加賀山卓朗のレビュー一覧
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ネタバレアイクとバディーリーの未熟な二人の父親たちの話
彼らがともに同じ後悔と哀しみを抱え、憎しみという名の復讐へ舵を切る
バイオレンス、セクシュアリティー、人種差別、家族愛、それらが紡ぐ一見複雑に見える事件が、実はシンプルな一本の糸で繋がっている
アイロニーとドライなセリフ、彼らにしか理解し合えないユーモア
その世界にしかない共通語
未だ、この世はそんなもので満ち溢れているのかも知れない 悪意、自己顕示欲、暴力、偏見…
そして物語がある着地点へと辿り着き、ふと、思う
「後悔」ってなんだろう?
アイクとバディーリーは完全に取り返しのつかないことを息子たちにしてしまっていた
それは彼らを理解しようとしなかったこと、そして「愛」を伝えなかったこと
息子たちの非業な死の後でいくら悔やんでも、彼らには遅すぎた
「後悔」とは、もはやどうにもならない、行き着く先を見出せない、自分の中でいつまでも鳴り響く「残響」のようなものなのかもしれない
その後、父親たちが果たした復讐には何の意味があったのか?
「カミソリみたいな涙」
もどかしく、言いようもない哀しさを孕んだ贖罪の物語 -
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ネタバレ【再読】
「だって彼は殺されたんでしょ?」
葬儀の後、遺言の公開の場で一族の一人コーラが口走る。そして翌日、コーラは何者かに惨殺された。遺言執行人のエントウィッスルは事件に不吉なものを感じ、一族の者たちを訪ねていく。すると、誰もが経済的な苦境に立たされており、アバネシー家の当主だったリチャードの死を歓迎していたことがわかった。そこでエントウィッスルは、旧い知り合いであるポアロに協力を要請した。
調べを進めると、リチャードは死の直前にコーラのもとを訪れており、そこで何かを仄めかした可能性が浮上する。だがコーラの同居人ミス・ギルクリストは二人の断片的な会話しか耳にしていなかった。すると今度はギルクリストが命を狙われたため、ポアロはますます二人の会話に何かヒントがあるということを確信する。
ポアロは一族を屋敷に集めて観察をする中で、ようやく真相に辿り着く。
犯人はミス・ギルクリストだったのだ。コーラのコレクションの中にフェルメールの作品を見つけた彼女は、それを奪うためにコーラを殺害することを決意する。ちょうどそのタイミングでリチャードが死んだため、ギルクリストはコーラに変装して葬儀に参加、リチャードの死が殺人であったことを仄めかす。それは全て、その後のコーラの死をリチャードの死と関連づけるものだったのだ。
印象に残るフレーズの多いクリスティー作品の中でも、間違いなく上位に入る作品。外国人である利点をいつも以上にフル活用する抜け目のないポアロ。犯人であるミス・ギルクリストの動機とその豹変ぶりが恐ろしい。
唐突に登場する情報屋の存在がやや反則な気がしないでもない。
●名言
「過去はあなたのすぐそばにいて、『こっちはまだ片づいていないよ』と言う」
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「処刑台広場」……これだけで舞台は現代から遡り、公開処刑のあった影のある時代のこと?
「○○の女」……また、翻訳小説の邦題としてはよくあるパターン?
そんな印象の読み始めから、なんとも謎めいた事件が立て続けに起こっていく。
気がつけば冒頭の登場人物紹介の人たちがずいぶんと亡くなってしまっていて、さらに混沌としていく。
まさに“ジェットコースター ミステリー”(あとがきより)
常に読者を惑わす手口が張りめぐされていて、550ページものあいだ飽きることはなかった。
また、他の作品ではあまり好きになれない“謎の過去手記”の挿入も、端的で効果的だ。
とても面白かった。 -
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23歳の夏——この罪を見過ごすことはできなかった。MWA賞受賞作家が放つ瑞々しい青春ノワール
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23歳のハーディ。大学を中退し 寂れた遊園地のお化け屋敷(ダークライド)で働き 給料は奨学金の返済でカツカツ。出来の良い兄にハードリー(めったに~ない)とあだ名をつけられるほど、頭を使わず 頑張らずにその日を気ままに生きている。
面倒なことは先延ばしにするハードリー。その日も駐禁の違反切符を延長する為に市役所を訪れていた。
そこで出会った幼い姉弟。
その身体に煙草の火傷痕を見つける。
どう行動するか逡巡するも、そのうちに母親が姉弟の手を引き 車で去ってしまう。
児童保護サービスに相談したが、そこはお役所仕事。その後 なんの音沙汰もなし。
ハードリーは部屋に貼られたポスターを眺める。
『イカロスの墜落のある風景』
海から出たイカロスの足に気づいている人は誰もいない。羊飼いも、農夫も、漁師も、誰も助けようとはしない。イカロスに一番近くにいるのは漁師だ。あとは「顔を上げて海に飛び込むだけ」
「姉弟の虐待に気づいているのは、僕だけだったら?」
幼い命を救うために、ハードリーは行動を起こす
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「正義」「勇気」そして「若さ」について考えさせられます。
役所の窓口で働く「ゴス娘」ことエレノア(可愛いっ!)
お化け屋敷のアルバイト仲間で 少し知的障害のあるサルヴァドール(愛おしい!)
血の繋がらない兄のプレストン(深い愛!)
そして元私立探偵の大人な女性フェリス(知的でエロ!)
様々な人の力を借りながら、兄妹を救う方法を探るハードリーは、素人探偵のような調査をし、やがて兄妹の父親に弁護士の裏の顔がある事に気づきます。
しかし、そこは素人!かなり危険な目にもあい…。
自分の命も失いそうに!!
そんな時 ハードリーは幼い頃に亡くなった母の言葉を思い出します。
「でも、大丈夫だった!」
いやいやいやいや
確かにお母さんはあなたが挫けそうな時に何度も言ったよ。「でも、大丈夫だった!」
でもそれは、自転車で転びそうになった時、虫を追いかけて迷子になりそうになった時よ!
けして悪い男から銃口を向けられた時じゃないの!!!
もうみんな天国で見守る母親の気持ちで読んで欲しい!
ハードリーの無鉄砲さにハラハラドキドキ。後半はずっとずっと!
痛い目にあって いつものようにイケナイお薬に逃げたり、フェリスとイケナイ時間を過ごしたり…。
でもハードリーは諦めないのです。
何故?! 何がハードリーを突き動かすの。
ハードリーは無事、兄妹を救うことができるのでしょうか-。
これ、再読なのです。
で、二度目の今回も ラストシーンに放心するのです。
七月ギリギリにレビューできてよかった!
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読書会のため、名前だけは知っている名作を読んだ。やっぱり現在まで残るだけのことはある。面白かった!!
『第一部』
名前はフィリップ・ピリップなんだけど、ピップということになった。幼く死んだ五人の兄がいたらしく、両親が死んで20歳年上の姉の「手で」育てられた。と言っても姉は支配するのが好きでいばり屋でピップはろくな者にならない駄目人間扱いしてきたけど。
姉の夫のジョー・ガージェリーは鍛冶屋で善人。お母さんがお父さんに酷い目に合わされたから、自分の家庭では反対が良いんだって。だから妻に支配されているこの家庭を他からのように思っている。
ヒップが7歳の時、怪しい男に捕まった。「家から食べ物とヤスリを持って来い。持ってこないと特別な力でお前を呪い殺す」と言われて本気にして、夜中に怖い怖いお姉さんの台所から食べ物を、ジョーの作業所からヤスリをくすねて持っていった。
翌日、男は脱走兵だって分かった。ピップは二人の脱走兵が捕まる場に居合わせて、自分が密告したんじゃないよ!という必死の合図を送った。男は何を察したのか「そういえば、昨夜鍛冶屋の家に忍び込んで食べ物をくすねたぜ」と言った。
数年後、町に住む大金持ち引きこもり老嬢ミス・ハヴィシャムから退屈しのぎの相手として屋敷に呼ばれた。扉を開けたのは、ミス・ハヴィシャムの養女で、ヒップをとってもとっても見下すエステラという美少女。彼女はヒップの階級、手、服装、発音をすごくすごく馬鹿にする。するとヒップはそれまで満足していた鍛冶屋暮らしが嫌になってきた。ああ、教育を受けたいなあ。エステラと結婚できる紳士になりたいなあ。
ミス・ハヴィシャムは擦り切れたウェディングドレスを着続け、屋敷の時計はすべて9時20分で止められ、居間には虫に食い尽くされたウェディングケーキが置いたままになっている。
あとになって明かされるんだけど、高慢に育ったミス・ハヴィシャムには、母親違いの弟と憎しみ合い、その弟と組んだ結婚詐欺師に騙されたという事情がありました。
ピップはしばらくミス・ハヴィシャムの屋敷を訪れていたが、ジョーの従弟(鍛冶屋の奉公働きで、だいたい14歳から21歳の7年契約)になれる年齢になると、ミス・ハヴィシャムは従弟契約金(このあたりよくわからない)を与えて「これっきりだよ」と言う。
以前はあれほどジョーの弟子になりたかったのに、ミス・ハヴィシャムの屋敷、美少女エステラを知ってしまったら、鍛冶屋職人になんてなりたくなくなっていた。
4〜5年後、姉のガージェリー夫人が何者かに襲われて寝たきりになってしまう。ヒップは現場に残された凶器が、数年前に食べ物を与えた脱走兵がヤスリで削り取った足かせではないかと思う。すっかり性格も穏やかになったガージェリー夫人だが、発音にも支障が出て意思の疎通も図れない。そんな折にちょうどピップと同じ年齢で、身寄りを亡くした少女ビディがやってきた。ビディは以前初めてピップに文字を教えた相手で、遠縁の老婦人の世話をしていたので、ガージェリー夫人の世話も引き受けた。
ある日、弁護士のジャガーズ氏が訪ねてきて告げる。「ピップ少年に大いなる遺産を渡そうとする人物がいる。条件は、決してその相手の身元を探らないことと、上流階級にふさわしい教育を受けること、そしてずっとピップと名乗ること」
ピップは大喜びで受諾する。
ジャガーズ弁護士はジョーにも手付金を渡そうとするが、善人の彼は拒否した。ピップは嬉しく思うと同時に、ジョーのあまりの無学さを恥ずかしくも思うのだった。
この遺産の持ち主は誰だろう?候補①は脱走犯が社会的成功し自分と同じような境遇の少年を引き上げようとした。候補②はミス・ハヴィシャム。
ピップは断然候補②だと確信して、自分は気に入られて、エステラとも結婚させてくれるんだ!と有頂天に。
ロンドンに旅立つ前に身支度を整えると、今までヒップを「役立たずで恩知らずでバカで将来ろくな者にならない」と扱っていた人々が平身低頭。ヒップは新調したスーツでミス・ハヴィシャムに挨拶に行く。だがエステラはレディになるためにどこかで教育を受けているという。
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下級階級の少年が夢の立身出世物語か!文章は軽いというかコミカルな感じ。
登場人物はそれぞれが特徴立っている。ジョーはとことん無学な善人、ジョーの妻(ピップの姉)は田舎のいばりんぼ、カージェリー夫人を訪れるパンプルチョーク氏やウォプスル氏は田舎だけで通じる地位にいて弱気をくじき強きを助け、ジョーの職人オーリックは田舎のいばりんぼ職人、ビディは田舎のいい子。
ミス・ハヴィシャムの暮らしは怪奇なんだけど、なんだかコメディでさえある。本人も実は楽しんでないか??(本人は楽しんでいないのは分かるけど、文章でそんな感じがしちゃう)エステラは徹底的に高慢。
簡単に、大金持ちになる道がひらけたようだけど、階級社会でこんな夢のような一発逆転もあったのか、というか、こんな一発逆転じゃないと乗り越えられない階級差があったのだろうなあ。
『第二部』
ロンドンに行ったピップの新生活で、新登場人物紹介みたいな記載が続く。
弁護士ジャガーズは依頼人を右!左!と捌いて偽装もどんとこい、人間を軽く見ている感じ。
中年事務員ウェミックは、事務所では面白味もないのだが、犯罪記念品コレクションしたり、自宅は自分の手でこじんまりした小さい屋敷に庭園を整え、仕事と個人を完全に別けているなかなか面白い・笑
ピップが勉学や礼儀作法を教わることになったのは、ミス・ハヴィシャムの遠縁のポケット氏。まず顔を合わせたのは、ポケット氏の息子で会計士見習いのハーバード。実は昔ミス・ハヴィシャムの屋敷でボクシングごっこをしたことがあって二人は意気投合。ハーバードは「ぼくはあの時自分がミス・ハヴィシャムのお気に入りになってエステラと結婚できるかと思っていたんだけど駄目だったよ。君は幸運を掴んだんだね」と言う。ますます謎の後見人はミス・ハビシャムだと確信するピップ。
ええーそうかなあ、あの老嬢は他人のこと眼中になさそうだよ。
ハーバードはピップを「君は鍛冶屋だからヘンデルと呼ぶよ」という。…なぜ渾名を?ピップでいいじゃん。あと「遺産を受け取るのはピップと名乗ること」なんだけど大丈夫なのか?
ピップはポケット氏の屋敷に下宿することに。彼は子沢山で、ポケット夫人の祖父だか父だかが名声を築いたらしく、家でもそのように振る舞っている。ポケット氏の屋敷に下宿ししているのは、不機嫌・愚鈍・見栄っ張りお坊ちゃんのドラムルと、母の過保護で教育が遅れたスタートップ。
とにかく出てくる人物人物が特徴際立っているので、第二部の最初の頃は紹介エピソードみたいな感じ。
そしてこの物語はピップが昔を思い出して書いている形式で、「羽振りがよかった頃は節操のない無駄遣いをしまくったもんだ」と語る。どうやら「大いなる遺産」はピップの元には定着しなかったらしい。
そんな無駄遣いとしてハーバードの事務所にも別宅を作り意味のない贅沢な家具に、珍妙な従卒を雇って成金丸出し。
このピップのいい気になる性格は、第一部から見受けられたし、ジャガーズ弁護士は最初から「急に大金を手に入れたらきっと大失敗するけれど、別に私には関係ないし?」と言い伝えているし、ヒップの弱点として「無駄遣い、ハーバードに兄貴風を吹かせる、将来手にする莫大な財産を自慢する」と看破される。
そんなある日、鍛冶屋の兄貴ジョー・カージェリーが訪ねてくるという知らせが。ピップはすでに上流階級の一員のつもりだから、あれほど仲良くあれほど気を使ってくれてあれほど良い人のジョーを「田舎ものと自分が一緒に歩いているところを見られたら恥ずかしい」などと考えるようになっている。自分が敬意を持っているスタートアップとか、ハーバードとかなら構わない。しかし不機嫌・いばりんぼ・不誠実なドラムルにだけは見られたくない!
<人生を通じて私達の最悪の弱さや卑しさは、もっとも軽蔑する人がいることで表に出てくる。(P373)>
ピップの部屋にやってきたジョーは、ピップを「さようです、サー」と敬語で話す。これがジョーの「けじめ」なのだ。自分の願いはピップの役に立つこと、ピップが幸せになること。こうして紳士となった(成金衣装成金インテリアなのが記述で分かるんだけど)なら、自分とピップには区切りが必要だ。もし今日の訪問で不都合があったのなら、すべて自分の責任だ。なぜなら自分はロンドンにいられる人間ではない。自分は鍛冶屋の服を着て、鍛冶屋や、泥んこの土地にいなければいけない。今度自分たちが会うとしたら、ピップが鍛冶屋を覗く時だ。
そしてそうまでして訪ねてきたのは、大事な伝言を預かっているからだという。それは「ミス・ハヴィシャムの屋敷にエステラが戻り、ピップに会いたいと言っている」ことだった。それを伝えるために、この場違いな場にやってきたのだ。
そして帰っていった。
ピップは大急ぎでミス・ハヴィシャムの屋敷に向かう!ジョーの鍛冶屋には顔を出さない!なんてヤツ!他の人たちは「自分こそあのピップの保護者、友人」などと嘘をついているっていうのに。
久しぶりに会ったエステラはとてもとても美しく上品なレディになっていた。ピップは、自分が彼女と結婚させてもらえると思い込んでいるので有頂天。
ミス・ハヴィシャムはピップに「あの子を愛して、愛して、愛しなさい!あなたを傷つけたとしても、あなたの心を引き裂いても愛しなさい!本物の愛とは、やみくもな献身、無条件の自己卑下、完全な服従、全て逆らってでも相手にすがり、深い傷を負って、全身全霊を捧げなさい!」と言い渡す。 -
Posted by ブクログ
ひまわりめろんさんから「読まねばなりません」とお勧めされたので読みました(^O^)
探偵役はギデオン・フェル博士。私は本作で始めてなのですが、どうやら巨体で髪はもじゃもじゃふさふさ、皮肉さといたずらっぽさを感じされる雰囲気。いろんな博士号を持っていて、著作とか講演とかしていて、その知性だとか観察眼だとかを買われて警察の顧問??なのかな、名前は知られているようだし堂々と捜査してるので。
このフェル博士が友人から話を聞く。数日前に神秘研究家のグリモー教授が仲間と酒場でワイワイやっていると、奇術師のピエール・フレイという男が割り込んできて「棺の中から抜け出すことのできる人間もいる。自分か、弟に気をつけろ」と告げたという。そしてフェル博士が話を聞いたまさにその晩が、グリモー博士が襲撃予告された日のようだ。
フェル博士はたちがグリモー教授の屋敷に駆けつけると、家の人達が騒いでいる。「仮面をつけた男がグリモー教授を訪ねてきて書斎に鍵をかけた。さっき銃声が聞こえた」というのだ。みんなで書斎の鍵を壊すと胸を撃たれたグリモー教授が倒れていた。だが部屋に一緒に入ったはずの男はいないし、外の雪には、男が訪ねてきた足跡も出ていった足跡もない。だがフェル博士は撃たれてたグリモー教授がつぶやいた言葉や、教授の部屋の書籍や小物からたちどころにしてグリモー教授の過去を言い当てる。
ええ、すごい!状況から読み取りる早さでいったら歴代名探偵のなかでもトップでは!?
警察は酒場でグリモー教授を脅したピエール・フレイを探す。だがフレイも同じ夜に道で射殺したいで見つかった。しかも雪に犯人の足跡はないのだった。
どうやら鍵はグリモー教授の過去にある。教授と二人の弟は、故郷で刑務所から脱獄したことがある。抱き込んだ医師に死亡証明書を書いてもらって、三つの棺で埋葬され、抜け出すことにした。だが抜け出したのは…。
読者としては前半は推理小説のヒントの範囲が広過ぎで状況把握が難しかった。グリモー教授が「襲撃予防のために絵を買った」とか、いつのまにかコート掛けに掛かっていた血まみれのコートだとか、そのコートの色が証言者によって違うとか、探偵趣味の若者とか、奇術師の小道具だとか…、えええ、読者に示されるヒントが脈絡なさ過ぎる(^_^;)
しかも第17章の「密室談義」でフェル博士が「探偵小説における密室の抗議を始めよう。我々は探偵小説の中にいる登場人物なのだからな」と言い始め…、…、えええー、今で言うメタ小説ですか、ディクソン・カーお茶目だな、そんなお茶目ができるフェル博士という人物像か・笑(ポアロやホームズが言ってはいけない・笑)
その密室談義では、いわゆる推理小説で読者に対して情報を全部出した密室のパターンを語る。まあ「実は自殺でした」とか「鍵に仕掛けをした」とか「目撃者が誤認するようにした」だとか「時間をごまかす」とかそういったものですね。
読者は読みながら「あの小説はこのパターンだな」なんて連想していくわけです。
しかしフェル博士の話を聞いた人たちは「でも今回のグリモー教授とフレイの殺人には当てはまりませんよね」という。
…まあ結果的にいうと。ディクスン・カーは読者に大変フェアで、脈絡がないと思われたヒントも見事に繋がりました。正直言って「できるか!?」という気もするけれど、解き明かされてほぐされる物を読むのは楽しいですね。 -
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ノンフィクションの真髄を味わえる作品です
ありがちなマンガの設定で、民族の独立を夢見たゲリラが麻薬カルテルになってしまうという悲劇を、実際の歴史として、現実には麻薬カルテルであったのか独立国であったのか、
それは、どういったものだったのかを、一人の偉大な男性の背中越しに語られています
出てくる組織が強大すぎて、話が国家規模にしかならないため、夢を抱いたがために、組織人として苦悩する人たちの散っていった物語でもありました
現実路線では、銃と金だけが強く、望む結果を生むのだなぁと感じさせられました
個人的な興味で、格言の「貧乏でも金持ちの列に並べ」か鶏口となるも牛後となるなかれ、のどちらが正しいのか、たまに頭の片隅で考えていたのですが、ユダヤ人の金持ちより中国式のやり方に軍配が挙がったようです
私が、この本に出合えたのは、高野秀行の「アヘン王国潜入記」を読んでいたからで、それゆえワ州のアヘンの行方が非常に面白かったです ああ加工はそこでして流通はそうなってたんだって驚かさせられました
おそらくミャンマーの特殊詐欺の拠点とも関連の深いワ州の成り立ちと現状について知れる貴重な本なのでオススメです! -
Posted by ブクログ
間違いなく今年読んで1番良かった本になる予感。
ワという土地の成り立ちを、悲劇の英雄の経験を通して擬似体験できる本。
この英雄の、自分の理想のためには、拷問をされようが、自分の命をかけて達成すると言う行動原理に畏敬の念を覚える。
著者が言う、私はこの英雄を書くために神に遣わされたと言うのも納得できる話。
ワの南部現地民に話を聞いた
ソールーについては尊敬されているのはもちろんウェイについも同じくらい尊敬されているとのこと。ウェイは2026年現在も存命。
若い人が彼の年齢まで覚えていたのでこれは確かだろう。やはり外からみた麻薬組織の親玉という評価と現地のものは違うものだ。
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ネタバレ大部の著であるが、ビルマ/ミャンマーの国家内別国家とでもいうべき『ワ州』の歴史を追う一冊ゆえである。
内容も読ませる文章で書かれたもので、読み通すのに時間は要したが、必要な知識を参照しながらしっかり理解できたので、星5つを。満足とともに。
・文字通りの首狩り族であった『ワ人』
・バプテスト派伝道師の薫陶を受けた『ワ人』
主人公ソー・ルーは後者の難民の子である。共産主義者たちがやってきて、宗教コミュニティから彼らを追い出した。
……からの、成人後。
まずビルマから情報提供者として雇われ、任務は『ワ』コミュニティを対共産主義の盾にすること。(なにせビルマ軍は弱体で、戦力投射能力もなく、かといって白人の新たな帝国、アメリカに依存するのも怖かった)
でもソー・ルーには独自の思惑があったのです。
「ワ人は団結してひとつの民族国家をつくるべきだ。それには首狩りの習慣を止め、ワの言葉で教育を充実させ、病院や学校を建てるようになるべき」
しかし、「外部からやってきた文明的ワ人」の言うことなど誰も聴くはずはなく。
「共産主義者たちがケシ畑を焼き払うぞ」
と言って初めて、ワの人々はソー・ルーの訴えを真面目に聞くようになったのです。
ここから。話はここから二転三転する。
『アメリカ』といっても一枚岩ではなく、国務省とCIAは
「共産主義を食い止めるためなら、ヘロイン製造地域の武装勢力を支援するぞ。たとえアメリカの若者がヘロイン中毒になってベトナムから帰還し、社会を病ませようともだ。」
DEA(アメリカ薬物取締局)はDEAで
「ヘロインの流通を食い止めるためなら、地元軍部や政治家も一緒に逮捕して何が悪い」
という態度。
CIAはDEA職員の電話を盗聴し、個人宅に盗聴器をしかけ、捜査妨害どころか情報提供者を窮地に陥れることもいとわない。
ミャンマーの軍部独裁政治は、その時その時の思惑で
「国際的に良い顔して支援を引き出したい」
「が、自分たちのメンツをつぶされるようなDEAとソー・ルーの計画は許さん」
となる。
最終的に、ソー・ルーは新型コロナ大流行の折、孤独に亡くなり、義理の息子は「ワの言葉の教科書」すら定着させえずに失意のまま宗教コミュニティに居る。
メサイアコンプレックスという言葉は本書には登場しないが、ソー・ルーも彼の義理の息子も、
「ワ人を文明的な世界に向かって前進させたい」
という強い意志を持っていた。
彼らの失敗の理由のひとつは、その宗教信条故に、拷問や苦境に屈さず頑張りはできても、
「同宗派ではないワ人の味方」
を、体制変更を迫るほどの強さ、多さにはできなかったことであろう。
著者は末尾に、ワ州の今後の見通し、あり得るシナリオを描いている。が、現実のワ州に病院は無いし、小学校中学校は中国語の古びた教科書を使っている。 -
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ネタバレあーーー犯人そこーーーーー。
となった。まさかコーラが別人だとは思わなかったし、本命が〈そっち〉だとは思わなかったよなあ。
最初は弁護士のエントウィッスル氏を疑っていたよ。だってあまりにも語り口が胡散臭くてさ。信用できない語り手かと思っていたら、いつの間にか気配が薄くなって消えていた…。
途中では、そこまで頭良くない設定なのに分かっている風なことを言うロザムンドも疑った。
その全てがミスリードだったとは…。
確かにミステリーの定石は「一番怪しくない人が犯人」だけれども、「怪しくない人が複数いる」のはクリスティの十八番ですね。してやられた感。
やはりクリスティは好きです。 -
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大いなる遺産は恋愛小説であり、冒険小説であり、ミステリー小説であり、ピップの成長物語だ。まさにそのとおりである!物語としてあまりに面白く、エンタメとしての見どころが多い。
エステラへの恋は正直あまり共感できるところがなかった。恋とは意外とそんなものなのかもしれない。
身近な人の幸せを自分のことのように喜べるだろうか。家族なら喜べるかもしれない。離れた親戚は?友人は?同僚は?人間少なからず嫉妬はするものだが、ジョーはその様子を一切見せない。嫉妬の感情と向き合うこと、あるいはその人の幸せを自分のことのように喜べる人を作ることが、人生のひとつのテーマのように思う。