あらすじ
※本書は、昭和51年3月に刊行された角川文庫『貸しボート十三号』(電子版発売日:2012年8月3日)を改版した作品となります。重複購入にご注意ください。
白昼の隅田川に漂う一艘の貸しボート。中を見た人々は一斉に悲鳴を上げた。そこには首を途中まで挽き切られ、血まみれになって横たわる、男女の惨死体があったのだ。
名探偵・金田一耕助による聞き込みで、事件直前に、金ぶち眼鏡をかけ、鼻ひげを蓄えた中年紳士がボートを借りたことが判明。謎の人物を追って捜査が開始されたが、事件は意外な方向に……。
表題作に「湖泥」「堕ちたる天女」を加えた、横溝正史の本格推理。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
禍話のKなっきさんが恐いと言っていたのが印象に残っており、初めて読む横溝正史作品として選びました。
表題作は残酷な犯罪描写と、大学ボート部員達の友情物語を掛け合わせた傑作。
三作全て死体の発見状況がかなりセンセーショナルで、"湖泥"、"堕ちたる天女"は犯人達の悪意がとてつもないが、飄々としている金田一耕助と警察関係者のやり取りが非常にコミカルで面白い。
Posted by ブクログ
表題作ほか、短編の『湖泥』と『堕ちたる天女』が収録された本作は、「これぞ横溝正史」と言える中短編集。
『湖泥』では岡山県の寒村が舞台の短編。短い中に対立する名家、消えた美人、戦争で心を病んだ男と横溝エッセンスがこれでもかとぶち込まれているために読み応えたっぷり。最後には飄々と事件を解決する金田一耕助の姿がとても頼もしい。
『貸しボート十三号』は不気味な死体が見つかることから始まる中編小説。途中まで首が切断された遺体の持つ意味や、被害者の名誉を守ろうと足掻く若者たちの青さがクローズアップされた本作だが、読み終えたあと少し切なくなる。
『堕ちたる天女』は石膏で固められた死体を巡る物語。幾重にも張り巡らされたミスリードの中から、金田一耕助が真相に迫るところや、岡山県警の磯川警部と警視庁の等々力警部が合間見えるシーンは、横溝ファン大歓喜な箇所になり、読み終えてから満足感を味わえる1作である。
Posted by ブクログ
横溝正史の復刻版。
相変わらずおどろおどろしい、
禍々しい世界観。
『湖泥』は好みではない(むしろ気持ち悪い)。
最後の『堕ちたる天女』が一番面白かった。
そのトリック?推理に、ああ、その可能性に
なぜ思い至らなかったのか、と。
Posted by ブクログ
※伏せ字にしてますが、若干グロを想起させる単語を使用しています。苦手な方はご注意下さい※
江戸川乱歩といい横溝正史といい、◯体を過度に損壊しないと◯んじゃう呪いにでもかかっとんのか?
毎回この辺の作品読む度思うんだけど、そりゃあ良いご家庭の子息令嬢は読むの禁止されるよね。
「探偵小説」と呼ばれる昭和の推理小説って、どうしてこんなに事件内容が惨たらしいんでしょう。最近のミステリにも眉を顰める向きはあるけど、時代錯誤なハラスメントごりごりの描写含めて、やっぱりこの大時代な作風には勝てないわ(勝たなくてよい)。
さて、本作。
表題作含む三作の短編〜中編を収めた、じっちゃんこと金田一耕助の事件簿です。
※※※描写注意※※※
◯球のくり抜かれた、死後◯辱されたと思われる裏若き乙女。
ボートに横たわる、首が半分ひき千◯られた男女。
マネキンに塗り込められた◯乱死体。
事件の概要まとめようとしたけど、見返したら上記の描写再読してどっと疲れたからいつもより短め。
推理小説として充分に面白いのに、猟奇的な部分にどうしても目がいっちゃうのは何か勿体無いなとも思ったけど、このセンセーショナルさで読者を獲得してたのもあるだろうからなあ。ううむ。
【内容メモ書き】
◎湖泥…村の有力者である一族の跡継ぎと婚約した女が惨たらしい死体となって発見された。彼女を奪い合っていたもう一方の有力な一族の息子が容疑者となるが、許嫁の方も奇妙な証言で疑われることになる。捜査が進む中、次の犠牲者が出て…。
◎貸しボート十三号…ボートの中で発見された男女の痛い。どちらの首も半分挽き切られていたことから心中を図ったものでも無いらしい。死因もあべこべな2つの死体の謎を、金田一が見事に解き明かす。
◎堕ちたる天女…走行中の車から落ちたマネキンから死体が発見された!センセーショナルな事件に世間が騒然とする中、被害者の知人であると名乗り出た女性もまた殺害されてしまう。
Posted by ブクログ
「湖泥」 昭和28年1月発表
これをドラマ化ってマ?まぁ俳優さんの演技は気になるかな
ちょっと義眼のくだりはしっくりこないけど
「貸しボート十三号」 昭和32年8月発表
謎は面白い!しかし奴はクソ!
「堕ちたる天女」 昭和29年6月発表
当時は浅草が今の歌舞伎町みたいな感じだったんかな
磯川警部と等々力警部が出会うのがアツい
Posted by ブクログ
この作品が書かれた昭和20年代のミステリーにエログロはつきものなんでしょうか。また猟奇と言う言葉も頻出します。ヨコミゾ作品は超が付く名作が多数存在しますが、超が付く駄作もタップリ。この本を読み終えた時の感想は「ハズレ」を引かなくて良かった安堵感。三作目『堕ちたる天女』、横溝ファンへのプレゼントですか。
Posted by ブクログ
表題作ほか、「湖泥」・「堕ちたる天女」収録。
何度読んでも「湖泥」が生理的に無理すぎる。「堕ちたる天女」も嫌悪感の種類が違うだけで、とても嫌。そりゃ、金田一耕助も酒飲んで寝たくなるよ…
「貸しボート十三号」の読後感が爽やかなのが救い。事件そのものは全然爽やかじゃないけど!
Posted by ブクログ
金田一耕助ものが3編入っている。「湖泥」1957(昭和32)年、「墜ちたる天女」1954(昭和29)年、「貸しボート十三号」1957(昭和32)年。
横溝正史の長編だと最初の方に大量の登場人物がいて、人の名前を覚えるのが苦手な私の場合、彼らの名を覚えるのに苦労し、わざわざ登場人物をリスト化するメモを取りながら読まなければならないほどだ。それに対し、これらの短編はそんなに人物は多くなく、メモを取る必要がないので、気軽に読める感じだった。この気軽さが、良い。
3つとも面白く読めた。それぞれのトリックのアイディアは確かに意外性があって良いし、金田一耕助じしんのユニークなキャラもあってストーリー展開も楽しかった。出色のものでもないだろうが、気軽に読める娯楽作として有用なものだ。