横溝正史のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
横溝先生の書かれる小説は、どれも大変に素晴らしい作品ばかりだと思います。しかしこの「悪霊島」を読んでしまったら、もう二度と他の横溝作品はおろか、普通の推理小説では満足できないのではないか、そう思えるほど濃密で精巧なストーリーです。
主人公の名探偵、金田一耕介も非常に魅力的です。でも個人的には磯川警部が私は大好きです。彼らに限らず、どのキャラクターも特徴的で、一度イメージするとなかなか忘れられないかもしれません。
また「悪霊島」の背景描写が、作品の雰囲気と上手にマッチしています。おどろおどろしい舞台が、事件や人間関係の凄惨さに、より一層拍車を掛けているのも、横溝作品の醍醐味だと私は思います -
Posted by ブクログ
禍々しい、おぞましい世界観にぞくぞくしました。好きだ!
耕助シリーズはテレビや映画でしか観たことなくて、「設定は独特で面白いけど、もしかしたら映像化スタッフに恵まれているのかなぁ」とひねくれた予想もしていたのですが。文章も面白かった。簡潔でどんどん進むし、妖しさも原作からしてちゃんと香ってくるし。
後半から、主人公が鈍すぎやしないか?と思ったけれど、そこからまた少し引っ繰り返され、切なくなりました。(オチバレしないよう伏せたらうまく伝わらない感じになってしまいました…)
最後の小題が「大団円」で、その通りきちんと終わっているところも好きです。散々ひねくり回して結局「答えはあなたの胸の中に…」み -
Posted by ブクログ
うーん、さすがにネタ的に、最近の復刊ラインナップには入ってないか^^;
盲聾唖の美少年がガラスの棺に入れられて、瀬戸内海の波間を漂っているという、どんだけ耽美やねんという幕開け。
殺人事件があり、探偵も登場し、ミステリの体裁はとっているものの、ミステリ、冒険小説、耽美小説を、けして器用にではないけれど、作者らしい美意識で繋ぎ合わせた傑作だと思います。
なんと言っても終盤が素晴らしい。詳しく書くとネタバレになるので書けないのが悔しいけど、とにかく芝居のクライマックスさながらの描写、スピード感、視覚的な美しさ。そして、闇。
古くささや端々の整合性には目をつぶって、芝居を見るように楽しむのがいいんじ -