星新一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
フレドリック・ブラウンの短編集の中に「ノック」という話がある。
はじまりは、
「地球上で最後に残った男が、ただひとり部屋のなかにすわっていた。すると、ドアにノックの音が……」
先を読みたくなる。
いったい、だれがと思う。
じつは、地球で最後に残った女だった。
週刊誌でショートショートを連載することになり、その通しタイトルを考えることになった。
その時、頭に浮かんだのが「ノックの音が」であり、それらをまとめて本書にしたらしい。
本書は15作品からできていて、全ての物語が「ノックの音がした」で始まる。
ノックとブザーでは感じが違い、ノックには人間的な何かがあると言っている。
叩き方によって訪 -
Posted by ブクログ
ネタバレ1つ前にけっこう読むのに体力を要する本を読んだので、このショートショートが丁度よかった。
小学生の時に教室に置いてある本で、星新一があった気がする。その時も熱心にいろいろ読んだが、ほぼすべて忘れてしまった。久しぶりに星新一のショートショートを読んで、この読後感が懐かしいような、こんな感じだったっけ?みたいな気持ちにもなった。記憶ではすべての話のオチがスッキリしてたような気がするけれど、改めて読むと案外不思議のままで終わっているのも多いんだなと思った。
表題作である「地球から来た男」と、「ゲーム」と「戦士」が特に面白かった。
「地球から来た男」はオチで自分が真相に気付かされるのではなく、主人 -
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コンピューターを介して、電話で情報が繋がる世界を描いた12の短編集。コンピューターは人々に便利を与えたが、実態は影で人々を支配していた......という一種のディストピアが舞台となっている。
「人はコンピューターを支配し、コンピューターは人の心を支配している」
70年代に、現代日本を暗示する作品を著した、星新一の先見性に驚くばかりである。人間が生み出したテクノロジーを管理しているのは、人間自身に他ならない。しかし、肝心の心は、コンピューターの思いのままとなっている。
ただ、この作品は単なる警句の書に留まらない。人々が電話越しのコンピューターの声を恐れ、保身の為行動する動機は、自身の『秘密』 -
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ショートショートの名手、星新一さんによる連作短編集。
客の気分にあった商品の説明、身体の不調を感じたときの診断、悩み事に関する的確なアドバイス、
すべてはコンピュータが電話を通じて提供してくれる。
そのサービスを当然のこととして受け取り、悩み事などとは無縁に快適に暮らす人々。
理想的な社会が実現できたかに見えるその裏では、コンピュータ同士がネットワーク化され、
収集した個人情報をもとに脅迫し犯罪を教唆したり、突然電気をとめて人々の反応データを集めたり、
コンピュータネットワークの秘密に近づこうとした者を冤罪で逮捕、治療という目的で従順にしたりする。
いわば人間が生み出したコンピュータが独自の -
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シンプルに面白かった。好き。大好き。
いつも知識に重点を置きがちで、小難しい作品を選ぶ傾向にある。だからこそ読書本来の楽しさを思い出せた本だった。定番や王道をセンスで唯一無二にしている。古い小説のはずなのに、古さどころか近未来を感じる。ワクワクする。幼い頃の夢とかきらきらを形にしたような作品。そんな中に風のように軽やかな皮肉があるのが好き。軽いブラックユーモアは後に引きずらず楽しめる。数ページの世界観に毎回引き込まれて楽しかった。読後感は、遊園地で一日遊び回った気分。
特に好きなお話
「天国」ワルツのように軽やかな皮肉。好き。今ある幸せを大切にしないとね。
「ピーターパンの島」現実に向 -
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2022年のプレミアムカバー。
植物性の発毛剤をセールスマンから購入したエム氏のその後を描く「アフターサービス」
ある公明な学者が国から予算を都合して作った装置の本当の使い道「ひとつの装置」
万能育児器を使った企業努力「遠大な計画」など→
今作も星新一らしさたっぷりのショートショート35編。
他に、
地獄から地上にやってきた鬼と自分の敷地内で出会った男の顛末を描く「分工場」
5歳の娘の友達で悩む親が精神分析医に相談する「友だち」
倒産寸前の会社を救う異星人との交流を描いた「ボタン星からの贈り物」
など、冒頭を読んで→
オチに驚く話がたくさん読めて楽しかった。
寝る前に一話読むのがちょうど