横溝正史のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ディクソン・カー『夜歩く』を読んだので、同じ題名の横溝正史探偵小説を。
金田一耕助長編では、本陣殺人事件、獄門島に続く三作目。
横溝正史は「首なし死体といえばあるお約束(ネタバレ回避のため伏せます)があるが、それの次の段階のものを書きたい」としたもの。
『夜歩く』は、むかーーし映画だかドラマで『夜歩く女』という題名で見て、なかなか面白かったという印象だけ覚えている。しかし読んでみると、これ映像化はか難しいというか、この雰囲気、このトリックの醍醐味を出しづらい気がする。
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語り手は「三文探偵小説家」の屋代寅太。彼は学生時代に知り合った仙石直記から「実家で何やら事件が起きそうな嫌な予感がするので、探偵小説家の君の力を借りたい」と相談される。仙石家は、かつての藩主古神家の家老筋にあたる。数代前から主君にあたる古神の当主はのんびり世間知らず…要するにボンクラ揃いなので、家老の仙石家が事実上の主として家屋敷商売を取り仕切るようになっている。
先代当主の古神織部には、初めの妻との間の嫡男守衛は傴僂で、二番目の妻のお柳との間には八千代がいる。数年前に織部が亡くなり現代の当主は守衛だが、実際に家を取り仕切っているのは直記の父の仙石鉄之進で、直記も威張り散らかしている。
守衛と直紀は、それぞれが美人の八千代を愛して自分のものにしたいと思っているのだが、はたして八千代の父は先代で故人の古神織部なのか、織部生前からお柳と通じていた仙石鉄之進なのかがわからない。そこで二人とも異母妹かもしれない八千代をモノにすることをギリギリで踏みとどまっている状態だ。
そんな古神八千代のもとに差出人不明の怪しい手紙が届き「われ東京へ来れり。近く汝と見参せん。……汝夜歩くなかれ」と書かれて首なし傴僂男の写真が同封されていた。実は八千代は夢遊病を患っているのだ。八千代は、たまたま立ち寄ったバーで、傴僂の画家蜂屋小市を見ると「本当に現れたわね!」と言って銃で撃つ。だが数日後「鉢屋小市と結婚する」と言い出して古神家の屋敷に招いたのだ。
屋代寅太が招かれた古神の屋敷にいるのは怪しげな人たちばかり。
傴僂の当主の古神守衛、
客の傴僂の鉢屋小市、
夜歩く女の古神八千代、
暴力酒乱夢遊病爺さん仙石鉄之進、
一見か細いが淫乱めいたお柳、
先代織部の弟で知的障害者の古神四方太、
主家より威張って女癖の悪い仙石直記
が、いるという「何かが暴発寸前」の状態だった。
そしてその真夜中、屋代寅太と仙石直記は、夢遊病の古神八千代の後をつけると離れの館から首なし死体を発見するのだった。
やがて物語の舞台は、古神家旧領の岡山県鬼首村(おにこうべむら。『悪魔の手毬唄』も同名の村での事件だ!)に移動する。そして新たな死体が。
だが鬼首村には名探偵の金田一耕助が呼ばれていたのだ!
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横溝正史小説では血縁がとにかく乱れまくって、ドロドロした血の因縁が暴発して陰惨な殺人事件に繋がっていく。今回も特に千石親子が女性に関してクズクズなので読んでも被害者の身になってつらいorz
そして首なし死体ってかなり怪奇猟奇ですが「俺たちには刀で人を斬ることはできないが、親父やお祖父さんの世代は刀上等だったんだからいくらでも斬れるだろう」という若い世代や、「いやこちとら戦争で刀を奮ってるんだ、首無し死体くらいが何だ」という時代めいたものも。そうか、現代読者の私達が考える「日本刀で人を殺して切断して運んで」というのと、この本の登場人物たちがやるのとでは全く違う感覚か。
そしてそんな怪奇死体が連なる陰惨な事件であっても、横溝正史の人柄か、金田一耕助の存在なのか、どことなく爽やかささえ感じるんですよ。ドロドロの停滞した空気を金田一耕助の風が吹いて流していくような。
今回もかなりキモチノワルいし、加害者側が気の毒な事件だったけど、やっぱり横溝正史は面白いんだよなあ。 -
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ネタバレ金田一耕助シリーズの短編集。三つの短編が収録。
非常に良作揃いで大満足。横溝正史の短編は初だったが、短編も面白い。
◯湖泥
湖に面した村。ルーツは同じだが分たれた北の名家と西の名家で、婚約者争いが起きる。ある祭りの晩、村八分の男の家から渦中の女性の死体が発見され…
短編だが、これぞ横溝、という作品。村の因習、二つの名家、名家間の争い、不気味な住民。短い中に濃縮されている。犯人も意外性があっておすすめ。
◯貸しボート十三号
川を流れてきたボートから、男女の遺体が発見される。しかも片方は絞殺、片方は刺殺の上、2人とも半分ほど首が切られており…
非常に魅力的な死体の謎。これに尽きる。事件の陰惨さに比べラストも切なく、良い。名作。
◯堕ちたる天女
トラックから落ちた石像の中から、女性の死体が発見される。どうやらスナックの女性で、近しくしていた芸術家がいるようだが…
サイコパスとの対決。ラストは微妙だが、なんと磯川警部と等々力警部の顔合わせがある。それだけで読みたくなる作品。 -
Posted by ブクログ
金田一耕介のシリーズの中でも傑作。
「犬神家」という言葉は聞いたことがあったり、池から突き出した足や不気味な白マスクのイメージはなんとなく見たことがあるかも知れないが、どんなストーリーか知らないという人も少なくないのでは。大人になってから原作を読むとこんなミステリだったのかと驚かされる、ホラーミステリーの金字塔。
なぜあんな池からあんな風に足を突き出して死んでいたのか、この時代に見立て殺人にここまで面白い描写をしたのは流石の一言。もちろん古めかしい表現はあるが、令和の今でも間違いなく楽しめる内容であり、古い、よくわからないという理由で横溝正史の金田一耕介シリーズに手を出していない人がいたら、ぜひ本作から手にとってほしい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「恐ろしき四月馬鹿」「河獺」「画室の犯罪」
「広告人形」「裏切る時計」
「山名耕作の不思議な生活」
「あ・てる・てえる・ふいるむ」「蔵の中」
「猫と蝋人形」「妖説孔雀樹」「刺青された男」
「車井戸は何故軋る」「蝙蝠と蛞蝓」
「蜃気楼島の情熱」「眠れる花嫁」
「鞄の中の女」「空蝉処女」
前半はノンシリーズ。色んなテイストの話があって良い。ただ三津木俊助とかシリーズ探偵が出てくるとちょっと安心する。「車井戸は何故軋る」「蜃気楼島の情熱」が好き。「車井戸〜」は特に良く出来ていて感心する。
短編に出てくる金田一耕助は長編とちょっと雰囲気が違いこちらも好き。