加賀山卓朗のレビュー一覧
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ネタバレカーの凡作と呼ぶ声もある作品。
題材はいいと思う。
周りの被害者への不自然なほどの低評価から疑問は始まり、被害者の殺害直前の謎の行動、被害者の謎の経歴と謎がそこかしこに散りばめられて、どうつながっていくのかワクワクして物語にひきつけられる。
ただ、都合良すぎでしょという部分もある。手際の良く、ヒューズをショートさせるための手袋とかボタンフックの用意などその一例である。
詰めが珍しく甘いな、と思う。
中盤で、被害者が変装して入った等々の真相を明かすのが早すぎた、という批判(?)もあるが、特に早すぎたとは思わなかった。フーダニットを志向していて執筆していたなら、妥当なタネ明かしの時期頃だろう。 -
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「時間があると言うときには足りないものだ。」
誰がリーマンを救うのか、から始まる後編。
後編でも、各会社の生き残りをかけた画策が見られる。そして、”株主のため”というスタンスを重視している姿は、やはり日本の起業人とは違う考えなのだと感じた。株式会社である以上は、他社を顧みずに自社利益を追求するのが第一に正しい考え方なのだとは思う。
リーマンショックを通して、金融は貪欲で危険なものだという認識がそれまで以上に広がった。その結果、お金からお金を生み出す行為は不潔で非人間的だという侮蔑が一般化している。そのような考え方は一理あるかもしれないが、人が成功してお金持ちになることを妬んではいけない。 -
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2008年 9月、150年以上の歴史を持つ投資銀行リーマン・ブラザーズが Chapter11 による破産を申請したとき、僕はたまたまイギリスを観光旅行中で、リーマンのイギリス支社が本拠を置くカナリー・ワーフ近くに泊まっていた。破産が発表された翌日、ダンボールを両手に抱えた多くの社員が、涙ながらにビルから出て散り散りに去って行ったのを覚えている。オフィスの近所で従業員のペットを預る商売をしていた親父も、連鎖倒産していた。
本書は、ベア・スターンズの破綻・救済から、時々刻々と変化する環境の中でリーマンが破綻に至るまでの各金融機関 CEO、財務省、ニューヨーク連銀、FRB のパニックと奮闘を描く。巻末の「主要登場人物」のリストだけでも 100名以上に及ぶ大著で、ファニーメイ、フレディマックの半国有化に続く、リーマン、AIG、メリルリンチ、モルンガン・スタンレーとどこまで続くのか判らない信用収縮と流動性低下のシーンは圧巻。苦悩する金融エリートの姿はある意味感動的でもあるが、どうも毎日のヘリ通勤とか、社用のガルフストリームで出張とか、株価下落で牧場を売らないといけなくなったとかいう話を聞くにつけ、現実感が薄くなる。 -
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ネタバレル・カレは二度読め。一度目は話(ストーリー)の筋を追うために。二度目は話を存分に楽しむために。ストーリーを展開してゆく上で提供される人名、地名、所属庁名等々の情報量が尋常でなく、一度読んだだけでは、それを追うのに必死で、なかなか物語を味わうところまで行かないからだ。ただ、作者も歳をとったせいか、小説の構成自体は以前と比べるとシンプルになってきている。時間の流れが前後するにしても小幅だし、視点の交代も限られている。素直に読んでゆけばサスペンスフルな展開を楽しむことができるように書かれている。もし、ル・カレを読むという特別な期待を持たないのなら。
スパイ小説の名手、ジョン・ル・カレも八十歳をすぎた。おまけに冷戦が消滅してからというもの、東西の対立という絶好の舞台設定が喪われ、エスピオナージュというジャンル自体が成立し難い状況になっている。代表作であるスマイリー三部作のほかにも傑作が目白押しの大家が、そのような状況下、いまだ現役で活躍していることだけでもすごい話ではないか。しかも、書く題材はいくらでもあるといきまいているというからなおさらだ。今回の舞台はスマイリー物の舞台にもなった国際的な港町ハンブルク。チェチェン出身のムスリム青年を取り巻く9.11以後の世界を描いた意欲作である。
冒頭に印象的な人物が登場して今後の展開を期待させる仕掛けはル・カレのよく用いる手。今回もボクシング、ヘビー級チャンピオンで大男のトルコ人青年メリクがイントロの役割を引き受けている。ある日、物乞い同然の身なりの若者が泊めてくれとメリクの家の戸口に立つ。メリクは拒否するが母親のレイラは家に入れてやる。青年の名はイッサ。身体には拷問の痕があり、言葉はロシア語だ。
スコットランド出身の銀行家トミー・ブルーは、少年聖歌隊の声をもつ若い女性弁護士アナベルから電話を受ける。依頼人がブルーの助けを求めているという。電話の主が口にした「リピッツァナー」という言葉には覚えがあった。父が晩年、何の思惑があってか引き受けた秘密口座の名前だ。生まれた時は真っ黒だが、成長すると白くなるという特質を持つ馬を指すことから、マネー・ロンダリングを仄めかしている。ソヴィエト崩壊時、カルポフという赤軍大佐が汚い金の隠し場所にブルー・フレール銀行を選んだ。イッサはカルポフがチェチェン人の少女を強姦して産ませた子だった。無垢な息子が実の父の悪事に悩み傷つくというのは、ル・カレ自身の経歴に基づく因縁のモチーフだが、今回はイッサとトミー二人ともが、父の犯した罪がもたらす財産を放棄するために力の限りをつくす。
ドイツ連邦憲法擁護庁外資買収課課長ギュンター・バッハマンは、各国から逃亡犯として指名手配されているイッサを利用して、権力争いの覇権を握ろうと画策する。テロ組織に協力している疑惑のあるイスラム学者アブドゥラを協力者に引き込むため、父の残した汚れた金をアブドゥラが行っている人道的な事業に提供するよう、アナベルを通じてイッサに働きかける。
「テロとの闘い」という言葉は、9.11以後世界中を席巻している。特にアメリカはイスラムを敵視し、過剰なまでに報復を果たそうとした。強硬的な英米とは異なり、敗戦国でもあり、ユダヤ人問題もあってドイツは微妙な立場にある。おまけにネット情報が独り歩きをし、以前のようにエージェントを使ったスパイ活動が難しくなっている。昔気質のスパイであるバッハマンのような男にはやりづらい時代なのだ。相手の情報をつかむには、疑惑のある人物を逮捕せず、泳がせながら協力者に引き込むのが有効なのだが、CIAの圧力がかかって、思うようにならない。
イッサをめぐる、アナベル、トミー、バッハマンの三人の立場から、スパイ活動に巻き込まれてゆく良心的な人物の葛藤を描いている。ベジタリアンでミネラル・ウォーターしか飲まない若い女性アナベル。六十歳の誕生日を迎えたばかりの銀行家トミー。現場主義のスパイ、バッハマン。三者三様の心理戦が視点の交代によって手にとるように読者に迫る。そのあたりの手際は熟練のル・カレ。さすがに読ませる。個人的には、還暦を過ぎたブルーが、娘と同じ年頃の女性に寄せる思いや、夫がありながら他の男との交際を続ける妻に対する思いに感慨を持つが、読者によって感情移入できる人物が異なることを計算に入れた複数の視点人物の導入は成功しているのではないか。
結末は、ル・カレならでは。この味がたまらないという向きには満足のいく仕上がりになっている。 -
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ネタバレ薦められて読んでみた。そうでなければ手に取ることはなかっただろう。
主軸となるリアリティのある洞窟探検に、アフガニスタンで細菌への対応に追われる女性医師と背後にある陰謀が絡む冒険小説。著者が登山家、洞窟探検家、熟練のダイバーというだけあって、探検シーンは迫力がある。
裏切りあり、修羅場での恋愛あり、1対1の格闘あり、最後のどんでん返しありと色々な要素がてんこ盛りで、非常に楽しめた。ただ、ボウマンが復活するのは、ハリーも同じ状況で帰還できていることで違和感は薄まるが、それでもご都合主義だなと思った。
製薬会社が自社の製品を大量に売るために、意図的に細菌の感染拡大を図ったという筋立ては、現実に有りそうで嫌だ。 -
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あらゆる薬剤に耐性のある新型ウィルスとの戦いがテーマのスリラー。
以前に、ワシントンDCに致死率90%のエボラ・ウィルスが直接持ち込まれてしまった事件を描くドキュメンタリーがありましたが、そういう事故は終わったわけではないんですね。イラク戦争時に負傷兵が病院で感染症にかかったりといった実際の事件を題材にしています。
恐ろしいのはウィルスだけではありません。抗生物質を抽出するために必要な好極限性微生物を採取するために行く先は、メキシコ南部の紛争地帯にある洞窟!現代の洞窟探検は水没部分をダイビングで超え、垂直の壁をクライミングで超え、二酸化炭素や硫化水素で充満したポケットを超え、水流を超え・・とさまざまなスキルを組み合わて突破していくのです。ライトが消えれば真の暗闇。深くなればなるほど精神にも影響がでてくるなど、リアルな描写は登山家であり洞窟探検家でありダイバーでもある著者にして初めて描かれる迫力!
出張先で読むものがなくなり偶然手に取ったのですが、ご都合主義的シーンもなんのその夢中になって読んでしまいました。
ダイビングもできて、その感覚をうまく描写できる人ってなかなかいないんだよなぁ。本書がフィクションとしてはデビューだそうなので今後が楽しみ。 -
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12年ぶり!に読んだ。
感動した感覚は覚えていたけど何が起こったのか覚えてなかった。まったく新鮮に再読した。
おもしろかった。
モルティーザーズ探したけどプラザにもジュピターにも売ってなかった。韓国スーパーに行ってみる。12年前にはなかったよね。韓国スーパー。
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2012/06/14
『死者にかかってきた電話』、『真冬に来たスパイ』、『スピアフィッシュの機密』に続いて読んだ。前3作はどうしても「おっさん目線」が鼻につき、「あー、そうですか。はいはい。」といった感じだった。
この『ヒューマンファクター』は"male gaze"はそれほど気にならなかった。
切ない話。
もっとグレアムグリーン読んでみようと思う。 -
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主人公カッスルの心情を表わす箇所を一部抜粋。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「信じてないのか?」 「もちろん信じているわ。でも・・・」 階段の上まで”でも”が追いかけてきた。カッスルは長いこと”でも”と生きてきた(中略) いつか人生が子供の頃のように単純になる日がくるだろうか。”でも”と縁を切り、誰からも信頼される日が。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・主人公がイギリス外務省の二重スパイであるという小説でありながら、ハラハラする場面は殆どなく、ずっと静かな"哀しみ”がまとわりついて離れないという感じだった。 物語の全体に人間の悲哀と孤独が流れているように思えた。読み終えたとき、静かで物悲しい気持ちを抱えつつも充足感のつまった長い長いト息を吐きだしていた。
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月に1回参加している読書会の課題図書
〈イギリスの文豪チャールズ・ディケンズの長編小説。1860年から1861年にかけてディケンズ自らが編集を行った週刊雑誌『All the Year Round』の誌上において発表された。ディケンズの代表作である。〉
たくさんの訳があり、映画化も度々されている有名な小説
子供の時読んだ『クリスマスキャロル』以来のディケンズだった
ちょっと退屈しながら読み始めたが、流石にプロットは面白く ワクワクドキドキ
人物相関は見事だ
読書会では
「難しいことは考えずエンタメ小説として楽しめばいいのでは」
「何度も読み返せば一層の味わい『スルメ本』だ」
とか……
≪ おおいなる遺産は 失くし 響くもの ≫