三上延のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
代官山に実在したアパートと、そこに住まう4代にわたる家族の歴史を巧みに絡ませた、70年に及ぶ物語。
と言っても、大河ドラマのような壮大さとはまるで無縁です。歴史に名を残す偉業や、めくるめく大恋愛や、驚天動地のトリックがそこに記されているわけではありません。ときに時代の波に流されながらも、懸命に生きる日々。そのなかでのちょっとしたトピックが章ごとに視点を変え淡々と語られるのみです。
でもこの淡々としたカラーこそが、本作の魅力でしょうね。一族のなかでどちらかと言えば陰キャ(ごめんなさい)な人が語り部役を継いでいきますが、だからこそ胸の内に宿る炎が時折垣間見えて、物語を前に動かしていきます。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ感想
栞子の周りの家族関係が明らかになってくる。そこにまた悪徳な吉原という古本屋が出てくる。
最後のディールはシビれた。吉原の爺さんにも一杯喰わせてスッキリ。大輔と栞子も無事に結ばれて一件落着。
あらすじ
久我山家にあった晩年を取り戻すために、吉原という久我山の弟子だった古本屋が訪ねてくる。吉原は、栞子の弱味につけこんで法外な値段で晩年を売る。
その後、栞子の母方の祖母と会う機会があり、家族から吉原に取られたシェークスピアの本を取り戻して欲しいと依頼を受ける。
久我山は、何億もするファーストフォリオの可能性があるシェークスピアの本とそのファクシミリを糊付けして中が見えないように細工し、 -
Posted by ブクログ
ネタバレビブリアは、物語の中の時間と本が発行された現実の時間がどんどんズレていき、7巻ではそのズレが最大になり本の中の時間はゆっくり進んでいた。
8巻では、本が発行された時間と物語の中の時間が一致し、2018年、扉子が9歳になる年だった。
そして、この9巻は2020年発行で、本の中の時間で現実の時間に近いのは第二話で、2021年、扉子が小学校3年生、9歳になる年。プロローグとエピローグに至っては、扉子は高校生になっているので、1年生と仮定しても2028年ということになる。現実よりも未来が描かれたのは、初めてですよね。
扉子が大輔が書いた事件手帖を読んているという設定なら、過去でも、未来でも自由に書ける -
Posted by ブクログ
旅の醍醐味は、おいしい食べ物だと改めて思わせてくれるようないいお話ばかりでした。
一番食べてみたいと思ったのは、「もしも神様に会えたなら」の“伊勢うどん”。関西住みだけど、食べたことなかった。主人公の少年2人が“優しい気配り”で表現した味を食べてみたいと思いました。
話が好きだったのは、「旅の理由」。主人公の青年がすごく良かった。
「美味しいということは」では、主人公の祖母の、“美味しいということは、いつまでもその味を忘れないってことなんだ”という言葉にぐっときました。今まで味わった忘れられない味を大切にしていきたいし、これからも忘れられない味を増やしていけたらいいな。
-
Posted by ブクログ
影が薄い大学生と偏屈で有名な大学教授のコンビが、遭遇する奇妙な出来事の謎を解く連作短編オカルトホラーミステリー。
物語は主人公の甘木という大学生の視点で描かれていく。
◇
大学生の甘木は午後の講義が終わった帰りに、夕食を摂ろうと行きつけのカフェに入った。
ここ●喫茶千鳥には週イチで来ている甘木だが、影が薄く存在感が希薄なため、未だに女給から馴染客として扱ってもらえない。
そんな自分を内心で嘆きながらふと隣のテーブルを見ると、そこには大学で見知った顔が口をへの字に結びギョロリとした目でアイスクリームを睨んでいる。偏屈で厳しいと評判の内田榮造教授だった。