加賀山卓朗のレビュー一覧
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途轍もない実力を備えた作家に出会うと、ぼくはいつも少し興奮してしまう。それほどの掘り出し物の作家は、毎年のようにあちこちで見つかるわけではない。数年に一度、いや十年に一度くらい火傷しそうなくらいの印象と熱とを伴って唐突に眼の前に現れるのだ。
ぼくがこの作品を手に取ってすぐに感じたのが、そのような感覚であった。おお、来たぞ、来たぞというような震えが走る。翻訳小説であれ、この手の文章によるグルーブ感は感じられる。素晴らしい文章であり、言葉の流れであり、行間を流れる時がガラスの中を落ち行く砂音を確実に伝える。
題材はジョン・F・ケネディの暗殺事件。主人公ギドリーは、組織から依頼を受け、暗殺 -
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「ガットショット・ストレート」を
読んでからの二作目
直前に読んだ「キャサリン・ダンス」にも出てきた「雨が降れば、土砂降り」と言う言葉がこちらの話にも出てきた…謎
舞台は1963年
ボスのある秘密に気づき追われる身となった
マフィアの幹部ギドリー
それを追う同じマフィアの幹部(殺し屋)バローネ
そして、全く関係のない。ダメな夫に別れを告げ、子供二人と犬をつれて新しい生活探しの旅をする主婦シャーロット
三者が交差する。
前作にもあった「追う」「追われる」の読み合いの面白さアリ
他のマフィアのボスや殺し屋と行動を共にすることになる黒人の少年とのやり取りとか、会話が楽しい。
表紙は読んだ -
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ネタバレ6つの愛の形があることを知っているだろうか?いやほんとはもっと多いのかもしれないし、少ないのかもしれない。ひょっとしたらそもそも愛って何という問題にぶち当たるのかもしれない。
それでも人間は6つの愛の形を持つ可能性があると知ることは、これから先の人生で愛の問題に取り組むに当たって何らかのヒントになりそうだ。
ギリシャ思想の中では愛は「エロス(性愛)」「フィリア(友愛)」「ルードゥス(遊び)」「プラグマ(成熟した愛・情愛)」「アガペー(無償の愛)」「フィラウティア(自己愛)」の六つに分類され、昔はそれをそれぞれ異なる人と満足させてきたが、現在ではすべてを一人の人で満足させようとしている。
結 -
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ネタバレやたらと海外ミステリが並んでるエジンバラの本棚で見掛けて、密室講義だけ読んで満足していたのを思い出しました…はい…
有名すぎて、観てないのに見た気になっている映画、ドラマ、アニメとかありません?
〇〇を観ずしてSFを語ることなかれ、とか
✕✕を読まずしてファンタジーを語ることなかれ、とか
そう云われるとじゃぁお前何を語れるんだい、ということになってしまうんだけど(スターウォーズは観てるからSFは語っていいの? ガンダム好きならSFは…いやそれは語っちゃダメだな…)、
こればっかりは、
三つの棺を読まずして、密室ものを語るなかれ、と云わしめる力があるな、と思いました。
トリックの力であると -
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【罠にかかると知りながら】『寒い国から帰ってきたスパイ』,『テンィカー,テイラー,ソルジャー,スパイ』等の至極の諜報小説で知られるジョン・ル・カレが著した回顧録。自身も従事したスパイとしての活動から父親への葛藤した思いまで,謎の多かった著者の半生が明らかになっています。訳者は,推理小説の翻訳でも知られる加賀山卓朗。原題は,『The Pigeon Tunnel: Stories from My Life』。
極端に言えば,ジョン・ル・カレの小説をまったく読んだことがなくても十二分に面白い作品(ということは読んでいる場合は言わずもがなです)。描かれる内容そのものが興味深いのはもちろんのこと,そ -
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原題は”Too Big To Fail”。「私は世界大恐慌の研究者として人生をすごしてきました。歴史から判断しても、いま大胆な行動をとらなければ、ふたたび恐慌が訪れるでしょう。そして今回は以前よりはるかに、はるかに深刻なものになる」(ベン・バーナンキ、下巻、P.279)と言われた2008年9月の数週間のドキュメンタリー。
内容は関心あればお読み頂くとして、一番重かったのは、責任を負っている人ほど負っていない人に対して我慢しなければならないということだ。「山のようにある悪い選択肢のなかでは、いちばん現実的な解決策」(同、P.370)は政治家、マスコミに袋叩きにされる。事態が解決しなければ被害を -
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私達の生活を歴史という観点から考察する、という趣旨。 正直、今年一の内容だった。
まず素晴らしいのはテーマの広範さ。愛の分類からはじまり、家族、仕事、料理、お金、死生観と、生活をめぐる多くのテーマがあり、これらの全体として生活がある事がよく理解できる。 また、章を分け、それぞれについて論じられている事で読み手が理解しやすい。 この手の話は論旨がハッキリせず、寄り道のように様々な事が語られがちなのだが、全体における部分として、それぞれ独立した構造になっている。
以下感想
読書の動機は生活について考察をしよう、というテーマに強く惹きつけられたからであり、これは現在の生活に疑問を抱いているとい -
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新潮文庫では、佐々木直次郎訳→中野好夫訳→加賀山卓朗訳(本書)と、3つの版が出版されてきたが、本書は非常に丁寧な良訳で感動した。
特にカートンの言葉づかいがすごく良い。彼の話す一言一言に、彼がどんな人間かがにじみ出ている。カートンの登場場面はいつでも胸がつまった。
あとがきを読むと、原文の構成や解釈、過去に出版された邦訳の訳文など丹念に研究した様子がうかがえ、特に最終章の”歴史的現在”をきちんと生かした訳になっているのが素晴らしい。中野訳ではこの部分が破壊され、抑制した中ににじむ感情の高まりや物語全体の余韻を全く感じることができず、佐々木訳に比べて非常な物足りなさを感じていた。
大好きな -
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スパイ小説と言えばフレデリック・フォーサイスと、本書の著者である
ジョン・ル・カレなんだよね、私にとっては。しかもふたりとも実際に
スパイだった。あ、フォーサイスは協力者だっけ。
私の中の2大巨匠のひとりでるジョン・ル・カレも既に85歳だそうだ。その
人の回想録だもの。読むでしょ、やっぱり。
時系列になっていないので「自伝」と捉えて読むと読み難さがあるが、
全38章のそれぞれが短編小説を読んでいるような感じだ。
小説の取材の過程であった人々のなかでもPLOのアラファト議長との
邂逅はまるで映画のよう。尚、アラファト議長のヒゲは柔らかく、ベビー
ローションの匂いがしたそう -
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2008年9月12日午前9時15分、CNBCにテロップが流れた。「関係筋によると、リーマンの問題解決に公的救済はない模様」市場が開くとリーマン株は3.84$に下げる。6月頭に韓国産業銀行(KDB)からの出資受け入れを交渉していた時点ではまだ株価は30$でリーマンCEOのファルドは33%増の40$を主張した。7月21日にバンカメに持ちかけた際には株価は18.32$で少なくとも25$欲しいと主張したがバンカメにとってはただ同然で買えるのでなければ意味がなかった。リーマンの資産にはあまりにも不透明なものが多すぎたのだ。
9月4日にはポールソン財務長官はファニー・メイとフレディ・マックの救済を決め、 -
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2008年9月12日夜ニューヨーク連銀にウォール街の銀行のCEOが集められた。議題はライバル会社であるリーマン・ブラザーズをどうやって救うか。政府の支援はない。5大投資銀行のうち最も弱く、最もリスクの高い(レバレッジの大きい)ベア・スターンズは既に倒れた。ウォール街の企業のレバレレッジは32倍、上手くいってる間はリスクをとればとるほど儲かり、幹部からトレーダーまで高給で他社に移籍されないように繋ぎ止めるのが当たり前だった。サブプライムローンなどの債券はひとまとめにされ、それから切り刻まれ、またまとめられてCDOという債券に仕立て上げられた。理論上はリスクを分散することで低格付けのCDOを組み合