唯川恵のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
1995年6月に刊行された作品です。
岡山県の美星町が舞台となっていて、大人になっていくことのやるせなさとかつて輝いていた自身の青春への憧れ、伝えられなかった恋心などが、星を眺めるという描写と共に美しく描かれています。
文庫版あとがきで書かれていましたが、本作は阪神淡路大震災の直後に書かれた作品です。その影響なのか、文章一つ一つに透き通ったエネルギーが感じられお祈りのような特別な空気感が伝わってくるのが魅力的な作品だなと思います。
また、インターネットがない時代の恋愛小説を今読むとどこか落ち着くというか、感情の進展がスローで丁寧で、一つ一つのやりとりが切実で、それゆえにロマンチックで、い -
Posted by ブクログ
女性として世界で初めてエベレストに登頂したのが、福島県出身の田部井淳子さんだと知ったときは驚き、その物語を見つけてすぐに手に取った。冒頭に描かれる闘病しながらも東北の高校生を富士山に連れて行くシーンはドキュメンタリーで実際の映像を見ていたこともあり、リアルなものとして感動を私の中に呼んだ。何よりも私が大好きな安達太良山の噴火口の景色に田部井さんも感激したというエピソード、そしてそんな女性が力強く、直向きに山と向き合い、強く生きていくストーリーは本当に勇気を与えてくれる。田部井さんほど強くはまだ生きれていないかもしれないが、彼女のような自立したカッコいい女性になりたいと思う。
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Posted by ブクログ
『もし、あの時ああしてたらって、自分のもうひとつの人生を勝手に想像して、それに嫉妬してしまうのね。何だか、いつも生きてない方の人生に負けたような気になっていたの。そんなもの、どこにもないのに、人生はひとつしか生きられないのに』
隣の芝生は青く見える。
どちらかに転んだとしても、幸せで不幸せかは一概に言えないし、自分の人生なんだからましてや他人にとやかく言われる筋合いはない。
傷つくこともまた自分を成長させてくれてる。
今日はどんなに最悪で嫌で逃げたいそんな日だったとしても、もしかしたら明日は楽しいことが待ってるかもしれない。
背中からポンと後押ししてくれるような心がじんわりと温かくなる一冊 -
Posted by ブクログ
「おもしろかった!!!」
と思うと同時に
「終わっちゃったー...。」
と少し寂しくなるほどおもしろかったです。
小難しい言葉もなくて、
友達夫婦の生活を覗き見てるみたいな
感覚で読めてしまいました。
結婚生活、マイホーム、子供...。
世間一般、“幸せ”と言われることを
何もかも手に入れたように見えても
実際はうまくいかないことばっかり。
SNSで他人のいいところばかり見て
羨ましくなるようなこの時代に読むと、
ちょっと安心する自分もいました。
私自身は“女”で、
永遠子の気持ちがわかる部分が多かったです。
特に出産後の気持ち。
でも、それをもし産前に産んでいたら
理解できなかっ -
Posted by ブクログ
作者はどの視点から文字を選んで綴っているのだろうか?
山を一人で登る者にしか見えない光景が綴られていく。
読む読者を登攀の世界に連れていく。谷川岳、インド、
ネパール、エベレスト山。モデル本人にインタビューをして想像で人物を追加したのだろうか?
全共闘時代、1970年の僕が子供だった頃、アポロ計画に夢中になっていた頃の実話として山行きが語られている。
淳子の主人は怪我をして、行動範囲が狭くなった。まるで、不慮の病気で、社会活動が中断され、徐々に前の自分と現在の自分を調整している私のことのようだ。家内に福祉作業所を任せて私が家事の料理の現場を助けるようだ。無論、子供たちは我々の場合独立していって