加賀山卓朗のレビュー一覧
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ジェイク・ラマー『ヴァイパーズ・ドリーム』扶桑社ミステリー。
英国推理作家協会、2024年度最優秀歴史ミステリー賞受賞作。
1961年のジャズが全盛のニューヨークのハーレムを舞台にしたノワール小説。、マイルス・デイヴィス、チャーリー・パーカー、セロニアス・モンクといったジャズの巨人たちが実名で登場し、ジャズの名曲が静かに流れる中、一級のノワールが描かれる。
1936年に恋人を捨て、トランペッターになる夢を抱き、アラバマの田舎からニューヨークのハーレムにやって来たクライド・モートンはトランペッターとしての才能が無いと指摘され、直ぐ様夢を断念する。逆に喧嘩の腕前を見出されたクライドは麻薬密売の大物の用心棒になると、麻薬密売人へと出世する。
1961年、ニューヨークのハーレムで最も怖れられる麻薬密売人となったクライド・ヴァイパーズ・モートンはその日、自身が犯した生涯3度目の殺人を後悔していた。自責の念に沈む最中、ジャズ界の庇護者パノニカから『3つの願い』を訊かれ、因縁を探る彼の思索は遠い過去へと跳ぶ……
本体価格1,320円
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1034
645P
チャールズ・ディケンズ
(1812-1870)英国ポーツマス郊外の下級官吏の家に生れる。家が貧しかったため十歳から働きに出されるが、独学で勉強を続け新聞記者となる。二十四歳のときに短編集『ボズのスケッチ集』で作家としてスタートし、『オリヴァー・ツイスト』(1837-1839)でその文名を高める。他にも自伝的作品『デイヴィッド・コパフィールド』(1849-1850)など数々の名作を生んだイギリスの国民的作家。
オリバー・ツイスト (光文社古典新訳文庫)
by ディケンズ、唐戸 信嘉
ノアは慈善学校の生徒で救貧院の孤児ではなかった。私生児でもなく、ちゃんと両親もいた。両親はすぐそばに住んでいた。母親は洗濯女で、父親はのんだくれの下級兵士だった。兵士といってもすでに退役しており、片足が義足で、日割りにすると二ペンス半と少しの恩給をもらって暮らしていた。もうずいぶんと長いこと、近所の店の小僧たちは往来でノアを見かけると、「半ズボン(3)」とか「慈善学校」とか不名誉なあだ名で彼を呼んだ。ノアはじっとこらえて彼らを無視した。だが幸運にも、とうとう名なしの孤児――どんなに卑しい者でも、後ろ指をさすことのできる人物――が彼の前に現れた。彼の鬱憤は利息つきでオリバーにぶつけられることになった。これは、よくよく考えてみるに値する事例である。なぜなら、ノアという人物を観察すると、人間の本性の瞠目すべき特徴が明らかになるからである。王侯貴族であろうと下劣な慈善学校の少年であろうと、愛すべきこうした性格は、身分に関係なく育まれるのだ。
バンブル氏がこのように話すと、オリバーはまた自分の母親が悪くいわれていることを聞きつけ、ほかの一切の物音を消し去るほど激しく扉を蹴りはじめた。と、そこへ、サワベリー氏が帰宅した。夫人たちは、彼の憤怒を誘うような尾ひれをつけてオリバーの不祥事を報告した。彼はただちにゴミ置場の扉を開け、生意気な弟子の首根っこをつかみ、オリバーを引きずり出した。
すぐわきの一里塚には大文字で「ロンドンまで百十キロ」と記されていた。その地名は彼の心に、かつてない、さまざまな連想を呼び起こした。ロンドン! あの偉大なる大都市ロンドン! そこへ行けば誰も――あのバンブル氏でも――もはや自分を見つけることなどできまい! 救貧院の老人たちがよくこんなことをいっていた。気骨のある若者ならロンドンで食うに困ることはない。田舎者には思いもよらぬ生活の手立てがいくらでもあるものだと。助けてくれる者がなければ、行き倒れて死ぬほかない自分のような宿無しの少年にとって、ロンドンこそ目指すべき場所に違いない。このような考えが脳裏をよぎり、オリバーはすぐに立ち上がってまた歩き出した。
その部屋は壁も天井も、古さと汚れのために真っ黒だった。暖炉の前に 樅 の木でできたテーブルが据えてあり、その上にジンジャーエールの空壜にさしたロウソク、何個かの錫のマグ、パンやバターや皿などが置かれていた。紐で暖炉の上に固定され、火にかけられたフライパンの中では、ソーセージが焼けていた。そして手に大きなフォークを持った、年老いた皺だらけのユダヤ人が、そのフライパンの前に立っていた。卑しい、ぞっとする顔立ちは、もじゃもじゃの赤毛によって隠されていた。彼は油で汚れたフランネルのガウンを着て、喉元を大きくはだけ、フライパンと、大量の絹のハンカチがぶら下がっている物干し竿の両方に注意を向けているようだった。年代物の麻袋で作った粗末なベッドが所狭しと並び、四、五人の少年たちがテーブルを囲んで座っていた。彼らはドジャーと同い年ぐらいに見えたが、大人びた様子で、陶器製の長いパイプをくゆらし、酒を飲んでいた。ドジャーがユダヤ人に何事か耳打ちすると、少年たちは彼のそばへ寄り集まった。そしてふり返ってオリバーにニヤニヤと笑いかけた。ユダヤ人も同じように、フォークを手にしたままオリバーのほうを向いて笑った。
このゲームが何回もくり返されたころ、若い女二人が少年たちを訪ねてやって来た。一人はベットといい、もう一人はナンシーといった。二人とも豊かな髪をしていたが、結い方はいい加減で、靴も靴下も薄汚れていた。美人とはいいかねたが、厚化粧をしたその顔はたくましく、威勢のいい感じがした。二人は少しも飾らず人当たりがよかったので、オリバーは実に感じのよいお姉さんだと思った。実際二人はその通りの人物だった。
「多分そうでしょう」オリバーは答えた。「天国はずいぶんと遠くにあって、そこでみんな幸せに暮らしているから、哀れな子供の枕元までわざわざやって来るはずはありません。でも、僕が病気だと母さんが知ったら、きっと天国にいても心配してくれると思います。母さんだって死ぬ前、とても重い病気だったんです。でも、天国にいると、僕のことなど少しも知りようがないかもしれません」オリバーはちょっと黙ってから、そうつけ加えた。「僕が苦しんでいるのを知ったら、母さんも悲しい気分になると思います。夢の中に出てくる母さんは、いつも優しくて幸せそうですけど」
オリバー・ツイスト (光文社古典新訳文庫)
by ディケンズ、唐戸 信嘉
ノアは慈善学校の生徒で救貧院の孤児ではなかった。私生児でもなく、ちゃんと両親もいた。両親はすぐそばに住んでいた。母親は洗濯女で、父親はのんだくれの下級兵士だった。兵士といってもすでに退役しており、片足が義足で、日割りにすると二ペンス半と少しの恩給をもらって暮らしていた。もうずいぶんと長いこと、近所の店の小僧たちは往来でノアを見かけると、「半ズボン(3)」とか「慈善学校」とか不名誉なあだ名で彼を呼んだ。ノアはじっとこらえて彼らを無視した。だが幸運にも、とうとう名なしの孤児――どんなに卑しい者でも、後ろ指をさすことのできる人物――が彼の前に現れた。彼の鬱憤は利息つきでオリバーにぶつけられることになった。これは、よくよく考えてみるに値する事例である。なぜなら、ノアという人物を観察すると、人間の本性の瞠目すべき特徴が明らかになるからである。王侯貴族であろうと下劣な慈善学校の少年であろうと、愛すべきこうした性格は、身分に関係なく育まれるのだ。
バンブル氏がこのように話すと、オリバーはまた自分の母親が悪くいわれていることを聞きつけ、ほかの一切の物音を消し去るほど激しく扉を蹴りはじめた。と、そこへ、サワベリー氏が帰宅した。夫人たちは、彼の憤怒を誘うような尾ひれをつけてオリバーの不祥事を報告した。彼はただちにゴミ置場の扉を開け、生意気な弟子の首根っこをつかみ、オリバーを引きずり出した。
すぐわきの一里塚には大文字で「ロンドンまで百十キロ」と記されていた。その地名は彼の心に、かつてない、さまざまな連想を呼び起こした。ロンドン! あの偉大なる大都市ロンドン! そこへ行けば誰も――あのバンブル氏でも――もはや自分を見つけることなどできまい! 救貧院の老人たちがよくこんなことをいっていた。気骨のある若者ならロンドンで食うに困ることはない。田舎者には思いもよらぬ生活の手立てがいくらでもあるものだと。助けてくれる者がなければ、行き倒れて死ぬほかない自分のような宿無しの少年にとって、ロンドンこそ目指すべき場所に違いない。このような考えが脳裏をよぎり、オリバーはすぐに立ち上がってまた歩き出した。
その部屋は壁も天井も、古さと汚れのために真っ黒だった。暖炉の前に 樅 の木でできたテーブルが据えてあり、その上にジンジャーエールの空壜にさしたロウソク、何個かの錫のマグ、パンやバターや皿などが置かれていた。紐で暖炉の上に固定され、火にかけられたフライパンの中では、ソーセージが焼けていた。そして手に大きなフォークを持った、年老いた皺だらけのユダヤ人が、そのフライパンの前に立っていた。卑しい、ぞっとする顔立ちは、もじゃもじゃの赤毛によって隠されていた。彼は油で汚れたフランネルのガウンを着て、喉元を大きくはだけ、フライパンと、大量の絹のハンカチがぶら下がっている物干し竿の両方に注意を向けているようだった。年代物の麻袋で作った粗末なベッドが所狭しと並び、四、五人の少年たちがテーブルを囲んで座っていた。彼らはドジャーと同い年ぐらいに見えたが、大人びた様子で、陶器製の長いパイプをくゆらし、酒を飲んでいた。ドジャーがユダヤ人に何事か耳打ちすると、少年たちは彼のそばへ寄り集まった。そしてふり返ってオリバーにニヤニヤと笑いかけた。ユダヤ人も同じように、フォークを手にしたままオリバーのほうを向いて笑った。
このゲームが何回もくり返されたころ、若い女二人が少年たちを訪ねてやって来た。一人はベットといい、もう一人はナンシーといった。二人とも豊かな髪をしていたが、結い方はいい加減で、靴も靴下も薄汚れていた。美人とはいいかねたが、厚化粧をしたその顔はたくましく、威勢のいい感じがした。二人は少しも飾らず人当たりがよかったので、オリバーは実に感じのよいお姉さんだと思った。実際二人はその通りの人物だった。
「多分そうでしょう」オリバーは答えた。「天国はずいぶんと遠くにあって、そこでみんな幸せに暮らしているから、哀れな子供の枕元までわざわざやって来るはずはありません。でも、僕が病気だと母さんが知ったら、きっと天国にいても心配してくれると思います。母さんだって死ぬ前、とても重い病気だったんです。でも、天国にいると、僕のことなど少しも知りようがないかもしれません」オリバーはちょっと黙ってから、そうつけ加えた。「僕が苦しんでいるのを知ったら、母さんも悲しい気分になると思います。夢の中に出てくる母さんは、いつも優しくて幸せそうですけど」
婦人の名誉のためにいっておくが、彼女は行かないとはっきり断りはしなかった。ただ、警察に行くのは「どうしても気がすすまない」と確固たる意志を示し、丁寧にやんわりと拒絶したにすぎない。こうした礼儀正しさは、にべもなく断って仲間を傷つけたくないという、生来の育ちの良さに由来するものであった。
恐怖に耐え切れず、オリバーは本を閉じるとわきへ押しやった。それからひざまずいて、自分がそのような罪を犯さぬようにと神に祈り、もし自分がおぞましい犯罪に手を染める運命ならば、今すぐこの命を終わらせてくださいと願った。やがてオリバーは落ち着きを取り戻し、低いきれぎれの声で、この窮地からお救いください、家族にも友人にも愛されたことのない孤児を憐れんでくださるならば、どうか今こそ、邪悪な犯罪を前にして孤立無援でいる自分をお助けください、と嘆願した。
医者はカーテンを戻しながらため息をついた。「悪はどんな人間にも宿る。美しい風貌の奥に、悪徳が宿ることだってある」
朝の散歩がもはや一人きりでなくなったことは、注目すべき変化だった。オリバー自身もそう感じていた。ハリー・メイリーは――花束を抱えて帰宅するオリバーと出会ったとき以来――すっかり花に夢中になり、花の生け方にもなみなみならぬセンスを発揮し、年若い友人をすっかり引き離していた。けれども、こうした点で遅れをとったにせよ、一番いい花がどこに咲いているかを心得ているのはオリバーだった。二人は毎朝一緒に野辺を駆けまわり、とびきり美しく咲いた花々を持ち帰った。今では若い婦人の寝室の窓は開け放たれていた。ローズは豊かな夏の香りを部屋に入れることを好み、その爽やかな香りは彼女の回復を助けた。格子窓のすぐ裏には、丁寧に作られた小さな花束がいつも花瓶に生けてあった。その花瓶に生けられた花束は――水は頻繁に取り替えられていたが――枯れても決して捨てられることがない事実に、オリバーは気づいた。ロスバーン医師が朝の散歩に出かけようと庭を横切るとき、決まってその部屋の窓辺を見上げ、意味ありげにうんうんとうなずくことにもオリバーは気づいていた。そうこうしているあいだに日々は飛ぶように過ぎ、ローズはぐんぐん回復していった。
「上等なウサギのパイだぞ、ビル」チャーリーは肉入りパイを相手に見せていった。「ウサギは美味いぜ。手脚もやわらかいしな。口の中で骨が溶けるほどだ。口からつまみ出す手間もいらない。それから、一ポンド七シリング六ペンスする緑茶を二百グラムだ。濃いの何のって。沸騰した湯に入れればティーポットの蓋がぶっ飛ぶほどだぜ。あとは、精製してない砂糖を七百グラム。アフリカの連中にはこういう上等な砂糖は作れまいよ。一キロもあるパンを二個、極上のバターを五百グラム、グロスター・チーズ一切れ。お終いは、とびきり上等の酒だ!」
「心配するな、チャーリー」慰めるようにフェイギンはいった。「あいつは有名になる。そりゃあ間違いのないところだ。あいつの賢さが知れ渡るときがきっと来るよ。自分でそれを証明するだろうし、旧友や恩師の顔に泥をぬることはあるまい。それにあいつはまだ若い! あの年齢で流刑になるなんて勲章ものさ!」
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Posted by ブクログ
冒頭の掴み方がすごい。
この冒頭部分は裏表紙のあらすじには書いてないのでここでも書くのはやめておきます。
最初のたった20ページくらいでもうガッツリ掴まれて、先が読みたくてたまらなくなる。
登場人物と一緒に「えっ!?」と驚いて固まってしまった。
裏表紙あらすじから少し。
伯父の死に毒殺の疑いを持ったマークは、友人達と埋葬された遺体の発掘を試みる。
だが、密閉された地下の霊廟の遺体は…
全体的に不気味で仄暗い感じ。
読んでいると物語の中に入り込んでしまうような没入感があり、登場人物達と一緒にゾクゾクしながら体験した。
オカルトは好きではないんだけど、この作品はオカルトと本格ミステリーの配合が絶妙!!
オカルト好きも本格ミステリー好きも両方が楽しめる最高な作品だった。
冒頭もグッと掴まれて面白いけど、ラストはもっと掴まれてしまった…。さすがディクスン・カー。
今までオカルトは胡散臭さが苦手だったけど、ディクスン・カーの描くオカルトはそれを感じずに楽しめた。 -
Posted by ブクログ
これは面白かった。
S・A・コスビーはどの作品も面白く、作品を重ねる毎に描かれている物語的にも描いている社会背景的にも作品的にも深度が深まってる印象がある。
だが、個人的には一番好みのタイプなのが本作。
かつて裏稼業で生活していた男が、愛する者と出会い足を洗う。だが、表の世界での生活が苦しくなり、再び裏稼業に手を出す。簡単だと思っていた仕事が、実はギャングの金で……というどこかで観たことあるようなシンプルな物語ではある。
だが、これがS・A・コスビーが描くと見事なクライムノベルに仕上がっている。
これは映画化したら絶対最高だろう、というシーンがいくつもある。
クライマックス、ダスターという愛車の登場シーンからカーチェイスシーンまで絶対映画だったら見せ場になるシーンで、文章でありながらもそのイメージでかなり痺れた。
当然ながら映画化の話もきているらしい。
映画が今から待ち遠しい。 -
Posted by ブクログ
★5 法で裁かれなかった犯罪者たち、背後にうごめく俗悪な企みをレイチェルが裁く… #モルグ館の客人
■きっと読みたくなるレビュー
おもろいわー、また★5をつけちゃう。
個人的には前作より躍動感があって好きですね。その分ミステリアスでスリラー要素は少なくなったと思うけど、怪しげなキャラが新たに出てきて、不穏な雰囲気は相変わらずです。
今回の物語は、犯罪の容疑をかけられ、からくも死刑を免れた人たちの背景をレイチェルが追っていく。一方、女性の犯罪学者レオノーラも同じ事件を調べており、とある関係性からレイチェルにも近づいていくという筋だて。館が舞台になるのは終盤で、もちろんそこからひと波乱あったりします。
ただタイトルに館の名前が入っていますが、密室殺人やクローズドサークルを期待してはいけません。安心してください、ちゃんと別の意図があります。
まず本シリーズの推しポイントは、Coolさですよね~。始まりがいきなりエピソードからですよ、プロローグではありません。第一章の第一文から惹きつけられるし、場面も葬儀列車で雰囲気がカッコイイのよ。レイチェルが吐き出すセリフがいちいち謎めているし、このキャラの引力には毎回ヤラれます。
例によって何が起こっているのかよくわからない。犯罪学者レオノーラも敵なのか味方なのかよくわからんし。ただ間違いなく背後にうごめいているものはあって、怪しい人が誰なのかも明確にわかる。この緊張感と戸惑いがたまらなく読み手をソワソワさせるんすよね。
あと大好きなのは主人公レイチェルと記者のジェイコブのコンビぶり。二人とも同じ正義感を持っているのに、価値観や犯罪へのアプローチがまったく違うんですよ。レイチェルは狡猾、扇動するのが上手。その一方レイチェルの生真面目で素直なんです。なんか姉弟のように微笑ましく見えてくるんすよね。ま、かなり歪な関係性ではあるんだけど。
終盤、一連の物語の謎が明かされるんですが、とても直視できない真相でして… 自分都合で考える人間たちに吐き気がしました。そして終わりには、すっかりレイチェルに魅了されてしまうのです。
■ぜっさん推しポイント
仕事や人間関係など、世の中には様々な問題がある。我々は幸せで正しい人生を歩むために、日々どういう判断をしているのでしょうか。
時には誤った判断をしてしまい、他人に迷惑をかけることもあるかもしれません。でもそうならないために、世の中には法律やルールというものがある。
ただ法律と正義、価値観と秩序は違うもので、人それぞれに微妙な隙間があるんです。その隙間を多少なりとも正しく埋めるのが倫理観というやつなんですが… その難しさや不条理さをつぶさに描いたのが本作なんだと思いました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレS.A.コスビーの3作目。
今作は前2作のノワールから変わり、ゴリゴリの警察小説。
舞台はアメリカ南部の街。拳銃を所持した黒人の高校生を、保安官たちが射殺する。高校生は殺される直前、先生の携帯を見ろと言い残す。教室では教師が殺されていた。この街初の黒人の保安官タイタスは殺された教師の携帯を調べるが、中には目を背けたくなるような残虐な映像が残されており。。。
いくらなんでも前作「頬に哀しみを刻め」より面白いことはないだろうと読み始めたが、すみません、軽々と超えてきました。
正直物語のまとまり方は前作の方が上だけど、今作の警察小説としての手堅さ、完成度は圧倒されるほど良かった。
アメリカ南部の人種差別、独特の宗教感がこれでもかと言うほど描かれており、黒人保安官タイタスの非常に難しい立ち位置がわかりやすい。
若干、ラストが駆け足気味だったが、面白さは抜群だったため、今年を代表する翻訳小説になると思う。
というか、5月と6月は本作に加えウィタカーの新作、ボルトンの10年ぶりの新作、クレイヴンの新シリーズと、とんでもない豊作で嬉しい悲鳴。
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Posted by ブクログ
【ポアロ】
「だって彼は殺されたんでしょ?」
葬儀の後に言った、この一言から一族の事件がはじまる…。
カタカナの登場人物が苦手なのに、不思議とクリスティー作品はそこまで困らないのは、クリスティーの細かい人間描写のおかげだと思う。
一人ひとりの容姿、雰囲気、性格、知能などがとても細かく描写されているので、人物の想像がしやすい。人間観察力が鋭いところが面白くてはまってしまう。
一族全員個性が強めでみんな怪しいので、今回もまんまと騙された。
読後感は『死との約束』の方が良かったけど、一族の相続争いのドロドロ感はこちらの方が面白かった。
焼き立てのスコーンにジャムを付けて、紅茶と一緒に楽しむ本場のアフタヌーンティーの様子が出てくる。
夕食前に手作りの焼き立てスコーンなんて、優雅なひとときで素敵だなぁ。
私もスコーンと紅茶を飲みながら次のクリスティー作品を読もう♪
Audibleにて。 -
Posted by ブクログ
どうやらS.A.コスビーは傑作しか書かないらしい
すでにご存知のことかと思われるが、今年は2024年だ
つまりイエス・キリストが生まれてから2024年(あるいは2028年)たっているということだ
そろそろ神はこの世界に無関心だということに気付いてもいい頃合いではないだろうか
どんなに祈っても戦争は終わらないし、どんなに祈っても差別はなくならないし、どんなに祈っても大切な人は奪われていく
そしてどんなに祈っても天使たちは助けに現れてくれそうにない
それともまだそれも神の計画の一部だと信じろというのだろうか
S.A.コスビーが描いた主人公タイタスを突き動かすのは神の教えではなく、公平な世界を実現しようとする人たちの意思だ
窮地に陥った彼を救うのは天使の囁きではなく、彼を愛する人たちの想いだ
人の心に巣食う悪魔と対峙するのは神ではなく、人なのだ -
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久々のルー・バーニーという作家の名前だけで、冒険小説好きの好奇心が全面反応してしまう。ちなみに若かりし頃、冒険小説のフォーラムを主宰していたとは言え、ぼくは軍事オタクでもスパイオタクでもない。冒険小説とは日常生活の中から逸脱してあるアクションをやむを得ず選択してゆく勇気や意志を描くもの。ぼくはそう理解している。題材ではない。あくまでそこに介在する人間とその魂を描くフィクションのことを冒険小説と呼ぶのだ。
さてルー・バーニーだ。何年ぶり? 何と5年ぶり。しかも第三長編。何とも寡作である。でも書けばただじゃおかないとばかりに骨のある作品を提供し、ミステリー界をどよめかせる作家である。その理由は何だろう? 騒がれたのは『11月に去りし者』だけだから、データは少なすぎる。しかし『ガット・ショット・ストレート』と併せて過去二作品を見る限り、何と言っても登場人物の人間の魅力、そしてその心の魅力であり、それらを束ねたクライム小説としての語り口だろう。
出版社も自信があるのだろう、昨年のベストをかっさらったS・A・コスビー「ルー・バー二ーの最高傑作」、巨匠ドン・ウィンズロウ「心を摑んで離さない」と、わくわくするような言葉が並ぶ。これではずるいではないか、と思いながら期待感たっぷりで読み始めた本書。それは危険な導火線に火をつけたようなものだった。
何と本書の主人公は、ルー・バーニーとしては珍しいくらい若年、一人前にさえなっていないと言える平凡な23歳の青年である。働く場所がなんと<呪われた西部開拓地>と奇抜である。西部開拓時代を背景とした体験型スリラー施設なのだ。ゾンビのならず者、食屍鬼の住民、ブート昼墓場の幽霊たち。そこを巡る恐怖の時間と、主人公がこの作品で図らずも出会ってしまう現実世界の幼児虐待犯罪が、どちらもタイトルの<ダークライド>にかかってくるという構図なのだ。
主人公ハーディは、幼い姉弟と運命的に出会ってしまう。それは、両親に連れられた小さな姉弟だったが、彼らの胸に刻まれていたのは、煙草と見られる複数の火傷痕だった。彼らは親たちから虐待を受けているに違いないとハーディは確信する。以来、ハーディは幼い姉弟を放っておくことができず、思い悩むと同時に、あらゆる解決策を模索する。本書の真のスリルがスタートし、そして徐々に闇は色濃く彼を脅かすようになる。それは、両親に連れられた小さな二人の男女の幼児の胸に刻まれた煙草と見られる複数の火傷痕だった。ハーディはその子供たちが親たちから虐待を受けているのではないかと想像する。
彼らを救い出す手はないだろうか? また子供たちを虐待する見も知らぬ親たちの罪を何とかして暴くことはできないのだろうか? 子どもたちを救い出すとしても、少年以外の誰一人としてそれを知らないし、救い出そうとも思っていない。では自分がそれをやらねばならないのだ。ハーディはそのように心の絶対絶命状況を自覚してゆく。
相談相手の伝手を辿りつつ、専門家などにも意見を聴くものの、証拠も正体もわからない子供たちを救う手立てがなく、ハーディは悶々とする。闇を行く日々。ダークライドがスタートしたのだ。手を貸してくれる者もいれば、相談を聴いてくれる専門家も何とか接触するが、具体的な解決策には至らない。ハーディの冒険はこうしてスタートする。探り、対策を練り、実行する。そう、これぞ冒険小説の基本構造。久々に血が沸き立つような興奮を覚えた。
結末は書けない。ハーディは仲間を得て救出作戦を実行する。結末は書けない。それはあなた自身がこの本を通じてダークライドを体験すべきだから。この春、ぼくが最も興奮した作品なんだ。結末を書けるわけなんてないじゃないか。 -
Posted by ブクログ
“The pen is mightier than the sword”
さすがや!さすがエドワード・ブルワー=リットンだわ!さすがリットン調査団だわ!(これは孫ね)
はい、なんでリットン男爵が出てくんねん?まぁそれはおいおいということで、ディケンズの『大いなる遺産』です
やっぱな!っていうね
やっぱそうなるわなっていう
もう思い描いた通りの展開で大満足です
いらんねん変なサプライズはw
それにしても登場人物がいちいち魅力的すぎる
そして分かりやすい
いい人たちはとことんいい人
ちょっと冷たい感じの人たちも実はいい人
ちょっと嫌な感じの人は改心していい人
すごーく嫌な感じの奴は最後まで嫌な奴w
そしてピップの周りにはほんとに素晴らしい人たちがいたんよね
またピップ自身が最後にはそれにちゃんと気付けて、感謝できる人間だったからこそそういう人がいてくれたんよね
全ての謎がきれいにほどかれるストーリー展開、ハラハラドキドキの逃走劇、善き人々に訪れる幸せな結末、気の利いたユーモアと、どれをとっても一級品の素晴らしい作品でした
何より素晴らしいのは全てを明かさぬ余韻の残るラストです!
もう書いちゃう!
これを知った上で読んだとしてもこの作品の素晴らしさは全く損なわれないと思うので書いちゃう!
ラストの文章書いちゃう!
(以下ネタバレ)
〜私は彼女の手を取り、ふたりで廃墟の敷地から出た。はるか昔、初めて鍛冶場をあとにした朝に霧が晴れ上がったように、いまも夕霧が晴れようとしていた。見渡すかぎり広がる静かな光のなかに、彼女との別離の影は少しも見えなかった。〜
どうよ?
出会った時からこの結末は予感されてたのよ〜ってことがひとつね
そんで「別離の影は少しも見えなかった」ってのはもちろん今後は離れないってことなんだけど、その関係性については言及してないのよ
それが物理的な距離なのか、精神的なものなのか、あるいは両方なのか
信頼できる友人としてなのか、愛しあう恋人同士としてなのか
ここはもうお任せしますって感じなのよね
で、実はこの素晴らしいラストは当初かな〜りがっかり感漂うラストだったんだけど、ディケンズがリットンに「このラストでええやろか?」って相談した時に「いやいやいや、そんなんしたらもうみんながっかりしはるで〜」言われて書き直した結果らしいのよね
いや〜、さすがリットン男爵!だてに爵位持ってないわ
よーし次は光文社に戻るぞw -
Posted by ブクログ
“あぁ”
読み終わると同時に出てくる言葉。
18世紀の不穏な社会情勢下でのロンドンとパリ、二人の青年と一人の女性、その周辺の人々が二つの都にまたがって繰り広げる、壮大なドラマは、CGのない全盛期のハリウッド映画のよう。
フランス革命へ飲み込まれていくさま、一つの時代の終わりに際し、もがくようにして生きる人たちと集まり勢いを増す人たちが渦を巻く。
19世紀イギリスの名作家ディケンズが晩年に描いた、暗く悲しく力強い物語。
映像的で細やかな情景描写
修辞法、比喩を効果的に用いた演出
登場する者たちの、魂からから溢れ出る言葉が、よむほどに襲いかかる。
フランス革命、血の粛清で荒れるパリの夜の街をひとり彷徨うカートンがつぶやく、また、断頭台に向かう名も知らぬお針子にキスをして、カートンがささやく、
“我は復活なり、生命なり”