椹野道流のレビュー一覧
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ネタバレ大阪O医科大学法医学教室に4月1日から所属した新人、伊月。
先輩医師・ミチルにしごかれはするものの、どこかアットホームな雰囲気の職場でのびのびとやっていた。
そんな中、電車に身を投げた女性の遺体が運ばれてきた。
その女性は、突然、怯えだし、そのまま後ずさるように線路に落ちたのだという。
しばらく後に運ばれてきた女性も、誰もいないのに、突然、怯えだし、車道に飛び出した、というとてもよく似た状況で……
そんな話でした。
実は、電車の女性が運ばれてくる一つ前に、別のご遺体が運ばれてくる話があるのですが、それを読んだ時は、随分、軽い読み物んだなあ……と正直、思いました。
ただ、それはあくまでも導入だったようで、その次が本題でした。
話は、映像が浮かんでくるようなテンポの良さで進んでいくので、個人的には2時間ドラマのような、映像が浮かんでくる感じでした。
だからこそ、ドラマ化できるんじゃない……? という感想を抱いたりもしたのですが、オチを見て、「これは無理だ……」となりました。
ここまで進んできて、この法医学知識で、最後がオカルトチックな終わり方になるとは思いませんでした。
うーん……
いいとも悪いとも言いませんが。
個人的にはちょっと残念だったかなあ……と思います。
でも、字も大きいし、テンポもよくて読みやすいので、軽めの法医学もの読みたい人にはオススメします。 -
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夜だけ開店の<ばんめし屋>シリーズも14作目。ついに最新巻に到達した。
今回の客・レイナの登場は不穏。泥酔した挙げ句、海里にアイドル時代のオーラがない、品切れのトンカツをどうしても食べたいなどと言いたい放題、死ぬの何だのと大騒ぎ。
しかしそこは長らく夜中の店で客商売をやってきた夏神。見た目もあっての堂々としたあしらいでレイナを黙らせる。対照的に柔らかなロイドとただ心配する海里に後押しされてタクシーで帰っていく。
今回は珍しく厄介な客に悩まされるのか…と思っていたが、そこはホッコリするこのシリーズ。次の日のレイナは酒が抜けてすっかりしおらしくなっていた。
話を聞くと、地下アイドルとして活躍していた彼女はグループの空中分解と共に様々な出来事が重なってすっかり未来にたいする希望を失っていた…。
今回は直接的な幽霊話は無し。そのタイプもこれまであったので特に違和感は感じなかったが、最後にちょこっとだけ「それっぽい」現象が。
かつての海里もそうだったが、今回もどん底にいるレイナを夏神の料理が救う。お金をかけた材料でもない、豪勢なメニューでもない。雑炊だったり煮物だったりといわゆるシンプルなメニュー。
でもそこにかけられている手数が自分のためだと思うとすんなりと口に入っていく。
やはり食というものは究極の話、命の根源、大事なんだなと思う。
この14作目にしてついに夏神にも心の安寧が訪れる。
その前触れは亡くなった彼女の夢なのだが、こんなささやかなことですら幸福感だったり彼女に対しての思いを新たにしたり、物事を前向きに考えられるようになったということが、これまでどれほど苦しい思いをしてきたのだろうかと思えて切なかった。
だが夏神の表情が明るく、海里やロイドはもちろんのこと、常連客の坂口にまで彼女のことを話せるようになったことは素直に嬉しい。
幽霊として姿を見せることはない彼女だが、もしかしたらレイナの時のように、何らかの形で夏神を見守ってくれているのかも知れない。
一方の海里。これまでも度々役者の道へ戻る第一歩のようなものがあったが、今回はついに朗読劇へ出演することが決まる。後押しをするのは勿論、師匠の倉持悠子と作家の淡海。
淡海の書き下ろし原稿と倉持悠子のレッスンで、どんな朗読を聴かせてくれるのか楽しみだ。
常連客の坂口と目が不自由な瞳との交際もゆっくりと、二人のペースであるが順調らしい。喧嘩もできるというのはそれなりに親密度が増してきた証。今後もゴタゴタはあるかも知れないが、<ばんめし屋>の面々も見守っていることだし大丈夫だろう。
今後も楽しみ。 -
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ネタバレ中盤、引っかかる点が。
ノック3回のマナーについて。
マナーを守る海里に対して、悠子は「摩擦を避けるための無難な選択が常に正しいとは限らないこと、時には頑固に自分が思う道を行くことも大切だってこと。これはマナーの話じゃなく、むしろ表現者としての振る舞いの話よ」と。
これは違う。
表現者としての振る舞いを説く引き合いに、マナーを持ち出すのはおかしい。
確固たる自信がない限り、マナーを守る必要はないと言っているようなもの。
冠婚葬祭のマナー、食事のマナー、色々あるが、マナーとはそもそも表現の方法ではなく、相手や周囲を思いやることが根底にあるもので、主となるのは己ではない。
悠子自身、「迷い箸をしてしまいそう」とマナーを気にしているではないか。
前回までは素敵な人だと思っていたが、この件で「なんだ?このおばさん…」と一切の魅力を感じなくなってしまった。 -
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夜だけ営業の定食屋<ばんめし屋>を舞台にした、ちょっと不思議でほっこりした物語のシリーズも第13作。思っていたより長いシリーズとなった。
思いがけないトラブルに巻き込まれて芸能界を追われ、今は<ばんめし屋>で働く海里と、やはり過去の登山事故をきっかけに世間から離れてひっそりと<ばんめし屋>を営んでいた夏神という、それぞれ過去を背負っている二人が少しずつ前向きになってきた前作。
海里は朗読劇を毎週行っている女優・倉持悠子のとの出会いで芝居への情熱を取り戻し、夏神は戦前の料理本をヒントに、古いレシピを現代風にアレンジして客に提供するという新たなメニューに取り組んでいる。
今作はいよいよそれぞれがリスタートへ向けて本格始動するのかと思いきや、主役は事故で目が見えなくなった女性・中山瞳。
倉持悠子の朗読劇を聴きに来たという彼女は、最初こそ海里に友好的だったのだが、ある一言をきっかけに頑なになってしまう。
色々と考えさせられる言葉が今回も出てくる。
瞳のような身体的ハンディを負った方だけでない、様々な辛い状況にある人にどんな視線や言葉や態度を向けるのが正解なのか、難しい。その時々のシチュエーションや環境や心理状態によって、その人と自分との関係によって違うだろう。
それでも海里が言うように何もしない、何も返さないよりはずっと良いのではないかと思う。
また倉持悠子の『自立することは大切だけど、それが孤立とイコールになってはいけない』という言葉にもハッとさせられた。
『自立した一個の大人だと認められたい』というプライドがあまりにも先行しすぎて、本当に必要な大切な手まで自ら振り払っていないか。
このシリーズのもう一つの要素、幽霊話がなかなか出てこない、今回は無しなのかと思っていたら意外な形で登場してきた。
こういう幽霊ならありがたい。
そして瞳に一目惚れしている坂口も、少々騒々しいが正直で良い人だ。少々周囲のフォローは必要かも知れないが、懸命に前を向いている人は気持ちが良い。
肝心の夏神だが、過去の事件から世間に注目されることへの不安はまだまだあるが、それでも一歩踏み出したことは嬉しい。
次回は海里の話がメインになるのだろうか。そしてロイドは相変わらず英国紳士スタイルで二人を見守ってくれるのだろう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ椹野道流さんの本は昔からよく読んでいたけど、その中でも手を出していなかったシリーズの1作目。それぞれのキャラクターの関係性がこの後どう展開して、それぞれどのように成長していくのかはまだ分からないけれど、読みやすい文体、その場の会話が映像として頭の中に流れてくるようなテンポのよさは他の作品とも共通していて良かったし、キャラクターはそれぞれに個性があって魅力的だった。
ストーリーは法医学の話だと思って最後まで辿り着いたところ実はこれホラーだったの?という若干の肩透かし感があったのが個人的には引っかかったところではあるが、今後の筋としては法医学で展開していくのだろうか。怪異自体は嫌いではないけど、2冊目以降に期待したいと思う。