唯川恵のレビュー一覧

  • 泣かないで、パーティはこれから

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    「史上最低の日
     三日前、失業した。そしてゆうべ、恋人に「好きな女ができた」と言われた。」

    「帰りたい、そう思った。行くのではない、戻るのでもない。そここそが私の帰る唯一の場所。いつか琴子は駅へと走り出していた。
     それは夢に向かって走り出したと同じことだった。」

    文学してますね。「あとがき」の時代背景を拝読すると、就職難の時のこととのこと。就職難になる度に、人気が出るかもしれない。

    前を向いて生きろという、強い著者の意思と伝言。
    登場人物には著者の、人間の理想像がいくつか浮かび上がっている。

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    2013年03月13日
  • 孤独で優しい夜

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    割と初期の作品なので、割と単純な展開。
    登場人物が、ややぶれているかもしれない。
    あるいは体験上の人物像が強く出過ぎているのかもしれない。

    ソフトウェアを仕事にしているところがナウイのかも。
    津島粧子、根岸宗吾、美帆、入江。
    根岸宗吾が、理想的過ぎないかなとやや心配。

    解説を倉本由布が書いている。
    唯川恵と同じ時に佳作になった人。
    唯川恵が姉御はだが、似合う背景が分かるかも。

    あとがきでは「まっさら」という言葉が印象的。

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    2013年02月26日
  • 彼の隣りの席

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    著者は強欲だ。
    2人の正反対の理想を、同時に手にしようとする。
    主人公は同時に2人は手にできないが、
    著者は、2人を動じに著作の中に表現して自分のものにする。

    自分の理想を記述して、自分でほくそえんでいる著者のまなざしが、創造できる。著者は強欲だ。

    私がもし著者なら、「メヒコの風」という題にするかもしれない。

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    2013年02月19日
  • 夢美と愛美の謎がいっぱい? 怪人Xを追え!

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    著者が読者に合わせて文章が書けることは、
    薄々気がついていた。
    ちょうど、赤川次郎のように。
    それは直木賞作家に失礼かもしれない。

    とにかく、中学生視点で楽しい物語。
    樹原くりの絵も、物語によくあっている。

    謎の怪人も、もろわかりなんだけど、
    そこが微笑ましい筋なので許せる。

    もっと書いて欲しいような気がする。

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    2013年02月19日
  • 明日はじめる恋のために

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    映画誌「ロードショー」で連載したもの。

    ロミオ&ジュリエット
    好きと言えなくて
    マンハッタン花物語
    ビューティフルガールズ
    ゴールデンアイ
    魅惑のアフロディーテ
    フェノミナン
    彼女は最高
    ショーガール
    ため息つかせて
    ザエージェント
    不滅の恋 ベートーベン
    ジェインエア
    フェイク
    アンカ−ウーマン
    デッドマン ウォーキング
    太陽と月に背いて
    BOYS
    イングリッシュペイシェント
    愛さずにはいられない
    素晴らしき日
    恋におぼれて
    スクリーム
    ベストフレンズウェディング

    読者に合わせるのがうまい。
    これだけの映画を見て書いたのだろう。

    別の随筆集では、「旅情」以外の映画はあんまり記憶にないよ

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    2013年02月19日
  • OL10年やりました

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    解説は酒井順子。
    著者より10歳若いだけあって、気を使って書いている。
    「普通のOLであるということを正面から受け入れている!何ててごわい!」

    中身は随筆というか、経験談というか。
    金沢で勤めていた頃の話。

    小説に出てくるネタもいろいろあるので、
    小説を楽しむ上で読むのがよいかも。

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    2013年02月19日
  • 病む月

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    金沢を舞台にした短編集10話。恐怖小説っぽいものもある。推理小説仕立てのようなものもある。

    題名    初出 
    いやな女 小説すばる
    雪おんな 贅沢な恋人たち(文庫)
    過去が届く午後 小説すばる
    聖女になる日(「南の島へ」改題) 青春と読書
    魔女 小説すばる
    川面を滑る風 小説すばる
    愛されん女 小説すばる
    玻璃の雨降る 小説すばる
    天女 小説すばる
    夏の少女 小説すばる

    夏の少女 は怖い。ちょっとだけ予想できた。
    天女 もひょっとしたら怖い。
    玻璃の雨降る は無念。
    愛される女 は、やっぱり怖い。ただ予想はできた。
    川面を滑る風 は、たぶん主人公が怖い。
    魔女 は、主人公にがんばれと言い

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    2013年02月19日
  • 愛に似たもの

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    短編8話。
    真珠の雫
    つまづく
    ロールモデル
    選択
    教訓
    約束
    ライムがしみる
    帰郷

    解説を橋本紀子が書いている。
    「あ、「わたし」のことが書いてある」
    橋本紀子って存じ上げなかったので調べてみた。
    教育学者とのこと。すごい。

    女性の自立と子どもの発達 北欧・フィンランドに学ぶその両立への道, 群羊社 1982
    男女共学制の史的研究,大月書店 1992
    生きるってすてき,高橋由為子絵 大月書店 2001
    フィンランドのジェンダー・セクシュアリティと教育, 明石書店 2006

    すごく普通そうな主人公が、普通でなさそうな行動を取る。
    それでもよくありがちな日常。
    明るくないのに、読後感は暗く

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    2013年02月16日
  • 愛なんか

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    1999年頃に雑誌に連載した短編小説群。
    解説を藤田香織が書いている。書評家。
    唯川恵の読書遍歴と直木賞受賞の頃のいきさつを書いている。

    「愛なんか」は、色とりどりの主人公。
    幸せな終わりではなく、人生の途中という感じの話がちらほら。
    我が儘限りを尽くしながら人間性があったり、
    人間性に押しつぶされそうになりながら個性を出そうとしたり、
    作者の実現しない一面、実現したい一面、選ばなかった道などを表現しているのかもしれない。

    ひとそれぞれであることを確認するのに役立つ。

    一つづつ、読み終わって違和感はないが、
    少し疲れて、すぐ次の話を読みたいとは思わなかった。

    人生の重い話題を抱えている

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    2013年02月24日
  • シフォンの風

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    江國香織が解説「あっさりとつき進む」を書いている。
    「シフォンChiffone。縦糸と横糸が同じ太さの片撚り生糸を、あらく平織りにした絹織物。非常に薄く柔らかなので、ヴェール、イヴニングドレス、リボンなどに用いる。絹モスリン。」
    すごい、解説者に、本当に解説を書かせている。

    著者が文庫版あとがきに、金沢で働いていたことを書いている。

    場所は金沢。主人公の妹は、金美の彫刻科の学生。

    ありふれた日常を1冊の本にしてしまう。

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    2013年02月14日
  • 息がとまるほど

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    短編小説。8話。

    無邪気な悪魔
    ささやかな誤算
    蒼ざめた夜
    女友達
    残月
    雨に惑う
    一夜まで
    あね、いもうと

    「あね、いもうと」は、明らかに恐怖小説。一部推理小説のように終わりが読めなかったものがある。

    登場人物の性格に共感できない。著者が書いている人間の心理、人間であることとは何か、については勉強になる。

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    2013年02月13日
  • 不運な女神

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    不幸な女性をたくさん記述している。
    別冊文藝春秋とオール読物に掲載したもの。
    2001年から2003年。

    初めの数題は、前の話の脇役が、次の話の主役になって、関連した話しになっている。

    唯川恵の腕が鳴っている。

    どんなに不幸な人間を主人公にしても、
    誰かを恨んだりすることがあっても、
    犯罪をひょっとしたら犯すことになるかもしれなくても、
    人間性を持っていようとする意思を感じる。

    どんなに運が悪くても、
    人間として生き、
    人間として暮らし、
    社会の片隅になっているか、社会を支えている。

    どうしてここまで丁寧な思いを綴ることができるのだろう。
    自分と違うのであれば、雑な記述になるかもしれ

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    2013年02月11日
  • 今夜 誰のとなりで眠る

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    真以子
    協子
    じゅん子
    七恵
    佑美
    5人の登場人物は誰が作者の分身なのだろう。

    解説を 温水ゆかり が書いている。
    「鏡に映った自分の醜い姿を見せられた気になったことを、ここで告白しなければならない」
    作家にこれだけのことを言わせる作家もすごいが、それを素直に表現できる解説者も、きっとすごいのだろう。

    作家が書いている解説は、その作家の本を読ませたくなるところがすごいかも。

    5人の中に、いろいろな作家の影響が反映しているのだろうか。

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    2013年02月07日
  • 愛しても届かない

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    解説を 田中雅美 が書いている。
    「生活の場所で感じるさまざまなおもいをしっかり把握して,小説というかたちにしてくれる」

    たしかに、等身大という言葉が、唯川恵にはふさわしいかもしれない。

    「生きかたというものをあらためて考えさせてくれた小説である」

    場合によっては著者の分身が、場合によっては著者が選ばなかった道を進んだらどうなったかを。

    すざましいが、最後は届かなかった。
    途中で届いたならいいと思うか、
    届いたのにそこから離れるのが辛いと思うか、
    ひとそれぞれなのだろう。

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    2013年02月07日
  • 恋人たちの誤算

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    流実子と侑里
    2人の主人公が、それぞれの人生において躓く。

    1度だけでなく何度も躓く。
    躓く。躓く。躓く。

    2人が躓いた先は同じ。
    社会の仕組みの堅さに、
    しなやかに生きていけない主人公。

    どちらも著者の分身かもしれない。

    幸運だけで著者がここまで来たのではないことが分かる。
    読み進むのが辛くて、読みたくなくて、なんども投げ出した割に、
    悲哀ではない何かが残っているような気にさせる著者の思いに
    一縷の望みをかけたい。

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    2013年02月05日
  • めまい

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    短編恐怖小説10話。

    恐い。途中で何度も読むのをためらった。

    解説の篠田節子さんは、これは「恋愛小説集」だと書かれている。
    立場が違うとそう読めるのかと、とても参考になった。

    読んでいる最中は恐いが、後味が悪くないのは、作家の人間性なのだろう。
    悪意で書いているのではなく、ところどころ善意が垣間見えるような気になる。

    次に読むのは3年以上間を開けたい。

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    2013年02月04日
  • 夢美と愛美の消えたバースデー・プレゼント?

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    主人公の夢美が、11歳の誕生日の夜に、1歳のときに死んでしまった双子の愛美がとつぜんあらわれました。そして、夢美の誕生会のときに、幼馴染の翔太くんと、その友だちで、スポーツも勉強もできる一番人気の松岡くんもきてくれます。しかし、松岡くんからもらったハンカチが学校で消えてしまいます。そのハンカチはどうなってしまったのか、ドキドキする話です。ハンカチを盗んだ犯人が意外な人で、びっくりします。

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    2013年02月01日
  • イブの憂鬱

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    解説は吉田伸子。
    唯川恵の作品「肩越しの恋人」が直木賞を受賞した記述がある。

    文庫版は「イヴの憂鬱」と改題している。

    29歳の目覚めから30歳の朝まで。
    え,これが1年なのというくらい,めまぐるしい。

    著者も20代後半で転職をした経験があるらしく,転職の描写が現実味がある。

    あるときには、どうしても,足元を見てしまう傾向があるのかもしれない。
    なにかのきっかけで前を向けると良いことが分かる。
    著者は体育会系とどこかの後書きに書いていた。

    切替ができる能力がすばらしい。
    生き方に対する一つの参考資料を提供しているよう。

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    2013年02月23日
  • キスよりもせつなく

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    解説は角田光代。
    角田光代の母の世代を説明している。

    物語は,女性の20代後半の模様をうまく描いている。

    27歳といえば,今ならたいした歳だとは思われない。
    30年前は,結婚適齢期が24歳だったことを思い起こしながら読むといいかもしれない。

    それぞれに,自分を考える著者の分身なのだろう。
    人は一つの人生しか送れないが,作品の中では複数の人生を歩める。

    どれが著者の実像で,どれが著者の虚像なのだろう。

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    2013年01月29日
  • あなたへの日々

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    「彼方(あなた)への日々」の改題で、手を入れているとのこと。
    図子 慧 が解説を書いている。
    解説 ー まっとうな女
    というのが標題。まっとうな女が主人公だとのこと。
    著者の分身であることは確か。

    著者のやったことをなぞっているのか、
    著者がやれなかったことをなぞっているのかは分からない。

    兄のバイクに乗っていて、兄だけ死亡し、
    母親との関係が悪くなる女性の物語。

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    2013年01月28日