青山美智子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
青山美智子の『人魚が逃げた』を読んだ。
舞台は銀座の歩行者天国。そこに、王子の姿で逃げてしまったという人魚の人形を探している青年が現れるところから、物語は始まる。
人魚の人形を探すという設定は、一見するとファンタジーのようだが、描かれている人々や出来事には妙にリアルなところがある。登場人物たちは、それぞれに迷いや後悔、言葉にできない思いを抱えていて、非現実的な出来事の中にも、現実の人間関係に通じる切実さが感じられた。
物語はオムニバス形式で、それぞれの登場人物の過去や現在が描かれていく。最初は別々の物語に見えるものの、読み進めるうちに人物や出来事が少しずつつながり、一つの大きな物語として形を成していく。その構成がとても印象的だった。誰かにとっては何気ない出来事が、別の誰かの人生に影響を与えている。そうしたつながりが、銀座という人の多い場所を舞台にすることで、より鮮やかに浮かび上がっていた。
登場人物たちの恋愛も、劇的に始まるというより、日常の中で少しずつ育っていくものとして描かれている。自分の気持ちに気づくまでに時間がかかったり、相手の思いを確かめられないまま遠回りしたりする姿には、恋愛の不器用さやもどかしさがあった。一方で、過去の経験や傷を抱えながらも、誰かと向き合うことで少しずつ前に進んでいく姿には、恋愛が人を変える力も感じられた。
私自身の恋愛は、好きな人に積極的にアタックするというより、いつの間にか相手も自分を想ってくれていた、ということが多い。だから、登場人物たちの恋愛に描かれる、はっきりしたきっかけがないまま気持ちが近づいていく感覚には、共感できる部分があった。相手の何気ない言葉や態度を後から思い返して、「あのときから始まっていたのかもしれない」と気づくことがある。そうした恋の始まり方は、物語の中で人と人との縁が少しずつ結ばれていく過程とも重なって見えた。
また、私自身も、恋愛では相手の気持ちを待つだけでなく、自分の思いを言葉にすることの大切さを考えさせられた。自然に関係が進んでいく恋愛は心地よい反面、互いに遠慮していると、伝えられないまま終わってしまうこともある。登場人物たちの迷いや選択を読んでいると、相手を想う気持ちだけでなく、その気持ちをどう伝えるかも大切なのだと思った。
最後は、「起承転結を経て、落ち着くところに落ち着いたな」と思ったところで、もう一ひねりある。最後まで読んで、「なるほど、そう来たか」と思わせる展開が、青山美智子らしくて面白かった。これまでの出来事が別の角度から見え直し、登場人物たちの思いや関係がより深く感じられる仕掛けになっている。 -
Posted by ブクログ
ネタバレやられたー!笑
久々に青山さんの特徴「全部は一つに繋がっている」にやられたー!笑
一つ一つが短くてパラパラっと読めて短い分、深い共感というより「きゅんとするな、可愛いな」って短い感想ばかりだった。
そして最後に全ては同じ人物の事で甘いだけじゃなくてビターみたいに苦いことも経験して。
でもそれ全てが自分にとって大切で大事な経験だって事もわかって。
私は甘々がよくて、ずっとずっと幸せがいいなぁなんて思ってたけど。
人生は中々そううまくはいかないよねぇ。
でもそれもまた人生なんだろうなぁ
相変わらずの青山さん作品、さらっと読める甘い物語だった!
高校時代の文化祭と会社での同僚の励まし、きゅん!というか主人公めっちゃ青春してて羨ましい!!笑 -
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青山さんの連作短編集を読むのは『お探し物は図書室まで』『月の立つ林で』『木曜日にはココアを』『月曜日の抹茶カフェ』に続いて5作目となります。今回はオーディオブックの朗読で楽しんでみました。男性と女性のナレーターが各編の主人公に合わせて交替で読んでくれるので、お話の内容も相まって実に心地よい【聴く読書】の体験となりました。
各編の主人公は、12歳年上の女性と交際中の元タレントの会社員男性、ニューヨークに旅立つ20歳の娘と銀座で買い物中の主婦、絵の蒐集にのめり込み過ぎて妻から離婚されたコレクター、カフェパウリスタで文学賞の選考結果を待つ男性作家、元「手タレ」で今は銀座の高級クラブのママとして働いているホステス。
これらの人々が、週末の銀座の歩行者天国で、アンデルセンの『人魚姫』に登場する“王子”と遭遇することで、それぞれ自らの人生を振り返るとともに新たな一歩を踏み出そうとする。そして、青山さんの真骨頂である、それぞれの主人公がリンクし合うことを匂わせるような書きっぷり。最後に待っているこの話の落としどころも「さすが!」のエンディング。今回はオーディオブックでも十分に楽しめました。 -
Posted by ブクログ
通称「ぐるぐるめ」と呼ばれる遊園地。そこを訪れた理由、背景。
いろいろな立場の人が「ぐるぐるめ」において自分を、相手を想う。
各章ごとに訪れた人々の想いが綴られる。
内容自体は、なんてことないのだが、
今、この瞬間にぐるぐるめに身をおいたことによって感じた
その人たちの深い深い気持ちが文章として綴られる。
そういえば、私も、常日頃の何気ないコトに、心の琴線が動き、
いつまでも考え続ける経験が少なからずある。
↓以下ネタバレです
その章を読み終えた次のページにその主人公、そして今まで登場した主人公が、田中さんのミニチュア作品に登場していて
ある意味、「ウォーリーを探せ」みたいな感覚で
探すのが楽しかった。
そして、最後はミニチュアで全員登場しているので、
読まれる方はお楽しみください! -
Posted by ブクログ
同じ町の図書室を描いているから当然ではあるけど、違う章に前の章の主人公が出てきたりしてほっこりする。登場人物たちがゆるーく繋がっていて、世界って案外狭いんだなあと思うけど、嫌な狭さじゃない。自分のそばにもこんな人がいるのかもしれないと思える本だった。
小町さんの「本も、そうなの。作り手の狙いとは関係のないところで、そこに書かれた幾ばくかの言葉を、読んだ人が自分自身に紐づけてその人だけの何かを得るんです」という台詞を読んで、私が本を好きなのってこういうことだよなと思った。正解は作者しか知らないし、作者も正解を持っていないかもしれない。でも本を読んだ時に、どこかで自分と重ねたりして何かを感じとる。そうやって読んだ人の世界が少し豊かになったりするのが本の面白さだなと思った。
この本を読んで、今まで見向きもしてこなかった生涯学習センターにどんな講座がやってるのか見に行ったりした。本を起点に私の見える世界が少しだけ広がって、呼吸が楽になるような気がした。 -
Posted by ブクログ
著者の作品は安心して読める所が好きです
必ず温かく優しい気持ちになって終わります
裏切られないハッピーエンドが約束されています
この世界は美しいんだなって錯覚させてくれます
本作も他の作品と同様に連作短編集でした
どのお話も家族愛について描かれています
疑心暗鬼になっても最後には必ず信頼関係を築けます
とても安心できるストーリーでした
疲れている時に読むと癒されると思います
また、人間を信じている人に似合う作風です
優しい家族に囲まれて育った人なら純粋に感動するでしょうし、地獄を見て育った者は登場人物たちの行く末を思って憧れと夢を抱くでしょう -
Posted by ブクログ
ネタバレ一枚の絵から始まる連作短編。コミュニケーションに自信のない留学生、将来に不安を感じる額職人、成功した元弟子にコンプレックスを抱く漫画家、パニック障害の発症に絶望する50代女性。それぞれに自己嫌悪に陥るが、ありのままの自分を認めてくれる人の存在に気づくことで、前を向ける。どれも素朴だけどとても温かい気持ちになれる物語だった。
まさか最後のエピローグが、ミステリーの謎解きのような展開になるとは。ブーとレイのその後の人生、赤と青の意味、エスキースの意味、各話が繋がることで見えてくる。ちょっと伏線回収がすごくて出来過ぎな感じもあるけど、まんまと感動してしまった。