加賀山卓朗のレビュー一覧

  • 火刑法廷〔新訳版〕

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    ネタバレ

    冒頭から奇妙な符合がたて続き、それら全てが主人公の妻が犯人であることを示唆しており肝をひやす、というところまではよくできたミステリにおける、一種の定型だが、それだけではなくその奇妙な符合は全て彼の妻がすでに処刑された魔女であることを暗示しているように思われる、となっていて読者の心を掴む。
    中盤では推理合戦が繰り広げられ、その過程でタイトルを意識したような、法廷尋問のようなくだりもあって、遊び心がある。
    クライマックスで、探偵が謎解きし全てが実現可能なトリックとして解き明かされなーんだと思うのも束の間、最終的な結論としては、やはり魔女だったのか…?と思わせるようなものになっている。そんなことあり

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    2023年10月11日
  • 三つの棺〔新訳版〕

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    図があるにもかかわらず物の位置関係をきちんと把握できない自分の空間把握能力のなさのせいでこのお話のトリックを100%理解できず…お話自体は非常に面白いです!

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    2023年06月27日
  • 大いなる遺産(下)(新潮文庫)

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    貧しい少年が、思いがけなく得ることになる「大いなる遺産」とは……。

    『クリスマス・キャロル』に代表される、19世紀のイギリス人作家チャールズ・ディケンズの長編小説。

    アルソンフォ・キュアロン監督による同名の映画では、舞台を20世紀のアメリカに移してリメイクされているが、原作は当然に19世紀のイギリス・ロンドンとその郊外が舞台。

    本筋は主人公の成長物語ではあるが、小説では恋と富と挫折と後悔が様々な場面で様々な人物に見えたり隠れたりする。
    主人公ピップにエステラ以外の登場人物も魅力的で、ミス・ハヴィジャム、実の姉とその夫ジョー、囚人マグウィッチ、後見人ジャガーズなど、19世紀の風情のなかで映

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    2023年06月25日
  • 葬儀を終えて〔新訳版〕

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    だって彼は殺されたんでしょ?すべてはこの一言から始まった。
    このあらすじを見たら、読まずにはいられないでしょう!!登場人物全員怪しくて、まさかこの人が犯人?それとも次の被害者?とドキドキする描写が多々あった。
    そして私は今回も女性たちそれぞれの生き方に感情移入してしまった。みんな幸せになってほしい。

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    2023年06月11日
  • 黒き荒野の果て

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    ネタバレ

    裏社会から足を洗って2年、自動車整備工場を経営するボーレガード。
    近所に出来た別の店との価格競争に勝てず、仕事が急激に減り、資金は底を付く間近。
    右に出る者のいない走り屋としての己の腕を頼りに、なけなしの財産をはたいて賭けレースに出向くも、警察の取り締まりに合い財産没収。
    ペテンであることを見抜くが、時すでに遅し。
    全額を取り戻すことはできず、取り戻せたのは誇りばかり。

    整備工場の家賃ばかりか子ども達の生活に関わる出費、さらには保険の手違いにより母親を預ける施設の代金が大きく請求されることに。
    こののっぴきらない状況の中で取りうる策は、そう、裏社会への復帰。
    そこにタイムリーに舞い込む、宝石

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    2023年06月03日
  • ヒューマン・ファクター〔新訳版〕

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    「ヒューマン・ファクター…人間や組織・機械・設備等で構成されるシステムが、安全かつ経済的に動作・運用できるために考慮しなければならない人間側の要因のこと」(Wikipedia)

    舞台は第二次大戦後冷戦時代のイギリス諜報部。
    アフリカ情報担当である諜報部員カッスルは、すでに定年を過ぎても仕事を続けているが、その理由は自分でも解らず、常に「引退」を考えていた。
    そこへ、所属する部署に内部調査が入る。
    誰かによる情報漏洩の疑いを明らかにするため……。

    イギリス諜報部というと「スパイ大作戦」「007」など派手なイメージがあるが、まったくそんな描写はなく、淡々と日常を描きながら疑心暗鬼が高まっていく

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    2023年01月19日
  • 黒き荒野の果て

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    昔、アングラな走り屋だった男が自動車修理工場に務めるが、ギャングとの抗争に巻き込まれる話

    多分やけど、ブレイキング・バッドにかなり影響受けてそう。実際名前も出てくるし。

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    2023年01月09日
  • 11月に去りし者

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    殺し屋に追われる悪党ギドリーと家族を連れ戻そうと酒癖の悪い夫から逃げ出した母シャーロットとの逃走シーンがこの小説の展開の面白いところだ。双方に身元を明かさずいるが暫くすると悪党に情が芽生え、家族を母親を守ろうと動き始める。その逃走の中での言葉「これから出会うのは新しいことばかりだ。ここからずっと、どこへ行っても。新しいものは古いものよりずっといいかもしれない。その時になるまでわからないんだ」それは、新しいものが必ずしても良いとは限らない、だが経験しないことには誰にもそれを判断できない、と言うことだ。力強い母の情熱と新たな挑戦は子供二人の将来を見通し人生を賭けたのだ。

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    2023年01月09日
  • 黒き荒野の果て

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    家族を守るために出来ることは何ですか? 米国南部の街で生き抜くクライムミステリー #黒き荒野の果て

    ■人生のつらい現実
    環境が人生を決める。こういうつらい現実を実感するのは私が20代後半に差し掛かった頃だったでしょうか。

    若い時代は夢と希望があれば、どんなに貧乏でも幸せなものでした。
    しかし気が付くといつの間にか大人のしがらみの中で生活をしなければならず、毎月の支払いのために自分のやりたかったことがができてないと気がつく。守るものができた時、生き抜くためにどんな厳しい運命が待っているのか。

    ■家族を守るために
    本書は自動車整備工場を営む主人公が、アメリカ南部の決して裕福ではない街で生き抜

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    2022年12月12日
  • 火刑法廷〔新訳版〕

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    ネタバレ

    カーの不気味な雰囲気が存分に楽しめる作品だった。
    推理小説かと思いきや、ホラー小説かな、これは。分類し難いところが既に洒落ている。


    クロスが探偵役で登場したところから解決編がなかなか圧巻で、マリー視点のラスト素晴らしいの一言。
    クロスの前世の魔女仲間がマリーで、現世でマリーに見つけてもらうために自身の顔写真を本に載せていたのはわかるけど、スティーブンズとゴーダンが結びついたのは偶然??ここがわからなかった。

    仮面舞踏会や墓荒らしなどの場面はあるものの、全体的に重々しい、暗い雰囲気の作品だった。

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    2022年11月27日
  • リーマン・ショック・コンフィデンシャル下 倒れゆくウォール街の巨人

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    Too Big To Fail
    リーマンショックの最中は学生ということで、さわりしか知らなかったけど、勉強になった。三菱の小切手のくだりには痺れた。
    この本に出てくるCEOの中に未だ現役がいるというのもなかなか感慨深い。

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    2022年11月10日
  • 黒き荒野の果て

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    米国南部の町で自動車修理工場を営むボーレガード。裏社会で語り継がれる伝説のドライバーだった彼は、足を洗い家族とまっとうに暮らしていた。

    だが工場の経営が傾きだしたことで運命の歯車は再び狂い始める。

    金策に奔走するボーレガードに昔の仲間が持ちかけてきたのは宝石店強盗の運転役。それは家族を守るための最後の仕事になるはずだった。ギャングの抗争に巻き込まれるまでは――。

    ありがちなシチュエーションだが、カーチェイスの描写で読ませます。

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    2022年10月22日
  • リーマン・ショック・コンフィデンシャル上 追いつめられた金融エリートたち

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    リーマンショック前後の各主要プレーヤー達のやり取りを大量のインタビューや記事を元に小説化した書籍。リーマンブラザーズを中心に物語が展開され、ある意味結末は分かってるが引き込まれる。
    下巻では遂にクライマックスに突入するので楽しみ!

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    2022年09月06日
  • オリヴァー・ツイスト(新潮文庫)

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    イギリス文学の傑作、ディケンズ読むならこれ! みたいな話を聞いたので読みました。
    確かに面白い。しかもエンタメ作品として。
    タイトルはオリヴァー・ツイストだが、オリヴァー以外の登場人物にもポンポン視点が移る群像劇。恩田陸並みに登場人物がたくさん出てくるのでメモ必須。
    文章はとにかく皮肉まみれで思わずニヤリとさせられる表現が多い。キャラはみんな個性が尖っていて特に悪人の描写が上手い。
    文学的にどうこうは置いといて、ヴィクトリア朝イギリスの風俗小説として、メロドラマとしてなどの俗っぽい楽しみ方もできることは特筆すべきである。
    ただし、ストーリーの構成がガタガタで最後の方などオリヴァーが出てこなくな

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    2022年08月28日
  • 火刑法廷〔新訳版〕

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    カーの小説はどれも読み難いのが難点(私にとっては)だったけど、これは読みやすくて助かった。
    冒頭からオカルト風味満載な雰囲気の中、ちゃんと合理的に解決できて安心した…けれども、終わり方がなんとも…
    続けてM・R・ジェイムズが読みたくなったw

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    2022年08月16日
  • 葬儀を終えて〔新訳版〕

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    だって彼は殺されたんでしょ?
    という言葉に騙された。
    犯人が意外すぎて驚いた。
    動機も。
    ポアロがいつ出てくるのか楽しみにしていた、もっと早くから登場してほしかったな。
    解決は、鮮やか!

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    2022年08月01日
  • リーマン・ショック・コンフィデンシャル下 倒れゆくウォール街の巨人

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    一般人には知り得ない舞台裏が丹念に描かれていておもしろい。あの頃のジェットコースター相場が思い出されます。

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    2022年07月10日
  • リーマン・ショック・コンフィデンシャル上 追いつめられた金融エリートたち

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    一般人では死ぬまで知り得ない裏話集みたいでおもしろい。
    登場人物の誰にも同情できないところがまたいい。
    またいつか greed is good の時代が来るのでしょうか。
    後半も楽しみ。

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    2022年07月10日
  • 火刑法廷〔新訳版〕

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     とてもとてもJ.D.カーらしい、凝りに凝ったオカルトミステリ。

     殺害現場からの犯人の消失、と霊廟からの死体の消失、というふたつの密室を軸に、犯人含めた登場人物たちの思惑が絡み合った推理合戦から、異様な雰囲気を増していく中盤がキャッチーで読み進めやすい分、真打ち登場とばかりに躍り出る探偵役のオーラが凄い。キワモノ。
     謎解き自体は正統なミステリで、これまで醸成されていた不気味な雰囲気が祓われるように晴れてーーいったと思ったら。そこからの揺り返しが凄い。

     真実は何処、というか、真実の軽さよ…


     ☆3.5

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    2022年06月29日
  • 葬儀を終えて〔新訳版〕

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    ネタバレ

    だって彼は殺されたんでしょ?
    一瞬で登場人物全員を疑心暗鬼にさせる一言。
    葬儀を終えたばかりのアバネシー家当主の死、その裏側にどんな真実があるのか。実際にはごく自然な病死であって他殺の証拠は一切ない。ただ、他殺でないと言い切れる証拠も存在しない。
    "誰かに殺された"という(偽の)真実を生み出して、それを"知られたらまずい誰か"を各々に想像させる。そしてこれから自分が行う殺人の罪をその"誰か"に負わせる。
    偶然の死と自分の犯行に繋がりがあるように印象付けて殺害動機を隠す。
    被害者に最も近い人物でありながら、冒頭の発言が被害者本人のもので

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    2022年06月20日