加賀山卓朗のレビュー一覧
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2019このミス海外篇6位。
物語はのっけからJFKが暗殺されるのと同時進行で動き出し、その関連性にワクワクしながら読み進める。組織からはぐれた中間管理職的なフランクと、酒飲みでだらしない夫から娘2人と犬(ラッキー)を連れて衝動的にオクラホマの田舎町から逃げ出したシャーロット。後半は2人でラスベガスまで移動するロードノベルとなる。フランクを追う冷血な殺し屋パローネが運転手として雇う黒人少年、ラスベガスでフランクが頼る大物エドなど、脇役達が魅力的。
ラストのフランクの選択はおもいがけないものであり、シャーロットへの愛が本物だったという証かな。
物足りないのはJFK事件との絡みがもう少しあっても良かったかなぁ、というのと、タイトルほどハードボイルド的ではないこと。3.8 -
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チャールズ・ディケンズの代表作であり、新潮文庫のStar Classics 名作新訳コレクションの1冊として発売されたばかりであり、セレクト。
ディケンズは『クリスマス・キャロル』と『オリバー・ツイスト』しか読んでいなかったのだが、両作にも共通するように、ストーリーテリングの巧みさが際立っている。特に本作『大いなる遺産』では、主人公の少年ピップが冒頭で巻き込まれる脱獄囚との恐怖に満ちた出会いが彼を奇想天外な運命へ導く下巻のドライブ感が素晴らしい。
点在する登場人物の関係性が最後には綺麗につながっていきながら、早く続きを読みたいという思いに駆られていく古典的名作。 -
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チャールズ・ディケンズの代表作であり、新潮文庫のStar Classics 名作新訳コレクションの1冊として発売されたばかりであり、セレクト。
ディケンズは『クリスマス・キャロル』と『オリバー・ツイスト』しか読んでいなかったのだが、両作にも共通するように、ストーリーテリングの巧みさが際立っている。特に本作『大いなる遺産』では、主人公の少年ピップが冒頭で巻き込まれる脱獄囚との恐怖に満ちた出会いが彼を奇想天外な運命へ導く下巻のドライブ感が素晴らしい。
点在する登場人物の関係性が最後には綺麗につながっていきながら、早く続きを読みたいという思いに駆られていく古典的名作。 -
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ミステリだけど、ちょっと変わった筋立てで展開も意外でおもしろかった。こういうのあんまり読んだことないかも!、と思いながら読んだ。
ケネディ大統領の暗殺に知らず加担していたマフィア幹部ギドリーが、知りすぎた自分は殺されると気づいて逃亡する途中に、新しい人生をはじめようと幼い娘たちを連れて家出したシャーロットに出会って、っていう話だけど、そこからふたりが恋に落ちて急にロマンスものみたいになるし、ラストで意外な人が意外な行動に出て驚いたし、結末も最初に予想したような感じにはならないし、すべてが意外。先が気になるし、テンポがよくて、なんだかあったいう間に読めた感じなんだけど、もっと細々長々読みたかったっていう気がする。ギドリーの育ちから生き別れた妹の話とか、シャーロットの思いとか、少年少女を家に住まわせているマフィアのエド、運転手のレオとかとか、登場人物ひとりひとりもっと深く書いててくれてもすごくおもしろそうだったのに、と。
エピローグがとてもよかった。(だけに、やっぱりもっともっとたくさん読みたかったな、と。)(しつこい) -
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1963年11月、ニューオーリンズ。暗黒街で生きる男ギドリーは、ケネディ大統領暗殺の報に嫌な予感を覚える。数日前に依頼された仕事はこの暗殺絡みに違いない。ならば次に死ぬのは自分だ、と。仇敵を頼って西へ向かう道中、夫から逃れてきた訳ありの母娘と出会ったギドリーは家族連れを装いともに旅するようになる。だが組織が放った殺し屋はすぐそこに迫っていた―。
「このミス」でベスト10入りだったことを知り、本棚から取り出して読んでみた。例年のことながら、今年読んだ新作は、いずれもランキングの下位、もしくは圏外ばかり。
この作品は、犯罪小説だが、ロードノベルでもあり、実に切ない展開を見せる。おすすめ。 -
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フランク・ギドリーはニュー・オリンズを牛耳るマフィアのボス、カルロス・マルチェロの組織の幹部。一九六三年、カルロス・マルチェロとくれば、ケネディ暗殺事件がからんでくる。ジェイムズ・エルロイの「アンダーワールドU.S.Aシリーズ」でお馴染みの名前だ。オズワルドではない真の狙撃手の逃走用の車、スカイブルーのキャデラック・エルドラドをダラスの現場近くまで運んだのがギドリーだった。
暗殺事件が起きるまで、ギドリーは何も知らされていなかった。関係者が次々と殺される中、ギドリーは自分も消されようとしていることに気づく。ダラスでエルドラドを始末したその足でバスに乗り、行方をくらます。車を手に入れ、ラスヴェガスの犯罪組織のボス、ビッグ・エド・ツィンゲルを頼って西に向かう。テキサス州グッドナイトでカルロスの息がかかった保安官に逮捕されるが、持ち前の機転を利かして辛くも難を逃れる。
同じ頃、オクラホマのシャーロットは<Don't think twice, it's all right>の歌に誘われるように子ども二人を連れて家を出ようとしていた。酒飲みの亭主との生活に疲れ、自分と二人の娘の新しい生活を夢見ていた。夫が飲みに出かけたすきに荷物をまとめ、ロサンジェルスの叔母を頼って車で出かける。途中で事故を起こして車を修理中、モーテルでフランクと出会う。ギドリーは、自分の情報がばら撒かれていると知り、シャーロットに近づき、家族連れを装うことに成功する。
カルロスに雇われ、フランクを追う殺し屋がポール・バローネ。ケネディ暗殺の秘密を知る者を次々と手にかけてゆくが、手に深手を負う。傷口を縫ったメキシコ人医者のせいで感染症に罹り、ハンドルが握れないバローネは街角で拾った黒人の少年に車を運転させる。高熱で気絶したバローネのために医者を呼ぶのもセオドアだ。非情の殺し屋とぶっきら棒な黒人少年の取り合わせが、いい味を出している。
逃げる者と追う者、巻き込まれる女、三者三様の思惑が縒りあわされるように一つの物語を構成している。クライム・ノヴェルとしては、二人の腹の探り合い、相手を如何に出し抜き先手を取るか、という暗闘が見せ場。直接対決は最後にあるが、意外な幕切れに終わる。それよりも、この手の小説には珍しく、恋愛に重点が置かれていることだ。女など何人も相手にしてきた暗黒街の男がオクラホマから出てきた主婦にここまで入れあげるとは。
鍵は二人の交わす会話にある。夫の前では自分を見失っていたシャーロットが、フランク相手だと実に生き生きと会話をこなす。フランクは外見より、この当意即妙の会話に引きつけられているふしがある。それに、ジョアンとローズマリー姉妹の存在が大きい。フランクには、少年時代、父親の暴力から生き延びるために、仲のよかった妹を見捨てて家を出た過去があった。フランクにとって二人は妹の替わりだ。彼は姉妹をグランド・キャニオンに連れてゆく。
いくら豪華な家に住み、金と女に不自由しない暮らしをしていても所詮は裏稼業。頭が切れ、人扱いに優れていても、ボスがマフィアでは禄でもない仕事を回される。しかもこの世界に裏切りはつきもので、一数先は闇。作中、ダンテの『神曲』と聖書の引用がやたらと出てくるが、これはフランクの日常が地獄めぐりであることの隠喩である。運命的に出会ったシャーロットこそはフランクのベアトリーチェなのだ。
シャーロットは、前夫の悔悛の電話や、叔母の迷惑そうな口調に心揺れるが、その都度前を向いて進む道をとる。彼女の視点でこの小説を読めば、狭い田舎で若くして身ごもり、世間の口を怖れて結婚生活に逃げ込んだ女が、自分のアイデンティティを取り戻すための戦いを記すストーリーなのだ。シャーロットにべた惚れのフランクは、エドが手配してくれたヴェトナム行きにシャーロットと娘たちを誘う。シャーロットの心は揺れる。
バローネという刺客が担当するパートが最もノワール色が濃い。人を殺すことなど何とも思っていない。手で触れたものが金になる王のように、この男の手にかかると人は死体に変わる。バローネに人間らしさを感じさせるのが、黒人の少年セオドアとのやり取り。その間だけ人間的に見える。もう一つ死神が人間らしさを感じさせるのが感染症による高熱との戦い。立っているのが不思議なくらいの状態でじりじりと相手を追い詰めていく、その凄み。
それぞれの世界で自分の生き方を貫こうとして必死に生きる三人の姿が鮮烈に目を射る。フランクは無事アメリカを脱出できるのか。バローネがその前にフランクを仕留めるのか。シャーロットは本当にフランクと生きるのか。最後の最後まで事態はもつれにもつれる。まるでメロドラマのような展開にハラハラドキドキさせられること請け合い。
原題は<November Road>。異なる世界に生きる男と女が、それぞれの理由で今いる世界から逃げ出す。その路上で偶然に邂逅し、行動をともにするうちに、まるで運命のように恋に落ちる。その恋の顛末を描く、ラブ・ストーリーであり、追う者と追われる者の相剋を描いたクライム・ノヴェルであり、歴としたロード・ノヴェルでもある。『11月に去りし者』という表題は、この小説には寂しすぎる。『十一月の道』ではいけなかったのだろうか。 -
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『裏切りのサーカス』『寒い国から帰ってきたスパイ』などの原作者ル・カレの回想録。みずからがMI5やMI6に所属していた事実をさらりと明かしながら、グレアム・グリーンや他のジャーナリストたちも同様にスパイ・エージェントであったこと、元スパイという肩書きからインテリジェンスにかかわる様々な依頼を受けてきたことなどが、淡々と綴られる。香港の海底トンネル完成を知らずに作品を書いてしまったという「失敗」から、必ず現地取材を重ねることにした、という挿話も興味深いものだった。
イギリス史上もっとも著名な二重スパイ、キム・フィルビーと彼の親友で、彼を追いつめたニコラス・エリオットのこと。ヤセル・アラファト、マーガレット・サッチャー、サハロフ、プリマコフらとのエピソード……。不思議なことだが、ル・カレが書くと、なんだかすべてスパイ小説の中の出来事のように見えてしまう。しかし、終盤の映画化権をめぐる交渉の顛末などは、まるでハリウッドのショー・ビジネスの世界の方が、スパイたちのそれよりはるかに複雑だと言っているようで、そこはかとないユーモアも感じられた。 -
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珍しく外国の小説を読んだ。ネットのお勧め小説だったかと思うが、期待を裏切らず面白い小説でした。
時代背景の違いや価値観の違いによる、洋書特有の違和感はあり感情移入は難しかったが、わかりやすいキャラクターやストーリーでその場の雰囲気が想像でき、オチには見事に騙されてしまいました。ミスリードに対する種明かしも納得のいくものでした。
また、エピローグで煙に巻くような後味の悪い終わり方をするので、それが苦手な方は注意してください。
あらすじとしては以下の通り。
主人公は編集者で仕事として、過去の犯罪を扱うノンフィクションの小説を渡される。そこには彼の妻とそっくりの、斬首刑となった犯罪者の写真が掲載されていた。
時を同じくして、彼の隣家で資産家の老人が亡くなるが、老人は毒殺された形跡がある。
使用された毒は、小説に出てきた妻と瓜二つの犯罪者が使用したものと同一であり…。