加賀山卓朗のレビュー一覧
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原題は”Too Big To Fail”。「私は世界大恐慌の研究者として人生をすごしてきました。歴史から判断しても、いま大胆な行動をとらなければ、ふたたび恐慌が訪れるでしょう。そして今回は以前よりはるかに、はるかに深刻なものになる」(ベン・バーナンキ、下巻、P.279)と言われた2008年9月の数週間のドキュメンタリー。
内容は関心あればお読み頂くとして、一番重かったのは、責任を負っている人ほど負っていない人に対して我慢しなければならないということだ。「山のようにある悪い選択肢のなかでは、いちばん現実的な解決策」(同、P.370)は政治家、マスコミに袋叩きにされる。事態が解決しなければ被害を -
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私達の生活を歴史という観点から考察する、という趣旨。 正直、今年一の内容だった。
まず素晴らしいのはテーマの広範さ。愛の分類からはじまり、家族、仕事、料理、お金、死生観と、生活をめぐる多くのテーマがあり、これらの全体として生活がある事がよく理解できる。 また、章を分け、それぞれについて論じられている事で読み手が理解しやすい。 この手の話は論旨がハッキリせず、寄り道のように様々な事が語られがちなのだが、全体における部分として、それぞれ独立した構造になっている。
以下感想
読書の動機は生活について考察をしよう、というテーマに強く惹きつけられたからであり、これは現在の生活に疑問を抱いているとい -
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新潮文庫では、佐々木直次郎訳→中野好夫訳→加賀山卓朗訳(本書)と、3つの版が出版されてきたが、本書は非常に丁寧な良訳で感動した。
特にカートンの言葉づかいがすごく良い。彼の話す一言一言に、彼がどんな人間かがにじみ出ている。カートンの登場場面はいつでも胸がつまった。
あとがきを読むと、原文の構成や解釈、過去に出版された邦訳の訳文など丹念に研究した様子がうかがえ、特に最終章の”歴史的現在”をきちんと生かした訳になっているのが素晴らしい。中野訳ではこの部分が破壊され、抑制した中ににじむ感情の高まりや物語全体の余韻を全く感じることができず、佐々木訳に比べて非常な物足りなさを感じていた。
大好きな -
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スパイ小説と言えばフレデリック・フォーサイスと、本書の著者である
ジョン・ル・カレなんだよね、私にとっては。しかもふたりとも実際に
スパイだった。あ、フォーサイスは協力者だっけ。
私の中の2大巨匠のひとりでるジョン・ル・カレも既に85歳だそうだ。その
人の回想録だもの。読むでしょ、やっぱり。
時系列になっていないので「自伝」と捉えて読むと読み難さがあるが、
全38章のそれぞれが短編小説を読んでいるような感じだ。
小説の取材の過程であった人々のなかでもPLOのアラファト議長との
邂逅はまるで映画のよう。尚、アラファト議長のヒゲは柔らかく、ベビー
ローションの匂いがしたそう -
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2008年9月12日午前9時15分、CNBCにテロップが流れた。「関係筋によると、リーマンの問題解決に公的救済はない模様」市場が開くとリーマン株は3.84$に下げる。6月頭に韓国産業銀行(KDB)からの出資受け入れを交渉していた時点ではまだ株価は30$でリーマンCEOのファルドは33%増の40$を主張した。7月21日にバンカメに持ちかけた際には株価は18.32$で少なくとも25$欲しいと主張したがバンカメにとってはただ同然で買えるのでなければ意味がなかった。リーマンの資産にはあまりにも不透明なものが多すぎたのだ。
9月4日にはポールソン財務長官はファニー・メイとフレディ・マックの救済を決め、 -
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2008年9月12日夜ニューヨーク連銀にウォール街の銀行のCEOが集められた。議題はライバル会社であるリーマン・ブラザーズをどうやって救うか。政府の支援はない。5大投資銀行のうち最も弱く、最もリスクの高い(レバレッジの大きい)ベア・スターンズは既に倒れた。ウォール街の企業のレバレレッジは32倍、上手くいってる間はリスクをとればとるほど儲かり、幹部からトレーダーまで高給で他社に移籍されないように繋ぎ止めるのが当たり前だった。サブプライムローンなどの債券はひとまとめにされ、それから切り刻まれ、またまとめられてCDOという債券に仕立て上げられた。理論上はリスクを分散することで低格付けのCDOを組み合
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「証券かはリスクを減らし、流動性を高めると考えられていたが、現実に発生するのは数多くの機関と投資家が良かれ悪かれ密接に結びつく状況だった。」
リーマンブラザーズがいかに破滅していくのかについて多くの証言に基づき書かれたノンフィクションもの。
優秀な者たちによる駆け引きは面白く、私益を追求しすぎた結果として自分の利益すらもぶっ飛ばしてしまう環境を作る恐れがある危険な行為は、ほかの誰かが絶対に守るに違いないという確信がなければ行う事ができない。空売り。しかし、それが見捨てられたしまった場合、リスクテイカーはその最終決定機関を非難する。なんという強欲で私益中心なのか。
そのような私欲が渦巻く投資機 -
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リーマンショック前後のウォール街で何が起こったのか。膨大なインタビューやメール、証言等を集め分析したもの。リチャード・ファルド(リーマンCEO)、ロイド・ブランクファイン(ゴールドマンCEO)、ウォーレン・バフェット、ジェイミー・ダイモン(JPモルガンチェースCEO)、ジョン・マック(モルガンスタンレーCEO)、ジョン・セイン(メリルリンチCEO)、ロバート・ウィラムスタッド(AIG CEO)など金融機関のトップに加え、ポールソン財務長官、バーナンキFRB議長、ガイトナーNY連銀総裁など政府関係者も実名で登場する。それぞれの信念、保身、怒り、疑念、友情、家族愛、裏切り、株主対策などが絡まって、
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「ヒューマン・ファクター」。人間的要因、とでも訳しますか。
これは、大人の男性には堪らない小説でした。
手に汗握る、スパイ小説。紛れもないスパイ小説なんですが、そういう状況に置かれた男性の心理描写。葛藤。
銃の撃ち合いやら車の追っかけっこなんか、ゼロです。
後半は物凄い緊迫感。やめられないとまらない、でした。
1978年にイギリスで書かれた小説です。
書いたのは、グレアム・グリーンさんという人です。
グリーンさんは1904年生まれのイギリス人さん。1991年に亡くなっています。86歳くらいまで生きたんですね。
で、1930年代、つまり30歳前後にはもう、小説家として成功していたみたいですね。 -
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綿密な取材と、掴んで離さない描写。エキサイティングな展開にぐいぐい引き込まれる。入りからやばい。
そしてダイモンは爆弾を落とした。朝起きてからずっと考えていたこと、彼の世界終末の日のシナリオだった。
「次の手順でいく」彼は続けた。「ただちにリーマン・ブラザーズの倒産に備えてほしい」間を置いた。「そして、メリルリンチの倒産」また間を置いた。「AIGの倒産」また間。「モルガン・スタンレーの倒産」最後にひときわ長い間を置いて、「そして可能性として、ゴールドマン・サックスの倒産に備える」
電話の向こうでいっせいに息を呑む音がした。
あと、経営幹部レベルのすごいとこ。
・電話はアシスタントが -
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探偵小説の巨匠、ディクスン・カーの作品。
デスパード家当主マイルズ・デスパードが死亡した。かかりつけ医は自然死と判断したが、マークはマイルズの部屋の現状から、砒素による毒殺を疑う。果たして、確かにマイルズは砒素により殺されていたのである。
ヘンダーソン夫人がマイルズの部屋を隙見したときに見た、無いはずのドアを抜ける不思議な女性と思しき人影、霊廟に埋葬されたはずのマイルズの遺体が消失するという事件、そして、エドワード・スティーヴンズの妻マリーと19世紀初頭の毒殺魔マリー・ドブレーとの関係。オカルティックな雰囲気に包まれた事件は、意外な様相を呈し始める。