横溝正史のレビュー一覧
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横溝正史『花髑髏』角川文庫。
4ヶ月連続復刊刊行の由利麟太郎シリーズ第4弾。名探偵・由利麟太郎と助手の三津木俊介の活躍を描いた『白蝋変化』『焙烙の刑』『花髑髏』の3編を収録。
フジテレビ系列で吉川晃司を由利麟太郎役に5週連続でドラマ化。テレビドラマの第1話は奇しくも本作の表題作『花髑髏』だった。舞台は現代にアレンジされ、奇妙な風体の由利麟太郎がヒーローぽく冒頭から登場するのだ。作品を読む限り、由利麟太郎は枯れた人物のイメージだったが……何しろあの吉川晃司なのだから仕方がないか。
『白蝋変化』。由利麟太郎シリーズとしては珍しく混み入ったプロットの短編。妻殺しで死刑囚として刑務所に収監された男の脱獄を企て、悪者たちに依頼した男の元恋人。しかし、悪者たちが誤って脱獄させたのは稀代の女蕩しで四本指の悪党、白蝋三郎だった……と、ここまでは事件の触りにしか過ぎず、やがて予想外の大事件へと発展していく。そして、いよいよ由利麟太郎が登場する。
『焙烙の刑』。最後の最後に由利麟太郎が登場。由利麟太郎シリーズはこういうパターンが多い。
『花髑髏』。表題作。由利麟太郎に花髑髏から届いた挑戦状……原作は意外にあっさり。テレビドラマの方はだいぶ脚色しているようだ。
本体価格800円
★★★★ -
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長編「蝶々殺人事件」と短編「蜘蛛と百合」「薔薇と鬱金香」の
計3編収録。
以下、ネタバレしない範囲でザックリと。
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「蝶々殺人事件」
戦後再会した探偵・由利麟太郎と新聞記者・三津木俊助。
二人は過去の難事件を回想し、残された資料を元に
三津木が小説を書いてはどうかという話になり、
昭和12年、原さくら歌劇団に降りかかった惨劇について、
当時のマネージャー土屋恭三が綴った日記が開陳される。
東京公演に引き続き、大阪へ向かった原さくら歌劇団だったが、
稽古の直前になっても肝心のさくらが到着せず、
一同が気を揉んでいると、
オーケストラのコントラバスのケースから、
萎れた花に包まれた彼女の遺体が発見された……。
本筋からは逸れる部分で用いられた
軽い叙述トリックが心憎い。
映像作品では表現しにくい、
活字ならではの小技というべきか
(マンガでも可能だろうけれども)――に、やられた!
と膝を叩いてしまった。
この部分はドラマに採用されるのだろうか……
されない気がするが……どうなのだ……。
ショッキングな幕開けだったが、
他の殺人はアッサリしたスタイルだし、
背後の事情などにドロドロした情念は感じられず、
同じ由利先生シリーズでも『真珠郎』の怪奇趣味とは
打って変わって洗練された推理小説。
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「蜘蛛と百合」
新聞記者・三津木俊助の友人でジゴロの美青年・瓜生朝二が、
俊助と別れた直後、何者かに殺された。
俊助は朝二が関係を持っていた美女・君島百合枝に接近し、
探偵・由利麟太郎に釘を刺されたにもかかわらず、
彼女の魔性に魅入られ……という、妖美な物語。
百合枝と“夫”の歪な関係の完成に手を貸す由利先生と俊助
――という、清廉な彼らには珍しく
非道徳的な雰囲気に包まれて終わる作品。
私はキッチリ、カッチリした本格推理小説より、
こういう耽美的な怪奇・探偵小説が好きなのだった。
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「薔薇と鬱金香」
鬱金香夫人=マダム・チューリップと綽名される
美人雑誌記者・弓子は、五年前、夫の畔柳博士を殺害され、
未亡人となったが、小説家・磯貝半三郎と再婚した。
畔柳博士を殺したのは当時の美青年人気歌手《薔薇郎》だったが、
彼は獄中で病死。
今は幸福に暮らす磯貝夫妻に、
死んだはずの《薔薇郎》の魔の手が――。
予想外のハッピーエンドだが、
気になるのは薬で眠らされた(?)きりの
堀見三郎くん、今いずこ……。 -
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横溝正史『憑かれた女』角川文庫。
名探偵・由利麟太郎シリーズの復刊。4ヶ月連続刊行の第2弾。表題作、『首吊り船』『幽霊騎手』の3篇を収録。表題作は群を抜いて面白いが、他の2編は平凡かな。
そう言えばと、昔読んだ横溝正史の角川文庫版にはよく表題作の他に短編数編がおまけのように収録されていたのを思い出した。
表題作『憑かれた女』。如何にも横溝正史らしい、おどろおどろしい奇怪な事件から物語は始まる。アザミ酒場をメインに遊んでいた西条エマ子は自称探偵小説家の井手江南と共に立ち入った不気味な洋館で、暖炉で焼かれる女性死体を目にする……事件は猟奇連続殺人の様相を呈し、いよいよ名探偵由利麟太郎と敏腕事件記者三津木俊助が登場する。事件の鍵となる自動電話とは何かと気になり、調べると昔の電話ボックスのことだった。猟奇の果て……
本体価格760円
★★★★ -
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明治の元老、種館種人が建てた迷路荘でかつて残虐な殺人事件が起きた。
種人の息子一人が妻の加奈子と当時下宿していた尾形静馬の不貞を疑って二人を殺害しようとした。
加奈子は殺されたが一人は静馬に反撃を受けて殺害された。片腕を切り落とされた静馬は裏山の洞窟に逃げてそれ以来消息が分からなくなった。彼が生きてるのか死んでいるのか誰にも分からなかったが、そんな静馬の影が現代になって現れた…
迷路荘の隠し扉などの仕方を上手く使っていたのと種館家に恨みを持った静馬を思わせる変装した片腕の男が現れたり読書の想像を膨らませてくれる様々な要素があって面白かったです。 -
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横溝正史の作品には、「長編はめちゃくちゃ面白いが短編はそこまででも…」というイメージを持っていたのだけれど、この本を読んでそれは大間違いだったと気付かされた。あの短いページ数でこれだけのドラマを見せてくれるなんて。それはものすごい技巧であるのに、それを必要以上に感じさせず、さらりと読ませてしまう。すごい。どの短編も楽しかった。めくるめくワンダーランドのような一冊だった。中でも特に面白いと思ったのは「妖説血屋敷」「青い外套を着た女」だった。恐ろしい昔話に彩られたものから、軽快な読み口のもの、不思議な後味のもの……本当に楽しい読書の時間だった。
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購入済み
夢にまで見るものすごさ
八つ墓村の話は、テレビでもよく見たような記憶があるが、当初は、怖くて読む気がしなかったが、読み始めると、つぎどうなるのか、次、どうなるのかと引きずられて最後まで読んでしまった。夜中、突然、目が覚めて、夢だったのか現実だったのか、自分が当事者のような錯覚を覚えた怖かった。
読み終わってから、森美也子が犯人だと知って、動機が分からなくって、今までの推理小説と違う印象を受けた -
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横溝正史『丹夫人の化粧台 横溝正史怪奇探偵小説傑作選』角川文庫。
横溝正史の初期短編14編を収録。角川文庫から横溝正史の新編集本が刊行されるのは15年振りらしい。30年前は本屋に行けば必ず角川文庫の横溝正史作品が並んでいた。当時は書棚に並んだ黒い背表紙に緑色のタイトルに目を引かれ、読み漁ったものだ。本作の場合は黒い背表紙に白文字タイトルだった……
今読み返すと流石に時代を感じるし、今では差別用語となった言葉も登場し、少しドキリとする。
横溝正史の作品は江戸川乱歩の作品とも似ているが、江戸川乱歩よりも陰湿で底知れぬ不気味さを感じる。いつも事件を颯爽と解決してしまう神出鬼没の明智小五郎に対して、金田一耕介が扱う事件の一族や狭い地域の泥々した因縁であったり、事件を解決するのが常に一連の猟奇的犯行が終結してからというのが、陰湿さを感じる原因なのかも知れない。 -
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ネタバレ戦前戦後を通じて映画界のスターである鳳千代子には四回の離婚経歴があり、そのうち最初と二番目の夫は不可解な死を遂げていた。
今また三番目と四番目の夫が軽井沢で変死を遂げ、金田一が捜査に乗り出す。
大女優の派手な男性遍歴を軸にマッチ棒のパズルや不可解な数式、そして奇妙な所で見つかるライター等魅力的な小道具満載の長編。
ただ長さの割にそれら小道具が活かされているとは言い切れず、事件の解決も金田一の捜査や推理ではなくある人物の独白によって終わってしまうのが味気無かった。
推理小説とは必ずしも探偵が解決するとは限らないと割り切ればそれなりに楽しめるのだが。 -
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中編「悪魔の降誕祭」「霧の山荘」と短編「女怪」の三作品。金田一耕助の事務所で依頼人が殺されたり、金田一耕助の恋愛事情が示されたり、金田一耕助が騙されたりと、金田一耕助にまつわる事件集。
「悪魔の降誕祭」
金田一耕助の事務所で依頼人が殺されるという大胆不敵な犯行。依頼人は今後起こりそうな殺人の相談のために訪れたものであり、その通りにクリスマスパーティーで依頼人の関係者が殺される。
依頼人は携帯していた薬による毒殺であったにも拘わらず、犯人が金田一の事務所を訪問した上で、日めくりカレンダーを12月25日までやぶいた謎、依頼人が持っていた写真が切り取られていた謎、道明寺とたまきに呼び出し状を出した人物の謎、第二の被害者の服部がやすやすと殺された謎。
秘密の小廊下の存在や、パーティー当時の人物の動きはなかなか面白い。ある人物の犯人へのアシストによって真相が見えにくくなっており、アシストをした理由にも説得力がある。一部の謎の真相は肩透かしだが、写真が切り取られていた謎の真相は面白い。
最後まで読むと隠れていた動機が示され、犯人の鬼畜性が明らかになる。
「女怪」
金田一耕助の探偵話の記述者である「先生」と金田一耕助が、伊豆の鄙びた温泉場に静養のために訪れ、そこで体験した話が語られる。金田一のマダム虹子に対する恋心が示される異色作。著名な行者が虹子の前夫の墓場から何かを持ち出した疑い、それをネタに虹子が強請られている疑い、前夫の死亡原因に対する疑い。しばらくして、「先生」は行者の死亡記事を読み、さらにしばらくして、金田一から長文の手紙が届き、事件の真相を知る。被害者にとっても、加害者にとっても皮肉で救いのない真相。
「霧の山荘」
依頼を受けて、別荘地を訪問したところ、霧にまかれて途方にくれる金田一耕助。不在にしているわずかな時間の間に死体が消失し、狐につままれる金田一。翌日、その死体が屋外で発見され、等々力警部と共に周辺を調査をすることに。
死体消失の謎は早々に明かされるが、赤アロハの男の謎、死体が移動させられた謎、着物がはぎとられた謎、血だまりの跡が消えた謎、過去の迷宮入り事件の謎、ゴルフ場で被害者が出会った人物の謎など、次々と謎が提示され、それを説明する真相はなかなか面白い。
金田一耕助の策略が見事決り、犯人が逮捕される。 -
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第一巻を読んでないけど(本書はシリーズ2作目)、べつにどってことなく楽しめた( ´ ▽ ` )ノ
ヨコミゾ先生の作品にはずいぶん親しんできたけど、捕物帳は初めて( ´ ▽ ` )ノ
やっぱり面白いね( ´ ▽ ` )ノ
映画化前提で書かれたと解説にあったけど、キャラ造形からストーリーからセリフ回しから、まるきり映画黄金時代の東映時代劇(といっても、その手の作品はほとんど見たことないけど)( ´ ▽ ` )ノ
単純明快、痛快無比、大衆迎合( ´ ▽ ` )ノ
さすがヨコミゾ先生らしく淫靡さオドロしさもあるけれど、昨今のイヤミスと違ってそのものズバリの描写がないから、後味は悪くない( ´ ▽ ` )ノ
ほんと、古き良き時代の娯楽小説( ´ ▽ ` )ノ
まあ、ラストがパパパッと片付いちゃうのも昔風といえば昔風か?……正直、文七の大活劇シーンも読んでみたかったけどね( ´ ▽ ` )ノ
小説はともかく、もうこういう映画・ドラマが製作されることはないんだろうなあ……(´ェ`)ン-…
むかし(と言ってもほんの20年か30年前まで)は、この手の娯楽時代劇がやまほど作られていたもんだけどなあ……(´ェ`)ン-…
2017/10/30
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昭和5年。隠し扉やどんでん返しが
ふんだんに施された通称迷路荘で、
主人やその妻が殺害される事件が
起こった。真相ははっりしないまま。
昭和25年。
迷路荘にかつての惨劇の時と同じ
左腕のない男が姿を現し、
家人達は不安を募らせ、
現在の館の主人は金田一に調査を依頼。
そして発生する連続殺人。
綾辻行人の館シリーズに登場しそうな
仕掛けだらけの館。
更に館の下には地下道が通っている。
ボリュームがあって読み応えは抜群。
複雑な人間関係が事件をややこしい
ものにしていて、それも魅力的。
迷路のような地下道でくり広げられる
捜査は、冒険小説の様で面白かった。
戦後すぐの時代設定、
街から離れた豪勢な館、
謎の片腕の男、かつて起こった惨劇、
没落貴族等、
このシリーズらしい要素が満載。
金田一の活躍も見事で、
ラストは好みの締め方だった。
知名度は低いがもっと読んで貰いたい作品。 -
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アメリカ帰りの富豪に依頼された人探しのために、金田一耕助は久しぶりに岡山県へ行く。そこで磯川警部と旧交を暖めたのも束の間、警部の話から探していた人物が怪死したらしいことを知る。
こういった物語が、上巻にあるような恐ろしく謎めいた言葉の書き出しで始まる。
こういう、今から恐ろしい物語が始まるよ、と自然に読者を横溝正史の世界に引きずりこむ盛り上げの上手さが横溝正史作品の魅力だと思う。
横溝正史の作品には「平家物語」や平家の落人といったものがよくあり、岡山県と平家は深く繋がっているのだなと感じる。「平家物語」も読むと更に愉しめるのだろうが、ちょっと読めそうにない。
この作品では、蒸発という出来事が頻発する。
蒸発という表現に時代を感じる。今なら失踪というところだが、昭和の時代では確かに蒸発とよく表現された。
こぼした湯が蒸発して姿を消す様と、人がある時忽然と姿を消す様が似ているために使われたのだと思うが、これも死語になるのだろうか。
また、シャム双生児という言葉も出てくる。
腰の部分で結合した双子。こういう気の毒な状況で生まれた子供を、恐ろしさを高めるために使うのは現代にはそぐわない気もするが、昭和の時代は障害のあるひとを差別語を用いて悪意なく呼ぶひとは普通にいた。横溝正史の作品を読むと時代の流れを感じる。
どの作品にも共通の殺人事件がドンドン起き、大概殺されたあと金田一耕助が推理という、もっと早く解決してよとツッコミたくなるところは同じであり、洞窟を探検するところなどの冒険のあるのも横溝作品には暫しある定番の面白さだ。
この作品の魅力は、金田一耕助シリーズにおいて金田一耕助と人気を二分するのではという磯川警部について多く描かれているところだ。わたし自身が金田一耕助よりも磯川警部がお気に入りだ。
「悪魔の手毬唄」においても磯川警部の切なさが印象に残ったが、金田一耕助も磯川警部も年を取り、老いが感じられるときに「悪霊島」で綴られる内容は、本当に辛く哀しい。磯川警部ファンには、益々磯川警部が好きにならざるを得ない。
若い頃の叶わぬ恋が忘れられず、富豪となって故郷へ帰ってくる男。これが金田一耕助の依頼人なのだが、まるっきりギャツビーではないか。
犯人は誰かなと推理小説本来の愉しみは勿論あり、そこに「平家物語」が絡んだり、昭和の時代を窺ったり、磯川警部の気持ちを読んで哀しくなったりと様々に愉しめる。
最後はまた金田一耕助が真相について沈黙するというわたしには異議ありな形であるけれど、今回は愉しめたので文句なしにしたい。
最近だらけ気味だった『ひとり横溝正史フェア』であったけれど、これだよ、こういうのを待ってたよと嬉しくなる作品だった。
おかげで最後まで『ひとり横溝正史フェア』を続けられそうだ。