あらすじ
2021年アンソニー賞、マカヴィティ賞、バリー賞、3冠!
「クライム文学の新星」デニス・ルヘイン
裏社会の元凄腕ドライバーが
家族のために引き受けた最後の仕事――
米国南部の町で自動車修理工場を営むボーレガード。
裏社会で語り継がれる伝説のドライバーだった彼は、足を洗い家族とまっとうに暮らしていた。
だが工場の経営が傾きだしたことで運命の歯車は再び狂い始める。
金策に奔走するボーレガードに昔の仲間が持ちかけてきたのは宝石店強盗の運転役。
それは家族を守るための最後の仕事になるはずだった。
ギャングの抗争に巻き込まれるまでは――。
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Posted by ブクログ
これは面白かった。
S・A・コスビーはどの作品も面白く、作品を重ねる毎に描かれている物語的にも描いている社会背景的にも作品的にも深度が深まってる印象がある。
だが、個人的には一番好みのタイプなのが本作。
かつて裏稼業で生活していた男が、愛する者と出会い足を洗う。だが、表の世界での生活が苦しくなり、再び裏稼業に手を出す。簡単だと思っていた仕事が、実はギャングの金で……というどこかで観たことあるようなシンプルな物語ではある。
だが、これがS・A・コスビーが描くと見事なクライムノベルに仕上がっている。
これは映画化したら絶対最高だろう、というシーンがいくつもある。
クライマックス、ダスターという愛車の登場シーンからカーチェイスシーンまで絶対映画だったら見せ場になるシーンで、文章でありながらもそのイメージでかなり痺れた。
当然ながら映画化の話もきているらしい。
映画が今から待ち遠しい。
Posted by ブクログ
あなたにとって大切な守りたいものは何だ!
自動車修理工場を営むボーレガードにとってそれは家族、友、仕事、工場、父から引き継いだ愛車ダスターだ
彼は大切なものを守るために過去に足を洗った犯罪に再び手を染めてしまう
大切なものを守るための最後の犯罪になるはずだった…
しかし、そこで歯車が狂い出す!
彼の大切なもの…
守ることができたもの…
守ることができなかったもの…
本作の魅了のひとつは登場人物
特に主人公のボーレガードはカッコイイ!
彼を取り巻く妻のキアやいとこで友のケルヴィンも魅力的だ
もうひとはアメ車
ビュイック、カマロ、ノヴァ、キャデラック…
しびれるアメ車が次々に登場
そして、何と言ってもボーレガードの愛車ダスター
これらアメ車のカーアクションは必見だ!
Posted by ブクログ
初のSAコスビー。
二月に2作目が発売されるため、まずは去年出た今作を。
ヤバい仕事から手を洗った男が、止むに止まれず再び手を染める。そこから転がり落ちていき、大切な家族にまで危機が。
アメリカンノワールのお手本のような作品。シンプルなストーリーだけどここまで読ませるのは、主人公のバグや敵のキャラがものすごく立っているからだと思う。かっこいい台詞回しも多い。
カーチェイスのシーンが本当に良くて、映像が目に浮かぶ。正直昔のアメ車は全部同じに見えるけど、ダスターのかっこよさはわかった笑
2作目も楽しみ。
Posted by ブクログ
裏家業の運び屋から足を洗って、真面目に自動車整備工場を営んでいる主人公ボーレカード(バグ)。しかし、同じ町に大きな同業者の工場ができ、経営難に陥り、裏家業にもう一度足を突っ込まざるを得なくなる。
貧困と犯罪、家族のしがらみ。抜け出せない過去、黒人と白人それぞれの格差社会と交錯する差別…。前世紀から続くアメリカのやるせない社会問題を背景に、ぶっとびカーチェイスシーンを織り交ぜて描くアクションノアール小説。
スピード感といぶし銀的渋さの両立。古い器に新しい酒を入れる手法の模範例ともいえる傑作。
日本もここまで貧困化し、都市圏と圏外の生活や文化がかけなはれている現状、よそ事と笑えない小説だと思う。貧しさは心の余裕をなくし、犯罪や差別や社会不安を育み、結果的に社会だけでなく個人をむしばむんだと思う。
Posted by ブクログ
設定はありきたりな感じだが、読み始めると初っ端から疾走感と緊迫感にグイグイ引っ張られる。ハードボイルドチックな気の利いた会話や時には詩的な感じさえする比喩表現も愉しい。
Posted by ブクログ
ホンモノのノワールがやって来た。古いフレンチ・ノワールの世界が、現代に帰ってきた。そういう小説の時間をもたらしてくれる作品である。
70年代のアメリカン・ニューシネマのフィルムの傷を想定しながら読む。暗闇に潜んで見上げていた傷だらけのスクリーン。暗くくすんだカラー。映画館内に漂う煙草のにおい。小便臭いコンクリート打ちっぱなしの廊下の匂い。しかしスクリーンの向こうには、野望を持つ男と女のしゅっとした切れの良さがある。銃口と硝煙。カーブの向こうを見据えるドライバーの冷徹な眼差し。
それらは大抵。美しい犯罪ストーリーだった。生と死、疑わしい愛、安全さに欠ける大金、それらがやり取りされていた。魅せられるが、脆過ぎる。ぎりぎりの展開。破滅か生存かを賭けて、犯罪、裏切り、脱出や生存の可否を、いつも秤にかけていた。
本書は、南部の田舎町のトレーラーハウスに生活する黒人の一家の物語である。ビターの効いたホームドラマと言って言えないこともない。主人公ボーレガードは自動車修理工場を営むが、競争相手の出現で破産を目の前にしている。目の前には、過去からやって来た犯罪という餌がぶら下がり、彼は家族のため、敢えて餌に喰らいつく。危険だが、それしかもう道はない。追いつめられた状況劇。
うまい話には裏がある。裏切りに満ちた犯罪者たちの個性ある顔ぶれ。ボーレガードの運転技術が凄まじい。自動車を知り尽くしているゆえ、犯罪に用いる車に関しては整備も運転も100%引き受ける。路上のアクションを主体にした小説作品はそう多くないだろう。ギャビン・ライアル以来、あまりお目にかかっていないかもしれない。
一人一人の書き分けも素晴らしい。癖のある男と女。ボーレガードの家族と彼らの長年の仕事仲間。こちら側の人間たち。愛と友情。一方では悪玉が列をなす。こわもての狂犬たち。裏切り者たち。ひとつの犯罪仕事をきかっけに、次々と組織間の衝突が巻き起こり連鎖する。一人一人、順番にこの世とおさらばをしてゆく。いとも簡単に。静と動を絡み合わせたクライム小説。銃と、暴力と、カーチェイス。
こう書いてみると単純に見えるかもしれないが、前半部は少し長めの導火線であり、静である。だが爆発物に近づいているのはわかる仕掛けだ。とりわけボーレガードと家族たちは追い込まれてゆく。かつて失踪し、この世から消滅してしまった父の物語。いなくなった父から引き継いだ愛車ダスターへのこだわりが、夫婦間の平和を切り裂く。子供たちを切り裂く。実はこの前半によって後半の物語にも厚みが出る。
家族。消えた父。育ちゆく息子たち。彼らに迫る危険な奴ら。家族を生き延びさせるために、ボーレガードが何をしなくていけないのか。
大一番の賭けに出る男たちの、知略の勝負を描いて圧倒するクライムの傑作が登場した。この作家の今後が楽しみだ。そのくらい活きのいい一冊である。
Posted by ブクログ
家族のために最後の仕事,犯罪へと向かうボーレガード。家族のため、守るためだったはずのことがどんどん追い込まれていく。犯罪計画と信用できない仲間たち。夫として父親としての想いと妻の気持ちとのずれ。その間で揺れながらそれでも計画に飛び込んでいくこと。乾いた空気がある犯罪小説であり、良くも悪くも家族を強く想っている家族小説でもあってとても読み応えのある作品。
Posted by ブクログ
ここ数年で読んだ翻訳ミステリーとしては一番の収穫。何よりも主人公ボーレガードのセリフ、行動、そして愛車(ダスター)すべてがカッコいい。話の展開もダスター同様スピーディーだし、迫力もある。
脇役たち、中でも父親代わりの叔父ブーニーの人柄と言葉にしびれます。細部まで行き届いた筆致、素晴らしい。
Posted by ブクログ
定義というよりもイメージしているクライム・ノベルというのがあって。これが完全にイメージ通り、読みたい、完全にクライム・ノベルな一冊。
引退して自動車修理工場を営む元凄腕のゲッタウェイ・ドライバー、ライバル店の出現で生活がピンチに陥ったところに過去に仕事でトラブった相手からデカい“仕事”の誘いが。これが最後とその“仕事”を受けることにするが…
こんな話は何年か前の深夜にDVDで観たことがある、そんな気もしてくる“良くある話”だ。だけど、そんな“良くある話”とドラマ、そのなかに書き込まれるディティール、生活や文化や街並み、様々な引用や知識、哲学が読みたいのだ。
“良くある話”にスムーズに乗って、ディティールに惹きつけられ、そこにドラマが加わりグルーヴが生まれる。そのなかで主人公はじめ登場人物たちが解決しようとするのは、起こした、起こってしまった事件ではなく、人生そのもので。それは銃撃戦が終わっても、最後の頁を捲っても、あるいは希望が書かれたとしても、決定的に解決することが出来ない物語。解決することのない人生、人生の解決の出来なさを書くのがクライム・ノベル、というような気もしてくる。
久しぶりに読んでも最高だった。最高にクライム・ノベルだった。S・A・コスビーはこの一冊で大好きな作家になって、2,3作目もとても良かったけれど、いちばん好きなのはこの1作目。”良くある話“と書き込まれるディティール、解決しない物語。クライム・ノベル。
Posted by ブクログ
ボーレガードは車の修理工場の経営者であり、凄腕の運転技術を持つドライバーでもある。
生活は厳しい。
同業者に客は奪われ、子どもたちはお金がかかる年頃だ。
このままでは取引先への支払いもできず、破産に追い込まれそうな状況で、一攫千金の仕事が舞い込む。
ストーリーはシンプル。
だが、読ませる。理由は登場人物たちが、欲望に満ちた、正直な人間の姿として描かれているからだろう。
ボーレガードは父親の残像に縛られ、社会的にも真っ当な能力があるにも関わらず、犯罪に手を染める。
なぜなら「金」が必要だからだ。
このままでは修理工場は倒産し、子どもたちに良い教育を受けさせてやれない。
では、どうして犯罪なのか?
これがボーレガードの性(さが)として描かれる。
ボーレガードだけでなく、ロニーや他の登場人物たちも「金」に人生を狂わされていく。
本当は貧乏から脱したかっただけなのに。
幸せを誰よりも欲するが、その手の入れ方を誤った男たちの寂しい物語でもある。
Posted by ブクログ
久々に骨太なハードボイルを堪能。
メインストーリーはありがちな設定だが、主人公のキャラが深く描きこまれていて、生い立ちからくる父親へのトラウマ(ここが少し冗長)、その反面としての現家族への強い想いをベースに、男同士の友情、裏切りがフィルムノワールのように濃厚に描かれている。
バイオレンスシーンもあって、どこかエルモア・レナードやデニス・ルヘインを思わせるような切なさも漂う。
歯切れのよい文章が実にうまく、暗いトーンの比喩や暗喩も見事でラストまでじっくりと楽しめる。
Posted by ブクログ
裏社会から足を洗って家族を守るよき父親であろうとする元走り屋が主人公。
カーチェイスシーンを文章だけでこんなに魅力的に描ききるのは凄い。手に汗握り引き込まれた。
Posted by ブクログ
主人公は、犯罪に絡む逃走を請け負う元プロフェッショナル・ドライバーで、今は堅気の自動車修理工場の経営者だ。経営は苦しく、昔の仲間から持ち込まれた宝石店強盗の仕事に絡めとられていく。強盗に入った宝石店が組織暴力と関連があったことから、主人公は泥沼のような悪と暴力にはまっていく。
主人公の父親から続く暴力性が立ち切れず、彼の子供まで悪の素養に魅入られたように染まる。一見、暴力の世界から縁が切れたように見えたが、暴力の血は濃く、きっかけさえあれば見る間に増殖していく。
主人公の苦悩や暴力のリアリティが群を抜き、物語に引き込まれる。主人公が運転する車のように、スピード感をもったまま終盤を迎えるが、決してハッピーエンドではない。
人の中にある暴力性を考えさせられる秀作だと思う
Posted by ブクログ
先日読んだ『頬に哀しみを刻め』があまりに良かったので、その興奮が冷めないうちに前作の『黒き荒野の果て』に手を出した。期待通り、とても良かった。
作品の根底に流れるものは『頬に哀しみを刻め』と変わらない。主人公バグことボーレガード・モンタージュは、『頬に〜』の主人公アイクと同じく過去に犯罪を犯した黒人男性で、裏社会の「走り屋」のようなことをしていた。現在は中古車修理工場を営み、問題を抱えつつも、家族を愛している。しかし、抱えていた問題が徐々に大きくなり、大金が必要となったボーレガードは、かつての裏社会の仕事に復帰する。仕事を持ちかけてきた相手が信用のおけない男だとわかっていても、選択の余地はなかったのだ。そして、事態は思わぬ展開を見せ、ボーレガードは窮地に立たされていく。
ボーレガードは、自分が決して正しい人間ではないことを認識している。怒りに我を忘れてしまうことに苦しみつつ、裏社会の水が自分には合っているという事実から目を背けようとしている。彼と友だちになりたいとは思わないが、彼の抱える苦しみは読む者に強く訴えてくるものがある。
本書の白眉は、何といっても走り屋であるボーレガードのカーチェイスのシーンだろう。私はこれまで、これほどまでに鮮烈かつスピード感のあるカーチェイスを本で読んだ経験がない。ぜひ本書を手にして、疾走感満載のシーンが脳内で再生されていく驚きを味わってもらいたい。
Posted by ブクログ
まるで映画ワイルドスピードを観ているような犯罪カーチェイスエンターテイメント。
古き良きアメリカ1970年代マッスルカーが出てきて、やはりこの時代の車はかっこいい。
ダスター、シェベル乗りたい。
Posted by ブクログ
「V8!V8!」
『マッドマックス怒りのデスロード』をご存知でしょうか。映画内では車のエンジンが神格化しており、それを崇めるボーイズ達が叫んでるのですが本書を読んでいて中盤からずっとこの声が頭に響いておりました。
読書に集中したい時は大抵クラシックかオペラを垂れ流しているのですが(音があった方が集中出来るようです)今回ばかりはこれはあかん!とワイルドスピードのサントラを流してました。
お世話になっている1Q8401さんに『頬に哀しみを刻め』を読んだならこっちもかっこいいおじ様が出るよと教えて頂き、かっこいいおじ様は見ているだけで眼福なので拝読。
タイトルと表紙から黒人さんの悲哀がまた書かれているのかと思いきやもっと重たいテーマが隠されていました。
主人公のイケてるおじ様ボーレガードは自動車修理工場を営む黒人さん。
妻のキアと2人の子供と暮らしており、もう1人前妻との娘もいます。
ところがライバル会社にほぼ仕事を持って行かれ経営難。家庭は支えないといけないし母親は施設に入っているのでお金を工面しないといけないし、娘の学費は出したいし…読んでいてこっちも胃がきゅっとなりましたが、大金をすぐに稼ぐ方法と言ったら違法な事か宝くじで当てるか臓器を売るしか無いので(ひきずるテスカトリポカ)元は裏社会の伝説のドライバーだったボーレガードは、昔の仕事仲間ロニーに持ちかけられた宝石強盗の仕事に手を出す事になるのです。
もうこの設定が痺れる!伝説のドライバーとか伝説の殺し屋とかロマンの塊ですね。
そもそもはボーレガードの父親のアンソニーが中々の悪で、嫁とボーレガードを置き去りに逃げたか亡くなったか、帰らぬ人となっています。それを見ているボーレガードは自分は同じ轍は踏まないと必死に頑張っているのですが、父親を愛している事実と家庭を守りたい気持ちがせめぎ合って苦しむ事に。
ですが、いくらお金に困っても父親の形見のダスターを売らなかったり勤め人にならずに自営業に拘ったり、中々父親の呪縛から解かれないボーレガード。
嫁からしたらお前、ええ加減にせえよ!状態ですが、ここがまたかっこいいんですよね。ダスターは売ったらいかん!
昔の血が騒ぎハンドルを握って「飛ぶときだ」と呟くボーレガードに車なのに飛ぶって表現するんだ、と痺れておりましたら本当に飛んでしまった。
こちらもアドレナリン大放出でしたが、文章でアメリカ産のカーチェイスを読むのがこんなに楽しいとは!!私も飛んでみたい!藤原とうふ店のように溝落としとかしてみたい!(実際はチキンなので超絶安全運転な私)
しかしこの仕事が後々に家族を巻き込む大変な事件へと発展していまいます。
前も思いましたが内容がスッキリと分かりやすく、翻訳本に慣れていない方でもあっという間に読み終えてしまえると思います。相変わらず『クソ車』という表現には笑ってしまいますが、その『クソ車』がこんなにかっこよく走ってしまったらもう、「V6!V6!」と心の中で叫んでしまうわけです。(ボーレガードが積んでいるのはV6エンジンなのです)
初っ端のドッグレース以降、中盤までは丁寧にボーレガードおじ様の家族の事などを書いてくれているので一旦熱狂はお預けなのですが、仕事に着手する中盤からその後の後始末にかけてタイヤがアスファルトに擦れる匂いがしてきそうな勢いでテンションが上がります。
その裏では悲しい事件もいくつか起こってしまいますが、果たしてボーレガードは家族を守る一般人に戻れるのか、それともアンソニーの影を追ってしまうのか…。
ハリウッド映画みたいな本をお探しなら、こちらと同作者の次の作品『頬に哀しみを刻め』セットでお勧めです。
前のバイト先の店長がマツダセブンに乗っていたので乗せて貰えば良かったと心から後悔している私が1番好きな車はプジョーです。(完全にTAXiの影響)
Posted by ブクログ
古き良きアメリカ映画のような一冊でした
はい、宝島社が毎年発表しているこのミステリーがすごい!ランキング2024の海外編1位に『頬に哀しみを刻め』が選ばれましたね
ということで、S・A・コスビーの『黒き荒野の果て』を読んでみました
『頬に哀しみを刻め』のほうは既読です
めちゃくちゃ面白かったんですが、「このミス」1位はアンソニー・ホロヴィッツの『ナイフをひねれば』と予想してたんですよね
なんとなく「このミス」って王道というか正道のミステリーが1位になるイメージがあって、それに対抗するわけではないのかもしれませんが、他のミステリーランキングがちょっと変化球で攻めてくることが多いみたいな
『頬に哀しみを刻め』はだいぶ変化球な気がしたんでね
そしてもう一つ今回のこのミスで触れておきたいのは本作の訳者でもある加賀山卓郎さんね
なんと3位にランクインした『処刑台広場の女』も加賀山卓郎さん訳なのよ
ひとりで2冊ランクインですよ、すげー
そして加賀山卓郎さんにも変化球のイメージがあるんよね
はい『黒き荒野の果て』に戻りますね
こちらは逆にめちゃくちゃ王道!王道のクライムノベルでした
そしてほんと映画みたい、構成が
もちろん読みどころは激しいカーアクションなんですが、ちゃんと最初に軽いのがきて、真ん中で激しく魅せて、最後に締めるというめちゃくちゃオーソドックスな配置
でも王道好きとしては、それが良いのよね〜
よし!『処刑台広場の女』も読むぞ!
Posted by ブクログ
裏社会から足を洗って2年、自動車整備工場を経営するボーレガード。
近所に出来た別の店との価格競争に勝てず、仕事が急激に減り、資金は底を付く間近。
右に出る者のいない走り屋としての己の腕を頼りに、なけなしの財産をはたいて賭けレースに出向くも、警察の取り締まりに合い財産没収。
ペテンであることを見抜くが、時すでに遅し。
全額を取り戻すことはできず、取り戻せたのは誇りばかり。
整備工場の家賃ばかりか子ども達の生活に関わる出費、さらには保険の手違いにより母親を預ける施設の代金が大きく請求されることに。
こののっぴきらない状況の中で取りうる策は、そう、裏社会への復帰。
そこにタイムリーに舞い込む、宝石店からのダイヤモンド強奪計画の誘い。
話を持ち込んできた因縁の相手ロニーの無計画性や胡散臭さ、ロニーの仕事仲間クアンのはりぼての威勢の良さに辟易としながらも背に腹は変えられないと、ボーレガードは計画に手を染めていく。
が、そこで狙った金品のせいで思いもよらぬギャングの抗争に巻き込まれていく。
デイヴィット・ゴードンの『用心棒』とかジョーダン・ハーパー『拳銃使いの娘』を彷彿とさせる、怒らせちゃいけない人を怒らせちゃった系の物語。
思っていたよりアクション寄り。
ボーレガードの抜け目なさや、走り屋としての腕の良さ、車を愛する気持ちがとても魅力的ではあるけれど、やっぱりこういうのは映像向きかなぁと。
それと、ボーレガード自身も「呪い」とまで評するように、無情なまでに暴力で解決していく展開がちょっと辛いところあり。
そんな綺麗ごと言ってられないのはわかるし、そういう展開が逆に感情の昂りを与えてくれる面もあるのだけれど。
邦訳2作目の『頬に哀しみを刻め』は本作とは全く関係ないらしいけど、本作シリーズ化する気はないのかな。
失踪した父との清算やら、運命的な巡り合わせとなってしまった母子との関係やら、なんか宙ぶらりんな点も数々。
いろんな起点から続編書けそうなんだよな。
未訳の次作「All the Sinners Bleed」もなんか違う話っぽいし、謎。
Posted by ブクログ
昔、アングラな走り屋だった男が自動車修理工場に務めるが、ギャングとの抗争に巻き込まれる話
多分やけど、ブレイキング・バッドにかなり影響受けてそう。実際名前も出てくるし。
Posted by ブクログ
家族を守るために出来ることは何ですか? 米国南部の街で生き抜くクライムミステリー #黒き荒野の果て
■人生のつらい現実
環境が人生を決める。こういうつらい現実を実感するのは私が20代後半に差し掛かった頃だったでしょうか。
若い時代は夢と希望があれば、どんなに貧乏でも幸せなものでした。
しかし気が付くといつの間にか大人のしがらみの中で生活をしなければならず、毎月の支払いのために自分のやりたかったことがができてないと気がつく。守るものができた時、生き抜くためにどんな厳しい運命が待っているのか。
■家族を守るために
本書は自動車整備工場を営む主人公が、アメリカ南部の決して裕福ではない街で生き抜く物語。
彼はなんとか生活をやり繰りするも、愛すべき家族と友人に囲まれて暮らしていた。彼の強みは自動車の運転技術と腕っぷし、そして頭の良さ。賭けレースで日銭を稼ぎ、力と頭脳で冷酷な環境を日々を乗り越えていく。
しかしある日、自宅に招かれざる客が訪ねてくる。
かつての後ろ暗い仕事仲間で、ろくな結果が期待できない儲け話を持ってきたのだ。主人公は大切な人を守るために、嫌々ながらも仕事を受けなければならなかった。
ストーリーとしてはかなりシンプルで超骨太。主人公はお金のために様々なものを犠牲にしながら、図らずも裏社会で暗躍していく、いわゆるノワール、クライムミステリーです。
家族、友人、自分の工場は、何より大切で守らなければならない。暴力と比較して描写される彼の純真な想いがあまりに痛烈で、読者の胸が抉られていきます。
そして彼のことを大好きな登場人物たち。妻、可愛い子供たち、友人、おじさん。主人公の良いところも悪いところも、悩みも考えも全部知っている。
彼の対する深い愛情が描写され、それでも悪事に手を染めなければならない主人公への同情と葛藤シーンが読んでいてあまりに辛い。
そして罪深いのは愛車ダスター。いってしまえば単なる一台の自動車です。
主人公とダスターは、愛情としがらみにまみれながら作中いつも一緒に行動する。しかし主人公が最後にどういうことを悟り、結論をだしていくのか。本書一番の読みどころでした。
■幸せとは何か
東京大学に合格する親の世帯年収は、6割以上が年収950万円以上だそうです。
親の年収が低いと子供は不幸なんでしょうか。データとしてはその確率は高いといえるのでしょう。環境によってある程度、幸せの度合いを決められてしまうのは事実です。
しかし本書の主人公は、最低の環境でも妻や子供たちを精一杯しあわせにするために行動している。生きるためにお金を稼いだり、教育や経済の正当性、黒人としての生き方を教えたり、そしてなによりいつも一緒にいてあげる。
データも環境もお金も確かに大切ではあるのですが、ここまで自身を犠牲にして家族に愛情を注げるのは、どれだけ素敵なことでしょうか。
生きていく中で一番大切なことは何かを教えてもらえた、素晴らしい一冊でした。
Posted by ブクログ
米国南部の町で自動車修理工場を営むボーレガード。裏社会で語り継がれる伝説のドライバーだった彼は、足を洗い家族とまっとうに暮らしていた。
だが工場の経営が傾きだしたことで運命の歯車は再び狂い始める。
金策に奔走するボーレガードに昔の仲間が持ちかけてきたのは宝石店強盗の運転役。それは家族を守るための最後の仕事になるはずだった。ギャングの抗争に巻き込まれるまでは――。
ありがちなシチュエーションだが、カーチェイスの描写で読ませます。
Posted by ブクログ
悪事に身を浸した父は母と息子を残して去って行った。
父に憧憬を持ち続ける黒人の主人公。差別の残るアメリカ南部で車の修理工場を経営するが、会社の金、施設にいる母のための金、子供たちのための金のために足を洗った裏稼業に手を出す。誘われた相手が最悪でドンドン泥沼の中に沈んでいく。
ストーリーの展開は俊逸なクライム小説。
キャラクターが想像を超えないので星一つ減。
Posted by ブクログ
わかりやすい登場人物の描写。カーアクションの描き方は圧巻である。実際に事が進む中盤以降、物語はテンポ良く進んでいく。あれだけ巨額の強奪事件で人も多数死んだのに警察がほとんど絡んでこないって、あり?
Posted by ブクログ
S・A・コスビー『黒き荒野の果て』ハーパーBOOKS。
アメリカのノワール小説。
必死に家庭と家族の生活を守ろうとするかつてのアウトローが陥った窮地。終盤は慌ただしく風呂敷を畳んだ感じで、中盤までのなかなか面白いノワールも霞んでしまった。主人公を徹底的に過去から甦ったアウトローとして描いてくれれば面白さは増したろうに。
かつて裏社会の伝説のドライバーだったボーレガード・モンタージュは家族のために危険な犯罪から足を洗い、アメリカ南部の町で自動車修理工場を経営していた。しかし、近くに新たな自動車修理工場が出来ると経営は傾き、様々な支払にも困窮するようになった。
金策に奔走するボーレガードにかつての犯罪仲間が宝石店強盗のドライバーの仕事を持ち掛けて来た。一発逆転を狙ったボーレガードの最後の大仕事だったが、盗んだのがギャングの資金源のダイヤモンドだったことから窮地に陥る。
定価1,210円
★★★★
Posted by ブクログ
頬に悲しみ…が良かったので読んだ、頬に悲しみ…の方が想像しやすく入り込みやすかった
カーアクションがイメージできなかったので、好きな人はもっと楽しめるんだろうな
読んだ時の状況とか、集中力にも寄る
先にこっち読んでたらもっと面白かったかも
Posted by ブクログ
・あらすじ
アメリカのサウスカロライナ州、レッドヒル群が舞台。
ボーレガードは、裏社会で伝説的な走り屋だった。
家族ができた事をきっかけに裏社会からは足を洗い自動車修理工場を経営していたが、資金難によりその工場の経営が傾き出していた。
家族のため、従業員のため、生活のためにボーレカードは昔の仲間から持ちかけられた宝石店への強盗計画に乗ることにした。
そしてそこからボーレガードはギャングの抗争に巻き込まれてしまう。
・感想
コスビー作品の暴力描写が相変わらずすごい!すごく痛そう!!
私がとても思い付かない事やってのける。
カーチェイスとかカーアクションの描写の臨場感も良かった。
今回もめちゃくちゃクレバーな主人公。
足を洗って真面目に暮らしたいのに色々な問題、環境のせいでうまくいかない。
そして本人もスリルと分泌されるアドレナリンの魅力に抗えない……。
ラストに妻のキアから「あなたは変われない」と言われ、本人もこれだけ家族を危険に晒したあとですら「変われるかわからない」という返答。
このラストが良かった。
親友が殺され、息子が危険な目にあったあとですら人間は簡単に変われない。
スリルジャンキーになってるボーレガードが可哀想ではあった。
Posted by ブクログ
凄腕ドライバーが主役のノワール小説というとこで面白かったけれど、主人公が深みにハマっていくのが結構自業自得なところがあったり、親子三代で血は争えない的な描写があって、少しモヤモヤする部分もあった。