横溝正史のレビュー一覧
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『支那扇の女』
金田一耕助には「多聞修」という助手なのか御用聞きなのかがいるというので、出てくる本を読んでみよう。
「支那扇の女」として知られる毒殺容疑者がいた。八木子爵の妻の克子は、姑と義妹を毒殺しようとしたとして逮捕され、本人は無実を訴え続けたが審理中に死亡した。
代は代わり、八木子爵の子孫の朝井と、志那扇の克子の子孫の美奈子が結婚した。この家で新たな殺人が起こる。等々力警部と金田一耕助は捜査に乗り出し…。
「多聞修」出てこないなーと思ったら、最後にちょっと出てきた。なんでも「数犯の前科を持つ30歳前後の町のあんちゃん風の男で、以前殺人犯の容疑が掛けられた所を金田一耕助の推理により助けられた。それ以来金田一耕助に心酔して助手なんだか御用聞きみたいなことをしている。裏社会にも顔が利くので、人の家に忍び込む、影の仕事をする人を呼び集めるなど、犯罪スレスレな手段ではある」っていうこと。出番は少ないし、実際に何をしたのかは「探偵の秘密です」で秘されるんだが、その数行の出番はなかなか印象的でした!
『女の決闘』
あ!これNHK『シリーズ横溝正史I』でドラマ化されてた!金田一耕助は池松壮亮で、地の文章をそのまま使って「原作に忠実に映像化」したものです。
日本が気に入ったイギリス人で英語教師のロビンソン夫妻の帰国さよならパーティーが行われた。
金田一耕助もご近所さんとして呼ばれていた。耕ちゃんは「若い頃渡米して風来坊、薬中毒一歩手前、日本人街で犯罪解決したので、顔役に気に入られて、日本に帰って探偵になった」という過去があるので、英語できるしアメリカ時代のお友達もいます。
このパーティーで顔を合わせたのが、作家の藤本と今の妻多美子と、藤本の前の妻の泰子だった。しかも泰子には偽の招待状が届いて訪れたのだ。気まずくなるパーティー会場。そして多美子と泰子が並んで座っている時に多美子が毒を盛られて倒れる。真っ先に疑われる泰子。この時に多美子の命は助かった。
しかし数日後、また藤本と泰子は顔を合わせることになり、今度は藤本が毒殺されてしまう。 -
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映画、ドラマであらすじも犯人も分かった状態で読みましたが結構印象が違いました。
だって映画は山崎努のあの風貌、宣伝での「祟りじゃーー」の雄叫び、鍾乳洞のミイラ、小川真由美の怖ろしい美しさ、連続殺人を高笑いで見下ろす夏八木勲の怨霊、などなどおどろおどろしい印象だったのですが、原作は多くの殺人事件もあるけれども、鍾乳洞冒険だとか、いくつもの愛の姿だとかを経て、ラストは驚きの爽やかさ。やっぱりいいな横溝正史。
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神戸の勤め人28歳の寺田辰弥は、弁護士を通して岡山県の八つ墓村分限者(資産家)の田治見家から「お前は我が家の血を引いている。跡取りとして戻ってきてほしい」と申し入れられる。だが同時に「八つ墓村に帰ってはならぬ。血!血!血!血の大惨劇が再び繰り返されるだろう!」という脅迫状も受け取った。
八つ墓村は、戦国時代に尼子氏再興を志す八人の武者たちが隠し財産とともに身を隠した村だった。最初は穏やかな関係を築いていたが、毛利家による厳しい探索と、武者たちの財産に目がくらみ、村人たちは武者たちを襲撃して皆殺しにした。武者の大将は「七生までこの村に祟る」と呪詛の言葉を残して死んだ。武者たちの祟りを恐れた村人たちは武者たちを「八つ墓明神」として祀った。この時、武者たちを襲ったときの中心が田治見家だったのだ。
そして時は流れて大正時代。田治見家の当主は残虐な要蔵だ。彼は妻子とは別に井川鶴子という女性を暴力で犯し、屋敷の離れに監禁した。鶴子には亀井陽一という言い交わした相手がおり、要蔵の隙を見て逃げ出すが、要蔵が暴れて村全体に被害が及ぶことから、泣く泣く要蔵の妾になる。彼の愛撫や嫉妬や虐待は異常性を極め、鶴子の心の慰めは亀井陽一と密かに密かに文を交わすことだった。
そしてこの物語の語り手、辰弥が生まれたのだった。
だが要蔵は「辰弥の父親は亀井陽一」という噂を知り、鶴子と辰弥に激しい暴力を振るう。ついに鶴子は辰弥を連れて神戸へ逃げ、寺田という男と結婚したのだった。
そして鶴子に逃げられた要蔵の狂気は頂点に達し、詰め襟の洋装に脚絆を履き、鉢巻と胸には懐中電灯を灯して、兵児帯には日本刀、手には猟銃を持ち村人たちを次々次々に襲い殺し回った(画像を見たい方は「八つ墓村 山崎努」で検索!怖ろしいんだけど桜をバックにして妙な美しささえ(^_^;)。32人の被害者を出し、山へ消えて今日に至るまで見つかってはいない。
32人というのが8の倍数だったことから「8人の武者が一人4人ずつの犠牲者を求めた」と、呪いとして伝えられている。
辰弥は初めて自分の母の置かれた酷い環境、自分の身体の痣や火傷の理由、そして父が狂人の殺人者ということを知ったのだった。
さらに脅迫状の「血の大惨劇が繰り返される」の言葉通り、辰弥の眼の前で人々が次々毒殺されていく。
そんな辰弥を訪ねてきたのは金田一耕助という素人探偵だった。探偵って言う割には小柄でモジャモジャ頭でヨレヨレの着物の風采の上がらない吃りのある人物だったんだ。彼は「今後怪しいなって思うことがあったら素直に言いなさいね」って忠告していった。
怪しいことならたくさんある。
まず田治見家は、要蔵の叔母にあたる双子の老婦人お梅様とお竹様が差配している。要蔵の正妻は26年前の事件で殺され、久弥と春代がいるが二人共病弱。そこで異母弟の辰弥が呼び戻されたのだ。
親戚筋には里村慎太郎という復員してからはすっかり尾羽打ち枯らした男と、無邪気すぎっていうか色々危なかっしい妹の典子がいる。
八つ墓村の田治見家と並び立つ分限者には野村家があり、金田一耕助は現当主壮吉の客人だ。野村家には死んだ弟の未亡人の美也子という都会的で美しい未亡人が滞在している。どうやら里村慎太郎とは再婚寸前の関係だったらしい。
他にも村には対になる者たち、二人の尼僧、二人の僧侶、二人の医者がいる。
この対の片方が次々殺されていき、辰弥はそのほぼすべての現場に居合わせる。
さらに辰弥の部屋となった離れ屋敷はかつて母が監禁されていた場所なので母と密かな恋人との心の絆を思わせるし、隣の納戸には秘密の地下道への抜け道があることも見つけた。辰弥が抜け道を探ってみるとそこは広い広い鍾乳洞だった。どうやら戦国時代の尼子の武者たちの隠し財産はここにあるのか!?
この物語は、全てを乗り切った辰弥が、金田一耕助に進められて心の整理として八つ墓村での恐ろしい経験を文章にしたもの。辰弥が完全に巻き込まれた中心人物で本人も相当酷い目に合うんだけど、何しろ素人なので金田一の耕ちゃんから「あなたは村から怪しまれてるんだから、何かあったらすぐに言いなさいね」って言わてるにも関わらず、鍾乳洞では秘密の冒険するし、殺人現場で人を見ても誰にも言わなかったりする。大丈夫か!
さらに自分が容疑者の一人になっている連続殺人よりも「母はどうやって過ごしていたのか」「尼子家臣の隠し財産はどこだ?」「行方不明の父・要蔵はどこに消えた?」ってことや、それよりも自分に好意を示してくれる3人の女性、姉春代、未亡人美也子、遠縁典子との関係にも気を取られてしまう。「朝は春代とご飯食べて、昼は美也子と散歩して、夜は典子と鍾乳洞で会って…」って、あなた村中から狙われてるよ!?
その意味では探偵小説なのに冒険小説!という面白さもあり、青春恋愛小説でもあり、様々な「愛」も出てます。要蔵の狂気執着の愛、鶴子と陽一の引き裂かれない愛、慎太郎と美也子の複雑な愛、閉鎖的な村にいる典子や春代が外から来た「まとも」な辰弥に示す愛、愛によって人に現れる変化もあります。
犯人の動機も結局は「愛」でした。
しかし殺人が解決してみれば…、…、…私は探偵小説において「探偵の眼の前で連続殺人が起こるのは物語の形式上仕方ない」という考えなのですが、今回ばかりは耕ちゃん防げたんじゃないの!?と思わざるを得ない!
そんなこんなを乗り越えた辰弥はこの手記を書き…、ラストはびっくりの爽やかさ。
ええ!?『八つ墓村』といったら山崎努のあまりにインパクトのあるあの容貌、映画予告の「祟りじゃーーー」(本編にこのセリフはない)の叫び、小川真由美の怖ろしい美しさ、惨劇を高笑いする落ち武者亡霊の夏八木勲、鍾乳洞のミイラなどなどおどろおどろしさでは金田一耕助映画トップクラスかと思っていたのに、この原作のこのラストの爽やかさは何なんだ。
今回の事件でも関係のない人たちがたくさん殺される酷い事件だった。しかし戦国時代からの因縁や呪いに明治時代、昭和になっても覆われていた八つ墓村が、今回の陰惨な連続殺人で「祓われた」といえる清々しさ。辰弥だけでなく、八つ墓村も因縁を超えて新しい村を作っていこう!という希望を向いた物語になっていた。
やっぱりすごいな横溝正史。耕ちゃんも今回の連続殺人は防げたんじゃないのとは思うけど、やっぱり清々しい風のような人だ。 -
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1974年。再読なんだが、厚手の本だったことしか覚えてない。「江戸川乱歩に捧ぐ」と書いてある。
昭和35年(1960年)。作者にしては新しい年設定だが、やはり戦前を引きずる。元華族とかねー。
舞台は軽井沢。軽井沢ゴルフ大会(この時代はコンペとは言わないらしい)マーカーは赤い毛糸。
東北出身者が多く、ズーズー弁は作者はわからないということで記載はない。昔東北に行ったとき何言ってるがわからず、ニュアンスで受け答えした。ハワイ行ったとき、東北より日本語通じる!って思った。いろえんぴつ、えろいんぴつ。いえ、私は東北好きですよ。
人生は仮面舞踏会。人間関係がもつれて把握が難しいが、個人的には余韻が良い。 -
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現代のビレッジホラーにつながる名作。「封建的な、あまりにも封建的な」戦後と言う時代背景と、島と言う閉鎖的な環境の中では、異常と思えることが日常になる。そして、誤った選択を繰り返してしまう。映画版久々に観たいなぁって思ったけど、原作も気になって読み返し。金田一耕助の目を通して、事件の全貌に触れ島国で起こる異常なまでの執念と、それに取り憑かれた人々による殺人事件。その真相に触れる。昭和中期の作品なので表現も楽しめる。9月には横溝正史原作の『八つ墓村』も新作公開されるし楽しみだなぁ。『八つ墓村』の初代金田一耕助は、寅さんの渥美清さんが演じてたからなんか変な感じだった。寅さんが謎解きしてる!って、見えちゃった。子供心に。
#映画好きな人と繋がりたい #ホラー映画鑑賞 #映画鑑賞記録 #金田一耕助 #横溝正史 -
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現代のビレッジホラーにつながる名作。「封建的な、あまりにも封建的な」戦後と言う時代背景と、島と言う閉鎖的な環境の中では、異常と思えることが日常になる。そして、誤った選択を繰り返してしまう。映画版久々に観たいなぁって思ったけど、原作も気になって読み返し。金田一耕助の目を通して、事件の全貌に触れ島国で起こる異常なまでの執念と、それに取り憑かれた人々による殺人事件。その真相に触れる。昭和中期の作品なので表現も楽しめる。9月には横溝正史原作の『八つ墓村』も新作公開されるし楽しみだなぁ。『八つ墓村』の初代金田一耕助は、寅さんの渥美清さんが演じてたからなんか変な感じだった。寅さんが謎解きしてる!って、見えちゃった。子供心に。
#映画好きな人と繋がりたい #ホラー映画鑑賞 #映画鑑賞記録 #金田一耕助 #横溝正史 -
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ネタバレ初めて読んだ。映画も見たことない。9月に新しい映画が公開されると知り予習として。令和の今読んでも先が気になって一気読みしたくなる面白さなのはすごい。
落武者の呪いが残る村で起きる連続殺人事件を金田一耕助が解決する、としか内容を知らなかった。間違ってはいないけど、実際に読むとイメージしてた推理小説っぽさはだいぶ薄い。それより伝奇小説の面が濃い。犯人の手がかりを追ったり落武者の残した宝を探したり鍾乳洞をうろつく場面がかなり多い。主人公も金田一耕助ではない。村一番の有力者一族の後継者の青年。小説は彼の手記の形式で書かれている。
読んでいて犯人は最後までわからなかった。重要人物がどんどん死んでいくので消去法で大体絞れてはくるのだが。
ラストは爽やかなハッピーエンド。ヒロインの典子が可愛かった。 -
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金田一耕助シリーズ二作目。
映像化の機会も多い有名作。メタ的にいえば複数のミスリードとヴァン・ダイン的な見立てによる殺人事件が扱われている。トリックもビジュアルもやや地味な本作だが、注目すべきはこれが長編において戦争から帰還した金田一の初の事件であるという事だろう。ここで金田一は犯人のフェアプレーともいうべき数々のヒントを見逃し、ミスリードに囚われてなかなか真相に辿り着くことができない。
金田一作品といえば猟奇じみたイメージが先行しがちだけど、そもそも一作目の『本陣殺人事件』にもあるように金田一耕助は非常に理知的な探偵だ。あらゆる可能性を検討して綿密に証拠を集めていく探偵法。だからこそ、戦争で疲弊した金田一の理性は人間の妄執という理性の及ばない狂気に翻弄され、最後に真実に気づいた時に呆然として、狂ったように笑うしかなかった。これはちょっと象徴的だ。
横溝正史は混迷した戦後社会で探偵小説を書く意義について十分に意識して本作に取りかかったのだろう。前作から続投されてシリーズの看板を背負うことになった金田一耕助は名探偵としてこの課題に取り組まなくてはならない宿命となった。近年の長谷川博己版のドラマ作品ではこの「戦後」と「狂気」に焦点が当てられており、とても印象に残った。ここに金田一耕助シリーズの核があるようにも感じる。 -
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金田一耕助シリーズ二作目。
映像化の機会も多い有名作。メタ的にいえば複数のミスリードとヴァン・ダイン的な見立てによる殺人事件が扱われている。トリックもビジュアルもやや地味な本作だが、注目すべきはこれが長編において戦争から帰還した金田一の初の事件であるという事だろう。ここで金田一は犯人のフェアプレーともいうべき数々のヒントを見逃し、ミスリードに囚われてなかなか真相に辿り着くことができない。
金田一作品といえば猟奇じみたイメージが先行しがちだけど、そもそも一作目の『本陣殺人事件』にもあるように金田一耕助は非常に理知的な探偵だ。あらゆる可能性を検討して綿密に証拠を集めていく探偵法。だからこそ、戦争で疲弊した金田一の理性は人間の妄執という理性の及ばない狂気に翻弄され、最後に真実に気づいた時に呆然として、狂ったように笑うしかなかった。これはちょっと象徴的だ。
横溝正史は混迷した戦後社会で探偵小説を書く意義について十分に意識して本作に取りかかったのだろう。前作から続投されてシリーズの看板を背負うことになった金田一耕助は名探偵としてこの課題に取り組まなくてはならない宿命となった。近年の長谷川博己版のドラマ作品ではこの「戦後」と「狂気」に焦点が当てられており、とても印象に残った。ここに金田一耕助シリーズの核があるようにも感じる。 -
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ネタバレ□初見時の感想(2024年6月)
読書を始めたばかりの頃に読み、「読みづらい」「人が多すぎて覚えられない」「私、ってお前誰だよ」「機械トリックかよ」「著者が挑戦的でなんかムカつく笑」ということで、全然面白いと思えず、読むのが辛いと思ってしまった作品。
□再読時の感想(2026年6月)
超傑作。
この間海外小説を250冊ほど読みまくっていたこともあり、読みづらさは全く感じなくなっており、人物やその関係もスッと頭に入る。何より、機械トリックがどうとかそういうレベルの作品じゃないことに気づけた。
ただ、読書初心者がいきなり読む作品ではないなwとも思った。
■『本陣殺人事件』 ★★★★★
超傑作。
機械トリックは要素の1つにすぎないが、密室の破り方としても「綺麗」と感じる。
・殺して自殺したが、他殺に見せたかった
・密室になってしまった密室殺人
・三本指の男の使い方
・三郎の参戦とその根拠(生命保険の伏線)
・ディクスン・カーやアガサ・クリスティ、ホームズなどへの言及
・全編通して無駄のない描写
等々、どこをとっても美しく、完璧と思える作品だった。
強いて言えば、動機が現代になじまない、というところがあるが、そこは「まあ当時なら家柄を重視したとか醜聞を恐れたとかいう在り方が現在よりも強かったのだろうし、潔癖症だったという性格的掘り下げがプラスされてるから納得できるかな」と感じた。
■『車井戸はなぜ軋る』 ★★★★☆
「そういえば車井戸が軋んだ音がしました」が解決編で提示されるのがアレだが、それは些細なことで、単純にクソ面白かった。
「あ~これ伍一が大助に成りすましてるのか」と誰もが思うが、メタ読み(途中でまさにそのことに鶴代が言及すること)から「あれ?違うか」となるが、やはり頭には残り、「違ったとして、じゃあ真相は?」となるという、最後まで考える楽しみがあるストーリー。
状況がシンプルで、文章も綺麗なところがお気に入り。
■『黒猫亭事件』 ★★★☆☆
収録された3作品の中では一番「う~ん」と思った作品。というのも、「さすがにそれは現実の動き的に込み入りすぎというか無理があるのではw」と思ってしまったため。
特にごっこ遊びのくだりや日兆君の心理と行動に無理があるのでは、と感じてしまった。
「顔のない死体」+「一人二役」で、自分で提示したお馴染みパターンを破壊するという新たな挑戦そのものは素晴らしいと思った。 -
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ネタバレ金田一耕助シリーズ初読み。
名探偵ものの王道推理小説という感じで懐かしさも感じる。
戦後すぐに発売のため、読みやすさを心配していたが、杞憂だった。とても読みやすい。
ただ、現代ではあまり使われない言葉はあり、その点だけ時間がかかった(調べる時間)。
もっとも、読み飛ばしても大して影響はないのかもしれない。
表紙の絵は電子書籍版の方が昭和っぽく好み。
以下、犯人やトリックを簡単に以下に書きます。
ネタバレですので、ご注意ください。
それにしても、三作ともトリックにまんまと騙されました。面白い。
・本陣殺人寺事件
まさか妻を殺してから自殺とは驚き。
そして、弟は共犯とは。
犯人の性格が見抜くポイントだったか。
・車井戸はなぜ軋る
嫉妬心を利用して復讐を図るのが恐ろしい。
母違いの兄弟は入れ替わっているのかと思わせて、入れ替わっていない。
金田一耕助は最後に少ししか出てこない。探偵役は妹。
・黒猫亭事件
「顔のない屍体」のトリックかと思いきや、まさかの「一人二役」がトリック。
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ネタバレミステリーにおいて、いかに犯人らしからぬ人を犯人に仕立て上げるかという擬装は、そもそもミステリーの根幹だし、その為に筆者は様々な知恵を絞り、様々ななトリックや叙述トリックなど読者を騙す為の奔走がる。しかし「犬神家の一族」においてはあまりにもドストレートに犯人がおり、全く純度の高い動機の元に事件が発生し、そこに一つの工夫を加えることによって読者を欺き困惑させた作品だ。
余りの純度に真相究明時には空いた口が塞がらず、唖然としてしまった。現代ミステリーではおそらくここから何かしらのどんでん返しが用意され、その落差によって読者を騙す訳だが今回はそんな小細工は少な目に余りにも大胆に犯人を登場させ、それがかえって今作のどす黒さや衝撃の部分に繋がる。
倫理観は当然、現代と違う為、それに対しては何も無いが、金田一耕助シリーズを読み始めてから最も有名作品であるが最も印象に刻まれる作品である。
佐清は映像作品でもインパクトあるビジュアルで逆さまの死体はとても有名であるが、小説に登場する彼も戦争による傷のせいで余りにも不気味、グロテスクな容姿で登場する。
犬神家の一族はすべての面々が狂気じみており、竹子、梅子、松子はまるで悪魔の化身の様な姉妹。また、それぞれの倅である佐智、佐武、佐清も一筋縄にはならず、そこに絶世の美女である珠代と従僕の猿吉が相まって読み終わった後で後味の悪さ、腹立たしさを余韻で感じることができる。
発売当時の評価はわからないが、古典として現代に読む事により、理不尽な部分に気持ち悪さ、不気味さがブレンドされてより一層深い作品になっている。男女関係のあり方や戦争後の情勢、社会的背景、女性蔑視の倫理観等、あまりに新鮮だ。
松子に対する佐清の行動は現代ではどうしても理解出来ないし、青沼家の人々についてもなんとも言い難い結末である。また、作品自体は名作だが耕助の推理は後手に回っている印象で、これだけ大胆な擬装、トリックが使われているにも関わらず数人もの人が亡くなる事件は耕助に物足りなさを感じる(最終的には名誉挽回となるが)
最終章大団円は中々理解に苦しむ内容だが。歴史を感じてこれはこれで面白い。犬神家が再興していく事は難しいだろうが、せめて残された登場人物達の数名には幸せになってもらいたい。
流石は金田一耕助シリーズで屈指の有名作品だった。