唯川恵のレビュー一覧
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ネタバレ男のため息か、女のため息か、悩ましい9編の短編集。
男女のすれ違い、ずれてゆく姿が、どこにでもあるようで、不思議と取り込まれてゆく。
『終の季節』:熟年離婚。「一番父親が必要なときにあなたはいなかった」世の父親にとって、致命的な一言、かな。そう、あの頃は、誰もが、家庭を忘れ寝食を忘れ自分を忘れて会社に尽くしていた。挙句、その結果が、…。リストラした部下の娘の「偽物の方がそれっぽいなんて、…」が、悲しい。失った時間は巻き戻せないか、…。
『僕の愛しい人』:自分の実力を買ってくれる人と、自分を愛してくれる人。経済的自立は、あるいは野望は、…。一昔なら、千晶さんを妾さんにしてチャンチャン。だったの -
Posted by ブクログ
ネタバレ同期入社の薫と乃梨子。
仕事に見切りをつけて結婚する薫
仕事に生きるキャリアウーマンのりこ
2人の60歳までを交互に描かれてる
お互いに相手の成功を妬み羨み
だけど自分のほうが幸せだと言い聞かせて
主婦は主婦なりにキャリアウーマンはキャリアウーマンなりにそれぞれの苦悩、葛藤、絶望、孤独
その中にある幸福。どちらが幸せか不幸かなんて本当に答えなんてない。
選んでなかったほうを夢みることは今そこに立って見て初めて考えれることで、後悔より選んでよかったと思える自信を私も選びたい。
学生の頃の自分は永遠にこの生活が続くとなぜだか思う、30歳目前になって自分が描いていた大人の30歳ではなく中 -
Posted by ブクログ
身近な女性を描くのが大変上手な作家さんだと思う。
何気ない日常、普段過ごしてる風景が切り取られて書いてある感じ。どの主人公の心情も矛盾なくよく分かる。
『ロールモデル』『教訓』『約束』あたりが好きかな。
大事件は起こらないが、ちょっとしたエピソードが、平凡な日常を過ごしている者にとっては親近感がわく。
個人的には、ここまで他人と比べて卑屈になったり、優越感に浸ったりするの?他人なんてどーでもいーじゃん?などと、軸が自分じゃない事が不思議な気がするが、解説の『女は不幸や不満を数える天才ですからね!』で納得した。そういう視点で書いてある物語だ。
所詮他人の芝生は青く見えるのだから。自分の心地 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「例愛は不安との戦いであり、結婚は不満との戦いである」中扉裏の一文が、私たちの戦いに終わりがないことを示している。そして、勝ち目がないことも。
「女は、負けの恋愛をしちゃいけないと思う」マリが語る。「女の人は結婚で人生が変わる確率が凄く高い」順子が語る。周りからも、自分自身でも、追い込まれてゆくだけだ。
「欲しいのは確かなもの。確かな約束、確かな成就、確かな未来」美月が答える。そして、私たちは知っている。確かなものなど、どこにもないことを。”確かなもの”を見つけても、いつの間にかそれは砂上の楼閣に変わってしまうことを。
ない物ねだりかもしれない。隣の芝生は青く見える、なのかもしれない。”