加賀山卓朗のレビュー一覧
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一切容赦のないグロ描写、緊迫感のある展開、まるで海外ドラマを見ているかのような満足感‼︎
近年、日本でも田舎での閉塞感や近所問題について話題に上がることが多いが、本作の舞台であるヴァージア州チャロン郡はその比ではない。
黒人差別が根深く残る地域で黒人初の保安官として暮らす主人公タイタスは、様々な人々に囲まれながらも冷静沈着で良きリーダーとして働く一方で誰にも話していない秘密に対して罪悪感を抱えて生きており、今回の猟奇的な事件を追っていく中で少しずつ心が蝕まれていくことになる。
タイタスに救いはあるのか、次は誰が殺されてしまうのかとヒリつきながら読んでいたが、非常に満足のいく結末だった。 -
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子供たちを守るため未熟な青年が奮闘するが… 苦悩多き青春時代の郷愁を誘う物語 #7月のダークライド
■あらすじ
主人公である青年ハードリーは大学を中退し、遊園地の恐怖体験ができる施設で働いていた。ある日遊園地で幼い姉弟と出会うのだが、彼女らの身体に煙草のやけど跡を見つけてしまう。虐待を懸念したハードリーは児童保護サービスに連絡するも、相手にしてもらえない。幼い姉弟を守るべく、ハードリーは虐待の証拠を探し始めるのだが…
■きっと読みたくなるレビュー
思いっきり青年の想いがつまった物語、探偵や冒険小説の部類ですね。
本作イチ推しなのは主人公のお人柄。未成熟な正義感がヒシヒシと伝わってきて、それでも懸命に情熱を貫く姿を応援しちゃう。ただ若いながらも過去の経験からそれなりの価値観や熱意を持っているのに、知識不足なのは否めない。特にバランス感覚が成熟していないことから、いつも悪い結果を招いてしまう。
わかるわー、わかりみがすぎる。若い頃の自分を見ているようで、読んでいて恥ずかしくなってしまいました。
でもその他の登場人物が素敵なんです。市役所の受付、ゴスロリファッションのエレノアがキュートすぎて尊い。ハードリーよ、こんなにも良くしてくれる友人はいませんよ。想いや気持ちは分かるけど、大切に思ってくれている人の言葉には耳を傾けなさいっつーの。
フェリスはエロいし、サルヴァドールは幼いし、トレイシーは謎が多いし、なかなかの逸材ばっかり。未熟な青年が出会うには刺激が強すぎる。でもきっとたくさんのことを学べる環境でもあるんですよね。若い頃はいっぱい経験しなきゃ。
さて中盤あたりから物語が動き始めます。マジで?という主人公の行動に若干引きつつ読み進めるのですが、これまでにはないパワフル展開に読む手にも力が入る。ラストは主人公の人柄を反映したような読後感に浸れてチルかった。遠い昔の自分を思い出させてくれた素敵な作品でした。
■ぜっさん推しポイント
皆さんが23歳の頃は、何をやっていましたか? 何か悩みはありましたか? どういった願望がありましたか? 23歳なんて、つい最近のような気がするんですが、実際に年数を数えてみると遠い昔。
私は主人公と同じく大学を辞めそうになっていて、アルバイトしながら仲間とバカ騒ぎしていました。中退を決めた後、大学生の肩書がなくなってしまったことに気づき、不安に駆られる毎日が始まる。それでも自分には何か才能や生きる道があると盲信していたのですが、年収や地位は周りに水をあけられてしまっていました。
そんな粗末な生活を1年ほど送っていたのですが、その頃の一番の願いは「社会に入っていくこと」でした。
ただ何をやりたいわけでもなく、何ができるわけでもなく、何を積み上げてきたわけでもない。守られているものが無くなった時、初めて自分が未熟であったことを痛感するんですよね。それでも私の周囲には優しい友人たちがいて、色んな助言をしてくれたのです。そのおかげで「社会に入っていくこと」が実現できたのですが、まぁ苦労しました。
人それぞれ大人になるために、様々な苦労や経験を重ねながら人生のダークライド〈遊園地の乗り物〉を乗りこなしてゆくのです。そしてきっと、一緒に乗っている人をいかに大切に思えるかによって、結果が変わってくるんだと思いました。 -
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主人公は、犯罪に絡む逃走を請け負う元プロフェッショナル・ドライバーで、今は堅気の自動車修理工場の経営者だ。経営は苦しく、昔の仲間から持ち込まれた宝石店強盗の仕事に絡めとられていく。強盗に入った宝石店が組織暴力と関連があったことから、主人公は泥沼のような悪と暴力にはまっていく。
主人公の父親から続く暴力性が立ち切れず、彼の子供まで悪の素養に魅入られたように染まる。一見、暴力の世界から縁が切れたように見えたが、暴力の血は濃く、きっかけさえあれば見る間に増殖していく。
主人公の苦悩や暴力のリアリティが群を抜き、物語に引き込まれる。主人公が運転する車のように、スピード感をもったまま終盤を迎えるが、決してハッピーエンドではない。
人の中にある暴力性を考えさせられる秀作だと思う -
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先日読んだ『頬に哀しみを刻め』があまりに良かったので、その興奮が冷めないうちに前作の『黒き荒野の果て』に手を出した。期待通り、とても良かった。
作品の根底に流れるものは『頬に哀しみを刻め』と変わらない。主人公バグことボーレガード・モンタージュは、『頬に〜』の主人公アイクと同じく過去に犯罪を犯した黒人男性で、裏社会の「走り屋」のようなことをしていた。現在は中古車修理工場を営み、問題を抱えつつも、家族を愛している。しかし、抱えていた問題が徐々に大きくなり、大金が必要となったボーレガードは、かつての裏社会の仕事に復帰する。仕事を持ちかけてきた相手が信用のおけない男だとわかっていても、選択の余地はなかったのだ。そして、事態は思わぬ展開を見せ、ボーレガードは窮地に立たされていく。
ボーレガードは、自分が決して正しい人間ではないことを認識している。怒りに我を忘れてしまうことに苦しみつつ、裏社会の水が自分には合っているという事実から目を背けようとしている。彼と友だちになりたいとは思わないが、彼の抱える苦しみは読む者に強く訴えてくるものがある。
本書の白眉は、何といっても走り屋であるボーレガードのカーチェイスのシーンだろう。私はこれまで、これほどまでに鮮烈かつスピード感のあるカーチェイスを本で読んだ経験がない。ぜひ本書を手にして、疾走感満載のシーンが脳内で再生されていく驚きを味わってもらいたい。 -
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ネタバレ原題の直訳なら「処刑台広場」だけのところを「の女」を付け足し、表紙に艶めかしい女性の見返り図を置いたのは、レイチェルシリーズの一作目として素晴らしい采配だと思う。
一応最大のトリックであるレイチェルの「正体」については早々に見抜ける人も多いと思うが、そこで油断しきった結果、もう一人の「の女」には思い切り騙されることになった。
また被害者のうち、大家母娘の果たしていた役割について語られている部分が見当たらなかったので、続編ではまだGC周りの設定が掘り下げられるのだろうか。あるいはまったく違う事件? いやよそに首を突っ込む理由もないしなどと思いつつ、次の翻訳も楽しみ。 -
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物語の舞台は1930年代のロンドン。著名な銀行家が自らの悪事を告白した遺書を残して自殺した。そこに絡んでくるのが、富豪にして探偵、妖艶な美女のレイチェル・サヴァナク。なぜか彼女の周囲で起こる事件の数々。ゴシップ新聞の新人記者ジェイコブは、サヴァナクの行動に疑問を覚え、接近を試みるのだが…。
多くの書評で指摘されるように、黄金時代ミステリを思わせる重厚な仕上がりに大満足な一冊である。主人公のレイチェル・サヴァナクは、いわばダークヒロイン。この作品の最大の謎は、彼女自身なのである。なぜか私は、バットマンのブルース・ウェインを思い浮かべてしまった。身体を鍛えることに余念がないあたりも共通点。
本作はシリーズ化されているらしい。早晩、新しい物語を読めるのかもしれない。 -
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もう一人の主要人物の日記が差し挟まれるが、これをどう読むか?真に受けていいのか、それとも・・・。本文がミステリアスで、『本当』がどこにあるか迷子になっているので、何も信じられない。
猟奇的な殺人事件が連鎖し、それにかかわる主人公、レイチェル・サヴァナクが名探偵として登場するが、裏と表の顔が交錯し、彼女が何者なのかようとしてわからない。序盤は悪党の顔が見え隠れするが、事件が重なるにつれ正義の顔が見えてくる。彼女を信じていいのか最後まで分からない。
事件の真相を回収しながらサスペンスフルに終盤を迎えるが、読み終わった今も、もうひとひねりあるのでは?と心が残っている。 -
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ネタバレエドガー・アラン・ポーの早すぎた埋葬モチーフを本歌取りしたらしい、墓場から土をかき分けて這い出す手、という雰囲気満点のつかみが気になりすぎて、真相がわかるまで一気に読んでしまった(これ、真相あてられる人いますかね?MIT白熱教室で複雑な数式を用いて再現実験してもらいたいような…)。東欧出身の三兄弟が絡む骨肉の争い、という点でエラリー・クイーンの某国名シリーズに通じるものがあり、どちらも「仲が悪すぎじゃない...?お母さん泣くよね」と突っ込みを入れたい。ただし本格推理のため(だけ)にホラー並みの血みどろ惨劇が淡泊に展開されてまったく怖さを感じないとぼけた味わいの某作に対し、本作は主人公のろくでなしなハチャメチャぶりに人間臭さを感じる。また練られた犯罪をほぼ完璧に遂行する犯人を綻びとも言えない極微細な違和感から突き止める鮮やかさが魅力だった某作も好きだが、やたら凝った計画を出だしで大失敗しながらど根性の力業で乗り越え...ようとして周囲の人々を謎だらけの困惑に陥れたドタバタ劇-結局何がやりたかったのか博士の説明にあまり納得できない、むしろ命取りなパニック状態?-には妙な愛着を覚えてしまった。「2発目はお前だ」、そりゃそうよね!そこそこ顔の知られた人物が派手な服装で街中の近所を歩いたら誰かの目につくリスク高そうだけど…人の好い居候のお爺さん、助かったのかな、あなたが善意で助けた人物は高邁な思想の政治犯ではなく銀行強盗でしたよ。。。