島田荘司のレビュー一覧
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ネタバレ島田氏の短編集としては珍しく吉敷も御手洗も出てこないノンシリーズ物ばかりだった。短編集とは云え、一番短いのが冒頭の「ドアX」の70ページでその他2編はどれも100ページを超える作品で、どちらかと云えば中編集といった方が正しいだろう。
ハリウッド女優を夢見る女性のあまりに出来すぎた世界が語られる「ドアX」はその明かされた真相からして長編『眩暈』の変調のような味わいがある。最後に志賀直哉氏の短編「出来事」を髣髴させるところは作者の手腕だが、「ドアX」の正体が途中で判るのが災いして却って蛇足になった感がある。
次の「首都高速の亡霊」はタランティーノの映画に触発されたような内容で、ある一点から語られる凶事がそれぞれ登場人物の視点、立場で語られることでからくり仕掛けのおもちゃを見ているようで結末の恐ろしさが強調されるというより物語進行のユニークさが印象に残った。最後の死体が首都高速の外灯に持たれるように偶然腰掛けるような姿勢になるというのがどうしても想像できず、これさえもっと簡潔であればすっきりした好編になったのだが。
最後の「天国からの銃弾」は島田的ロス・マクドナルド調綺譚といった感じで、結構好きな一編。
定年退職した老人の富士山を撮り続ける趣味を発端として息子のソープランドの屋上での首吊り死が起き、その事件の真相を調べていくうちに息子夫婦の知られざる暗黒が次第に明かされていく。
しかしこれには一点、大きく物語のリアリティに欠ける部分がある。主人公の老人がプロ級の射撃を持つ、その事ではない。毎週射撃の練習を神奈川県のど真ん中でやる、これも瑕疵ではない。それは息子夫婦が常に覚醒剤の常習犯になっていたこと、しかも結婚する前からだという事だ。もしこれが本当ならば彼ら2人の子供に何か障害があって然るべきだ。文中にもし「孫は不幸なことにどちらかと云えば周りの子達よりもいささか知恵遅れのようだが、老衰の身になってみればそれさえも可愛さを倍増するだけなのだ」などという一文があれば、最後の彼ら家族の暗黒はもっと現実味を帯びていただろう。
以上3編、どれも佳作だがそれぞれに弱点や瑕疵を備えているので今回は3ツ星とする。 -
Posted by ブクログ
孤独な少年ヨウイチが唯一心を許し、尊敬する人物である、隣人の真鍋さん。彼は、透明人間が存在すること、そして、納屋で透明人間になる薬を作っていることをヨウイチに告白する。
そんなある日、密室状態のホテルから一人の女性が蒸発するかのようにいなくなり、海岸で死体となって発見される。
真相が明らかにならないまま、26年の月日が経ち、一通の手紙を受け取ったヨウイチは驚愕の事実を知る・・・
子どもも読者として想定している為か、かなり展開が早く、SF的な要素も含んだ軽いお話かな?と思いきや、終盤の手紙をきっかけに、急に現実的で大きな話へと展開します。
自分を取り巻く環境でどうにもならないことがあったり、自分の未熟さを悟ったり、自分の選択を後悔したり・・・少年の視線で語られるストーリーを通じて、ちょっと切なくなる作品でした。。 -
Posted by ブクログ
現在、ホームズ物を読んでいるこの最中にホームズ物のパロディ、しかも島田荘司作品を読むというのは正に今をおいて無いほど最適な時だった。
各種のホームズ譚をそこここに織り交ぜながら、登場人物をこき下ろす。しかも漱石の文体でそれらを語るというのが斬新だ。
ドイルの文体と漱石の文体とを交互に使い、しかも同じエピソードをそれぞれの主観で語るものだから、所々食い違っていて面白い。ドイルの文体では例の如くワトスンがホームズを讃えるような口調で語られるのに対し、漱石はそのひねくれた性格ゆえか物事を常に斜めに観るような書き方をし、ホームズを狂人としか扱っていない。
当時直木賞候補になったというのもむべなるかなといった感じである。
ただ、トリックの方はホームズ譚に同調するかのようにいささかチープな感じがした。犯人逮捕の手法といい、各キャラクターの配置といい、シャーロッキアンには堪らないものがあろうが、私には少し物足りなかった。
しかし、通常の島田作品張りの奇想溢れる事件であれば全体のバランスがちぐはぐになるだろうし…。難しいところである。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ久々の吉敷刑事シリーズ物でなかなかの佳作。
今回はミッシング・リンク物にやはりなるのだろうか。冒頭の通子とのやりとりに結局解決が見られないのが残念だが、これは恐らく後の『涙流れるままに』で明らかになるのだろうからそれまでおあずけ。
今回は『飛鳥』と『飛島』のトリックにやられた。てっきり別の地にもう一つの『飛鳥』があるだろうと思っていたからだ。今度地図で探してみよう。
ただ一応のタイムリミット物にもなっているがもう少しその状況作りが良ければサスペンス性が増したように思えるのだが。
それにしても島田氏の『天に昇った男』がもう既に品切れ状態だとは恐れ入った。それが故に本作が繰り上げられたわけだが、集英社文庫の島田作品もどの書店に行っても見当たらないというのはまさに危機的状態である。
だってあの『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』でさえないのだよ、信じられる!?
まさかこれほど早く島田作品の底が見えるとは思わなかった。