島田荘司のレビュー一覧
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ネタバレ本作は「上高地の切り裂きジャック」と「山手の幽霊」の2つの中編で構成された作品集。
まず本作は「上高地の切り裂きジャック」と「山手の幽霊」の2つの中編で構成された作品集。
まず「上高地の切り裂きジャック」は2000年の頃に石岡が解き明かした事件の話。
次の「山手の幽霊」はまだ御手洗が日本にいた1990年の頃の話。
この二つの怪奇譚に御手洗の推理が冴える。
「上高地の~」はスピンオフ作品「ハリウッド~」の創作中に生まれた副産物のような感じだ(あれほどグロテスクではないが)。
題名の「切り裂きジャック」から連想される残酷なイメージとは違って事件は単発、しかもどちらかといえば死亡推定時刻に関する話が多く、陰惨さの味わいは薄れている。
またこの頃、島田氏が力を入れていた冤罪事件への取り組みの色合いもあり、ここでは容疑者とされていた牧原信吾の無罪をどうにか証明しようという方向でストーリーは進む。これは金川一事件というのがモチーフになっているらしい。
しかし『最後のディナー』や『Pの密室』の頃に比べるとだいぶん石岡も以前のペースを取り戻しているようだが、犬坊里美の携帯電話の留守電組の話を聞いてショックを受ける件は50を間近に控えた男の台詞か?と思った。
蓮見刑事に嫉妬するところもちょっとなぁと思うのだが。
翻って「山手の幽霊」は、『~挨拶』や『~ダンス』の頃を髣髴とさせる御手洗の活躍ぶりが堪能できた。関係のないと思われた二つの事件がまたも大胆な設定で結びつく。これこそ御手洗ファンが読みたかった作品だろう。
しかし両作とも共通するのは御手洗潔の超人的な推理力。いきなり真相が見えているように動き回る様、人に命令を下す様は確かに面白いが、超人的すぎて、少々辟易した。これと比べるとやはり私は吉敷シリーズの方が地味ながらも堅実で面白いのである。
オレも歳を取ったかなぁ。 -
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ネタバレ久々の御手洗物らしい小説を読んだという感じだ。
『タンジール蜜柑共和国の帰還』という奇妙な内容の童話について解析をする趣向は過去の作品『眩暈』を想起させ、この作品が好きな私にとってなんともたまらないワクワク感があった。特にビートルズの歌が絡んでいるという件には驚かされた。これはビートルズ・フリークである島田氏にとって積年の願望をようやく果たしたのではないだろうか。
他にも旧作を想起させる箇所があり、人の五体を解体してネジ式の関節をもつ義手・義足をつけ、ゴウレムを作り上げるというのが今回の作品世界を彩るもう1つのモチーフなのだが、これなんかはデビュー作『占星術殺人事件』のアゾートがすぐに浮かんだ。
とまあ、ある種、永い眠りから覚めた御手洗シリーズの復活を宣言するような内容である本書。特に前半の『タンジール~』の解析の辺りはどんどん判明していく驚愕の事実にページを捲る手がもどかしいほどの面白さを感じたのだが、肝心の殺人事件の解明のあたりになるとどうも食指が鈍った。
疲れから来る睡魔もあったのは事実だが、なんだか事件が複雑すぎるのだ。明かされた真相もものすごく作られた感じがして、心の底から同意できなかった。
殺された遺体の首がネジのように回り、外れ、転がっていく、なんとも唖然とする事件ではないか。しかし、それを論理的に解明しようとするために、無理を生じているような感じがした。
そして、やはり語り手が石岡以外では違和感があるのは否めない。御手洗がなんだか別人のように思えるのだ。エキセントリックさに欠け、すごく常識的な人物として立ち振る舞うその姿は消化不良感がどうしても残ってしまう。
しかし、もっとも驚いたのは『タンジール~』の舞台がフィリピンだったという事。あと約1週間後に彼の地へ赴任する我が身(当時)にとってなんか因縁めいた物を感じた。
こんなところにも出てきたのか、この国。ふぅ~・・・・。 -
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ネタバレ上巻で見え隠れしていた津山三十人殺しが下巻では主役になっていた!
あまりに詳細で、その章が明けたのち、関係者の名前や関係性を若干忘れかけていたほど。
以下ネタバレ
龍臥亭がもぬけの殻になってたところは幻想小説めいて怖かった。石岡くんがとにかくふにゃふにゃしてるので、いい具合に不安さが増した。
全編通して私はとにかく幼女の無事を祈っていて、4歳の子を連れて夜中に百度詣する母親にマジでやめてほんとやめてと石岡ばりに懇願していた。
もうクライマックスシーンとか言わんこっちゃなさすぎて…
石岡くん、ボロボロになりながら頑張ったなぁ。再現実験してたとき、思ったとおりになるかどうかハラハラしていたのは新しい感覚。確かに名探偵たちってなんであんな自信満々に再現できるんだろ。
旅館ものの推理小説読んだあとにちょいちょい気になる「あそこの家、これからどうすんだろ」問題。私としては夫を殺され情夫がえらいことをしでかした女将さんが最後まで割と平気な顔してたのがちょっと怖かった。これからどうするのか気になるな…。
石岡くんが長男を疑ってたのと同じくらい私は女子高生を疑っていましたよ。
最後までちょっと気持ちが悪い石岡おじさんでしたが、大冒険を経て石岡くんをやや好きになった私なので上巻ほどのムズムズ感はなくなんとかギリスルー。 -
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ネタバレよくない星回りで悩んでる女性から「岡山に行ってでっかい木の下に埋まっている手首を掘り出して供養しなくちゃいけないというお告げで出たのでついてきてください」とかいう謎の依頼を受けた石岡くんの珍道中。
怖いものが嫌いなのにどんどん不気味な展開が続いてその度に石岡くんがこの依頼主の女性とわあわあ騒いでるのが、まあうざ可愛い。そんな末に辿り着いた閉業中の旅館、「龍臥亭」。
着いていきなりの火事と殺人のどさくさに紛れてこの旅館に居着くことになったはいいが、隣の寺の鐘がなるたび人がどんどん死ぬ!その上死体が消えて、消えた死体の頭が川から流れてくる!何という狂乱。
その割に、あんまりパニックになったり逆上する人もいないのが不思議な雰囲気。
津山三十人殺しのことをチラチラ垣間見させつつ、上巻了。
石岡おじさんがいい歳して高校生にムラムラしているのが気持ち悪いなぁ。
どうなるのかなぁ。 -
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ネタバレ本作は2002年に当初『吉敷竹史の肖像』として刊行された短編集からエッセイや対談などを取り除き、純粋に吉敷シリーズの短編集として編み直した物で、文庫化に際して新作の「電車最中」という短編が書き加えられている。
まず冒頭の「光る鶴」はかつて島田氏が物したノンフィクション大作『秋好事件』をモチーフにした吉敷シリーズの中編だ。
秋好事件が同じく福岡の飯塚での事件、そして一家惨殺事件である事からかなり類似性が高い。
題名の「光る鶴」とは事件当時、駅のホームに捨てられていた赤子の悟の胸に置かれていた銀の折鶴に由来する。これが冤罪の証拠となるのは自明の理だが、相変わらずの吉敷の粘りの捜査が描かれている。
事件の真相は物語中盤で早くも吉敷と昭島との面接から明らかになるが、この作品の意図は昭島義明の冤罪をいかに証明するかに主眼が置かれているので当然だろう。この事件解明は島田氏の秋好事件に対する願望に外ならない。
続いて「吉敷竹史、十八歳の肖像」は吉敷がいかに警察官になるに至ったかを描いた物語だ。
幼稚園児が快刀乱麻の名探偵振りを発揮する御手洗シリーズを書いた同じ作者とは思えぬほど、この物語は対極にある。
御手洗シリーズでは、幼稚園児の御手洗が事件を解決するのに対し、本作では結局、吉敷は桧枝殺しの犯人を捕まえられないのだ。つまりここに作者の二つのシリーズの創作姿勢が現れているように思う。
吉敷シリーズが極力現実の警察の捜査に即して描く事を主眼にしたリアルなシリーズにあるのに対し、御手洗シリーズは幻想味と奇想をテーマに掲げた一種のファンタジーだという事だ。
あとラストに出てくる最後の宮沢賢治の詩、『雨にも負けず』は、確かに吉敷の人と成りを語るにこれほど雄弁な物はないと感心した。
そしてラストの「電車最中」。
まさにこれこそシリーズを読み通した者が得る醍醐味というものだろう。留井が語る数年前の事件とは私の好きな『灰の迷宮』である。
電車型をした最中を探す、これだけ単純な捜査にこれほどまでに物語性を持たせる島田氏の手腕に改めて脱帽。都電最中の存在、そして全国に電車の形をした最中がないという話は本当なのだろう。いやはやどこからこんな話を拾ってくるのだろうか?
そしてこの作品でも御手洗シリーズとの相違がはっきりと書き分けられている。
御手洗シリーズのスピンオフ作品では御手洗が電話や手紙での出演だけなのに、あっさりと事件の真相に迫るヒントなんかをアドバイスする超人ぶりを描いているのに対し、本作では吉敷は留井の捜査のお手伝いをするのみで助手に徹している。あくまで事件を解くのは留井である。この辺の身のわきまえ方が私をして御手洗よりも吉敷の方を好きにさせているところなのだ。
そして最後の蛇足ともいえる留井の若かりし頃の東京での恋愛話もまた昭和を語る一つの因子となっている。
今後の島田氏はこういった情の部分を積極的に取り入れるらしい。なんとも嬉しい話ではないか! -
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ネタバレティーンズ向け島田荘司!と思って飛びついたけど、かなり重いテーマな4篇。
京大を目指して予備校に通う、ぼくは珈琲店「進々堂」で京大医学部の御手洗さんと出逢う。
最初は大学や勉強について相談していたけれど、世界放浪の旅から帰ったばかりの御手洗さんが語る話は興味深くて。
ぼくが地元の漁師街で体験した大人の女性との切ない思い出
御手洗が英国で出会った発達障害をもちながら、重量上げの競技に打ち込む青年とその父親の奮闘
御手洗がLAで出逢った韓国老人の戦中の過酷さと悲願花
御手洗がシルクロードの西域、カシュガルで出逢った老人の過去と桜
ぼくのコークハイの思い出以外は、とにかく重くて辛いお話ばかりなんだけど、最後は少し光がほんのり灯るように終わっていて、ホッとする。