一耕助シリーズは乱読している最中だが、やはり面白い作品が沢山ある。今作はとても面白かったし耕助と駐在の清水さんとのやりとりではクスッとなってしまう息抜きもある。
耕助はこの帰りにとある有名な作品の舞台に赴く訳だが、そう考えると復員してからの彼はかなり忙しく風来坊をしていたのだろうと読み取れる。
殺人の動機は見事。現代ミステリーでは中々見受ける事が出来ないものだ。
次は何を読もうかなぁ・・・。 -
Posted by ブクログ
獄門島
金田一耕助シリーズの名作はいくつもあるが、今作は今まで読んだ事がなく、先入観の無い、全く新しい気持ちで読む事が出来た。タイトルの「獄門島」が醸し出すなんとも気味の悪いイメージが物語のアクセントになり、また戦後の陰鬱な雰囲気も相まってとても世界観が洗練された作品だと思われる。
横溝正史はタイトルの付け方が巧妙だと改めて思う。こんさに限らずタイトルからその作品が持つ嫌な空気感を1ページ目から擦り込まれている印象で、どんなミステリーもタイトルは拘っているのだろうが、横溝正史程作品とマッチした、インパクトのある名付けは多くない様に思う。
耕助が戦争から復員する船上にて、千万太という青年と出会い、彼は帰郷の前に死んでしまうが今際の際に耕助に妹達が殺されてしまう、助けて欲しいと言い残す。耕助は千万太の遺言を受け彼の生家である鬼頭家に向かう。
不穏な遺言、美しき三姉妹と女性達、気のふれてしまった座敷牢の男、俳句と見立て殺人。横溝作品を楽しむ為のピースがこれでもかと詰め込まれていて連続殺人が立て続けに起きる恐怖感も混じり合いながら「獄門島」に根付く業の様なものを終盤まで感じる事になる。
それぞれの見立てのトリックも面白く、現代から比べて夜の暗さは比べものにならないだろうから、トリック自体の大味な部分も納得できる。
自分は金田一耕助シリーズはまだそれ程手を付けていないため、恐らくあの人が犯人なのだろうと目星をつけていたのだが、まんまと欺かれてしまった。今作は犯人像も素晴らしいし、真相がわかった事で更に衝撃を受ける事が出来た。
女性や被害者に対する余りにもドライな感じや差別的な表現はこの時代特有のものだが、古典作品のこういった歴史背景はある意味でとても新鮮に映る。自体設定がこのくらいの時期になっている現代ミステリーもあるとは思うがやはりインパクトが違う。
金田一耕助シリーズは乱読している最中だが、やはり面白い作品が沢山ある。今作はとても面白かったし耕助と駐在の清水さんとのやりとりではクスッとなってしまう息抜きもある。
耕助はこの帰りにとある有名な作品の舞台に赴く訳だが、そう考えると復員してからの彼はかなり忙しく風来坊をしていたのだろうと読み取れる。
殺人の動機は見事。現代ミステリーでは中々見受ける事が出来ないものだ。
次は何を読もうかなぁ・・・。 -
Posted by ブクログ
噂のスケキヨみたさに読んだら、金田一耕助にどハマりしたそのきっかけ。
もじゃもじゃ頭の風采上がらぬ珍妙な男、金田一耕助。そこに舞い込んだ妙な手紙をきっかけに湖畔の屋敷で繰り広げられる凄惨な連続殺人事件。
これの面白いところは符牒と、金田一の立ち位置だ。
金田一耕助を元ネタにした金田一少年や名探偵コナンなどの昨今の探偵小説では探偵が解かざるおえない状態に持っていくのが殆どだが、金田一耕介は職業探偵であり、関係者とするには繋がりが弱い。始まりに耕介関係者の死亡があったとしてもいつでも手を引ける状態であると言うのは最近の推理小説ばかり読んでいた身としては新鮮だった。
ラブロマンスもあるので、是非未来の姿を見てみたいもの。 -
Posted by ブクログ
ディクソン・カー『夜歩く』を読んだので、同じ題名の横溝正史探偵小説を。
金田一耕助長編では、本陣殺人事件、獄門島に続く三作目。
横溝正史は「首なし死体といえばあるお約束(ネタバレ回避のため伏せます)があるが、それの次の段階のものを書きたい」としたもの。
『夜歩く』は、むかーーし映画だかドラマで『夜歩く女』という題名で見て、なかなか面白かったという印象だけ覚えている。しかし読んでみると、これ映像化はか難しいというか、この雰囲気、このトリックの醍醐味を出しづらい気がする。
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語り手は「三文探偵小説家」の屋代寅太。彼は学生時代に知り合った仙石直記から「実家で何やら事件が起きそうな嫌な予感がするので、探偵小説家の君の力を借りたい」と相談される。仙石家は、かつての藩主古神家の家老筋にあたる。数代前から主君にあたる古神の当主はのんびり世間知らず…要するにボンクラ揃いなので、家老の仙石家が事実上の主として家屋敷商売を取り仕切るようになっている。
先代当主の古神織部には、初めの妻との間の嫡男守衛は傴僂で、二番目の妻のお柳との間には八千代がいる。数年前に織部が亡くなり現代の当主は守衛だが、実際に家を取り仕切っているのは直記の父の仙石鉄之進で、直記も威張り散らかしている。
守衛と直紀は、それぞれが美人の八千代を愛して自分のものにしたいと思っているのだが、はたして八千代の父は先代で故人の古神織部なのか、織部生前からお柳と通じていた仙石鉄之進なのかがわからない。そこで二人とも異母妹かもしれない八千代をモノにすることをギリギリで踏みとどまっている状態だ。
そんな古神八千代のもとに差出人不明の怪しい手紙が届き「われ東京へ来れり。近く汝と見参せん。……汝夜歩くなかれ」と書かれて首なし傴僂男の写真が同封されていた。実は八千代は夢遊病を患っているのだ。八千代は、たまたま立ち寄ったバーで、傴僂の画家蜂屋小市を見ると「本当に現れたわね!」と言って銃で撃つ。だが数日後「鉢屋小市と結婚する」と言い出して古神家の屋敷に招いたのだ。
屋代寅太が招かれた古神の屋敷にいるのは怪しげな人たちばかり。
傴僂の当主の古神守衛、
客の傴僂の鉢屋小市、
夜歩く女の古神八千代、
暴力酒乱夢遊病爺さん仙石鉄之進、
一見か細いが淫乱めいたお柳、
先代織部の弟で知的障害者の古神四方太、
主家より威張って女癖の悪い仙石直記
が、いるという「何かが暴発寸前」の状態だった。
そしてその真夜中、屋代寅太と仙石直記は、夢遊病の古神八千代の後をつけると離れの館から首なし死体を発見するのだった。
やがて物語の舞台は、古神家旧領の岡山県鬼首村(おにこうべむら。『悪魔の手毬唄』も同名の村での事件だ!)に移動する。そして新たな死体が。
だが鬼首村には名探偵の金田一耕助が呼ばれていたのだ!
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横溝正史小説では血縁がとにかく乱れまくって、ドロドロした血の因縁が暴発して陰惨な殺人事件に繋がっていく。今回も特に千石親子が女性に関してクズクズなので読んでも被害者の身になってつらいorz
そして首なし死体ってかなり怪奇猟奇ですが「俺たちには刀で人を斬ることはできないが、親父やお祖父さんの世代は刀上等だったんだからいくらでも斬れるだろう」という若い世代や、「いやこちとら戦争で刀を奮ってるんだ、首無し死体くらいが何だ」という時代めいたものも。そうか、現代読者の私達が考える「日本刀で人を殺して切断して運んで」というのと、この本の登場人物たちがやるのとでは全く違う感覚か。
そしてそんな怪奇死体が連なる陰惨な事件であっても、横溝正史の人柄か、金田一耕助の存在なのか、どことなく爽やかささえ感じるんですよ。ドロドロの停滞した空気を金田一耕助の風が吹いて流していくような。
今回もかなりキモチノワルいし、加害者側が気の毒な事件だったけど、やっぱり横溝正史は面白いんだよなあ。